日体大に敗れ秋季リーグ戦2位に 4年ぶりに優勝逃す

男子バレーボール

 頂点まであと1つーー。秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ戦)優勝を懸けたこの試合、予選Bグループから全勝し勢いに乗る日体大を相手に迎えた。試合開始からサイドアウトを取り合い両者一歩も引かない展開となったが、早大のミスによる連続失点を機に主導権を握られ1セット目を落とす。2セット目で切り替えたいところだったが、相手の好守備から繰り広げられる多彩な攻撃に圧倒された。後がない3セット目、これまで反応しきれなかった攻撃にブロックで対応できるようになり、フロアディフェンスが機能。サイドを中心に得点を重ね3点差でセットポイントを握ったが、攻撃の的を絞られなかなか決め切れず。最後はスパイクをシャットアウトされ、セットカウント0-3(21-25、15-25、25-27)で敗北を喫し、秋季リーグ戦2位となった。

 1セット目の序盤から両者粘りの守備が光り、一進一退の攻防を繰り広げた。岩本大吾(スポ3=兵庫・市立尼崎)や伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園)を中心に常に2枚以上のブロックが付いたことによりディグが安定。岩本、伊藤のセンター線や、エース・大塚達宣(スポ3=京都・洛南)、重藤トビアス赳(スポ3=神奈川・荏田)、水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西)に代わり起用された山田大貴(スポ2=静岡・清水桜が丘)らサイドからの攻撃で得点を重ねた。均衡を破りたかったものの、15-16からリズムが崩れ始める。スパイクミスにより連続失点。15-18でタイムアウトを要求したが、その後アウトオブポジション(※1)を取られ4点差にまで広げられた。流れを引き寄せることができず、21-25でこのセットを先取された。

 

守備で活躍したリベロの荒尾

 2セット目は序盤から4連続点されたが、相手のスパイクミスや大塚のブロックポイントなどで5-5に追いつく。だがタイムアウト明けに流れが渡ってしまった。センター線やサイドなどで攻撃を試みるものの、相手のブロックやディグに阻まれなかなか決め切れず。5点差をつけられ11-6とした。ブレイクしたい早大だったが、「トランジション(※2)の場面でセッターが慌ててしまったりミドルがいいタイミングで入れなかったりして、相手に攻撃の種類がばれやすい、守りやすいバレーをしてしまった」(岩本)。常にブロックが付き、ワンタッチを取られ気持ちよく決め切れず。安定した守備からクイックやサイドからのスパイクを打ちこまれ、徐々に点差を広げられた。日体大の覇気に圧倒され、15-25でこのセットも落とした。

 

スパイクを決めるエース・大塚

 後がない3セット目、サイドアウトを取り合う展開となった。安定したレセプションやブロックのワンタッチから攻撃に持ち込み、確実に1点を取りに行く。このままでは終われない早大は粘りのプレーが光る。1-3でリベロの荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西)が強烈なスパイクを拾うと、再びダイレクトを拾いスーパーレシーブを見せた。攻め急いだ相手はスパイクをアウトに。荒尾のファインプレーで1点を掴んだ。均衡を破ったのは大塚のスパイク。初めて2点差をつけ、岩本のブロックや山田のバックアタックで18-14とし、じわじわとリードを広げる。その後も猛追されることなく、24-21まで来た。だが、あと1点が遠かった。気迫のこもった攻撃で3連続得点され、24-24に。ここからエース・大塚にトスが集められるが、厳しくマークされ決め切ることができず。25-25では3枚ブロックを決めたと思われたが、タッチネットの判定が下され相手の得点に。最後は大塚のスパイクがシャットアウトされ、27-25で敗北を喫した。

 攻撃の要である水町の不在で万全な体勢で臨むことができず、4年ぶりにリーグ戦優勝を逃した。秋季リーグ戦を通して出た課題は「セッターとスパイカーのコンビ」(松井監督)。息が合わず打ち損じたり、スパイクを決め切れなかったりする場面が多く見られた。さらにコートキャプテンの岩本は「どのチームがどう見ても最後は達宣(大塚)が打ってくるというのが分かるのが、今の早稲田のバレー」と振り返る。劣勢に立たされたとき、ブレイクしたいとき、エースである大塚の打数が増えた。厳しいマークが付きスパイクを決められず、最後に勝ち切ることができなかった。敗北し天を仰ぐ選手たち。呆然と立ち尽くすベンチ。優勝を目指してきただけに、ショックを隠し切れない様子だった。この悔しさをバネに、全日本大学選手権(全日本インカレ)では『誰が出ても強い早稲田』へ。最高のフィナーレを飾るべく、今ここから走り出す。

(記事 西山綾乃 写真 五十嵐香音)

 
(※1)アウトオブポジション…サーブを受ける際に選手間のポジショニングやローテーションが違うことに対する反則
(※2)トランジション…ラリー中にボールを扱うチームが切り替わる場面のこと
 

セットカウント
早大 21-25
15-25
25-27
日体大
スタメン
アウトサイドヒッター 大塚達宣(スポ3=京都・洛南)
アウトサイドヒッター 山田大貴(スポ2=静岡・清水桜が丘)
ミドルブロッカー 岩本大吾(スポ3=兵庫・市立尼崎)
ミドルブロッカー 伊藤吏玖(スポ2=東京・駿台学園)
オポジット 重藤トビアス赳(スポ3=神奈川・荏田)
セッター 佐藤玲(社3=東京・早実)
リベロ 荒尾怜音(スポ2=熊本・鎮西)

<最終結果>

2位

<個人賞>

敢闘選手賞 岩本大吾(スポ3=兵庫・市立尼崎) 

レシーブ賞  水町泰杜(スポ1=熊本・鎮西) 

ベストスコアラー賞Aグループ  大塚達宣(スポ3=京都・洛南)

サーブレシーブ賞Aグループ  水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西)  

新人賞Aグループ  水町泰杜(スポ2=熊本・鎮西)

コメント

松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)

――今日の試合を振り返っていかがですか

チームとして自分たちの万全な体勢で臨めなかったのですが、自分たちのすべきことをできてきたのかなと思う反面、セッターとスパイカーの息が合っていませんでしたね。技術ではなく、臨む姿勢が弱かったのかなと思います。

――セッターとスパイカーの息が合ってないとのお話でしたが、特に試合ではミドルブロッカーを使いきれていないという印象を持ちました

僕もセッターだったので、ミドルを使うのはとても勇気がいるんですよね。当然ブロックをされたり、(ブロックの)構えを見るだけで止められてしまうのではないかといろいろ考えてしまいますが、その中で出し切れていないので改善してもらう必要があるなと思います。

――劣勢の場面で声が出ず、そのまま相手の勢いに飲まれてしまうことが多かったと感じましたが、ベンチからご覧になっていかがでしたか

中心となって引っ張る学年がいないんですよね。3年生が引っ張るには荷が重すぎるし。そういう意味で、天皇杯予選のときもそうでしたが、最後に勝ちきれないゲームがいくつも出てくるんですよね。今回の3セット目は2点差リードして追いつかれましたからね。24-23のときにタイムを取ろうとしていましたが、全日本インカレを考えて自分たちで解決してほしいと思って結局タイムを取りませんでした。解決はできませんでしたね。そのときの対策は弱いですよね。達宣(大塚)しか決まらないから。

――大塚選手に頼っている場面がけっこうありましたね

水町(泰杜)が戻ってきたら、また今日とは違ったゲームを作れると思います。彼はゲームを作れる選手なので。

――水町選手の不在はやはりチームにとって痛手でしたか

水町と大塚をセットで軸にしていましたので。そんなに簡単に日体大には勝てませんから。

――今日は守備が、特にディグが良かったように思います

ブロックとディグの位置取りを考えてプレーしていたのでそれは良かったのですが、拾っても決まらないパターンでした。そこが浮き彫りになったので、セッターとスパイカーの課題ですね。日体大はそれがうまかったです。

――秋季リーグ戦で出た課題を全日本インカレに向けてどのように改善していきたいですか

基礎基本をもう一度やることですかね。当たり前にすべきことを日体大はできていました。早稲田はクイックを打たれたときにコースに入れていなかったので、スパイカーやボールを見ることをサボっているのかなと。もう一度基礎を見つめ直して、最後は両エースで打ち勝てるように頑張っていきたいと思います。

岩本大吾(スポ3=兵庫・市立尼崎)

――今日の試合を振り返っていかがですか

昨日の試合から水町がいない中で、日体大に対してどこまでできるかという試合でした。最後に勝ち切れない、逆転されて負けるようなバレーでした。達宣しかいないバレーをしているので、それはチーム全体で考えていくべきところだと思っています。

――今日の試合では力を出し切れたと思いますか

出し切れていないわけではないですが、チームとしてやるべきことができていないことが多かったです。この試合が幸い最後ではないので、残りの1か月で詰めるところは詰めて全日本インカレに臨みたいです。

――セッターとスパイカーの息が合わず、特に試合ではミドルブロッカーを使いきれていないという印象を持ちました

それはその通りだと思います。僕や吏玖(伊藤)にボールを集めて、最後はサイドが生きるバレーをしようという話をしていましたが、序盤、中盤あたりに使えない。相手がプレッシャーを与えてきている中で(自分たちのコンセプトを)通すことができないのは、僕たちの足りないところだと思っています。個人的にも、相手が対策してきていることもあって攻撃に関してはいいイメージがなくて課題として修正していかないといけないと思っています。これからミドルが決めきれる力をつけたいと思います。

――「攻撃ではいいイメージがない」とのことですが、守備はとても良かったように感じました

もちろん日体はレシーブがいいチームなので、そういう相手にひるまないというのはそれぞれが思っていたことだと思いますが。途中で相手のBクイックにやられすぎてどの攻撃にも対応できないという時間がありましたが、3セット目以降は修正できました。ブロックがちゃんと付くことができたから、後ろのディグが入れたのかなと思います。ミーティングをしているので、『3セット目にやっと』ではなく、1セット目の序盤から対応できたら後ろももっと拾いやすくなって、こっちのやりたいバレーが展開できたかなと思います。個の力を大きくすることで相手に対応することができるので、鍛え直していきたいと思います。

――ブロックがそろっていたので、ワンタッチを取って攻撃につなげるチャンスはありましたが、決め切れないことが多くありましたね

相手のサーブからの攻撃に関しては、相手に邪魔されないという部分で春から力をつけていました。ですがゲームの経験が薄い分、トランジションの場面でセッターが慌ててしまったりとかミドルがいいタイミングで入れなかったりとか、相手からして攻撃の種類がばれやすいというか、守りやすいバレーをしてしまいました。

――劣勢の場面でチーム全体として声が出ず、そのまま相手の勢いに飲まれてしまうことがいくつかありました

コートの中でも声が出ていないことはずっと課題になっていました。他のチームを見てみると、早稲田に向かってくるとか相手に向かっていく雰囲気がチーム全体で出ているかなと思います。そこはチーム一丸となってコート内外関係なく、練習のときから声を出したり雰囲気を作ったりしたいなと思います。

――その課題はいつから出ていましたか

去年は4年生が3人入っていて、今年になってメンバーが大きく変わりました。去年と同じように声を出していても経験値がないため、コミュニケーションをもっと取らないと勝てるチームにならないと松井先生(泰二監督)からも言われていました。ちゃんと声を出そうという話になったのは、夏からですね。連携のミスが多かった時期に「それは声が出ていないから」という話になりました。チームスポーツなのでコートにいる6人でボールを落とさないために、やはり声を出すことは大事だと思います。

――どうして声が出なくなるのでしょうか

そもそもどんな声を出したらいいか分からないというのもあると思います。僕が分かったことに関しては声を出して共有しようと思っているのですが、プレーに集中すると声が出なかったりとか、違うところに力が入ったりしてしまうので、後衛のローテでベンチにいるときは声を出そうとはしていますが、プレー中に出せていないので、これから改善したいと思います。

――岩本選手はコートキャプテンなので、やはり声で引っ張っていきたいという意識があるんですね

今まではプレーで引っ張っていくキャプテンが多かった中で、コートキャプテンになって初めての大会を終えたのですが、最後は勝ち切れませんでしたし、引っ張る立場としてもっとできることはあったのかなと反省しています。逆に背負う立場になって今までのようなプレーができないこともあったので立場の難しさを感じることはあったのですが、それを言い訳にしていてはチームにマイナスになると思うので、自分のメンタルの軸をぶらさないというのはベースに置いてプレーしようと心がけています。

――3セット目は早大がセットポイントを握っていましたが、3連続得点され逆転されました

試合が終わってすぐなので客観的に映像を見られていないのですが、どこのチームがどう見ても最後は達宣が打ってくるというのが分かるのが、今の早稲田のバレーだと思います。そこで1本自分にトスが上がりましたが、そこでハードヒットできず決め切れませんでした。相手の切り返しになって、結局ネットタッチを取られて相手にセットポイントを握られました。いいプレーは出ていたのにアウトオブポジションなどのもったいないミスで失点したので、そういうところは詰めていかないといけないと思っています。終盤はチーム全体で勝負所をどうしていくべきか分かっていますが、20点以降でも勝負するべきところは見極めないといけませんし、それができないとこれから先はないのかなと思います。これからは頭を使ってプレーできるようなチームを作っていきたいなと思います。

――秋季リーグ戦で出た課題を全日本インカレに向けてどのように改善していきたいですか

今まで誰が出ても強いチームというのをベースに置いてそれぞれが練習してきましたが、泰杜じゃなく大貴(山田)が入ったときに、チームのカラーが変わるというか。悪いことではないですが、少しチームとして揺らいでしまうことがあるので、もう一度チームとしてリザーブのメンバーもスタメンを取る気持ちで来てもらいたいですし、僕たちも課題はたくさんあるので客観的に試合を見直して、この悔しさを忘れず全日本インカレまでの1か月間頑張りたいと思います。