【連載】箱根事前特集『燃』 第1回 花田勝彦駅伝監督

駅伝

 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)直前特集初回は、就任2年目を迎える花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)。好調のトラックシーズンを経て、夏にはクラウドファンディングで集まった資金で海外遠征も実施した。充実の1年間の振り返り、そして来たる箱根へのチームの状況と意気込みとはーー。

※この取材は12月12日に行われたものです。

充実のトラックシーズン

合同取材の花田駅伝監督

――まず、春シーズンのことからお伺いします。香川丸亀国際ハーフマラソンでの伊藤大志選手(スポ3=長野・佐久長聖)の自己新記録から始まり、春から夏にかけて好記録が続いたシーズンでしたが、監督として率直にどのようなことを感じられましたか

 前回の箱根駅伝をチームとしてはすごく良いかたちで終えられたので、代が変わり菖蒲駅伝主将(敦司、スポ4=山口・西京)を中心に良い状態でスタートが切れたと感じています。その流れを受けて丸亀ハーフや春のトラックシーズンも含めて、良いスタートができたのではと感じていました。

――その中で日本学生個人選手権(学生個人)では菖蒲選手がワールドユニバーシティゲームズ(ユニバ)出場を決定されました。トラックシーズンの菖蒲選手の戦いぶりは、監督の目にどのように映っていましたか

 菖蒲に関しては、ユニバが一昨年、昨年と派遣がなくなってしまったこともあり、日本代表を経験させたいと思っていました。そういう意味で、春のシーズンは学生個人に集中するかたちで(練習を)やって、本人とも「確実に(代表に)選ばれて、その上でメダルを取ろう」と話をしていました。本人もすごく集中して取り組めていたので、学生個人で優勝しましたし、関東インカレ(関東学生対校選手権)で3連覇もしました。私的に一番すごかったと思ったのは、日本選手権3番で大幅な自己新記録を出したことですね。わずかに代表には絡めませんでしたが、あの走りが私の中ではすごく印象に残っています。ユニバでは銅メダルでしたけど、欲を言うと銀メダルを取れたかなというところは少しありました。けれどもしっかり目標をクリアできたことは、よく頑張ってくれたなと思っています。

――ユニバまでの練習を見ていらして、メダルへの手応えは感じていましたか

 そうですね。ただ日本選手権の後に少し足の痛み等があったので、ユニバの本番に向けて、あまりうまく練習が詰めていない状態ではありました。そういう不安要素がある中でもしっかりメダルを取れたのは、彼の調整能力や本番での強さをすごく感じたレースではありました。

――次に、春シーズンでは石塚陽士選手(教3=東京・早実)が1万メートルで27分台を記録されました。石塚選手が27分台を出すという手応えはありましたか

 練習の流れから見ると、28分10秒から20秒ぐらいではいけるかなと感じていて、条件がそろえば27分台も可能というような状況で迎えたレースでした。レースをやっていく中で、最後、8000(メートル)程から、27分台を出しそうな雰囲気がありました。本人は結構きつそうではありましたが、(記録は)出せる時に出すというのもあるので、「ここで諦めるな」という声かけを後半はかなりしました。そういう中で、最後にしっかり粘って27分台を出してくれたので、本当に自分の力をしっかり出し切った素晴らしいレースだったという風に思います。

――そんなトラックシーズンを振り返って、点数つけるとしたら何点でしょうか

 関東インカレでは、山口(智規、スポ2=福島・学法石川)が5000(メートル)で3位になったり、(3000メートル障害での)菖蒲の優勝もあったので、トラックシーズンは非常に良かったかなと思います。本当は5000(メートル)での13分20秒台だったり、1万(メートル)も、あと2、3人は27分台を出してほしかった部分はありますね。なかなか条件がそろわなかったり、授業の関係で狙いたい試合に出れなかったりしたので、トータルで見ると、80点から85点ぐらいですかね。

――「1万メートルの27分台があと数人出るかもしれなかった」というお話でしたが、手応えは大きかったのですか

 春のシーズンはかなり質の高い練習ができていました。ただ、1万(メートル)は試合数が限られてるので、(記録を狙うために)5000(メートル)にフォーカスしてやっていました。5000(メートル)では、石塚が13分33秒で走りましたけども、それを受けて山口、伊藤大志あたりは(13分)20秒台を絶対出して、さらに早稲田記録や学生記録ぐらいまで出してほしいという思いでやっていました。しかしそこには届かなかったです。やはり(伊藤)大志や山口は、石塚よりも良い練習ができていたので、追い付き追い越してほしい思いもありました。それを結果として出せなかったことは課題だったかなという風には思います。

クラウドファンディング、そして世界へ

――次に、クラウドファンディングのことについてお聞きします。クラウドファンディングが10日で1000万円に到達し、最終的には2000万円を越したことで反響も大きかったと思いますが、実際にやってみてどのようなことを感じましたか

 始まる前は海外遠征の資金ということで、500万円を確実に達成できればと思っていました。そうしたら本当に1日ちょっとで、500万円を達成して、1000万円も10日かからないような勢いで達成しました。事前に去年の全日本(全日本大学駅伝対校選手権)の後からメディアにも出たりなどして準備はした中で、多くの方に早稲田の状況を知っていただきました。やはり私自身が学生の時に海外遠征を経験して強くなれた経験があったので、その思いを多くの方に知っていただいて達成できたのは、改めて早稲田を応援してくださってる方々の多さや、期待の大きさを感じた瞬間ではありました。

――実際に監督という立場になり海外に行ってみて、率直にどのようなことを感じられましたか

 自分自身が選手の時は連れて行ってもらった立場で、今回は連れていく立場になったっていうところで、すごく感慨深いものがありました。一方で、選手たちも(世界の舞台で)チャレンジしましたけども、やはり世界との差を私も見ていて感じましたし、それを肌で感じられたことですごく収穫はあったかなと思います。

――世界に行って監督として感じた、具体的な差や課題はどのような点でしたか

 私自身が感じたというよりも、選手たちが積極的に取り組んでくれて感じたと思います。山口は、プラハの試合で優勝した選手と次の日の朝に食事をとっていました。彼もそんなに英語は得意じゃないと思いますけど、ずっと片言の英語で外国の選手とコミュニケーションを取りながら食事していました。私が何か言わなくても、本人たちは現場に行って選手同士でコミュニケーションを取ることで、それ以降彼らの練習に取り組む姿勢が変わった姿を見たりして、本当に行って良かったなと思いました。結果は少し物足りない面はありましたけど、今後につながるすごくいい収穫があったのではと思いました。

――海外遠征を経験した選手たちには、この経験をどのように生かしてどのような選手になっていってほしいですか

 箱根駅伝が迫ってますけれども、どうしても国内では一番大きな大会なので、みんなそこに目標を持っていきがちだと思います。本来、金栗四三さんが箱根駅伝をつくられた経緯には、箱根を経験してさらに世界に行く。そのための強化の一つの手段の大会というところがあると思います。そういう意味ではさらに高いレベルを見てほしいと思っていたので、そういう意識づけにはなったのかなという風には思います。

――クラウドファンディングのホームページに、 第二目標では「合宿費や、トレーニングの費用に充てる」というようなことを拝見しました。実際に第二目標に到達したということで、このチームの強化を目的とした合宿で例年とスタイルを変えたところはありましたか

 正直なところ、スケジュール的な問題があり、なかなかそれはできませんでした。ですが、これまでやってきた合宿では選手の自己負担が割と多かったので、それがかなり少なくなったといった恩恵はありました。昨年度は、箱根駅伝が終わった後に合宿ができなかったのですが、今年度はマラソンに出る選手や、学生ハーフに出る選手たちのための強化合宿をやる予定です。あと、今回、山口がニューヨークシティハーフマラソンの権利を取りましたけども、タイミングが合えばそれに合わせて他の選手も派遣したり、他の遠征も含めて海外合宿もどこかでやりたいと思っています。予算も限りがありますが、本当にそういう選択肢がすごく増えたことが良かったと思います。

駅伝シーズンを振り返って

――次に夏から秋のことについて伺います。今年の夏合宿は、監督から見てどのように振り返えられますか

 手応えとしては昨年度よりこなせる選手が多かったことです。 昨年は故障者やレベル的に届かない選手が多く、メニューをこなせる選手が少なかったです。今年に関しては、合宿に参加している選手のほとんどが予定されたメニューをこなせていたので、選手層が厚くなったというのは感じました。一方で、8月、9月にかけて、主力の選手を海外遠征に派遣したり、菖蒲もユニバがあったりしたので、主力選手が合宿から欠けたり、全体のメニューに入れなかったりもしました。その辺りで少し足並みがそろわないのも、正直少しはありました。

――先ほどもありましたように、上尾シティハーフマラソン(上尾ハーフ)では山口選手がニューヨークシティハーフマラソン出場を決められました。大迫傑選手(平26スポ卒=現Nike)を超える早稲田新記録で走られたということで、監督からご覧になってその時期の山口選手はニューヨークシティハーフ出場を決められそうな手応えはありましたか

 今回の上尾ハーフに関しては、練習の一環で走ろうという感じでした。昨年は、箱根予選会(東京箱根間往復大学駅伝予選会)がありましたけど、今年はなかったので、(箱根に向けて)ハーフマラソンを1本走っておきたいというところで入れていました。本人とも話していて、試合前にはそこまで狙うつもりではなかったです。ただ、当日の様子を見ていたり、あとレース展開次第では「スタートしてみて、先頭集団が速いと感じなければいってもいいよ」と話はしていたので、期待半分といったところでした。ひょっとしたらいくかなとは思っていましたが、一方で、そんなに頑張らなくてもいいとは思っていたので、本人も割と気楽に走ったところがあるんじゃないですかね。ばっちり調整をしたわけでもない中で、記録をしっかり出せたのは、本人にとってもすごく自信になったと思います。チームとしても、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)でシード権を落とし、箱根に向けてみんな少し元気がないところで、ああやって結果を出して。私自身も去年の6月から早稲田の駅伝監督をやってきて、失敗なくずっとうまく結果が出ていた中で、全日本でシードを落として自分自身も少し落ち込んでいたところだったので、あの結果ですごく励まされたというか、やってきたことは間違っていないというのを確認できた走りをしてくれたと思います。

――山口選手も「走りながら結構楽になったので、集団を抜けた」と話していらっしゃいました。山口選手の調整は他の選手と比べても光るものがあったりしましたか

 調整というよりも、練習が他の人よりもひとつ上のランクにいます。例えば、他の人よりも数秒後ろからスタートしたり、練習メニュー自体の設定を上げたりもしてやっていました。あとは、15キロから思い切ってバンと、(前へ)行ったというのも、海外の選手はもう当たり前のように行くので、海外遠征の経験値も生きたのではという風に思います。

――ニューヨークで楽しみなことはございますか

 聞くところによると、ニューヨークシティハーフはかなり寒いそうです。日本では控え場所があり、スタートまで十分な準備をしてスタートラインに立てるのですが、寒い中、10分以上待たされてスタートするという話も聞いています。過酷な条件であるのは、出場選手はみんな同じで、そういう状況でも世界のトップレベルは結果を出していきます。山口には結果はもちろん期待はしていますけども、その後の成長につながる経験になればいいかなという風に思っています。

――では次に、駅伝シーズンのことについて伺います。まず、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)から振り返っていただけますでしょうか

 出雲は私自身が指導者として初めて臨む大会で、そこに向けてのスケジューリングなどが少しうまくいかなかったかなというのを、振り返ってみると感じています。箱根駅伝予選会があった昨年と同じような流れで夏合宿はある程度走り込みをしながら、出雲と全日本はスピード練習の一環でという流れで持っていきました。しかし、出る予定だった選手が出れなかったり、走った選手も調子があまり合わなかったりというところもあり、不完全燃焼な感じでレースを終えたかなというところはあります。一方で、出雲では1年生の長屋( 匡起、スポ1=長野・佐久長聖)がアンカーで、存在感のある走りを見せてくれたので収穫もあったと感じています。

――では次に、全日本大学駅伝の振り返りをお願いいたします。

 全日本に関しては、私自身が少し力みすぎたかなという印象があります。 私も直前に少し体調を崩して、練習を見れなかったりもしたのですが、選手たちも出雲があまり良くなかったので、 全日本こそはという思いがありました。そのため、出雲から全日本にかけても元々想定した練習より少し質を上げたりとかして、狙いに行ったところがあったのですが、逆にそれで選手たちのピーキングがうまく合わなくて、実際に想定した選手が(全日本に)出れなくなりました。レガシーハーフ(東京レガシーハーフマラソン)に出た選手たち(伊福陽太(政経3=京都・洛南)、菅野雄太(教3=埼玉・西武学園文理)、宮岡凜太(商2=神奈川・鎌倉学園))は、(全日本は)走らない予定で練習メニューを組んでいましたが、急きょ選手が足りなくなってしまったので、走るかたちになった菅野、伊福には、申し訳ないことをしたと反省しています。

――そこから箱根に向けて、チームとして再認識したところや上位校との差はどのように感じられておりますか

 全日本の後に全体でミーティングをしました。そこで私の考えだけではなくて、選手たちの方からも今回の全日本での失敗を振り返って、いろんな意見を聞きました。その中で、自分たちがまず練習でやるべきことをやって、本番でしっかりそのやったことを出す。昨年のテーマになりますが、『1=1』。普段通りやることが出雲と全日本ではできなかったので、箱根に関しては自分たちが目標に向かってしっかり練習することと、本番でやったことをしっかり出すことをもう1度やろうと確認できたのが良かったと思います。上位校との差で言うと、他大学は一つ、二つブレーキがあっても確実に上位に入ってきています。その辺りはうちのチームに欠けてる部分であると改めて感じました。ポテンシャルとしては、そういうチームとも競り合えるところまで来たと思いますが、万全じゃなくても、ある程度まとめる走りをできる選手がもう少しいないと、こういう結果になってしまうのかなと感じています。野球で例えると、実力はあるんだけども安定した力を出せない。長距離ヒッターはいるんだけども、打率は少し低いといった感じです。走った選手がちゃんと期待した走りをするというところがこれからの課題なのかなと感じました。

――この前の日体大記録会で、伊福選手が28分台で走られて、全日本のリベンジを果たしたのかなと思って拝見しておりました。全日本から日体大記録会に向けての伊福選手の姿というのは、どのように映っていましたか

 本人も全日本ではすごくプレッシャーを感じていたのもありますし、途中で脱水症状になってしまって本来持っている力を全く発揮できなくて、私も少し心配はしていました。そこから1カ月ない中で、もう1度自分で立て直して今の力をしっかり出してくれたので、本人にとっても自信を取り戻す走りだったと思います。私たちも伊福はあんなもんじゃないと思っていたので、それを確認できる結果だったと思います。あと、うちのチームは(上位10人の)1万メートル平均タイムが、今回(全出場校中)19番目ですけれども、一般組の伊福があれだけ走るのだったら、一緒に練習している自分たちもこれだけ走れるよねという指標、プラス材料になったのではと思います。

来る箱根に向けて

合同取材で4年生とともに写真に収まる花田駅伝監督(写真中央)

――次に、箱根に向けてお伺いします。差し支えない範囲で、現在のチーム状況についてはどのように感じていらっしゃいますか

 本当に今はチーム状況が非常に良くなってきていて、昨年の今の時点よりも良いのではと感じています。エントリーしたメンバーもそうですし、それ以外のメンバーにも故障者がほとんどいないので、チームとして出雲と全日本で出せなかった力を出そうという雰囲気になってきています。チームのムードとしても非常に良いと思います。

――駅伝監督として2年目のシーズン、どのようなことを意識されてこれまでチームづくりをされていましたか

 現状に満足せず、高いレベルを目指そうというところでチームづくりはしてきましたが、一方で逆にそれが力みや焦りにつながってしまい結果が出なかった面もありました。今、改めて原点に戻ってやろうと思ってはいます。

――昨年は『1=1』という話をよくされていたと思いますが、今年のテーマは何かありますか

 シーズンの頭には『1=1』はもちろん当たり前のことで、プラスアルファで例えば普段の1.2倍の力を出せるようにするというものを掲げました。昨年で言うと井川(龍人、令5スポ卒=現旭化成)は、あまり調子が良くなくて7割程度でも試合では1.2倍ぐらいの力で走るような選手だったので、そういう選手もチーム内で育てていき、みんなでやっていかなきゃいけないと思います。よく伊藤大志がゲームチェンジャーという話をしますけども、そういった選手をつくるのが少しうまくいかなかったところもありました。話は戻りますが、まずは普段やったことをしっかり試合で出す早稲田らしい走り、崩れない走りをしっかりやりたいと思っていますね。

――その中で監督から見て、菖蒲選手はどのような主将ですか

 菖蒲はいい意味ですごく優しいというか、周りの和を大事にするタイプの選手です。一方で、もっとガツガツいっていいというか、自分にも周りにも厳しくやってもいいんじゃないかなとも思います。彼自身が持てる力はもっとあると思うので、 そこをさらに追求して、攻めの走りができるようなところも期待はしてはいます。

――加えて、最上級生の4年生はどのような学年や特徴であると感じていらっしゃいますか

 今の4年生は、その一つ上の代に井川や鈴木創士(令5スポ卒=現安川電機)などすごく強くて個性的な選手がいて、一つ下の伊藤大志や石塚の代も非常に個性的で強い選手がいます。上から引っ張ってもらって、下から押し上げてもらってきた学年だと思います。それが全日本が終わった後に4年生たちも話し合ったみたいで、もっと自分たちが走りでも行動でも引っ張っていかなきゃいけないと感じたようでした。今は本当に自分自身がしっかり練習に取り組むという意識でやっていますし、4年生も良い方に変わってきてるのかなと思います。

――チーム全体としてのストロングポイントはどのようなところになりますか

 箱根に関して言うと、(山の)登り下りがいるというのは、チームにとってのストロングポイントです。特に北村光(スポ4=群馬・樹徳)は下りのスペシャリストとして非常に力があるので、そこはチームの強みだと思います。あとは今、山口や石塚などエースになりつつある選手も育ってきているので、少しずつ私自身が目指しているチームにはなってきていると思います。

――あえて挙げるとするなら、今現在での調子のいい選手や、箱根に向けてのキーマンはどなたでしょうか

 これまた難しいですよね。言うと本人が意識してしまいそうなので(笑)。その中でも4年生と1年生ですね。その2学年がどれだけメンバーに食い込んできて、しっかり期待された役割を全うできるかというところで、チームの順位も変わってくるかなという風に思います。

――少し話が前後してしまうかもしれませんが、今年の工藤慎作選手(スポ1=千葉・八千代松陰)、長屋選手、山﨑一吹選手(スポ1=福島・学法石川)を中心に1年生はどのような学年だと感じていますか

 やっぱり1年生なのでまだまだ体もできてない部分もある中で、春先から少し負担をかけすぎた部分があったと今は思っています。逆に言えば2年生以上がしっかり走った中で、1年生にも気楽に走らしてあげたいなというところがあります。どうしても昨年の4年生の井川と鈴木が抜けて、その穴を埋めるために1年生、特にその3人には期待されて、私も大きく期待していた部分はありました。一方で、自分自身が学生の時を考えると、1年時は全く大した選手ではなく、つなぎ区間をもうギリギリ走るようなレベルで、2、3年かけてようやくチームの主力選手に育ったところがありました。これからもう箱根まで時間がないので、1年生3人には頑張ってもらわなきゃいけないですけど、彼らにそこまで負担をかけないような、チームとして他の部分は2年生以上がしっかり補えるような、かたちにできればと思っています。

――あと1か月、箱根駅伝までに必要になってくることでしたり、より高めていきたい点を教えていただきたいです

 今年の年度初めに『5番以上、できれば3番』という目標を立てていましたが、そこにいけるだけの力は持っていると思います。足りないものは、自信ですかね。11月下旬からいい練習ができていて、みんな自信が少しずつついてきていています。あとは、本当にこれからの3週間で、スタートラインに立った時に、どれだけ自信を持ってレースを最後まで走り切ることができるか。それが10人そろえば昨年と同じようなかたちの結果、 昨年を上回るような結果もついてくるのではと思います。

――最後になりますが、改めて箱根駅伝の目標と意気込みをお願いいたします

 そうですね。まずは走る10人がしっかりと想定通りの走りをする。チームとしての力を100パーセントしっかり出すというのが一つの目標になりますし、そういう意味では昨年を上回る順位で言うと、総合では6番なので、5番以内というところが現実的な目標じゃないかなと思っています。あとはおそらく昨年同様、往路に主力選手を並べるかたちになると思います。展開によっては全日本の前半のようなかたちで、先頭争いにもうまく絡めれば、応援してくださっている方々に喜んでもらえるのではと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 戸祭華子)

◆花田勝彦(はなだ・かつひこ)

1971(昭46)年6月12日生まれ。滋賀・彦根東出身。平6人間科学部卒。1994年日本選手権5000メートル優勝。アトランタ、シドニー五輪日本代表。2004〜2016年上武大学駅伝部監督、2016〜2022年GMOインターネットグループ・アスリーツ監督。2022年〜早稲田大学競走部駅伝監督。