伝統ある早慶戦でストレート勝利 大学の公式戦では失セット0で現体制を終えた!

男子バレーボール

  新型コロナウイルスの影響により、毎年6月に行われていた早慶定期戦(早慶戦)は、半年遅れで開催された。今年で第84回目となる伝統の一戦。例年はフルセットにもつれ込み、両者意地のぶつかり合いを見せる。だが今回はセットカウント3-0(25-22、26-24、25-18)でストレート勝利。今年度の大学の公式戦では1セットも落とすことなく現体制を終えた。

 1、2セット目のスターティングメンバーは全員が3年生以下となった。例年の早慶戦では教育実習に行く4年生に代わり、3年生以下のメンバーが出場することになっており、さらに天皇杯全日本選手権ファイナルラウンド(天皇杯)を終えてから3年生主体での練習が始まったためだ。1セット目はセッターに仲濱陽介(スポ3=愛知・星城)、ミドルブロッカーに秋間直人(スポ2=愛知・桜台)、オポジットに中島明良(法2=京都・洛南)を据え、新たな顔ぶれで臨んだ。新しいメンバーでの練習が始まったばかりで、若干の不安定さが見える場面もあった。序盤は慶大の高さと速さを武器とする攻撃やブロックに苦戦し、なかなか点差を広げられない。それでもブロックで相手スパイクのコースを絞り、リベロの荒尾怜音(スポ1=熊本・鎮西)に拾わせたり、ブロックがしっかりつかれたときはリバウンド(※1)を取り攻撃をもう一度組み立てたりした。そうして地道に組織的なプレーを続けることで、徐々にリードを広げ19-15とする。その後は互いにサイドアウト(※2)を取り合い、25-22で先取した。

 

ミドルブロッカーでスタメン出場を果たした秋間

 2セット目は最後まで行方の読めない展開となった。序盤はサイドアウトの取り合いだったものの6-7の場面で慶大がブレイク(※3)し、そこからじわじわと突き放される。10―15まで広げられたとき、早大はこの試合初めてのタイムアウトを取る。それからはアウトサイドヒッターの大塚達宣(スポ2=京都・洛南)を中心に決め、17-18と1点差までに詰め寄る。だが追い越すことができないまま、23-24と相手のセットポイントに。ここでセッターの仲濱がボールを託したのは大塚。「上級生になってこのチームを引っ張らないといけないという気持ちがプレーに乗った」(大塚)というスパイクでデュースに持ち込んだ。その後は相手のスパイクミスで26-24と奪取した。

 3セット目はチームの大黒柱である4年生がスタートから入り、フルメンバーでの出場となった。クイックやパイプ(※4)、サイドやバックからのスパイクと、多彩な攻撃を展開し慶大ブロックを翻弄(ほんろう)。さらに宮浦健人主将(スポ4=熊本・鎮西)のコーナーへのノータッチエース(※5)で12-8とした。慶大は立て直しを図るべくタイムアウトを取るも、早大の勢いは止まらず。21-14の場面では副務としてチームを支えてきた杉原紘平(先理4=茨城・土浦日大)が途中出場。練習を含めて1年ぶりの試合出場となったため、チームは大いに湧いた。他にも吉田悠眞(スポ3=京都・洛南)、北川諒(教3=東京・早実)らが投入され、大幅なメンバーチェンジを行った。最後は相手のサーブミスでゲームセット。25-18でストレート勝利を収め、大きな歓喜の輪ができた。

 

この試合2本のサービスエースを決めた宮浦主将

  大学生相手の公式戦で1セットも落とすことなく、幕を閉じた現体制。その圧倒的な強さは、大会の中止が続き苦しんだ時期に育まれた。4年生はチームの前で弱音を一切吐くことなく引っ張り続け、試合がなくとも一番熱心に練習に取り組んできた。そんな強く頼もしい背中を見て鼓舞された下級生も、限られた環境の中でウェイトトレーニング等のできることを行った。その甲斐あって、全体的に選手たちのプレーや体つき、考え方に変化が出る。サーブやスパイク、ブロック等の攻守の強度はもちろんのこと、試合ができることを当たり前でないと知ったからこそ、体調管理を徹底し一戦を大切にするという意識もより増した。結果、大学での公式戦は無敗どころか失セット0という記録をたたき出した。それはただ『強いメンバーが揃っているから』ではなく、それぞれが地道に努力を積み重ねてきた結果だ。

  例年フルセットとなる早慶戦をストレート勝利で終えられたのは、個々の力が飛躍したからだろう。だが「ブロックやクイックのスピード、攻撃の展開についてはまだまだ伸ばす余地がある」と松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)は話す。この試合では新チームの課題も見つけられた。4年生3人が抜けメンバーががらりと変わる新しい早大は、どのようなバレーを見せてくれるのかーー。新たに金字塔を打ち立てるべく、次世代へとバトンはつながれた。

(記事・写真 西山綾乃)

(※1)リバウンド…あえて相手ブロックにスパイクを当て、もう一度攻撃を組み立てるときに使うプレー

(※2)サイドアウト…サーブ権を持っていない側が得点すること

(※3)ブレイク…連続得点をすること

(※4)パイプ…中央からの速いバックアタック

(※5)ノータッチエース…相手チームのプレーヤーに触れずにサービスエースを取ること

 

セットカウント
早大 25-22
26-24
25-18
慶大
スタメン
アウトサイドヒッター 大塚達宣(スポ2=京都・洛南)
アウトサイドヒッター 水町泰杜(スポ1=熊本・鎮西)
ミドルブロッカー 上條レイモンド(スポ3=千葉・習志野)
ミドルブロッカー 秋間直人(スポ2=愛知・桜台)
オポジット 中島明良(法2=京都・洛南)
セッター 仲濱陽介(スポ3=愛知・星城)
リベロ 荒尾怜音(スポ1=熊本・鎮西)
コメント

松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)

――今日の試合を振り返っていかがですか

例年だと早慶戦は4年生が教育実習をやっているので、最初は3年生以下のメンバーで出ることが多いんですね。今回も天皇杯で一区切りついたので、その後新しい3年生を主体に練習していました。なので1、2セット目は新しいチームで行こうということで。それに向けて3年生以下が一生懸命やっていたので楽しみだったんですよね。まだまだやるべきことが多いなと思った半面、できるんじゃないかと本人たちも気づいたと思うんですね。3セット目は今までのチームで戦うということで、安定して力が出せたのではないかなと思います。トータル3セットやってみて、新旧ともに目指すところが見えた1日になったなと思います。

――1、2セット目は新チームが出場されていましたが、良かった面と直した方がいい面を教えてください

新チームに関しては、ミドルブロッカーはもっと速く動けると思うので、そこの動きや考え方を鍛えていかなければならないなと思いました。本人たちは一生懸命やっているのだけれども。トスが上がってきても(囮で)打たないことが多いので、早く攻撃に入ってブロックを寄せておくという仕事があるので。それを理解しないといけないかなと思いますね。ブロックは良かったんじゃないかなと思います。

――慶大の特徴について教えてください

オポジットの2番の松本(喜輝、環境情報1=福岡・九州産業)選手が一番打数が多くて、その部分で決められるのかなと思ったんですけど、打ちやすそうなトスが上がっていなかったので、警戒していたよりも大丈夫でした。

――慶大は身長が高いチームなので苦戦した部分もあったと思います

そうですね。大きいチームは横に移動するのが得意じゃないということもあるので、そこが大事になってきますよね。ブロッカー3人のうちの真ん中のミドルが止まっていれば移動ができなくなるわけですね。先ほども話しましたが、遅いから攻撃に反応されてブロックがつかれてしまうわけですね。高いチームになればなるほど、村山豪(スポ4=東京・駿台学園)みたいにブロックに入っていかないと、サイドも2枚ついて展開がきつくなるわけですね。大塚達宣(スポ2=京都・洛南)なんかも2枚つかれて。ブロックが高いものだから、うまく打っていましたけど。やっぱりミドルが少し遅かったから、ブロックがだいぶんサイドにつかれてしまいましたね。

――3年生以下の選手たちに期待したいことはありますか

新しいチームになって、キャプテンの吉田悠眞(スポ3=京都・洛南)も途中から出てきていましたけど、スタートで頑張ってもらいたいと思うし。あとはセッターの仲濱陽介(スポ3=愛知・星城)ですね。どこにトスを上げるかというのをもう少し理解しないといけないところがあるので、実戦形式を多くしながらどこに上げるべきなのかというのを練習を通して分かってもらえればいいかなと思います。

――4年生の皆さんにメッセージをお願いします

終わってしまうのがとても寂しいですね。でも4年生は1年生の頃から全日本インカレで優勝という、早稲田に新しい歴史を作ってくれて、そして連覇とか毎年重圧がかかっている中で、負けずに自分たちらしさを4年間出し続けてくれて、本当にありがとうと言いたいです。

宮浦健人(スポ4=熊本・鎮西)

――今日で現役最後の試合となりましたが、終わった実感はありますか

ないですね。まだ練習があるような気がしてます。全然実感が湧かないです。

――今日の1、2セット目は3年生以下が出場していました

天皇杯が終わってから3年生主体でチーム作りをやっていて、そこでみんなで話し合いました。1、2セット目は来年のチームで、3セット目は自分たちが出るというのを3年生が決めていました。

――天皇杯が終わってから少しずつ代替わりしていったのですか

そうですね。毎年天皇杯までが4年生が主体のチームで。例年だと早慶戦が6月に行われて、その時期は4年生が教育実習でいなくて3年生が主体でやっているということもあって、早慶戦は3年生主体で行こうという話になりました。

――今回の早慶戦を振り返っていかがですか

去年の早慶戦は苦しい試合もあって、早慶戦は少し違う雰囲気がある中で今日しっかり勝ち切れたのは良かったなと思います。天皇杯で悔しい思いもしてその反省とかもしっかり克服できたし、自分たちがやるべきことはできたのかなと思います。

――主将としての1年間を振り返っていかがですか

この1年間はコロナもあって普段では経験できないことを経験できて、苦しいこともあったんですけど、最後良い形で終われたと思うので、この1年間頑張ってきて良かったなと思います。すごく成長させてもらったのかなと思います。

――どの部分で成長しましたか

自分もチームも苦しいときに自分の中で気持ちをいい方向に整理するということをこの1年間で学ぶことができました。そういうところはポジティブな思考とか、大会がない中でも目標を立ててそこに向かって頑張るという点で成長できたのかなと思います。

――卒業されてからはジェイテクトSTINGS(Vリーグ)に進まれますが、そこでの目標やどんなプレーをしたいかについて教えてください

今のプレーだとまだまだだと思うので、これから上のレベルでも通用するようになりたいし、そうなるためにはいろんな面でできていないことがあるので、そこに向けてトレーニングや練習をやっていきたいです。

杉原紘平(先理4=茨城・土浦日大)

――3セット目の終盤から出場されましたね

正直ミドルで出る気はあまりなかったんですけど(笑)去年足や腰のけがをしてスパイクやブロックをやってこなかったので。まさか前衛で出ると思わなかったので、びっくりしました。

――コートではとても楽しそうにプレーしていました

今回は純粋に早慶戦を楽しめましたね。いつもはフルセットになって、気持ちよく早慶戦を戦ったという感じではなかったので。今年はけっこう点数が開いていてチーム全体として余裕のある楽しい感じだったので、僕は盛り上げるタイプではないんですけど、盛り上げようと頑張ってみました。

――杉原選手が出場してから、チームが盛り上がったと思います

僕が出たのが1年ぶりとかだと思います。練習でも普段出ていないので。1年ぶりくらいなので、チームも盛り上がってくれたんだと思います。

――練習に出ていなかったときは何をしていたのですか

僕はミドルなのですが、普段は豪(村山、スポ4=東京・駿台学園)が主導で教えてくれているので、僕は外から練習を見守っていました。今まで学んだことを後輩に少し教えていました。

――後輩たちにメッセージをお願いします

僕自身が色々ため込んでしまってチームに迷惑をかけてしまうことがあったので、後輩たちには周りに相談することも大事だということを伝えたいですね。あとは僕や他の4年生が教えた、人としての基本的な部分を忘れないでほしいというのと、4年生の穴はとても大きくてプレッシャーが重くのしかかると思うんですけど、なかなか勝てなくても最後には勝つことができるチームになれるように頑張ってほしいなと思います。

上條レイモンド(スポ3=千葉・習志野)

――今日の試合を振り返っていかがですか

始まる前に4年生が最後の試合だということで楽しくやろうということを言っていて、試合内容的には自分もチームも良いといえるものではなかったんですけど、何より楽しくできたし勝てたので満足しています。

――今日の相手の特徴を教えてください

慶應さんは全体的に身長が高くて。だからスパイクも気を付けて打たないと危ないなというのをミーティングではしていたので、守り方や攻め方を最後まで徹底的にできたのは良かったと思います。

――高さがあるために、スパイクやブロックで苦戦したことはありまか

相手のスパイクに対して自分たちのブロックの付き方だったり、相手のスパイクに対する自分たちのブロックのかわし方だったり、打点を意識していました。

――来年は本格的に村山副将(豪、スポ4=東京・駿台学園)がやってきたブロックや戦術の指示を引き継ぐことになると思います。それにあたって頑張りたいことは何ですか

自分は豪さんに3年間色々ご指導していただいたので、それも引き継ぎつつ、他にもご指導してくださったことを来年からは還元していくような感じでやっていきたいと思います。

――天皇杯が終わってから3年生主体で練習を進めているそうですが、チームを引っ張る上で難しいなと思うことはありますか

今までは自分のプレーだけに集中できて気楽にやれていたんですけど、今度は自分が周りを気にかける立場になって。特に自分と同じポジションの選手を気にかけてプレーするというのが慣れていなくて、どうしても自分のプレーだけになってしまっている状態なので、それはこれから頑張っていかないといけない部分だなと思います。

――今年からスタメン入りしていますが、今年見つかった課題と収穫について教えてください

今年からスタートメンバーで出させていただいて、すごく自分的には4年生3人が引っ張ってくれてのびのびプレーできました。それが収穫ですね。コートで引っ張る4年生を見させていただいたので、今度はそれを自分がやらないといけないというのが来年1年の自分の課題だなと思います。

――来年以降頑張りたいことはありますか

自分のポジションはミドルブロッカーで。自分のポジションだからできるスパイクやブロックで引っ張っていくというので、起点となってどんどん下級生には思い切りプレーしてもらうというのを意識したいと思います。

大塚達宣(スポ2=京都・洛南)

――1、2セット目は3年生以下の選手たちがスタメンでしたが、いかがですか

天皇杯が終わってから3年生主体でチームを引っ張るという形になって、自分の頭の中でも切り替えというか、今のこのチームになって自分が何をすべきかというのをもう一度考え直しました。試合の前日にゲーム練習をしたんですけど、それからこのメンバー、この学年で何ができるかというのを考えて、それがプレーだけじゃなくて声掛けだったり全体を見たりとか。コートに入っているメンバーの中だと、自分が一番早稲田のユニフォームを着てコートでプレーする時間が長かったので、そういう意味でも自分が学年は一番上じゃないけど、チームを引っ張る存在であるべきだと思うし、どうやって引っ張っていくかというのは今後の自分の役割だと思います。今回は課題を見つける良いきっかけになったと思います。

――エースの宮浦主将が抜け、来年からは大塚選手がプレーで引っ張っていくことになると思います

宮浦さんが抜けてオポジットにああいう大砲の選手がいなくなってしまいます。自分と水町君(泰杜、スポ1=熊本・鎮西)がアウトサイドなのでレシーブもしながら攻撃もしていかないといけないんですけど、上級生になって自分が引っ張らないといけない立場とその思いがプレーに乗っかっているんじゃないかなと思います。自分の感覚では去年のチームでやっているよりも今年の方が覇気があるし(笑)プレーに気持ちが乗っている部分が今日の試合で多かったんじゃないかなと思います。

――プレー以外でのコート内での自分の役割について教えてください

もっとこうしたいというのを言える雰囲気を作ることですかね。1年生の水町君、荒尾君(怜音、スポ1=熊本・鎮西)にはコートに入っているからこそ、そういうことをどんどん言ってきてほしいし、自分はそういうチームであるべきだと思っているので。自分がチームを作るんだという気持ちで4年生とチームを引っ張っていけたらいいなと思います。

――少し話は変わりますが、この1年で肩幅が大きくなったと思います

この1年じっくり鍛える期間が長かったから、特にシニアの合宿ではトレーニングやボール練習がハードだったし、大学に帰ってきてからも自分の中でそこの位置づけは見失わないようにトレーニングやボール練習に励んできたので、そこの成果は体に出てきていると思うし、体重とかも自分の中でもだいぶん増えてきています。確かに体つきはこの1年で変わってきたなと思います。目指せ宮浦さんです!(笑)あそこまではちょっときついかもしれないですね(笑)

――来年以降頑張りたいことについて教えてください

今までだと個人を見ていたというか、水町君、荒尾君が入っていて試合経験が少ないしというので、選手に対する声掛けが多かったんですけど、来年からはチーム全体を見ていかないとだめだと思います。チームを動かせる選手になりたいと思います。