第57回全日本大学駅伝対校選手権 11月2日 名古屋・熱田神宮〜三重・伊勢神宮
出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)から3週間後の11月2日、大学三大駅伝第2戦にあたる全日本大学駅伝対校選手権(全日本)が開催された。早大は山口竣平(スポ2=長野・佐久長聖)や佐々木哲(スポ1=長野・佐久長聖)といった主力が不在のなかでも、総合5位でレースを終えた。なかでも、8区を任された工藤慎作(スポ3=千葉・八千代松陰)は、渡辺康幸氏(平8人卒)が保持していた日本人最高記録を30年ぶりに更新。また、2人の選手が三大駅伝デビューを果たし、チームとしても早大新記録を樹立。次戦へつながる明るい材料を得た。
1区には4年連続、間瀬田純平(スポ4=佐賀・鳥栖工)が出走。間瀬田は序盤、集団の中ほどでレースを進めた。集団は5キロまで1キロ3分ペースを保って進むと、7キロ地点手前で本間颯(中大)がスパートをかけた。集団から遅れるかのように見えたが、「ラストでレースが動くと思っていた」間瀬田は冷静に最後の勝負に備えていた。9キロ手前で集団に追いつくと、ラストの叩き合いではライバルとなる国学院大や駒大より先着。1位と秒差無しの区間2位でチームに勢いをつけた。

1区を走る間瀬田
2区には、鈴木琉胤(スポ1=千葉・八千代松陰)が登場。鈴木琉はタスキを受けると、すぐさま先頭へと飛び出した。その後も集団を引っ張るいつも通りの走りを見せた鈴木は、5キロの給水地点での小池莉希(創価大)の飛び出しも封じ込めると、終盤まで先頭争いに参加。ラスト1キロのスパートで中大、帝京大に先着を許すも粘り切り、先頭と3秒差の4位でタスキリレーを果たした。区間順位は4位と、出雲に続いて序盤のエース区間で堂々の走りを見せた鈴木琉。箱根での好走にも期待がかかる。

2区を走る鈴木琉
3区の堀野正太(スポ1=兵庫・須磨学園)はタスキを受けると、すぐさま先頭集団につく積極的な走りを見せる。出雲での後半の失速という反省を生かし、前半はペースを抑えて入るレースプランであったというが、前方を走る中大、帝京大、後方に潜む駒大との駆け引きに焦り、ハイペースになってしまう。3キロ地点では先頭から大きく遅れるかたちとなり、その後は単独走となったものの、ペースをなかなか立て直すこともかなわず。8キロ付近で、創価大、国学院大、日体大の集団に追いつかれると、その集団にもついていくことができずにさらに遅れる展開に。先頭と1分1秒差の7位でのタスキリレーとなった。悔しい走りになったが、ロードでの堀野への信頼は厚い。「どのような状況でも走れるように、メンタル面をもっと鍛えていきたい」と語った堀野の大爆発に箱根では期待したい。

3区を走る堀野
4区には吉倉ナヤブ直希(社2=東京・早実)が起用された。レース前、「青学が後ろからおそらく来ると思ったので、それについていけたらいい」と考えていたという吉倉は、4秒後ろでタスキを受けた塩出翔太(青学大4)に先行をあえて許し、その後は塩出の後ろについてレースを進める。中盤で塩出の前に立った吉倉は、その後前を走る日体大までをも捕まえて6位でタスキリレー。区間6位の走りで上位進出への望みをつないだ。

4区を走る吉倉
吉倉との早実高タスキリレーで5区へと飛び出したのは小平敦之(政経3=東京・早実)。「後ろから(日体大と青学大が)追ってくると予想していたので、最初は速めに入り、残りは1キロ2分55秒で押していく」というようなイメージを持ちながら走ったという。小平の予想通り、2大学が追いついてくると、3人の集団走に。小平は途中青学大に先行を許したものの、中継所600メートル手前で一気にスパート。青学大を抜き返し、6位という順位を守って6区の宮岡凜太(商4=神奈川・鎌倉学園)へとタスキをつないだ。この日が三大駅伝初出走となった小平。区間7位と堅実な走りで、自らの役割を果たした。

5区を走る小平
6区の宮岡は、青学大と並走するかたちとなったが、「(青学大の)選手の存在を気にせず、自分が走りたいペースで走ろう」と落ち着いてレースを進めた。中盤以降、青学大に突き放されたものの、コツコツとペースを刻んだ宮岡。後半は青学の背中が遠くなり、息も苦しかったというが、「自分のせいで離れるわけにはいかない」と、足を動かし続けた。結果、宮岡は自他ともに待望の三大駅伝デビューとなった伊勢路で、区間7位の健闘を見せ、小平と共に箱根出走に向けた好アピールを見せた。宮岡はレース後、「(箱根で)区間賞や区間3番以内で走るために足りないところが見つかったので、残り2カ月頑張りたい」と話した。地元のある箱根路ではロングの強さをぜひ見せつけてほしい。

6区を走る宮岡
7区にはエース・山口智規駅伝主将(スポ4=福島・学法石川)が出走。7位でタスキを受け取ると、単独走で、前を行く野沢悠真(創価大)、黒田朝日(青学大)を追った。しかし、前を行く大学の選手も好走をしており、差はなかなか詰まらない。序盤は落ち着いたペースで推移したものの、中盤以降はペースを上げて創価大を捉えると、その後もハイペースを維持して6位でタスキリレー。黒田朝日、佐藤圭汰らライバル校の日本人エースには先行を許したものの、区間4位でまとめた。山口智は「思い切って行き切れなかったことが、自分の納得する走りにつながらなかったが、8割がたは自分の役割を果たせた」とレースを振り返る。駅伝主将として「総合優勝」を掲げ臨む最後の箱根。彼自身が納得する走りで駆け抜けてほしい。

7区を走る山口智
最長区間の8区には2年連続で工藤が出走した。「中盤くらいまで余裕を持ち、後半のラスト5キロのアップダウンで勝負するというイメージ」を浮かべ走り出した工藤。山口智からタスキを受け取った際には51秒差であった前を行く島田晃希(帝京大)との差をじわじわ詰め、12キロ手前で5位へ浮上。第7中継点では4位であった国学院大との差は1分以上あり、捉えるには難しく、終始単独走というかたちであったが、「あわよくば日本人最高記録を狙っていた」という工藤は、1秒でも速いタイムを追い求め、ゴールに向かい続けた。結果は国学院との差を36秒差まで詰め、総合5位でフィニッシュ。タイムは56秒54と、30年間破られることのなかった渡辺康幸氏の日本人最高記録を5秒更新する大記録を叩き出した。また、1年時から三大駅伝皆勤賞の工藤にとっては、三大駅伝8戦目にして初めての区間賞を獲得した。伊勢路で歴史を塗り替えた「早稲田の名探偵」。箱根では「山の名探偵」として、歴史を変えるのだろうか。

8区を走る工藤
総合5位でフィニッシュした今年の全日本大学駅伝。チームとしては早稲田新記録を樹立する力走を見せたが、他大学の圧倒的な強さがそれを上回った。それでも、出雲に続く区間賞の獲得、新たな三大駅伝デビュー選手の台頭、そして序盤での先頭争いなど、得られたものも大きい。花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)は、「今のチームの力はある程度出せた」と振り返り、点数をつけるとすれば「80点ぐらい」と評価する。次なる舞台は、1区間あたりの距離が一気に延び、山上り・山下りが勝負の命運を大きく握る箱根路。箱根こそ満点の走りで頂点をつかむため、早大は残り2カ月、課題に真っ向から向き合っていく。
(記事 林田怜空、写真 會川実佑、飯塚咲、石本遥希、植村皓大、川田真央、佐藤結、鶴本翔大、永尾早渡)
結果
