【特別企画】大塚達宣 東京五輪後ロングインタビュー 

男子バレーボール

 昨年度から男子日本代表チームに選出されている大塚達宣(スポ3=京都・洛南)。今年はとうとう、夢見てきた東京五輪の切符をつかんだ。五輪の舞台で目にしたもの、大会を終え大塚が見据えるものとはーー。また、9月12日から開催される第21回アジア男子選手権大会についてのお話も伺った。

※この取材は8月14日に行われたものです。

ずっと自分の役割を考えて過ごしてきた

東京五輪の感想を話す大塚

――五輪の舞台はいかがでしたか

大会がこうやって開催されたこと自体がすごくありがたいことだと思いますし、たくさんの方々の支えのおかげで大会が成り立っているんだなと実感しました。試合を通してチームが一つになって戦っていると思いました。ベスト4に挑戦しようという目標の中でのベスト8だったので、届かなかったことは悔しいですが、すごくいいチームでバレーができたと思います。個人的には、小さい頃からずっと夢見てきたオリンピックの舞台に立つことができましたが、試合ではコートに立ってプレーする機会があまりありませんでした。なので次のパリオリンピックや前年に行われるオリンピック予選でチームの中心選手となって、またオリンピックの舞台に立てるように頑張ろうと思いました。

――「自分はコートに立つ機会があまりなかった」とおっしゃっていましたが、それをどのようにとらえていましたか

僕は出てないからといって焦ることはなかったというか。自分がいつどの場面で出ても良いように、試合の状況や流れを見て常に準備をしておこうという気持ちでいました。自分の売りはアウトサイドヒッターだけでなくオポジットもできるところだと思っていますし、いろんなパターンで途中出場する場面を考えながら常にコートの外で準備していたので、その出番はなかったですが、ないからといって休憩ではなくて、コートにいる選手たちがどのような動きをしているかを見たり、声かけできる部分もたくさんあったので、常に頭を使いながらコートの外から見たりしていました。

――コートに立つ機会があまりなかったことに対して悲観していたわけではなかったのですね

そうですね。この12人が発表されてから、FIVBネーションズリーグ(ネーションズリーグ)やそれまでの活動を通して自分の役割を考えてずっと過ごしていたので、試合に出られないことに対してそこまで悲観的になることはありませんでした。自分ができることをやるだけだと思っていました。コート内での準備や声かけは自分ができることの一つだったと思います。

――イタリア戦に出場されました。あまりいい雰囲気ではない場面での出場でしたがいかがですか

コートの外から見ていても調子の良いときと比べたら良くない雰囲気だと感じていたので、自分が良いプレーをしようというよりは、少しでもチームの雰囲気を変えられたらいいなと思ってコートに入りました。

――タイムアウトのとき、髙橋藍選手(日体大)によく声を掛けていました。どのようなことを話されていましたか

大したことではないのですが、彼も楽しんでバレーボールをしていたらのびのびプレーできる選手なので。予選突破が懸かった大きな試合になると多少なりとも緊張は出てくると思うので、少しでもコートの中でのびのびとプレーしてもらえるように、表情を見ながら元気づける声かけをしていました。年が近いので、バレーだけじゃなくていろいろ普段から話す機会も多くて。お互いよくわかっていると思います。

――五輪とネーションズリーグでは順位が違いましたが、やはり雰囲気やチームの完成度は違いましたか

ネーションズリーグは自分たちのメンバー選考がかかった試合だったので、個人のアピールをする場でもありました。それは各国変わらないと思います。いろんなメンバーで戦ってきたのがネーションズリーグで、オリンピックは一つになって戦っているチームが強かったと思います。オリンピックに出場していた全12チームがすごくレベルの高いバレーをしていて、ネーションズリーグやその他の国際大会と比べてレベルを上げていたと思います。

――五輪で感銘を受けた選手やチームはありましたか

海外の選手は本番にピークを合わせるのが上手だなと思いました。プレーだけでなく表情なども見ていて、戦う気持ちが前面に出ていてとても迫力がありましたし、この大会にかける思いの強さを感じました。オリンピックは1試合も落とせない試合だと思うので、どの試合もベストなパフォーマンスをすることが大事だと思いますし、予選リーグの5試合は負けられない戦いがあると思います。そこで力を発揮したチームが勝っていました。優勝したフランスは勝ち切れる力があって、チーム全員がピーキングをそこに合わせて持って行ったところがすごいなと思いました。そういうチームが勝っていくんだなと思いました。また次の目標に向かって頑張ろうと思いました。

――プレーに関してはいかがでしたか

オリンピックで勝つチームは質の高いプレーをしていて、自分たちが見習うべきだなと思いましたし、逆に世界で勝っていくためにはもっと日本のバレーの質を高めないといけないなと思いました。高さやパワーは海外のチームの方が勝っているので、一つ一つのプレーの質を高めることが必要だなと思いました。組織の動きは所属しているところによって違いますしそれぞれのシステムがあるので、それに則った動きができるというのと、個人のスキルを上げていきたいです。次のオリンピックまでに時間はありませんし、予選は2年後に迫っているので、1日1日を大切に頑張りたいと思いました。

――解散期間は早稲田に戻りますが、どのような練習をしていますか(※8月14日時点)

試合がなくて秋からリーグ(秋季関東大学リーグ戦)が始まって試合期に入るので、少しずつ複合練習の形式が増えています。試合形式の練習が増えていますし、みんな秋リーグに向けてモチベーションを上げていると思います。僕は9月にアジア選手権が控えているので、個人のスキルを上げることに力を入れています。

――9月からアジア選手権が始まりますが、大塚選手の中でこの大会はどのような位置づけですか

シーズンで言うと今シーズン最後の大会になりますが、自分たちの中では東京オリンピックが終わってからパリオリンピックへのカウントダウンは始まっているので、パリオリンピックまでの最初の国際大会という位置づけで見ています。この大会で個人としてもチームとしてもまた一つ強くなることができればいいなと思っています。

――もうパリオリンピックを見据えているのですね

チームはそういうふうにやっていくと思うので、そこに自分の気持ちを乗せてプレーできればいいなと思います。

――アジア選手権での目標は

来年の世界選手権にもつながる大会で。アジアで1位にならないとオリンピックの代表になることもできませんし、この大会で優勝することがとても大事になると思います。そこに向けてまた頑張っていこうと思います。

――五輪の話からは離れますが、西田有志選手(トンノカリッポ・カラブリア・ビーボヴァレンティア)や関田誠大選手(クプルム・ルビン)は海外リーグに挑戦します。いずれは海外に行きたいという思いはありますか

自分はバレーボールをやれるところまでやりたいという気持ちはあるので、海外に挑戦する機会があるのであれば挑戦したいです。海外の選手はプレーもそうですし、精神面でもプレーで自分を鼓舞して自分をアピールする力が強いと思うので、その場に身を置いて肌で感じるのが一番早いと思います。日本では海外よりも自分の考えを伝えられない雰囲気があるというか、大人数の方に流されるのは日本人の特徴かなと思います。自分でやらないといけない環境でプレーすることで、その壁を超えられると思っています。プレーだけではなく、そういうところも勉強になると思います。イタリアやポーランド、ロシア、ドイツなどリーグのレベルが高いので、そういったところでプレーできればレベルアップできるのではないかと思っています。

――高校時代の恩師の細田哲也監督からは、自分のプレーをもっとアピールするようにと言われていましたね

それは高校時代から言われていて、だから「キャプテンにしなかった」と言われたのですが(笑)。自分のスタイルは自分で決めるものだと思うので、自分の軸はぶらさずに。大学を卒業してもバレーボールを続けていくので、日本代表の活動でもそうですし、そこでいろんなものを吸収してすべて自分の力に変えていければいいなと思います。

――次はパリ五輪ですが、大塚選手が目指すところを教えてください

個人としては次のパリオリンピックやその次のロサンゼルスオリンピックが年齢的にもチームの中心としてやっていかないといけないと思います。ここからあと3年間は大事な時期だと思うので、大学での生活や次のステージでも1日1日を大切にしてバレーボールと向き合いたいと思います。次はオリンピックで世界に通用する選手になるのを目標に、また頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 西山綾乃)

◆大塚達宣(おおつか・たつのり)

2000(平12)年11月5日生まれ。194センチ。京都・洛南出身。スポーツ科学部3年。選手村のごはんは好みや宗教など、世界各国のアスリートに合わせて作られていたそう。どの食事もおいしかったそうです!