2度目の出走となる今年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で、「花の2区」と呼ばれるエース区間に起用された石塚陽士(教2=東京・早実)。爆発力のある走りとはならなかったが、持ち前の安定感で、他校のエースと競り合い、チームに寄与する走りを見せた。駅伝、トラックともに更なる高みへ。太鼓判を押されて入学したルーキーが、上級生として駆け出そうとする今、箱根の反省と見据える今後について伺った。
※この取材は1月28日に行われたものです。
最低限の走りをすることはできた
質問に答える石塚
――解散期間はどのように過ごしていましたか
今年は都道府県駅伝(全国都道府県対抗男子駅伝)があって、そこに向けてあまり休めないこともあったので、多少は息抜きもしつつ練習していました。昨年はしっかり1週間走らないと決めていたのですが、今年に関しては走りながら疲労を抜いていくというかたちでやっていました。
――箱根から時間が経ちましたが、改めてご自身の走りを振り返るといかがですか
最低限粘れたので、井川さん(龍人、スポ4=熊本・九州学院)の9人抜きにつながりましたし、そこの部分に関しては最低限の仕事は果たせたと思っています。ですが、やはり花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)から「67分フラットで行ってほしい」という言葉もあったとおり、かなり期待されていたところもあったので、そこに貢献できなかった部分に関しては悔しいというか、申し訳ない気持ちです。
――2区を走るのが決まったのは早かったと思いますが、実際に2区出走が決まった時の気持ちはいかがでしたか
「今年からか」というのがありました。本当は3年からなど、もう少し自信がついてからやっていくのがベストだったと思うのですが、チーム全体を見回した時に「僕しかいない」と花田さんがおっしゃってくださいました。不安がっても何も生まれないので、ポジティブにとらえて、期待に応えようという気持ちでした。
――2区の攻略法などでアドバイスをもらったりしましたか
花田さんが(2区の)出走経験があるので、「後半、戸塚の壁がきついので、前半を飛ばしすぎないように」ということを言われました。やはり前半飛ばしてしまうと、どうしても(後半)落ちていってしまって、そこで差がつけられるというのが経験上多いみたいなので、そこは意識してほしいと言われました。
――2区を走る上で意識していた選手はいましたか
やはり東洋大の石田選手とか、国学院の平林選手とか、同学年で走る選手が結構いたので、そこには負けたくないという気持ちで走っていました。
――前回大会は程よい緊張感で臨めたとおっしゃっていましたが、今年は緊張しましたか
今年に関しても、過度な緊張はせずに程よい緊張感で臨めたと思っています。ですが、背中の張りがレース直前に結構出てしまって、そこは自分の心とは裏腹にというか、体には正直に緊張が出てしまった部分かなと思っています。
――1区の間瀬田純平選手(スポ1=佐賀・鳥栖工)の走りはどのように見ていましたか
想定内と言いますか、もう少しやってくれたらうれしいなというのは正直あったのですが、そこまで大きな失敗もせずに、しっかりまとめて走ってきてくれたので、そこに関しては1年生ながらしっかり走ってくれたなという印象です。
――気候面やコンディションはいかがでしたか
気象条件とかその辺に関しては、比較的いいコンディションの大会だったと思っています。
――間瀬田選手からタスキをもらう際や、井川選手にタスキを渡す際に何か声かけはされましたか
あまり覚えていなくて(笑)。間瀬田に関しては「よく頑張ったね」みたいな雰囲気のことを言った記憶があります。井川さんに対しては、「後はよろしくお願いします」みたいな感じだったと思います。
――単独走の時間も長かったと思いますが、それについてはいかがですか
留学生に前後で挟まれていたり、後ろから東海大の石原選手(翔太郎)が追ってきたりとかで結構難しい局面にはなりました。そこで、自分の調子と相談しながら、単独走を選ばないといけないというところもありました。単独走に関しては、自分から選んでやったので、そこに関しては特に何も思っていないというか、今できる仕事を淡々と果たそうという気持ちで走っていました。
――レース中に一番きつかったのはやはり最後の戸塚の坂ですか
そうですね、止まりましたね(笑)。
――目標にしていた「爆発力のある走り」という点ではご自身の走りをどのように評価していますか
できていないと思っています。前半飛ばすなとは言われつつ、もう少し飛ばしたかったところもありましたし、権太坂で結構想定タイムより落としていたというのもあったので、そこに関しては爆発力が足りなかったと思います。来年、次回以降の改善点だと思います。
総合6位は今の早稲田の実力
2区を走る石塚。淡々と前を追った
――2区を走って得られた収穫と課題は何ですか
今年は、エース力が早稲田には足りないなと感じています。ほかの学校は上がかなり飛び抜けているのですが、今年は、飛び抜けた人が、井川さん以外にほぼいなかったというところがありました。そこは、箱根や出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)で勝っていこうというときにかなり課題になってくると思うので、自分が上を見据えていかなければいけないと感じています。あとは、後ろから追ってきて抜かされるという経験が今までなかったので、(今回の箱根で)抜かされたというのが悔しいですし、今後そういう経験をしたくないので、良い経験になったと感じています。
――この1年間は一人で練習されることも多かったと思いますが、箱根路でその経験はどのように活きましたか
やはり一人で練習しているので、自分の体調と比べて無理に(前に)つくという選択肢が良くも悪くも浮かばなくて、一人で行った方がいいという判断ができたのは、結果的に見たら間違えていなかったと思います。そういう判断ができるのは他を見てもあまりいないと思うので、そこに関しては生きてきているのかなと思います。
――ご家族も応援に来られていましたか
はい、来ていました。権田坂付近にいたみたいなのですが、全然気づかなくて(笑)。中高の顧問だけは気づいたのですが、それ以外はほぼ気づきませんでした(笑)。後から「あ、来てくれてたんだ。ごめんね。」みたいな感じの人が、親に限らず多かったかなと感じています。
――久しぶりの沿道応援はやはり力になりましたか
力にはなります。周りも正々堂々と応援できますし、(声援を)受けている側としても、素直に声援を受け取れるので、やはり力になったなと感じています。
――給水は誰が担当し、どんな声かけをしてもらいましたか
10キロで、同学年の草野(洸正、商2=埼玉・浦和)で、15キロでは、濱本さん(寛人、スポ3=熊本・宇土)が給水をしてくれました。特に、げきを飛ばすというよりは、自分の力で走ってこいというような声かけだったので、多分(自分のことを)信頼してくれているんだろうなというのが伝わるような、声かけと給水だったと総じて思っています。
――花田監督からの声かけで印象に残っているものを教えてください
花田さんは他の取材で、声かけをしないで選手が自分でできるのが理想とおっしゃっていたみたいで、今回の大会はあまり声かけをしないようにと心がけていたと思います。その中でも、最後の権太坂のところでは、端的に「腕振れ、腕振れ」と言ってくれて、きつくなるとそういう基本的なところが忘れがちになってしまうで、単純に大事なところを繰り返すだけでも、アドバイスを適切な場面でいただけたと感じています。
――往路の順位と振り返りをお願いします
後半区間の3、4、5区が3人とも頑張ってくれたので、1、2区で順位が沈んだ割には、だいぶ盛り返してきてくれました。大志(伊藤、スポ2=長野・佐久長聖)も山で盛り返してくれましたし、自分がやったというよりかは、他の後ろの3人が頑張ってくれた5位だと思っています。
――復路の選手の走りはどのように見ていましたか
堅実な走りなのかなと思っていて、良くも悪くも花田さんの設定タイムに転がされていたなという印象を受けました。ですが、菅野(雄太、教2=埼玉・西武文理)や伊福陽太(政経2=京都・洛南)が、大きな大会が初めてのなかでしっかり自分の力を出し切ってくれたので、そこは非常に同期としてうれしかったですし、やはり彼らには負けないようにしないとなと感じました。
――総合6位という結果についてどのようにお考えですか
それが今年の早稲田の実力だと思います。この結果に関しては特にこれ以上何かができたとか、これができなかったとかはなく、素直な総合成績です。そして、この結果を素直に受け止めて、来年に生かしていくことが大事になってくるので、特に6位に対して、シード権を取れてほっとしたというところはありつつも、そのままではいけないなとも思いました。今後上げていきたいなと思っています。
――今年の箱根では、2年生4人が出走しました。それについてはどのようにお考えですか
こんなに2年目から4人も走るなんて正直思っていなくて、走った菅野と伊福ですら考えていなかったと思います。(最初は)実質スポーツ推薦が大志の1人から始まったのですが、スポーツ推薦、内部進学、指定校推薦、一般入学というように全員入学形態が違って入ってくるというのはやはり、早稲田らしいと言いますか、他の大学にはない特色です。そこについて「俺らで頑張っていこうね」という話を、箱根前も箱根後もできたのがよかったなと思っています。
上級生としての覚悟
――今後出場する大会があれば教えてください
2月の青梅マラソン30キロに練習の一環として出ようと思っています。練習ではなく、しっかり走る大会となると、3月の学生ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)が次の大きなレースになってくるのかなと考えています。
――今季のトラックシーズンの目標を教えてください
2年生の時に関しては、トラックシーズンがうまくいかなかったので、今年は頑張りたいです。学生ハーフが終わったら、しっかりトラックの5000、1万メートルの方に切り替えて、日本選手権には出場したいと考えています。学生ハーフで一応ユニバーシアード(世界ユニバシティー大会)を狙いつつ、その結果次第にもなるのですが、トラックで結果を残していきたいので、5000、1万メートルメインで日本選手権標準を切って、出場できたらと思っています。
――今年は上級生になりますが、3年生として4年生をどのように支えていきたいですか
もう3年生なのかというところが正直な感想です。上級生という立場になってくるので、言葉で言うよりは、練習で引っ張って背中で見せていくというのを意識しつつ、4年生をも引っ張っていくという気持ちで練習を行なって、貢献していきたいなと思っています。
――新体制となった現在の雰囲気を教えてください
あまり新体制になってから、僕自身部活に出られていないというところが正直あって(笑)。雰囲気が大きく変わったとかはまだ感じられていないのですが、菖蒲さん(敦司、スポ3=山口・西京)を中心にさらにエネルギッシュな布陣に上がってくると思うので、そこには期待しつつ、新たな気持ちでみんな臨めていると感じています。
――新体制になり、来年の箱根の目標を話す機会などはありましたか
多分これからになってくると思います。解散期間が終わって、すぐテスト週間に入ってという感じで、なかなか新チームの具体的な目標を決める時間が取れていなかったので。おそらく、どこかしらの駅伝では優勝を狙いたいねという話になってくると思うので、そこで話し合って出てきたことに関して真摯(しんし)に向き合って、達成できるように頑張っていこうと思っています。
――最後に、今年1年の抱負をお願いします
中学時代から、春か冬にしか結果を出せないというシーズンがずっと続いているので、今年はそれを脱却したいと思っています。トラックシーズンでは、まずは日本選手権出場をねらい、駅伝シーズンに関しては、区間賞を取りたいと思っています。エース区間に配属されることが多くなってくるとは思うのですが、そのなかでも、他校のエースに勝っていかないと優勝は見えてこないと思っているので、この二本柱を大きな目標としていこうと考えています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 加藤志保、草間日陽里)
◆石塚陽士(いしづか・はると)
2002(平14)年4月22日生まれ。170センチ。東京・早実高出身。教育学部2年。第99回箱根2区1時間8分5秒(区間10位)。今年の解散期間は練習との両立も図りながら過ごしていたという石塚選手ですが、伊福選手をはじめ、同期の選手やマネジャー、トレーナーと一緒にUSJを満喫してきたそうです! 今年もワセダの顔としてトラック、駅伝ともに力強い走りを見せてくれるでしょう!