今年正月の悔しいシード落ちから一年、またこの季節がやってくる。第99回東京箱根間往復大学駅伝(箱根)に向けての区間エントリーが発表された。予選会を全体4位で通過した早大。二年ぶりのシード権獲得そしてその先にある目標の『往路3位以内、総合5位以内』を達成すべく、本戦に向けてどの様な区間配置を花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)は選択したのか見ていく。
全10区間のスタートである1区にエントリーされたのはルーキーの間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工)。1区は様々なレース展開が想定され、対応力が求められる区間だ。集団の中での位置取りやライバル選手への仕掛けへの対応など、要所での判断にどのように対処していくのか。間瀬田は11月の全日本大学駅伝対校選手権(全日本)で1区を走り、各校のエース級がそろう中において冷静にレースを進め、また最後の仕掛けにも冷静に対処し早大を勢いづけた。箱根においても勢いをもたらすことを期待されての起用といえる。
全日本1区を走る間瀬田。箱根でもフレッシュな走りで早大に勢いをもたらせるか
各校のエースが集い、『花の2区』とも呼ばれる2区にエントリーされたのは石塚陽士(教2=東京・早実)。2区は各校のエース級と争える力、そして最後に控える権太坂のきつい上りに対応する力も求められる。石塚は昨年4区で区間6位の好走をしている。この一年で力をつけてきたことはもちろん、上り坂に関しても決して苦にしないことを考えての起用といえるだろう。
街から海へと向かう3区。3区で起用されたのは井川龍人(スポ4=熊本・九州学院)。3区における最大の敵は海からの風。当日の天候次第でレース展開が一変してしまうだけに、風に負けない力が求められる。3区は単独走になる可能性も高く、堅実なレース運びが求められる区間。これまで多くの経験を積んできた井川で確実に上位でタスキをつなぎたい。井川にとっては1年生の時以来の3区での走りとなる。3区の悔しさは3区で晴らすことが本人も望むところ。チームに勢いをもたらすため、そして自分自身の悔しさを晴らす走りを期待したい。
第96回箱根3区を走る井川。1年時は区間14位に沈んだ
続く4区にエントリーされたのは宮岡凜太(商1=神奈川・鎌倉学園)。4区は平地区間では最も距離の短い区間であり、経験を積ませる意味からもルーキーがエントリーされることも多い区間。もちろん強力なライバルと共に走ることにはなるが、重要な試金石となるだろう。
箱根の山の二区間には経験者2人が配置された。5区に起用された伊藤大志(スポ2=長野・佐久長聖)は昨年区間11位と、初の山上りながらも一定の評価ができる走りを見せた。今年はさらに成長した走りを見せることが期待されている。山下りの6区は北村光(スポ3=群馬・樹徳)が起用された。前回は走ることが出来なかったものの、前々回はルーキーながらも58分台で山を下った。近年、箱根の山で苦戦している早大としては、経験者二人で鬼門とも言える山を攻略し、目標順位へと勢いをもたらしたい。
全日本で7区区間5位と好走した伊藤大志。山上りで昨年を超える成績を残すことができるか
厳しい気温変化に対応する必要のある7区には小指卓也(スポ4=福島・学法石川)が起用。小指は前々回大会で9区を走り区間4位と好走している。7区は中盤以降細かいアップダウンが続く区間。区間こそ違がえども、9区での好走でアップダウンへの適性は示しているといえる。6区の展開次第では前を追う重要な区間にもなりえるため4年生の力を示したい。
8区には伊福陽太(政経2=京都・洛南)が起用された。伊福は大学駅伝の経験こそないものの、11月の上尾ハーフマラソンで62分台をマークするなど今絶好調の選手だ。ロードの適正の高さは実践で示している、デビュー戦での激走が期待される。
全日本5区を走る小指。全日本では区間11位と悔しさが残ったが、箱根で有終の美を飾れるか
『裏のエース区間』9区には菖蒲敦司(スポ3=山口・西京)が起用された。9区は序盤にアップダウンの多い難しい区間。そして単独走で長い区間を走らなければならず戦略が難しい区間。しかし菖蒲の高い脚力、そしてクレバーな走りで、最終区間へ勢いをつける走りを期待したい。
10区には辻文哉(政経3=東京・早実)が起用された。仲間の待つ大手町に向けてタスキを運ぶ役目の10区。一方で順位争いの佳境を迎える区間でもある。どのような展開になるのかにもよるが、一つでも上の順位で大手町にタスキを届けられるか。
以上が10区間の区間配置だが、6人までできる区間変更にも十分に含みを持たせ、控えにも強力なメンバーが控える。鈴木創士駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)や佐藤航希(スポ3=宮崎日大)といった経験豊富な上級生をどのように起用するのか、そして全日本で好走した山口智規(スポ1=福島・学法石川)の箱根デビューがどの区間になるのかにも注目が集まる。
合同取材で集団走を率いる鈴木主将。今季はまだ駅伝への出走はないが、調子は上がってきている
今年の正月の悔しさは選手たちも忘れていない。そして箱根の悔しさは箱根でしか晴らせない。当日の区間変更を考えれば、誰が走るかはまだ分からないが、走る一人一人が力を出し切れば必ず結果はついてくるに違いない。当日の区間変更、そして選手たちの走りに注目したい。戦いは既に始まっている。
(記事 出口啓貴)
区間エントリー
※当日のメンバー変更は補員との交代のみ、6人まで(各日4人まで)可。
1区(21・3キロ)
◆間瀬田純平(ませだ・じゅんぺい)
2004(平16)年2月17日生まれ。172センチ。佐賀・鳥栖工高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル13分57秒41、1万メートル29分13秒46、ハーフマラソン1時間4分50秒。
2区(23・1キロ)
◆石塚陽士(いしづか・はると)
2002(平14)年4月22日生まれ。170センチ。東京・早実高出身。教育学部2年。自己記録:5000メートル13分48秒81、1万メートル28分36秒53、ハーフマラソン1時間4分02秒。箱根第98回4区6位。
3区(21・4キロ)
◆井川龍人(いがわ・りゅうと)
2000(平12)年9月4日生まれ。178センチ。熊本・九州学院高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:5000メートル13分45秒30、1万メートル27分59秒74、ハーフマラソン1時間2分39秒。箱根第98回1区16位、第97回1区5位、第96回3区14位。
4区(20・9キロ)
◆宮岡凜太(みやおか・りんた)
2003年10月7日生まれ。165センチ。神奈川・鎌倉学園高出身。商学部1年。自己記録:5000メートル14分16秒96、1万メートル30分18秒01、ハーフマラソン1時間4分35秒。
5区(20・8キロ)
◆伊藤大志(いとう・たいし)
2003(平15)年2月2日生まれ。171センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル13分35秒70、1万メートル29分42秒24、ハーフマラソン1時間3分37秒。箱根第98回5区11位。
6区(20・8キロ)
◆北村光(きたむら・ひかる)
2002(平14)年1月18日生まれ。168センチ。群馬・樹徳高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分58秒64、1万メートル29分00秒51、ハーフマラソン1時間5分03秒。箱根第97回6区8位。
7区(21・3キロ)
◆小指卓也(こざす・たくや)
2000(平12)年9月12日生まれ。173センチ。福島・学法石川高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:5000メートル13分41秒01、1万メートル29分42秒82。箱根第97回9区4位。
8区(21・4キロ)
◆伊福陽太(いふく・ようた)
2002(平14)年12月23日生まれ。172センチ。京都・洛南高出身。政治経済学部2年。自己記録:5000メートル14分12秒60、1万メートル30分15秒42、ハーフマラソン1時間2分50秒。
9区(23・1キロ)
◆菖蒲敦司(しょうぶ・あつし)
2001(平13)年12月16日生まれ。168センチ。山口・西京高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分52秒46、1万メートル28分58秒10、
ハーフマラソン1時間4分47秒。
10区(23・0キロ)
◆辻文哉(つじ・ふみや)
2002(平14)年1月4日生まれ。167センチ。東京・早実高出身。政治経済学部3年。自己記録:5000メートル13分49秒31、1万メートル28分54秒74、ハーフマラソン1時間3分56秒。
補員
◆鈴木創士(すずき・そうし)
2001(平13)年3月27日生まれ。176センチ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:5000メートル13分54秒40、1万メートル28分26秒41、ハーフマラソン1時間3分07秒。箱根第98回7区5位、第97回4区3位、第96回7区2位。
◆佐藤航希(さとう・こうき)
2001(平13)年8月2日生まれ。168センチ。宮崎日大高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分59秒96、1万メートル29分35秒12、ハーフマラソン1時間3分05秒。箱根第98回9区14位。
◆諸冨湧(もろとみ・わく)
2001(平13)年10月12日生まれ。167センチ。京都・洛南高出身。文学部3年。自己記録:5000メートル14分07秒20、1万メートル30分07秒86、ハーフマラソン1時間4分58秒。箱根第97回5区19位。
◆菅野雄太(かんの・ゆうた)
2002(平14)年5月7日生まれ。165センチ。埼玉・西武文理出身。教育学部2年。自己記録:5000メートル14分22秒15、1万メートル30分19秒19、ハーフマラソン1時間4分31秒。
◆須山向陽(すやま・ひなた)
2003年4月7日生まれ。171センチ。鹿児島城西高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分15秒33、1万メートル30分42秒51、ハーフマラソン1時間5分57秒。
◆山口智規(やまぐち・とものり)
2003(平15)年4月13日生まれ。172センチ。福島・学法石川高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル13分35秒16、1万メートル29分35秒47、ハーフマラソン1時間3分09秒。