今シーズン後半で調子をつかみ、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)のエントリーメンバー入りを果たした須山向陽(スポ1=鹿児島城西)。高校3年時からケガに翻弄(ほんろう)され、今ようやく本来の走りを取り戻した須山が抱く、大学駅伝初出走に向けた思いとは。
※この取材は12月11日に行われたものです。
「今までで一番調子がいい」
7月の早大競技会を走る須山
――エントリーメンバーに選ばれた率直な感想を教えてください
今までずっとメンバーから外れていたので、率直にうれしいです。
――選ばれる自信はありましたか
1カ月前くらいまでは全然なかったのですが、最近急に調子が上がってきて、入るかもしれないと思っていました。
――最近の調子はいいのですね
そうですね。今までで一番いいんじゃないかというくらいです。
――調子の良さはいつ頃から感じていますか
上尾シティハーフマラソン(上尾ハーフ)に出た時に、楽に走っているけれどペースは速いという感覚ができて、そこでつかんだなという感じです。
――ここからはシーズン全体を振り返っていただきたいと思います。長くケガをしていて、復帰戦兼大学デビュー戦となったのが7月の早大競技会でした。ご自身の中でこのレースはどういった位置付けでしたか
早大競技会は1年ぶりくらいのレースだったので、とにかくレースに慣れること、夏合宿に向けて今自分がどのくらいの状態なのかを確認するというレースでした。
――そこまでに練習は積めていましたか
あの時は練習を始めて2週間とかでレースに出ました。1年間のブランクがあった中で、という感じです。
――夏合宿はいかがでしたか
合宿メンバーに選ばれてはいたのですが、体調不良で1日目で帰ってしまいました。
――夏の練習の消化率はいかがでしたか
夏は全く消化していないです。体調を崩して、その後アキレス腱(けん)の故障をしてしまいました。
――前半シーズンでは同期の山口智規(スポ1=福島・学法石川)選手、間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工)選手が日本学生対校選手権や日本選手権に出場されていましたが、焦りはありましたか
自分もスポーツ推薦で入っているので焦りなどはもちろんあったのですが、実際治さないと頑張れないので、治すことに専念しようとずっと思っていました。
――ケガをしている時はどのようなことを意識してトレーニングされていましたか
まず再発しないようにすることを念頭に置いて、基本的にはリハビリとオーソドックスなこと、例えば腹筋などをやっていました。
――ケガ期間の取り組みで今に生きていると思うことはありますか
あまりありませんが、ケガをしにくい体づくりはできたかなと思います。
――モチベーションはどのように保たれていましたか
正直モチベーションはかなり下がっていたのですが、同期の大会とかを近くで見るたびにああ頑張ろうと思っていました。キラキラして見えて、早く走りたいなという気持ちでした。
長距離は得意
早慶対抗競技会(早慶戦)で1500メートルのレースを走る須山
――9月の早慶戦で初エンジとなりましたがいかがでしたか
1500メートルとあまり得意ではない中で、早慶戦はスピードを戻してそこから秋の駅伝練習につなげるという位置付けのレースだったので、1位は狙っていましたがエンジのプレッシャーはそこまでなかったです。
――長距離ブロックで唯一の出場でしたが、どういった経緯で出場が決まったのでしょうか
早慶戦の2週間前にジョグに復帰したのですが、そこで花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)から、ここから長い距離をやるのは少しきついから、1500(メートル)でスピードを戻して秋に移行しようかというふうに話を受けて出場しました。
――10月の早大競技会と11月の日体大競技会では5000メートルを走られました。この2つのトラックレースの評価を教えてください
早大競技会は最初の位置取りがかなり後ろで、体力的にもかなり余裕があったのですが、前を追う展開だったのできつかったなと思います。ですが復帰して1カ月くらいのレースだったので、そこで14分38というのは自分的には良かったのではないかと思います。日体大競技会は早大競技会とほぼ一緒くらいのタイムでしたが、もう練習がある程度積めていて早大競技会よりは速いタイムでいけると思っていたので、結構ショックでした。
――日体大競技会から1週間後に上尾ハーフ出場となりました。距離の対応は難しくなかったですか
長い距離への不安はそこまでありません。日体大に向けて5000メートルの練習をしていて、ハーフは全然練習していなかったのですが、謎の自信があって走れたという感じでした。
――その自信はどこから来ていると考えていますか
鹿児島県下一周市郡対抗駅伝(県下一周駅伝)という駅伝があって、そこであまり練習していない割には走れたというのがあったので、長い距離が得意だと思ったのかもしれません。
――実際に上尾ハーフを走ってみて、距離に対してはどういった印象を受けましたか
走ってみても全然きつくなかったです。ペース走で花田さんからタイムが決められていて、3分15から10の感覚でいくように言われていたのですが、10キロまで3分10くらいでいって、それでも余裕だったので最後はもっと上げました。
――レース全体の自己評価を教えてください
楽に走れて、その後調子もグンと上がったので、95点くらいです。
――箱根は出走となれば大体ハーフの距離ですが、箱根につながる収穫はありましたか
一番は自信になったので、そこが良かったかなと思います。
早稲田に貢献できる走りを
質問に答える須山
――ここからは箱根について伺っていきたいと思います。まず、予選会と全日本大学駅伝対校選手権(全日本)のチームの走りを見ていかがでしたか
予選会は山口がコケてしまったので全体4位という順位でしたが、それがなければ正直全体トップで通過していたと思うので、総合力が高いなというのは感じていました。全日本も予選会組の中ではトップだったと思うので、勝負できるなと思いました。
――箱根に向けた部分で、現在のチームの印象はいかがですか
全日本や予選会の時よりも1回で走る量や質が上がってきているので、かなり状態はいいと思います。
――その中でも1年生の雰囲気はいかがですか
間瀬田、山口を筆頭に調子はいいと思います。
――間瀬田選手、山口選手は全日本も走られていましたが、それに加えて須山選手と宮岡凜太(商1=神奈川・鎌倉学園)選手が今回エントリーとなりました。宮岡選手と話はされましたか
そこまで話してはいないですが、やったね、みたいなことは少し話しました。
――他の同期の選手とは何か話されましたか
昨日は間瀬田と話しました。昨日のポイント練習の後に間瀬田とジョグをして、その時に戻ってきたねと言ってくれて。同じ九州で一緒に大会に出ることもあったので、やっと戻ってきたねと言ってもらいました。
――箱根出走に向けて、ご自身の走りのアピールポイントはどんなところですか
長い距離に対する不安がなく、アップダウンも得意なのでそこを生かしていきたいなというのと、軽い走りが特徴なので、スイスイ走っていけたらなと思っています。
――走りや精神面で、チームの中でどのような役割を担っていきたいですか
同期みんなと仲がいいので、自分が頑張っているから頑張ろうと思ってもらえるようになりたいです。
――箱根に対する特別な思いはありますか
正月に開催されて一番キラキラしているので、出走すれば有名になれるなと思います。
――希望する区間を教えてください
走れるなら目立つ10区を走りたいです。あとは下りが得意なので6区です。
――下りはこれまで経験されたことがありますか
しっかり走ったことはないのですが、先ほども話した県下一周駅伝というので下りが3キロくらい続くところがあって、そこをかなりハイペースで走って区間2位と40秒くらい差をつけられたので得意なのかなと思っています。
――箱根出走に向けて、残りの期間で強化したいところを教えてください
もっと速いペースで走れるようになりたいなと思っています。やはりまだ復帰して3カ月くらいなので、スタミナに自信があるとはいっても他の人よりは全然走り込めていないので、そういった面での不安はあります。あとはケガをしないことです。
――最後に、箱根への意気込みをお願いします
もし走ることになれば大学駅伝初出走なので、早稲田に貢献できるような走りをします。
――ありがとうございました!
(取材・編集 中村凜々子)
◆須山向陽(すやま・ひなた)
2003(平15)年4月7日生まれ。171センチ。鹿児島城西高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分15秒33、ハーフマラソン1時間5分57秒。終始にこやかに質問に答えてくださった須山選手。同期選手のお話になると特にうれしそうに話されていたのが印象的でした。箱根でも、はじける笑顔と軽やかな走りでチームを元気づけてくれることでしょう!