まさに激闘、アクシデントもあり筑波大に惜敗 決勝進出ならず

男子バレーボール

 全日本大学選手権(全日本インカレ)準決勝、早大は日本代表を3名擁するタレント集団・筑波大と対戦した。第1セットは中盤にOH大塚達宣副将(スポ4=京都・洛南)が負傷し、そのまま流れを筑波大に握られる。第2、第3セットを早大が連取し、迎えた第4セット。先に20点台に乗ったのは早大だった。だが終盤相手に逆転を許し、フルセットにもつれ込む。身を削るような激闘が繰り広げられたが、最終局面で筑波大が勝負強さを見せ、追い上げられてしまった。セットカウント2-3(19-25、25-21、25-21、22-25、16-18)で敗戦し、明日の3位決定戦へと挑む。

 第1セット序盤から主導権を握ったのは早大であった。長いラリーの場面でも、大塚が何度もスパイクに跳び、最後はMB伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)がライン上に押し込んだ。その後はOH水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)を中心に得点を重ね、5-1と先行する。しかし、ここから筑波大の猛追に合い、嫌な形での失点が続いた。8-8と同点になったが、OP重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)、水町が相次いでライン際にスパイクを決め、持ち直したかに思われた。ところが12-12の場面、大塚が足を痛め一時退場するアクシデントが発生する。早大の動揺を筑波大は見逃さず、14-18と点差を広げられる。ここでタイムアウトを要求し、OP中島明良(法4=京都・洛南)、OH芳賀雄治(商4=山形南)ら4年生を中心に声を掛け合い、なんとか持ち直しを図る。大塚に代わって入ったOH山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)がレセプションアタックから躍動するも、筑波大の背中を捉えることはできなかった。

コート外からも声を掛け合った

 なんとしてでも奪いたい第2セット、コートには第1セット途中で離脱した大塚の姿があった。足が痛むようなそぶりは見せながらも、レシーブにスパイクとなんとか自分の役割をこなしながら、仲間を鼓舞する。ここで「任せろ」といわんばかりに水町が得点を量産し、チームを勢いづける。水町のサービスエースで22-18。最後は大塚がクロスに決めきりこのセットを奪い返した。第3セットは序盤に筑波大にレッドカードが出されるなど、早大有利の流れが続いた。前セットと同様、水町を中心に組み立てながら攻撃。守備も整い始め、MB秋間直人(スポ4=愛知・桜台)が3本目のブロックポイントで16-14とした。終盤はサーブで攻め続け、重藤のサービスエースでこのセットを取ると、大きくガッツポーズが飛び出した。

何度トスを託されても打ち切った水町

 第4セットは、セッター前田凌吾(スポ1=大阪・清風)の巧みなトス回しで主導権を握り、サイド陣は高いブロックをものともせず多彩な打ち分けで点を重ねる。リベロ荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)が飛び込みながらもサーブレシーブをきれいに前田へと返し、伊藤がクイックを決め11-9。ここから一進一退の攻防が続いた。終盤、筑波大がコート外からの難しい二段トスを打ち切り、流れを手繰り寄せる。早大が先に20点台へ到達したものの、最後に追い上げを許してこのセットを失った。 最終セットは前セットの雰囲気を引きずらず、伊藤のCクイックやブロックで好スタートを切った。相手の軟打を前田が阻み、8-5で折り返す。しかし、苦しい状況で何度もトスを託されてきた水町が立て続けにブロックに捕まり、14-15と絶体絶命に。ここからデュースにもつれ込むと、筑波大リードの場面で、大塚がインナーへ打ち込んだスパイクがわずかにサイドラインを割った。

粘り強いレシーブを何度も見せた荒尾

 過去に6連覇の記録を保持する筑波大が、早大の6連覇を阻むこととなった。大塚の負傷というアクシデントがありながらも、何度も何度もつなぎ、全員で雰囲気を盛り上げ「絶対に勝つ」という気持ちを押し出すような試合であった。しかし、あと1点が遠かった。「もう一回こんな思いをして終わるのは嫌なので、明日に切り替えて頑張りたい(岩本主将)」。試合後には悔しさをあらわにし、涙を見せた選手たち。全日本インカレのために1年間研鑽(けんさん)を積んできた分、気持ちの整理もつかないだろう。だがそれでも笑顔で終わるため、皆前を向こうとしている。1年間培った全てをぶつけ、日体大撃破へリスタートを切る。

 

(記事 五十嵐香音、写真 荒井理沙、山田彩愛)

 

セットカウント
早大 19-25
25-21
25-21
22-25
16ー18
筑波大
スタメン
アウトサイドヒッター 水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)
アウトサイドヒッター 大塚達宣副将(スポ4=京都・洛南)
ミドルブロッカー 秋間直人(スポ4=愛知・桜台)
ミドルブロッカー 伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)
オポジット 重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)
セッター 前田凌吾(スポ1=大阪・清風)
リベロ 荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)
途中出場
山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)
中島明良(法4=京都・洛南)
 
コメント

松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)

――今日の試合を振り返って

 1セット目はもっと出せたはずだったのですが、筑波に勢いがありましたね。向かってきていましたし、(早大に)それを跳ね返すだけのエネルギーがなかったですね。大塚(大塚達宣副将、スポ4=京都・洛南)もああなってしまいましたし…。ですが2セット目以降、たつ(大塚)が「頑張る」という意志を示してきて、そこでチームも一つにまとまっていたのですが、やはり戦力的にもダウンしましたし、勝つことが難しかったのかなと思いますね。

――今の率直なお気持ちは

 いつかは負けてしまいます。負けた事実に対しては悔しいですが、自分たちが4年間という短い時間の中でやってきたこと、バレーボールだけではなくて、いろんな環境の中で人として大きくなったのではないかなと思っています。勝負なので、勝ち負けはありますし、いつかは連覇も途絶えるもので、それがたまたま今年だったというだけです。もっと良い舞台でやらせてあげたかったなという思いはありますし、それに対して悔しさはあります。

――水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)選手にトスが多く集まっていた試合になりました

 水町は人柄も良いですし、周りの子の気遣いもできる選手なので、ああいう部分で責任を感じてしまっているのではないかなと思いますが、そこは良く頑張ったと褒めてあげたいと思います。

――監督から見て今日のチームはいかがでしたか

 たつがああいう状態でも勇気を持ってみんなでまとまろうとしていましたし、今年はたつがいない時でも良い成績が保ててきていました。その中で「あと2点」が取れないことに苦しんできていて、今日も「あと1点」が取れない。それはなんでなのかというところですね。それは最後に水町に頼らなければいけないチームになってしまっていたっていうところが大きな問題でした。一人一人が自立したプレーヤーになっていかなければいけないってところが、来年度の課題になります。

――今年は何人か4年生がいない中でチーム作りをしていくということで、難しさもあった中、監督としてはいかがでしたか

 今の4年生は大塚だけじゃなくて、中島(中島明良、法4=京都・洛南)、芳賀(芳賀雄治、商4=山形南)が1年生のころから(学年を)引っ張ってきてくれていました。その精神的な柱になっていた3人がいない時期が今年はありました。ゴールデンウイーク明けには芳賀と中島は戻ってきたのですが、それでもやっぱりチームとしてどこの方向を向いていくのかというところがはっきりしていない状態でした。僕もあまり口を出すタイプではないので、4年生で考えてチームを作ってきたのですが、やはりそこがまだ弱かったのかもしれないですね。ぐっと引っ張っていくことができなくて、それは今年の1年間に負けた試合に通じているものなのかなと思います。

 

MB岩本大吾主将(スポ4=兵庫・市尼崎)

――今日の試合振り返っていかがですか

 もはや試合の事を思い出せなくて…負けちゃったということだけ分かっている状態です。 ここ(全日本大学選手権)で優勝するためだけに頑張ってきていて、そういうことが途絶えたということだけしか分からないので…もう試合の内容とかは正直今、僕の中では整理できてない状態です。

――流れとしてはいかがでしたか

どのセットも途中まではすごい良かったのですが、緩んだところからワンプレーで相手に打ってあげるようなプレーが所々あったかなという風には思ってます。でも、良いバレーはしていたと思います。

――松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)がよく仰っている「全部出し切る」はできたでしょうか

今日で判断するのはまだ早いかなという…。明日全部やり切って全部出せたということが判断できると思います。今から明日に向けて準備したいなと思います。

――どのようにチームを引っ張ろうと思われていましたか

試合に出なくなってから、プレーでチームを引っ張ってないので、なんとも言えないのですが…試合が終わってから「ごめん」とか言ってくれる後輩とかもいて。そういうみんなのために1年間やってきたということは本当に財産になっているのかなと思います。そういった意味でも、最後、後輩を勝たせて終われたらなと思います。

――明日の試合への意気込みをお願いします

最後、笑って終われるチャンスはまだあるので、頑張りたいなと思います。

 

リベロ荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)

――今日の試合を振り返って

 1番の大きな山ということで、自分の役割を明確にして挑みました。結果として負けてしまったのが、すごい悔しいです。今できる役割は個人的には果たせた部分もありましたが、ほしい1点を上げられなかったりだとか、ここ1本のところで良いパスや2本目以降の人の良いプレーを引き出すパスが上げられなかったので…。明日3決があるので、そこを頑張るしかないなと思っています。

――1年間を通してブロックとフロアの関係の進化をしてきた中で、今日の試合はいかがでしたか

 これまでいっぱい課題があった中で、自分1人じゃどうしようもできなかったのですが、4年生や布台(駿、社3=東京・早実)とかいろんな人の意見を取り入れて、早稲田のディフェンスができてきました。明日はその集大成として、フロアディフェンスとネットディフェンス、そしてトータルディフェンスが機能できるように、最後の最後までやっていけたらなと思います。

――大塚選手がケガをしている時でも荒尾選手が声をかけている姿が印象的でした

 自分と泰杜(水町)だけが1年生から試合に出させてもらっていて、準決勝も3回目だったので、そこで2人が柱になって攻守で崩れなければチャンスはあるなと思っていました。大貴(山田大貴、スポ3=静岡・清水桜が丘)も秋までは試合に出ていましたが、準決勝は初めてだったし、上手くいかなかったこともあったと思います。僕も大貴も、泰杜も吏玖(伊藤吏玖、スポ3=東京・駿台学園)もあの状況でセットを取り切れなかったのは、反省すべき点だなと思います。ですがそういう状況も、4年生がくれた貴重な経験にはなったのかなと思います。

――3位決定戦に向けて気持ちも切り替えられないと思いますが、最後の試合に向けた思いを聞かせてください

 こういうインカレが初めてで…今はすごく動揺というかどうしようと思ってしまうのですが、このチームでの対大学の試合は明日で最後になってしまいます。1年間やってきたこと、4年生と築き上げてきたものをしっかり全部出して。(4年生に)1番良い景色を見せてあげることはできなかったのですが、勝って終われるように頑張りたいと思います。今日しっかり休んで、自分ができることを全部出して。明日こそ楽しんでバレーをして、笑って終わりたいと思います。