【競走】山口智が圧巻の区間賞!三大駅伝初戦は2位で14年ぶりの表彰台

駅伝

第37回出雲全日本大学選抜駅伝 10月13日 出雲大社~出雲ドーム

 10月13日、三大駅伝の開幕戦となる出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)が開催された。早大はトラックシーズンで圧巻の結果を残した山口智規駅伝主将(スポ4=福島・学法石川)や工藤慎作(スポ3=千葉・八千代松陰)に加え、1年生3人を加えた強力な布陣で15年ぶりの頂点に挑んだ。レースは山口智が圧巻の9人抜きで区間賞を獲得するなど、2区以降は常に上位争いを展開。優勝には届かなかったが、堂々の2位を獲得。強い臙脂(えんじ)の姿が久しぶりに出雲路に帰ってきた。

1区を任されたのは、三大駅伝初出走となる吉倉ナヤブ直希(社2=東京・早実)。序盤から牽制状態となり、スローな展開の中、吉倉は集団中盤に位置取り上位をうかがう。集団のペースが落ち着いて推移した5キロ過ぎ、国学院大の青木瑠郁がペースを上げ、集団をふるい落としにかかる。「思ったよりレースが動くのが早く、ここで足を使ってしまった」と懸命に吉倉もついて行くが少しずつ集団の後方へ下がる。残り1キロ、中大の岡田開成がスパートをかけ集団は縦長に。吉倉は順位は10位だったものの、先頭との差を23秒にとどめタスキをつないだ。

 2区は2年ぶりにこの区間を走るエース・山口智。10位でタスキを受けると、序盤から猛烈なハイペースで突っ込み、次々と前の選手をかわしていく。創価大の小池莉希に追いつきペースを整えた後、4キロ過ぎからさらにギアを上げ小池を引き離し、残り1キロで駒大を捉える。しばらくの間並走が続いたが、残り700メートルを切ったあたりで一気に前に出る。トラックシーズンで磨き続けてきたスピードを遺憾なく発揮し、首位でタスキをつないだ。タイムは15分57秒で、区間2位以下に20秒以上の差をつける圧巻の区間賞獲得。早大の選手が三大駅伝で区間賞を獲得するのは2021年出雲の石塚陽士(令7教卒=現ロジスティード)以来4年ぶりとなった。今季日本学生対校選手権で1500メートル、5000メートルの二冠を達成し、絶対の自信を持って臨んだ駅伝シーズン。区間12位に甘んじた昨年の雪辱を果たし、見事に流れを変えてみせた。

 各チームのエースが集う3区には、トラックシーズンで抜群の結果を残してきた怪物ルーキー・鈴木琉胤(スポ1=千葉・八千代松陰)が登場。序盤は追いついてきた桑田駿介(駒大)との並走の中、落ち着いてペースを刻む。4キロ過ぎで桑田が遅れ、鈴木琉の単独走に。その後も安定した走りを見せていたものの、後方からは城西大のヴィクター・キムタイ、国学院大の野中恒亨が猛烈なペースで鈴木琉に迫る。残り1キロを切ってから2人には抜かれたものの粘りの走りを見せ、最後は倒れ込むようにタスキを渡した。鈴木琉にとっては悔しい走りとなったが、留学生ランナーとも互角に渡り合う堂々の駅伝デビュー戦だった。 

 4区はこちらも期待のルーキー・佐々木哲(スポ1=長野・佐久長聖)が登場。タスキリレー直後、国学院大、城西大に追いつき先頭集団を形成し、再びトップを狙う。しかし、2キロ過ぎから辻原輝(国学院大)のペースについていけず離されてしまう。その後は苦しい走りとなったものの、城西大やアイビーリーグ選抜を抑え2位でタスキをつないだ。区間6位と上々の走りではあったが、佐々木哲はレース後「結果的に自分が国学院大の優勝を決定づけてしまった」と悔しさを口にした。

 5区にも1年生の堀野正太(スポ1=兵庫・須磨学園)が起用された。夏合宿以降好走を続け、調子の良い状態で臨んだ駅伝デビュー戦。「少しでも国学院大との差を詰めようと思った」と前半から積極的な走りで前を追う。しかし前を走る高山豪起(国学院大)も快走を見せており、なかなか差が縮まらない。前半のハイペースの影響からか、後半は苦しい走りとなり区間7位でのタスキリレーとなった。

 アンカーの6区には、2年連続で「早稲田の名探偵」こと工藤が出走。先頭との差は43秒に広がっていたが15年ぶりの優勝をかけて前を追う。タスキリレー直後にアイビーリーグ選抜をかわすと、序盤は1キロ2分50秒を切るハイペースを刻み、出雲大社のチェックポイントの時点では先頭の上原琉翔(国学院大)との差を10秒以上詰めることに成功する。このまま前を捉えたい工藤だったが、中盤以降の上原のペースアップもあり、なかなか差が縮まらない。それでも渾身の走りを見せ2位をキープしたままフィニッシュ。黒田朝日(青学大)、山川拓馬(駒大)に次ぐ区間3位と、各チームのエースと互角の走りを披露した。

 早大が三大駅伝で表彰台に上がるのは2018年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)以来7年ぶり、出雲で表彰台に上がるのは14年ぶりの快挙だ。トラックシーズンで着実に結果を残してきた主力選手たちとルーキーが融合し、盤石のレースを展開してみせた。しかし、今シーズン早大が目指すのは表彰台の一番上だ。アンカーの工藤も「2位で悔しいと思える早稲田が帰ってきた。次こそは頂点を狙う」と意気込む。また、今回走ったメンバーだけでなく、山口竣平(スポ2=長野・佐久長聖)や間瀬田純平(スポ4=佐賀・鳥栖工)、宮岡凜太(商4=神奈川・鎌倉学園)といったランナーも含めてチーム全体の底上げがカギを握ってくるはずだ。残り3週間に迫る全日本大学駅伝対校選手権、そして箱根での優勝に向けて――。名門復活への足音が、確かに聞こえ始めている。

(記事 植村皓大、写真 會川実佑、飯塚咲、石本遥希、黒澤秀真、佐藤結、佐藤由芽、鈴木拓紀、長屋咲希)

※監督・選手コメントは別記事にて、後日掲載いたします

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