前回の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)のエントリーから外れるも5月の関東学生対校選手権(関カレ)でエンジデビューを勝ち取り、東京箱根間往復大学駅伝予選会(予選会)にも出走するなど成長著しい菅野雄太(教2=埼玉・西武文理)。しかし、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では控えに甘んじ悔しい思いもした。箱根で大学駅伝初出場を果たせるか。今シーズンの取り組みや、箱根に向けた意気込みを伺った。
※この取材は12月11日に行われたものです。
驚きのエンジデビュー
関カレのハーフマラソンのレースを走る菅野
――前回の箱根について伺います。同期のメンバーが出場した中で菅野選手自身どのような心境でしたか
事前の集中練習にも絡むことができなくて非常に悔しかった思いはありましたが、自分の高校時代の持ちタイムも速いわけではないですし、まだ一年目だということもあって来年に向けてすぐに気持ちを切り替えることができました。
――シード落ちというチームの結果についてはどう思いましたか
当日はサポートに回っていたので、当事者という意識が強くなくてあまり重く受け止めていませんでした。しかし、今年度予選会を経験したことで、シード落ちという結果が一年の流れにも影響してしまうような重大なことだったと気付き、来年の箱根はどのようなかたちでもシード落ちは防ぎたいと思います。
――次にシーズン前半について伺います。トラックシーズン全体の目標を教えてください
5000メートルでは自分の中での一つの指標であった14分20秒を切ることです。出走することはありませんでしたが1万メートルでは29分台前半を出すということを目標にやっていました。
――今年の5月に5000メートルの自己ベストを更新しましたが、スピード練習で意識していたことはありましたか
花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)が度々練習を見てくださっていた時期で、これをこなせば14分10秒を狙えるというようなメニューをこなして自信をつけて(試合に)臨んだので、特にスピードに特化した練習はしていないです。
――同じく5月の関カレのハーフマラソンでエンジデビューを果たしました。2年目の春にエンジデビューしたことについてはどう捉えていますか
高校時代は無名だったこともあり非常に驚いている反面、2年目に主力に絡めたのは、他校の選手との距離を感じることができたという点で、残りの競技人生にもつながっていくので良かったと思います。
――エンジデビューするまでにつらかったことは何ですか
昨年の夏までは、受験のブランクからうまく抜け出すことができず、練習では走れても試合では思うような結果が出ないことがあり、そこは自分としてはつらかったです。しかし、その後にうまくつながっていったので良かったです。
――トラックシーズンで得られた収穫と課題は何ですか
収穫としては、トラックレースを通して自分が余裕を持って走れるペース帯が大体分かったので、それをロードにおいても生かして自信にしていけることだと思います。課題に関しては、やはり他校のエース級の選手と比較するとスピードが段違いに劣っているので、スピード持久が来年以降の課題です。
――夏からAチームに合流したとのことですが、その経緯を教えてください
5月の第2回早大競技会以降、関カレへの個別調整を行っていて、関カレ後も士別ハーフ(士別ハーフマラソン大会)に出走するメンバーは個別調整というかたちでやっていました。士別ハーフに出走するメンバーは大体Aチームの選手だったので、その流れでAチームと一緒に練習していくという感じになっていました。
――夏合宿では順調に練習を消化できたと思いますが、その要因は
授業や課題があまりなかったので、睡眠をいつも以上に取れたことがまず一つの要因です。あとはトレーナーの方の手厚いサポートを受けていたことも要因だと思います。
――花田監督の体制になってからケアが手厚くなったとお聞きしました。具体的にはどのようなことをしていますか
現在、週に1、2回トレーナーの方が寮にいらしてくださります。また合宿でも、昨年からそうだったのですが1人トレーナーの方が同伴して練習の合間に選手を見てくださるので、そういった面でケアは大きいかなと思います。
――夏合宿をこなせたことで何か成長したと感じた点はありますか
今年の夏合宿で多かったメニューが距離走だったので、距離に対する不安がほとんどなくなり、予選会にもいい感じにつながったと思います。
――夏場に体調を崩さないように取り組んでいたことはありますか
特に意識して取り組んでいたわけではないですが、練習前の水分補給は徹底していました。
「自分らしいレース展開で運べた」予選会
予選会を走る菅野
――続いて予選会以降のことについてお聞きします。予選会での個人の目標を教えてください
花田監督の想定では70位前後の1時間4分フラットで通過ということで、自分自身としても1時間4分前後で通過したいと考えていました。
――夏合宿後、初めてのレースということで調子はいかがでしたか
夏合宿明けに少し脚に違和感があって、走れない期間が1週間近くありました。そこから復調途上という感じで予選会に臨んだので、調子が良かったわけではないです。
――予選会が4度目のハーフマラソンでしたが、ハーフを走るうえでコツなどはつかんでいましたか
前半の10キロまでをある程度余裕を持って走り、周りのペースが落ちてくる頃にしっかり周りを吸収しつつ後半(ペースを)上げていけると、自分の強みを生かせるレースが毎回できると思います。
――レース中に意識していたことはありますか
順位を上げていく際に集団を吸収していくことが多かったのですが、そこで集団に属してしまうとペースが落ちるので、集団に混ざらずにしっかり抜いていくことを意識しました。
――タイムと順位をそれぞれ振り返っていかがですか
花田監督の想定の下限くらいにはまとめられましたし、調子があまり良くない中でも自分らしいレース展開で運べたので良かったです。
――ハーフマラソンでは出走した4レースとも1時間4分台を記録しました。それについてはどうですか
ロードで安定感があるというのは駅伝において非常に求められることですが、ベースラインを1時間4分台ではなく1時間3分台前半とかに上げていかなければならないと思います。
――全日本では15人のメンバーにはエントリーされましたが、出走とはなりませんでした。当時はどのような心境でしたか
自分の立ち位置は第一リザーブということで、花田監督からは「いつでも走れる準備をしといて」と言われていました。区間エントリーに入れなかったこと自体は悔しかったですが、自分もまだ走るかもしれないという意識で残りの練習に取り組んでいました。
――エントリーメンバーとして挑む初めての大学駅伝でしたが、新しい発見はありましたか
他の大学の選手を結構意識するようになりました。以前は他大学の選手はあまり知らなかったですが、他大学の選手の走りの特徴や持ちタイム、最近の調子なども調べ上げていろいろ把握するようになりました。
――他大学で意識している選手は誰ですか
東洋大学の梅崎選手(梅崎蓮)は割と自分とタイプが近く、スピード型というよりはハーフで力を発揮できる選手です。タイプが似ている一方で、自分とは実力差が結構あるので、そういった面で意識しています。
――全日本の結果を受けて、菅野選手自身が感じたチームとしての箱根に向けた手応えはありましたか
チームとしての手応えは、前半区間と後半の長い2区間で想定以上の走りができていて、うちの大学は潜在能力があるのかなと思いました。一方で、5、6区のように安定感が必要な場面で想定通りの走りができないと、どの大学においても共通ですが順位を落としてしまうので、安定感はやはり大切だと感じました。
――11月13日の日体大長距離競技会に出走後、Twitterで「調子良かっただけあって悔しいしもったいない」とおっしゃっていましたが、記録を狙ったレースだったのですか
全日本前の調整がとても調子良くて、自分としても13分台から14分台一桁を狙える手応えがあった上でのレースでした。
――また、そこで5000メートルを走った意図を教えてください
この時期に1万メートルを走って故障につながるよりは、5000メートルで軽く刺激を入れる方が良いという監督の判断で、(全日本の)リザーブの選手は走ることになりました。
「実力を100パーセント出し切れる準備を」
質問に答える菅野
――今シーズンのこれまでを振り返っていきます。自身の出来についてどう思っていますか
基本的に故障なく練習を継続できていて、ここ最近は上がり調子できているので、悪くないと思っています。
――1年目より大きく成長したと思う点はありますか
距離への対応ができてきたので、ポイント練習の距離が長い練習やセット数が多いメニューでも最後まで余裕を持ってこなせるようになり、次の練習にもつながりやすくなった点が昨年より成長したと思います。
――今シーズン継続して練習を積めていますが、ケガをしないために気を付けていることは何ですか
1日30分以上は寮でセルフケアをするようにしています。
――箱根まで残り1カ月を切りました。改めて現在の調子はいかがですか
ここ2週間とても調子が良くて、箱根に向けて非常に質の高い練習ができているので、自分としてもそこは自信になっています。また、箱根に向けて走る準備は十分にできていると思います。
――チームの最近の雰囲気、状況はいかがですか
練習の質が上がったことで全員が集中してポイント練習に臨めているので、練習中の雰囲気はとても良いです。
――菅野選手がチーム内で意識している選手はいますか
辻さん(辻文哉、政経3=東京・早実)と菖蒲さん(菖蒲敦司、スポ3=山口・西京)と同期の伊福(伊福陽太、政経2=京都・洛南)は意識しています。
――特に、同期で同じく一般組の伊福選手はどのような存在ですか
伊福とはよくレース後にお互い声を掛け合うのですが、お互い高め合っていこう、という感じで切磋琢磨(せっさたくま)できる存在だと思います。
――菅野選手の駅伝に対する大学入学当初からの思いについて聞かせてください
箱根に限定されてしまうかもしれないのですが、幼少期からテレビで見たり、高校で陸上競技を始めた際にも母校から箱根を走る先輩が何人かいて、それを見ていたりしていました。そのため、大学入学当初から箱根を走ることに憧れを抱いていました。
――自分の走りの長所はどのようなところですか
まず一つはロードレースにおける安定感だと思うのですが、レース展開の面でも他の選手がペースダウンしていく後半で尻上がりなレースができるところが自分の強みだと思います。
――走りたい区間はありますか
9区と10区を走りたいです。
――理由を教えてください
自分の特性を生かしたいのと、10区は締めくくる区間でゴール前にチームメートが待ってくれているので、そういうのを味わいたいです。
――個人としての目標は何ですか
実力を十分に出し切れれば、復路なら区間5位以内も見えてくると思います。そのため、まずは実力を100パーセント出し切れる準備をして、区間5位以内を目指していきたいです。
――最後に、箱根に向けた意気込みをお願いします
今言ったこととかぶりますが、復路になる可能性が高いので、どの区間を任されてもしっかり区間5位以内でうまくつなげるように、または終止符を打てるように頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 沼澤泰平、川上璃々)
◆菅野雄太(かんの・ゆうた)
2002(平14)年5月7日生まれ。165センチ。埼玉・西武文理出身。教育学部2年。自己記録:5000メートル14分22秒15、1万メートル30分19秒19、ハーフマラソン1時間4分31秒。初めての対談にも関わらず、しっかりと丁寧にインタビューに応じてくださいました。「圧巻の走り」に期待です!