一人一人が全力を出し切りいざ表彰台へ/全日本展望

駅伝

大学駅伝シーズンの開幕を告げた出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)から約一か月、三大駅伝の第二戦が早くもやってくる。全日本大学駅伝対校選手権(全日本)が11月5日、愛知県の熱田神宮から三重県の伊勢神宮内宮までの106.8キロにおよぶ二つの天照大御神を祀る社を結ぶコースで開催される。出雲では三位以内を目標にし、4年生を起用しない下級生メインのメンバーで上位進出を狙ったものの、6位に終わった早大。伊勢路は二年連続で6位となっている。今回、花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)は目標順位を再び三位以内と設定した。27本のタスキが駆け抜ける伊勢路、エンジのタスキはどのような位置で渡されていくのか、11月3日に発表された区間エントリーをもとに展望をお伝えする。
 
 まずは出雲の結果を踏まえた、現状の大学駅伝の勢力図をお伝えする。出雲では駒澤大が1区から先頭を譲らない圧巻のレース運びで4連覇を達成。昨年の大学駅伝3冠達成に続いての優勝で、現状は絶対王者といえるだろう。駒澤大を追う2番手以下は力が拮抗(きっこう)している。箱根で駒澤大に続いた中大、青学大の2校は出雲では7位、5位と不本意な結果に終わった。一方で出雲では留学生ランナーが好走した創価大、城西大が2、3位に入った。出雲4位の国学院大は駅伝での安定感が光る。その他にも三浦龍司擁する順大、古豪復活を目指す東洋大も展開次第では上位に食い込む力がある。また先月の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)予選会を1位で突破した大東大や久しぶりの大学駅伝出場となる東農大といった出雲非出走チームにも注目したい。
 

出雲同様、2区に山口(写真左)、3区に石塚(写真右)がエントリーされた

  
 上位進出に向けて出遅れが許されない1区には間瀬田純平(スポ2=佐賀・鳥栖工)がエントリーされた。昨年の全日本でも1区を走った間瀬田。昨年は区間11位ではあったものの、終盤まで集団の中でレースを進めて上位と差のない位置でタスキをつないだ。この一年、第20回U20アジア陸上競技選手権大会で優勝するなど世界での経験も詰んできた間瀬田。今年は昨年以上の位置でタスキを渡し、チームに勢いをつける走りを期待したい。2区にエントリーされたのは山口智規(スポ2=福島・学法石川)。2年生同士のタスキ渡しとなる。昨年の全日本では大学駅伝デビュー戦ながら、4区で区間3位の走りを見せて、順位を2位まで押し上げた。出雲では区間3位の好走だったものの同学年の駒澤大の佐藤圭汰、青学大の黒田朝日の2人に遅れをとった山口。2区にはこの2人もエントリーされており同学年のライバルに出雲のリベンジを果たすような好走を期待したい。3区には石塚陽士(教3=東京・早実)がエントリーされた。出雲では不調もあり区間7位と一万メートル27分台のタイムを持つ石塚にとっては悔しい結果で終わってしまった。この3区は一昨年が区間4位、そして昨年は区間3位と2年連続で好走している相性のいいコース。今年は区間賞を狙うような走りが期待される。石塚の持つ本来の力を発揮するレースをすることは出来るだろうか。4区にはルーキーの工藤慎作(スポ1=千葉・八千代松陰)が起用された。大学駅伝デビューとなった出雲では区間10位と悔しい結果に終わり、ほろ苦いデビュー戦となってしまった。全日本ではその悔しさをバネに工藤の持つ力をフルに発揮して、後半に向けて勢いをつける走りを期待したい。

力走する菖蒲

 
 後半の開始となる5区には菖蒲敦司駅伝主将(スポ4=山口・西京)が出走予定だ。今年は8月のワールドユニバーシティゲームズで、日本人として32年ぶりの銅メダルを獲得するなどトラックシーズンは結果を残した菖蒲。一年時から走ってきた伊勢路では3年前は5区9位とまずまずの走り、一昨年は4区で区間5位の好走を見せたものの、昨年は区間15位で順位も五つ落とすなど悔しい走りとなってしまった。3年前と同じ区間でもルーキーだった3年前と駅伝主将として走る今年は全く別物の走りが求められる。全日本デビューを飾った区間でチームを上位に導く走りをすることは出来るだろうか。6区には北村光(スポ4=群馬・樹徳)がエントリーされた。今季は日本学生対校選手権(全カレ)の3000メートル障害で8位入賞。1年次から駅伝を経験してきた北村にとって、ラストシーズンにかける思いは並々ならぬものがあるはずだ。北村といえば、箱根では山下りの6区で好走を連発してきた選手。今回は、平地での戦いとなるが、この全日本でも6区で箱根の北村を思わせるような快走を見せてほしい。終盤2区間には一般組の2人がエントリーされた。7区には宮岡凜太(商2=神奈川・鎌倉学園)がエントリー。こちらは走ることとなれば駅伝デビューとなる。正月の箱根では一年生ながらメンバー入りしたものの出走することは叶わなかったが、その後を着実に練習を積み重ねてきた。春こそやや結果の出ない期間が続いたものの、夏合宿を経て駅伝シーズンに向けて少しずつ調子を上げてきている。7区は駒澤大の鈴木芽吹や国学院大の平林清澄など各校のエース級が集う区間だが臆せずことなく自分の走りを見せてほしい。最終8区には伊福陽太(政経3=京都・洛南)がエントリーされた。昨シーズンは上尾シティハーフマラソンで62分台を出し、箱根では8区でエンジデビューを果たした。箱根以降も第26回日本学生ハーフマラソン選手権(学生ハーフ)、第55回青梅マラソンそれぞれでチームトップの走りを見せるなどロードで結果を残してきた。ハーフ以上の距離で結果を出してきた伊福にとって、19.7キロと最長区間となる8区は全8区間で最も適正がある区間であることは間違いない。自分の持つ力を遺憾なく発揮し、仲間の待つフィニッシュ地点にエンジのタスキを少しでも早く届けてほしい。

配置される区間にも注目の伊藤大志

 補欠にも、実力のある選手が揃う。まずは、佐藤航希(スポ4=宮崎日大)。昨年8区で区間5位の走りを見せ、二月の延岡西日本マラソンで優勝するなど実績十分だ。一年時から早大が出場した全ての駅伝に出走してきており、出雲ではスターターをつとめた伊藤大志(スポ3=長野・佐久長聖)も昨年は7区で区間5位の走りをみせた。また、菅野雄太(教3=埼玉・西武学園文理)はロードに強く、10月に行われた東京レガシーハーフマラソン2023ではハーフマラソンの自己ベストを更新するなど好調だ。諸冨湧(文3=京都・洛南)は、全カレ(日本学生対校選手権)の3000メートル障害で北村を上回る6位での入賞を果たし、9月の早大記録会では5000メートルの自己ベストを更新するなど、こちらも駅伝シーズンに向けて調子を上げてきている。そして、期待のルーキー長屋匡起(スポ1=長野・佐久長聖)は、こちらも9月の早大記録会で5000メートルのベストを更新し、出雲では大学駅伝デビューながら最終6区で区間6位の走りを見せた。この3人は全日本の経験こそないものの、秋に入ってから自己ベストを更新しており、調子の良さがうかがえる。この5人のうち誰をどのように起用してくるのか、当日の花田駅伝監督の戦略にも注目が集まる。

 ここ数年の全日本では道中好走する区間があり、上位争いに絡む場面がありながらも、なかなか表彰台には届いていない早大。今年は安定感のあるレース運びをしていきながら上位進出を目指していきたい。ライバルは強力ではあるものの、一人一人が確実に自分のペースで走り、ベストを尽くし各々の力を発揮することが出来れば、目標である「三位以内」は決して遠くない。運命の号砲は11月5日8時10分に熱田神宮で鳴り響く。ゴールの伊勢神宮にWの文字は何番目に飛び込んでくるのだろうか。早大の好走を期待したい。

(記事 出口啓貴)

第35回出雲全日本大学選抜駅伝 早大暫定エントリー(10/8時点)
区間 距離 名前 学部・学年 出身校
1区 9・5キロ 間瀬田純平 スポ2 佐賀・鳥栖工
2区 11・1キロ 山口智規 スポ2 福島・学法石川
3区 11・9キロ 石塚陽士 教3 東京・早実
4区 11・8キロ 工藤慎作 スポ1 千葉・八千代松陰
5区 12・4キロ ◎菖蒲敦司 スポ4 山口・西京
6区 12・8キロ 北村光 スポ4 群馬・樹徳
7区 17・6キロ 宮岡凛太 商2 神奈川・鎌倉学園
8区 19・7キロ 伊福陽太 政経3 京都・洛南
補員 佐藤航希 スポ4 宮崎日大
諸冨湧 文3 京都・洛南
伊藤大志 スポ3 長野・佐久長聖
菅野雄太 教3 埼玉・西武文理
長屋匡起 スポ1 長野・佐久長聖
◎は駅伝主将、当日補員から3名まで区間変更可能

▽選手プロフィール

1区 9・5キロ

間瀬田純平(スポ2=佐賀・鳥栖工)

5000メートル 13分55秒83、1万メートル 29分13秒46。第54回全日本1区区間11位。

2区 11・1キロ

山口智規(スポ2=福島・学法石川)

5000メートル 13分34秒95、1万メートル 29分35秒47。第54回全日本4区区間3位。

3区 11・9キロ

石塚陽士(教3=東京・早実)

5000メートル 13分33秒86、1万メートル 27分58秒53。第53回全日本5区区間4位、第54回全日本3区区間3位。

4区 11・8キロ

工藤慎作(スポ1=千葉・八千代松陰)

5000メートル 13分56秒60、1万メートル 28分31秒87。

5区 12・4キロ

菖蒲敦司駅伝主将(スポ4=山口・西京)

5000メートル 13分52秒46、1万メートル 28分58秒10。第52回全日本5区区間9位、第53回全日本4区区間5位、第54回全日本6区区間15位。

6区 12・8キロ

北村光(スポ4=群馬・樹徳)

5000メートル 13分58秒64。

7区 17・6キロ

宮岡凛太(商2=神奈川・鎌倉学園)

5000メートル 14分23秒81、1万メートル 30分48秒48。

8区 19・7キロ

伊福陽太(政経3=京都・洛南)

5000メートル 14分07秒53、1万メートル 30分15秒42。

補員

佐藤航希(スポ4=宮崎日大)

5000メートル 13分59秒96、1万メートル 29分35秒12。第53回全日本6区区間17位、第54回全日本8区区間5位。

補員

諸冨湧(文3=京都・洛南)

5000メートル 14分02秒67、1万メートル 30分07秒86。第52回全日本6区区間8位。

補員

伊藤大志(スポ3=長野・佐久長聖)

5000メートル 13分59秒96、1万メートル 29分35秒12。第53回全日本1区区間7位、第54回全日本7区区間5位。

補員

菅野雄太(教3=埼玉・西武学園文理)

5000メートル 14分06秒75、1万メートル 29分25秒21。

補員

長屋 匡起(スポ1=長野・佐久長聖)

5000メートル 14分05秒64、1万メートル 29分42秒54。