白熱の早慶戦 手に汗握る接戦を制し8連覇を遂げた!

男子バレーボール

 早稲田アリーナに『紺碧の空』が響き渡った。3年ぶりの有観客開催となった早慶戦、会場は熱気に包まれ、多くの観客で埋め尽くされた。試合は、お互いに点を取っては取り返し、フルセットにもつれこむ接戦に。最後までどちらが勝つかわからない展開となるが、正念場で早大が2連続シャットアウト。これが命運を分け、セットカウント3ー2(23-25、29ー27、21-25、25-15、15-12)。約2時間半に及ぶ激闘を制し、早慶戦8連覇を果たした。

 

 第1セットは岩本大吾主将(スポ4=兵庫・市尼崎)、伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)の両ミドルを軸としてクイック攻撃で得点を重ねる。そして中盤まで17-15と早大がリードを守った。だがここで早大がダブルコンタクトを2連続で取られてしまい、流れは慶大に。さらにシャットアウトや慶大のエース松本喜輝にサービスエースなどを決められ、5連続失点。逆転を許し、そのまま第1セットを奪われた。第2セットは、セッター馬渕純(スポ2=岐阜商)に代わり、セッター前田凌吾(スポ1=大阪・清風)が投入された。序盤、重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)と中島明良(法4=京都・洛南)の4年生が活躍を見せる。第1セットの勢いそのままに慶大がリードしていたが、リベロ荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)の安定したレセプションから重藤、中島が得点を量産。中盤に追いつき、ここから一進一退の攻防に。点数は25点を超え、デュースに突入した。この苦しい時間を耐えきり、セットを手にしたのは早大であった。重藤のプッシュや山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)のスパイクで得点を挙げ、第2セットを奪い試合を振り出しに戻した。

 

抜群の安定感を見せた重藤

 

 第3セットでもサイドアウトの取り合いとなった。だが勢い付く慶大に対し、早大はサーブレシーブからの展開を制することができない。「サーブからの展開でのディフェンスがまだまだだと思う」(重藤)。ブレイクポイントを挙げることができず、慶大に逃げ切られてしまった。第4セットは、開始から5連続ポイントと、早大が主導権を握った。伊藤のクイックが立て続けに決まり、センターラインでの攻撃を中心として早大らしいバレーを展開する。また第3セット以降調子を上げた山田が、パイプ攻撃からバックアタックを何本も決めるなど、前田の巧みなトス回しで相手ブロックを翻弄(ほんろう)した。終盤には、大幅なメンバーチェンジを行い、赤坂侑哉(教1=東京・早実)や丹生大地(教1=東京・早実)が初出場を飾った。このセットを25ー15と大差をつけて奪い、最終第5セットへ。

 

バックアタックを打つ山田

 

 第5セットは、岩本主将に代わり秋間直人(スポ3=愛知・桜台)がスタートからコートインする。伊藤のクイック、中島のスパイク、重藤のプッシュ、前田のブロック、山田のバックアタックと多彩な攻撃をみせ得点を重ねるが、慶大もエース松本を中心にスパイクを決め、点差は9-10と開かず。だがここで山田が3連続でスパイクを打ちきる活躍をみせ、12-11と逆転に成功する。あと3点。ここで苦しめられてきた慶大のサイドからのスパイクを2連続でシャットアウト。会場も大きく盛り上がりをみせ、14-11と早大がマッチポイントを握った。慶大の得点を1点はさみ、最後は相手のライン際へのサーブがアウトに。フルセットに及んだ大熱戦を戦い抜き、見事伝統の一戦を制した。会場には『紺碧の空』が鳴り響き、全員で円陣を組んで勝利の喜びをあらわにした。

 

試合後『紺碧の空』とともに円陣を組む選手たち

 

 大塚達宣副将(スポ4=京都・洛南)、水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)の両エースを欠き、早慶戦に臨んだ早大であったが、序盤に苦しめられた相手のスパイクに対して、試合の中で修正し、重要な場面でブロックを決めることができた。また、会場の応援を力に変え、相手のペースに完全に飲まれることがなかったことも勝因として挙げられる。だが一方で、「個人の力を伸ばすこととそれを応用する組織力」(伊藤)などの課題もまだまだ散見される。秋に向け、技術とチーム力を磨く夏。約1カ月後開幕する秋季関東大学リーグ戦で、更なる成長を遂げた早大の姿から目が離せない。

 

(記事 山田彩愛、写真 谷地星、山田彩愛、山田真由)

 

 

セットカウント
早大 23-25
29-27
21-25
25-15
15ー12
慶大
スタメン
アウトサイドヒッター 重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)
アウトサイドヒッター 山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)
ミドルブロッカー 岩本大吾主将(スポ4=兵庫・市尼崎)
ミドルブロッカー 伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)
オポジット 中島明良(法4=京都・洛南)
セッター 馬渕純(スポ2=岐阜商)
リベロ 荒尾怜音(スポ3=熊本・鎮西)
途中出場
布台駿(社3=東京・早実)
秋間直人(スポ4=愛知・桜台)
前田凌吾(スポ1=大阪・清風)
板垣慧(政経1=京都・洛南)
浅野翼(スポ2=宮城・東北)
赤坂侑哉(教1=東京・早実)
丹生大地(教1=東京・早実)
 
コメント

重藤トビアス赳(スポ4=神奈川・荏田)

――有観客での早慶戦でプレーしてみていかがでしたか

 1年生のころこのようなかたちで(早慶戦が)できて、2、3年生と観客のいない早慶戦でした。早慶戦だけど練習試合のような感じでしたが、最後の年に早慶戦らしい雰囲気のなかでプレーできてうれしかったし、楽しかったです! 

――今日の試合について振り返って

 早大側のメンバーがいないので、イレギュラーなことも多く試合前から苦戦するだろうなとは思っていました。勝つことができたのでそこは良かったのかなと思います。自分たちがまだまだできていないことが多いので、そこは修正していかなければいけないなと思いますね。

――自分たちのできていないところとは

 (早大が)サーブからの展開でディフェンスがまだまだだなと思います。特にブロックとディグの関係ですね。

――慶大が序盤乗っていたのに対して、それでも勝ち切ることができた要因は

 (早大が)セットを重ねるごとに、ブロックについて入念に確認できたことです。試合の中で相手セッターの動きをつかんで、対応できたことが勝利につながったのかなと思います。あとは慶大の雰囲気になったとしても、(早大が)1点取ることができれば(会場が)盛り上がってくれたので、雰囲気に飲まれるって感じはあまりしなかったですね。

――秋に向けて夏の期間に力をいれていきたいところは

 これまでサーブレシーブからの攻撃を特に重視していたので、そこに安定感は出てきたのですが、もうひとつレベルを上げることです。あとは(早大)サーブからの攻撃、早大がディフェンスからの展開のときのブロックとディフェンス、そこからの攻撃についてみんなの中で共通認識ができるように、ここから頑張っていきたいと思います。

 

中島明良(法4=京都・洛南)

――最後の早慶戦でしたが、今日の試合を振り返ってみていかがですか

 課題がたくさん見つかったので、良い試合だったと思います。

――有観客試合はいかがでしたか

 有観客でしか出ない雰囲気があるので、チーム全員がそれを経験できたのは非常に良かったと思います。

――試合中にスタッフの方とよく話されていましたが、何か意識していたポイントはありましたか

 チームの中で、チームをまとめて指示を出す人が必要であると感じたので、積極的にスタッフとコミュニケーションを取って、チーム全体にその動きを伝達できるようにしていました。

――具体的には

 結局最後まで対応できませんでしたが、ライン際に来る相手のサイドスパイカーの攻撃にディグ陣が対応できていなかったのでそれについて話していました。最後まで対応できなかったのは早大のミスです。

――秋に向けて夏に頑張りたいことはありますか

 チームとして細かい点、基本的なパスや2本目の精度など、3本目に良いかたちでつなげる部分というのをレベルアップしていければ良いと思います。

 

伊藤吏玖(スポ3=東京・駿台学園)

――有観客での早慶戦でプレーしてみていかがでしたか

 リーグ戦や東日本インカレ(東日本選手権)で有観客の試合もありましたが、やはり早慶戦だと同じ有観客でも雰囲気が全く違いますし、僕としても緊張したところはありました。ですが、とても楽しめました。

――第4セット、クイックをたくさん決めて大活躍でしたね

 後ろから怜音(荒尾怜音、スポ3=熊本・鎮西)がセッターに指示をしてくれたので、そこでセッターの凌吾(前田凌吾、スポ1=大阪・清風)が上手くクイックを使ってくれました。僕も決めることができたので良かったかなと思います。

――早慶戦前の対談で、前田選手がミドルをキーマンに挙げられていたのですが、ご自身のプレー振り返っていかがですか

 僕としては、最後の方に要所でミスを出してしまったので。クイックに関しては、決まっていたかなという部分もあるのですが、ブロックに関しては相手の攻撃に対してあまりタッチやシャットアウトが出せなかったので、そこが反省点かなと思いますね。

――ブロックが特に反省点ということでしょうか

 ブロックと、あとはパスが乱れたときのクイックとかですね。そこでのタイミングであったり、スペースであったりが課題です。5セット目のはじめのミスやクイックでタッチを取られてしまったことなど、細かいミスが要所で出てしまったこともですね。

――秋に向けて、夏の期間に力を入れていきたいところは

 秋リーグ(秋季関東大学リーグ戦)が始まるとすぐに全日本インカレ(全日本大学選手権)が始まってしまうので。春、チームで出た課題がブロックディフェンスを含めた組織力です。その中でもまず個人の力を高めることを意識していたのですが、やはりまだまだ個人の至らないところが多いのかなって印象を、この試合を通して抱いたので…。個人の力を伸ばすこととそれを応用する組織力が早大の課題なので、個人の力をかけあわせて相乗効果のような力を出せればいいなと思います。

 

山田大貴(スポ3=静岡・清水桜ヶ丘)

――有観客での早慶戦はいかがでしたか

 少し緊張してしまいました。でもすごく楽しかったです! 一点一点を決めるたびに、観客が沸く会場でプレーをして、高校生のころを思い出しました。やはり観客がいることってありがたいなと思いました。

――スパイクをたくさん決められていましたね、エース2人がいない中でトスが集まってくることもあったと思いますが、意識したことはありますか

 自分にトスが集まると思っていたので、決め切らないというプレッシャーから、ミスがあったり、乗り切れてない部分があり、空回りしちゃったのかなという部分が1、2セット目にはありました。後半に入って、みんなが託してくれた思いが伝わってのびのびとやろうという気持ちで良いプレーが出来ました。

――秋にむけて夏に頑張っていきたいことは

 たくさんありますね。僕はサイドなのでまずはレシーブです。今日はメンバーにとても助けられました。メンバーに助けられたということは、誰かの負担を増やしてしまっていることになるので、守備でもチームに貢献したいという気持ちです。