駅伝シーズン到来! 爆発的スピードで臙脂を15年ぶりの頂へ/出雲駅伝展望

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 昨年は出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)6位・全日本大学駅伝対校選手権(全日本)5位と実力を発揮し切ることができず、悔しい結果に甘んじた早大。しかし、三大駅伝締めくくりの東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では、目標としていた「3位以内」にこそ届かなかったものの、11年ぶりとなる4位で確かな実力とその存在感を示した。そしていよいよ、今年も大学駅伝シーズンが幕を開けようとしている。今季は下級生の頃からチームを引っ張っている実力者たちに、全校高等学校駅伝(都大路)の区間記録、日本人最高記録などを持つルーキーたちが合流。最大の目標である「箱根総合優勝」に向けて、最高の面子がそろい踏みした。そのような中、2010年以来の優勝を目指す早大は1年生を3人そろえたフレッシュな布陣でエントリー。経験豊富な山口智規駅伝主将(スポ4=福島・学法石川)と工藤慎作(スポ3=千葉・八千代松陰)で1年生を挟み込む、隙のないメンバー編成となっている。新しい風を追い風に、古豪復活ののろしを上げることができるのか。出雲大社から出雲ドームまでの45・1キロを駆け抜ける選手たちを紹介する。

 1区間の距離が全日本や箱根と比べて短く、スピード駅伝とも称されている出雲。優勝争いに食い込むために重要となるスタートを任されたのは、吉倉ナヤブ直希(社2=東京・早実)だ。1500メートルを主戦場とする吉倉はスピードに長けており、そのラストスパートは見どころ。三大駅伝への出走経験はないものの、日本学生対校選手権(日本インカレ)の1500メートルで8位入賞を果たすなど、着実に力をつけてきた。ロングにも柔軟に対応する吉倉は、爆発力を武器に、チームへ勢いをもたらす。

 2区には今年大活躍のエース・山口智が起用された。日本インカレでは、日本人初となる1500メートルと5000メートルの二冠を達成。それだけに飽き足らず、7月には5000メートル日本人学生歴代3位となる記録を叩き出し、結果でもチームをけん引してきた。レースの主導権を握るためのカギとなるであろう2区。宇田川瞬矢(青学大)や小池莉希(創価大)など他校の注目選手も集まる中、山口智は全6区間の中で最も短い5・8キロをどのように攻略するのか。エースが最後の出雲路を全力で駆け抜ける。

 そして、各校の主要選手や留学生ランナーがそろう3区には鈴木琉胤(スポ1=千葉・八千代松陰)がエントリー。1年生ながら関東インカレ5000メートルで日本人1位となった鈴木琉は、留学生と渡り合う実力を存分に生かしたレースづくりが特長だ。日本選手権以降はケガの影響が心配されたものの、先日行われた早大競技会では好調ぶりをアピール。出雲でも積極的な走りを見せ、先行を図る早大にさらなる追い風を吹かせたい。

 鈴木琉からタスキを受け取るのは、同じく大物ルーキーの佐々木哲(スポ1=長野・佐久長聖)。高校時代には都大路で区間新記録を樹立し、大注目の中、競走部へ入部した。3000メートル障害を主戦場としており、7月のFISUワールドユニバーシティゲームズ(ユニバ)では入賞。起伏の激しい4区においてタフさを発揮し、前半に惜しみなく主力を注ぎ込む中大に引けを取らないレースを展開したい。堂々たる大学駅伝デビューに注目だ。

 5区で1年生リレーの締めくくりを担当するのは、堀野正太(スポ1=兵庫・須磨学園)。高校1年時のU20日本選手権クロスカントリーでは4位、高校2年時の都大路では3区を走り区間6位と、高校時代から抜群のロード適性を示してきた。大学入学後も、春のトラックシーズン、夏合宿を経てさらなる力をつけ、9月末に行われた「The Road of WASEDA」で、5キロ13分49秒を叩き出した。5区は、波のように細やかなアップダウンが続く中で、前後のチームとの秒差をどう詰め、どう広げるかが勝負を分けるキーポイントである。上りも下りも平坦もそつなくこなす器用さと、タフさが魅力の堀野。最終6区で待つ仲間に、勝負圏内のタスキを確実に届けたい。

 そして最終6区には工藤がエントリー。ユニバではハーフマラソンを大会記録で優勝し、その名を陸上界に浸透させつつある「早稲田の名探偵」だ。昨年は6区を区間2位で走っており、今年は自身初の大学駅伝区間賞にも大きな期待がかかる。黒田朝日(青学大)や山川拓馬(駒大)らが同区間を走る中でも、ロングで磨かれた抜群の安定感を見せつけたいところ。バランス型の国学院大やその他のチームからの追い上げを阻止し、先頭でゴールテープを切ってくれるはずだ。

 また、当日は2人までのメンバー変更が可能となっており、補員としてエントリーされている選手にも注目だ。間瀬田純平(スポ4=佐賀・鳥栖工)は、今季振るうような結果を出せていないものの、三大駅伝の経験は豊富。全日本や箱根では早稲田のスターターとして活躍してきた。一方の宮岡凜太(商4=神奈川・鎌倉学園)も、三大駅伝への出走経験は未だゼロだが、ハーフマラソンの持ちタイムは工藤、山口智に次いでチーム内3位。初の大学駅伝出走となれば、堅実な走りを見せてくれるに違いない。

 箱根の優勝も見据える中で、2010年以来の出雲優勝を目指している早大。出雲に最適なスピードのある強力メンバーがそろっているだけに、今年は優勝のチャンスを逃したくない。雌伏の時を経て、「3強崩し」へ。あとは大学駅伝シーズン開幕の号砲を待つのみだ。

(記事 髙杉菜々子)

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