【特集】副務対談 佐藤玲

男子バレーボール

 主務、アナリスト、トレーナーなど、早大には多くのスタッフがいる。副務の佐藤玲(社3=東京・早実)もその一人。だが、スタッフの業務をこなす傍ら、正セッターとしてコートでも活躍している。今回は、選手とスタッフの二足の草鞋を履く佐藤に迫る。

※この取材は8月28日に行われたものです。

いつも生活の一部にバレーがある

インタビューに答える佐藤

――佐藤選手はいつからバレーをされていますか

幼稚園の年長、4歳か5歳くらいから始めました。

――バレーを始めたきっかけは何ですか

自分の父が教員をしていて、バレーボール部の顧問だったので、小さいときからバレーボールと触れ合う機会が多くて。何かスポーツやろうかなと考えたときに、自然とバレーボールやろうかなと思い、近くのクラブチームを探して始めました。

――現在はセッターをされていますが、最初からずっとセッターをされていたのですか

途中からセッターになりました。どちらかというとレシーブメインでやっていました。小学校まではあまりポジションというのがなかったので、レシーバーというかたちですね。

――自ら希望してポジションを変えたのですか

いや、そういうわけではなくて。中学校に入学したときに、新入生全員が監督から「ちょっとオーバーやってみて」みたいなことを言われて。みんなでオーバーをしていたら、急に監督から「お前明日からセッターね」って言われたんです。自分はリベロになるんだろうなと勝手に思って中学に入学したのに、入学初日で監督から「明日からセッターね」と言われて、えっ…みたいな感じでした(笑)。

――セッターの面白いところはどこですか

相手のブロッカーと駆け引きするところですかね。多分、バレーボールをしているうえで一番相手と戦っていると感じられるのかなと個人的に思います。そこはプレーしていてやりがいを感じます。

――次に早大バレー部での活動について伺います。夏休みの間はどのような練習をされていましたか

このようなコロナの状況の中で、他校との練習試合が例年に比べてやっぱり少ない状態で。本来であれば企業合宿といって、8月の中旬から終わりにかけて企業様の方を転々として練習試合をさせて頂くというものが毎年恒例であるのですが、それも中止になってしまいました。本当に自分たちでの練習しかできない状態で練習時間が増えて、体力的にはきついですが、それ以上に実戦形式での練習が少なくなってしまっているので、そこはちょっと不安を感じますね。

――夏休みはプライベートの時間をどのように過ごされていましたか

本当にびっくりされるくらいインドアで。趣味も全くなくて、すごくつまらない人間なんで(笑)。今はこういう状況だから「おうちにいましょう」ということで良いのかもしれないですけど、こういう状況でなくても積極的に外出て「よっしゃ、みんな遊ぼうぜ!」という感じではなくて。みんながそういうような流れになっても、先に家に帰ってゴロゴロしています(笑)。

――チームでの自分の立ち位置やキャラクターはどのような感じですか

圧倒的にいじられキャラではあると思うんで(笑)。間違いなく。率先して誰かをいじって笑いを取るというタイプではないので、多分いじられキャラかなと思います。

――早実出身で大学に入っても部活としてバレーボールを続ける人は少ないですが、どうして早大のバレーボール部に入部されたのですか

周りの人と比べると「そんな程度?」って思われちゃうかもしれないんですけれど。今まで本当にずっと、幼稚園の頃からバレーボールを続けてきて、生活の一部にバレーボールがあるというのが当たり前の環境で育ってきたからです。「大学で絶対日本一になってやる」とか「レギュラー取ってやる」とか、何か明確な意志があったわけではなくて。今までバレーボールを続けてきたからこの先も続けるんだろうなという感じで続けました。

――早実でのバレーと早大でのバレーで違う点があれば教えてください

早実のときは、部員が本当にとても少なくて。1学年3人くらい、多くて5人くらいの環境だったので、3学年合わせても10人くらいでした。しかも、どちらかというと早実は勉強の方も重視していて、スポーツで成績を残しているだけでは駄目でした。だから、各校のエースや中心選手という感じではない選手が多く入ってきます。試合や練習で勝てない時期が多く続いていたんですけど、そういう限られた環境とメンバーの中でどのように練習して勝っていくかを毎日考え続けていたので、そういう環境は今考えると本当に良い環境だったのかなと思っています。大学はそれとは一転、他の大学と比べると(部員が)少ないですが、高校のときよりは部員が多くいて、さらに各高校のスーパースターがそろっていました。すごくお客様視点になっちゃうんですけど、単純にいちバレーボール選手としてすごいなと思っています。そういう環境でバレーをやって、新しい発見や「ここは通用するんだ」とかいろいろな考え方ができて、また高校とは違った環境にいますが、すごく良い環境だなと思っています。

――早大には世代トップクラスの選手が集まっていてとてもレベルが上がったと思いますが、今までと違った環境で練習してみて最初の頃はどうでしたか

こんなことはあまり言っちゃいけないかもしれないですけど、お客様状態で「こいつらすごいなあ、先輩すごいなあ」という感覚で。入学当初はそういう環境でも頑張ってみようという意識がありましたが、やっぱりやっていくうちに、みんなは190cm、小さくても183~5cmくらいの中で、自分は170cmちょっと。普通に考えて太刀打ちできないし通用しないなと感じ始めました。1年生のときは本当に(雑務などの)仕事ばかりして、バレーをやろうという意識ではなかったかなという感じでしたね。

――その意識が変わったきっかけや時期はありますか

2年生になって学年が上がると必然的に1年生のときよりも仕事の量が減り、その分バレーに取り組む時間が増えたので、そのときにもう1回頑張ってみようかなという気持ちになりましたが、コロナがちょうど来てしまって。自分は実家暮らしなので、体育館に向かうにも公共交通機関を使わないといけないし、いろいろとそういうところで(他の部員よりは)不利な状況で。バレー頑張ろうという気持ちはあったんですけど、やっぱりモチベーションを上げるのは難しかったです。それでも頑張ってはいましたが、試合数が少なくて、出られるメンバーは限られるという中で、2年生も結局一度もユニホームを着ることなく終わってしまいました。気持ち的には、2年生の頃から頑張ろうという気持ちはありました。

――そのような状況でもバレーボールを頑張ろうと思えた原動力は何ですか

一つはさっきも言いましたが、自分の生活の中にバレーボールがあるというのが当たり前だったので、辞めたくなる時期も正直ありましたけど、それでも続けてみようというのはありました。あとは、今まで関わってくれた先生たちに申し訳ないなと思って。本当に自分は良い監督や良い先生たちに今まで巡りあってきました。みんな先生としても尊敬できるし、人としても尊敬できる人だったので、途中で自分が「試合出られないから」「辛いから」となって投げやりで辞めてしまったら、今までそういう先生たちが教えてきてくれたことが全部無駄になってしまうと思ったので。そこはつらくても人生の頑張りどころというか、ここが踏ん張りどころだと自分にずっと言い聞かせて(バレーを)続けてきました。

――佐藤選手は春季関東大学オープン戦から正セッターとして出場されていますが、ご自身のプレーをどう評価していますか

正直、全然駄目だなと自分の中では感じています。春のオープン戦は全然及第点にも乗らないくらいですね。松井監督(泰二、平3人卒=千葉・八千代)からは、勝敗は二の次に考えて、まずは自分たちのやるべきことをやるようにと言われていますが、(僕は)自分のすべきことができていない状態で。そうなると必然的に負けが付いてきて。例年と比べるのは良くないと思いますが、今までの早稲田と比べたら自分が原因で負けが続いているというのは自覚しています。そこは今後のリーグ戦を含め、全日本インカレ(全日本大学選手権)で優勝するためには、自分がもっと変わらないといけないと思っています。

――春は落ち込むことが多かったと聞いています

本当に落ち込みましたね(笑)。やっぱり試合に負けるのはもちろんスポーツ選手なので落ち込みますが、自分はそれ以上にスパイカーに気持ちよく打たせることができなかった方にストレスを感じていました。自分は、バレーボールにおいてスパイカーが主役だと思っているので、攻撃のつなぎ手としてそこまで持っていけない自分にいら立ちはありました。

――春は反省点が多かったと思いますが、試合のない夏の期間は個人的にどのようなところに力を入れて練習してきましたか

スパイカーが気持ちよく打てて点数が取れるトスを上げられるように、トスの質を意識していました。また、攻撃を速くすることも意識して練習してきました。春のオープン戦ではブロックにつかまってしまう場面が結構ありました。スパイカーの方にも問題点はあったのかもしれませんが、基本はブロックにつかまったらセッターの責任だと考えています。優秀なスパイカーたちだから、ブロックがそろっていなければ点数を決められると思うので、少しトスを速くする練習をしています。しかし今は練習試合も全くない状況なので、実践する場がないのは自分にとっては少し痛いですね。何を指標にしたらいいのか、改善点は何なのかをつかみづらいのは不安です。(※8月28日時点)

――春季オープン戦からチームとして改善されたことはありますか

守備は良くなったかなと思います。データを見ていてブロックされて得点されることが多かったので、夏の期間はブロックとレシーブの関係を意識して練習に取り組んできました。チーム内での練習なのですが結果に表れているので、秋リーグ(秋季関東大学リーグ戦)で対戦してみてどこまで効果が出るのか楽しみですね。

副務もセッターも役割は『つなぐ』こと

――副務に就きましたが、その役職に就いた経緯を教えてください

2年生から仕事の引き継ぎを視野に入れておくように言われていたので、学年全体で話し合いをしました。スポーツ推薦組はバレーをやるために入学してきたので、彼らがスタッフの役職に就くという選択肢はありませんでした。毎年、一般入試組や指定校推薦組、自分のような内部の中で主務や副務を決めます。中島明良(法3=京都・洛南)と芳賀雄治(商3=山形南)が留学に行くという話が上がっていたので、二人が役職に就くのは現実的ではないなと。消去法で自分がやるしかないという感じでした。

――副務の仕事内容を教えてください

主務とチームの運営やOBとの連携を取ったりしています。また、会計もやっています。

――チームのマネジメントもするのですか

基本的にチームのマネジメントは主務がやります。4年生と監督が練習やチームの状況を話し合っていて、自分もそこにたまに加わるという感じです。

――仕事量はそれほど多くないのでしょうか

時期によりますね。早慶戦のような定期戦があると忙しいですし、会計だと月末は毎月忙しくなります。常に何かやることはある状態です。

――スタメンとして出場して、さらに副務の仕事もありますが、両立は大変ですか

たまにきついときがありますね。嫌だな~と思ったりしますね(笑)。練習で疲れて家に帰って早く寝たいなと思ったときに仕事があったりするとため息が出てしまいますね(笑)。定期試験のときは特にきついです。部活もやりながら試験勉強もして、仕事もあるみたいな。

――どのようなときにやりがいを感じますか

副務はチームに関わる仕事を請け負うので、円滑に進めば達成感を感じますね。早慶戦などの定期戦が無事終えられたときは、自分もちゃんと貢献できたんだと実感しました。

――秋季リーグ戦では正セッターとして、副務として、チームにどう貢献していきたいですか

プレーでも仕事でも自分の役割はつなげることだと思っています。プレー面で言えばレシーブされたボールをスパイカーにつなげるだったり、スパイカーに良い状態で打ってもらったり。『つなげる』はバレーボールの醍醐味であり、セッターはボールをつなぐ一番重要なポジションなので、セッターとしての自分の役割をちゃんと全うしたいです。仕事の面では主務の手の届かない範囲は自分が手伝えるようにしたり、4年生や監督の考えを他のチームメートに良いかたちで共有したりしたいです。自分はつなげるということに深くかかわりがあるなと感じているので、何においてもつなげることを意識して秋リーグに臨みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 西山綾乃、山田真由)

◆佐藤玲(さとう・れい)

2001(平13)年2月13日生まれ。175センチ。東京・早実出身。社会科学部3年。副務の業務をこなす傍ら、正セッターとして活躍している。プレーでも仕事でも『つなぐ』ことを大切にしているという佐藤選手。コートでもチーム運営でも大活躍しています!