即戦力ルーキーとして、入学後から早くも大舞台でのレースを経験してきた間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工)。トラックシーズンは満足できる結果は残せなかったと語るも、駅伝シーズンではまとまりのある走りを見せてきた。入学からの8カ月を振り返りながら、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)への意気込みを伺った。
※この取材は12月11日に行われたものです。
レベルの差を痛感
関カレの1500メートルのレースを走る間瀬田
――入部から8カ月となりますが、これまでを振り返って感想をお聞かせください
トラックシーズンは正直言って満足できる結果は残せませんでした。1500メートルを中心にやらせていただいたのですが、関カレ(関東学生対校選手権)や日本選手権でもベストを更新できなかったり、やっぱり入賞を目標にしていたのでそこが達成できなかったりと、自分の思うように走れないことが多かったです。U20の世界選手権にも出場させていただいたのですが、そこでも自分の走りができず、海外のレースはすごくいい経験になりましたが、振り返ってみると悔しい思いをしたことの方が多かったです。
――トラックの練習で特に意識していたことはありましたか
大学生と高校生はレースのスピード感が全然違うので、とりあえず大学生のレースに慣れるというところを最初は意識してやっていました。トラックシーズンの後半は世界選手権もあったので、スピード重視にしていきました。
――ケガのため本格的に練習ができるようになったのが4月からと、短い期間で関カレという大舞台に出ることになりましたが不安はありましたか
入学前にケガでしばらく走れていなかった分、スタミナ面があまり足りていない状態で関カレという舞台だったので、正直不安は結構ありました。ただ関カレの前はしっかり練習できていたので、ある程度自信はある状態で臨めました。
――今シーズン1500メートルをメインとして取り組む中で、新たに気付いたことはありますか
高校の時とはラストのスパート合戦が全然違って、大学生は一人一人ラストにキレがありました。そういった面ではレースの進め方というか、自分が勝つためにどういうレース展開をしていけばいいのかということが毎レース変わってくるので、そこは難しいなと思いました。
――世界の舞台を経験して得られたことや、普段の練習や生活に生かせていることはありますか
世界の選手たちとクールダウンを一緒にさせていただく機会があって、そこで少し会話をしたのですが、その中で海外の選手は意識の面で自分たち日本人よりも熱意がすごかったです。陸上で結果を残すために自分の時間を削っていろいろな取り組みをやっていて、そういった面が自分たちはまだ足りてないなと気付かされました。世界(選手権)が終わって合宿シーズンに入っていったので、そこでいつもより長くストレッチをやってみたり、体のケアをしっかりやってみたり、食事面に気を使ったりと、日常生活の中で少しでも競技につながることをやるようにしています。
――初めてエンジを着た時の思いをお聞かせください
早稲田大学は伝統のある大学なので、エンジを着させてもらうということは期待やプレッシャーが大きくなる分、自分がしっかり走らなくてはと思います。エンジを着て情けないレースはできないといつも思っているので、プレッシャーを結構感じてはいます。それでも期待してくれている方々も多いので、声援を力に変えて頑張ろうと思っています。
――大学陸上を経験した率直な感想をお聞かせください
大学生はスタミナやスピードが高校生とは桁違いなので一筋縄ではいかないとは思っています。1500メートルもそうなのですが、5000メートルや1万メートルのレースを見ていても、ラストのキレとか、ペースやレース展開も全然違います。そういった面では高校時代と比べてレベルが上がっているなと思いました。
経験と収穫 着々と力を蓄える
全日本で1区を走る間瀬田
――1次合宿ではトラックシーズンの不調を引きずったとお聞きしたのですが、具体的にはどのような不調だったのですか
トラックシーズンは体重が重くて思うように(身体を)絞れず、そのせいでラストの距離走などで集団から離れそうになってしまうことがあり、不調を引きずっていました。体調面でも状態が上がらず、気分が乗らないというか、ずっと悔しい結果で終わっているので正直走りたくないというように気持ちでも沈んでいました。メンタル的にもうまく気持ちが上がらず、身体的にも調子が上がらないという感じでした。
――練習を諦めずにできたのはなぜですか
同期の山口(智規、スポ1=福島・学法石川)がいて、山口はしっかりトラックシーズンでも結果を残していましたし、合宿中も練習をフルでこなしているので、そういった姿を見て、自分も負けていられないということは思っていました。自分は調子を落としていて全然走れなかったりしたときに山口の姿を見てみるとしっかり先輩に食らいついているというか、逆に先輩を引っ張っているような感じで先頭に立ってやっていたので、そういう姿に自分も頑張らないといけないという気持ちにさせられたというか、山口が頑張っている姿を見て頑張ろうと思いました。
――駅伝の話に移ります。駅伝シーズンを通しての目標は何ですか
箱根でしっかり区間上位で走るということが目標です。1年生なので不安も大きいのですが、その分1年生として恐れなしというか、物怖じしない走りをしていきたいなと思います。
――ロードや距離への移行はうまくいきましたか
合宿中に本当はうまく移行していくつもりだったのですが、2次合宿の途中でコロナに感染してしまい、そこから走れない時期が続いて3次合宿でやっと復帰して徐々に距離を踏んで、というかたちだったので、正直言って夏合宿ではしっかり走り込めていなかったです。しかし予選会(東京箱根間往復大学駅伝予選会)もあったので花田監督(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)と話し合いながら徐々に距離を伸ばしていって、結構急ピッチではあるのですが、徐々にトラックからロードに移行していったという感じです。
――駅伝ハッシュタグ応援の募集の際に、「#ワセダのマセダ」が人気だった印象があったのですが、その中でも応援タグを「#間瀬ダッシュ」にしたのはなぜですか
「#ワセダのマセダ」を皆さん候補に挙げてくださって、自分もそれがいいかなと思ったのですが、いつも一緒にいる栁本さん(匡哉、スポ3=愛知・豊川)に「何がいいですかね」と聞いた時に「『#間瀬ダッシュ』いいでしょ」というふうに言ってくださって、「うわいいな!」と思いました(笑)。「#ワセダのマセダ」はありきたりだなと思っていたのですが、「#間瀬ダッシュ」いいなと感じて、じゃあそれにしようという感じで決めました。
――予選会の自身の調子や結果に対する振り返りをお聞かせください
正直練習で調子は上がっていたのですが、やはり夏に走り込めていない分不安の方が大きいというか、「ちゃんとハーフを走れるのかな」という気持ちはありました。ですが、とりあえず後ろから徐々に順位を上げていこうというのをプランとして思い浮かべていて、結果的に後ろから行くというのがハマりました。夏に走り込めていないというのもありましたが、そのレースにしたおかげで最低限まとめる走りはできたかなと思います。
――ハーフの距離というものは体感としていかがでしたか
10キロ15キロくらいまでは余裕を持って走れていたのですが、15キロから20キロの部分で失速してしまったというか、思ったよりもペースが上がらない体験をしたので、やはりハーフは長いということは感じました。逆にそこをしっかり走れるようになればもう少しタイムを狙っていくことができたのかなというふうに思います。
――チームとして予選会を突破したことに対して感じたことはありましたか
とりあえず一安心という感じです。昨年テレビで応援していてまさかのシード落ちというか、思ってもいなかったような結果だったので、「予選会からか」という気持ちはあったのですが、逆に予選会があったからこそ箱根に向けて20キロというイメージはしっかりできました。予選会を走らせていただいたおかげで20キロの距離を経験することができ、その中でのポイントを頭に入れて練習に取り組めているということは良かったかなと思っています。
――全日本大学駅伝対校選手権(全日本)で1区を任されたことに対してはどのように感じましたか
正直駅伝は流れが結構重要なので、「自分で大丈夫なのかな」というふうには考えていたのですが、花田さんと話して、「1区で行こう」と決まってからはしっかりと切り替えて、いい流れがつくれるように頑張ろうと思って走りました。
――1区での起用は結構前から決まっていたのですか
そうですね。予選会が終わってから自分の調子も上がってきて結構練習もこなせるようになってきた感じではあったので、花田さんからは、「1区や4区あたりで使いたい」ということは言われていました。しかし1区は一番距離が短く、しかも集団で走ることになるので、「1人で走るというよりは集団のリズムに乗って走った方がいいのではないか」ということを花田さんから言っていただいたことで、自分もそう思い、「1区で行こう」という話になりました。
――春の対談では単独走の方が得意とおっしゃっていましたが、練習を通して集団走の方が合うと思ったのですか
夏に走り込めていないこともあり、1人で押していく力がついているのかということを考えた時に少し不安の方が大きかったので、それだったら集団のリズムに乗って走った方がいいというふうに考えました。
――初の大学駅伝で驚いたことや感じたことはありましたか
一番に驚いたのは、メディアの数が全然違うということです。高校とかだとメディアといってもそこまで驚かないというか、数的にもあまり多くないのですが、全日本を経験して注目度が高いなということは感じました。注目度が高い分レースで「失敗できないな」というか、プレッシャーというか、そのようなものも感じました。
――特に感じた高校駅伝との違いはメディアの数や注目度の高さということですか
そうですね。一番は注目度の高さで、あとは声援の数が多かったのでやはり「失敗できないな」ということは本当に思いました。
――全日本での収穫は何ですか
区間上位の争いはできなかったのですが、まとめる走りというか、最低限つなぐ走りというものはできたので、そこは収穫かなと思っています。逆に箱根になってくると区間上位の走りをしないとチームの目標には届かないということを感じたので、そこを課題点として見つけられたことも収穫かなと感じています。
「目標は区間5番以内」
質問に答える間瀬田
――箱根まで1カ月を切りましたが、緊張やプレッシャーは感じていますか
20キロ以上の距離で、集団走というよりも単独走にはなるので不安はかなりあるのですが、練習も順調にできていますし、力がついていることは間違いないので、どの区間を任されてもいいようにしっかり準備はしています。
――現在の調子はいかがですか
全日本が終わって箱根までの期間でモチベーションにする直近の大会がないため、少しモチベーションは下がってしまったのですが、あと1カ月切ってエントリーも発表されましたし、ここからさらにモチベーションを上げていかないといけないとは感じています。今のモチベーションは高いです。
――現在のチームの雰囲気や様子はいかがですか
主力選手含めケガ人はほとんどいないので、練習も緊張感を持って臨めていますし、いい雰囲気で練習できていると思います。
――部内外問わずライバル視している選手はいますか
とりあえずは山口には負けたくないなというふうには思っているのですが、山口は全日本でも結果を残しているので、なんとか負けないような走りを目指しているというところです。
――箱根に向けた練習で特に意識している部分はありますか
箱根は20キロ以上の距離なので練習は距離走とかが多いのですが、そういった時にいかに前半で余裕を持って走ることができるかということは意識しています 。
――何区を走りたいという希望はありますか
4区か7区を走りたいのですが、花田さん的には1区を走らせたいという感じなので1区も視野に入れながら練習しているという感じです。
――4区もしくは7区を希望されるのはなぜですか
アップダウンが多いからです。高校時代から平たんな道を走るよりかはアップダウンが多い方が自分的には走れるという経験があったので、4区か7区は走りたいと考えています。
――花田監督は間瀬田選手に1区を走ってほしいようだということですが、その理由について花田監督は何かおっしゃっていましたか
理由は聞いていないのですが、全日本でそこそこまとめる走りができたので、その結果からして箱根も1区でそこそこの位置で来てくれれば、という考えではあると思います。
――集団の流れに乗ったまま来ることができるのではないかということですか
そうですね 。
――達成したい目標やタイムはありますか
とりあえず区間一桁の順位で走りたいですし、目標は区間5番以内です。
――箱根で生かすことができると思うご自身の強みはありますか
1区だったらラストスパートに自信はあるので、余力があればですが、ラストの競り合いで抜け出せることができればいいなと思っています。1区以外になってくると単独走になりますが、単独走でも自分でいいペースで走ることはできるので、そのペースを自分で押していくところは強みなのではないかと思っています。
――ご自身の走りで注目してほしいポイントはありますか
ラストスパートに注目してほしいと思います。
――少し話は変わりますが、試合前のルーティンはありますか
ルーティンはあまりないのですが、試合前に絶対にすることはカステラを食べるということで、高校時代からやっています(笑)。
――景気づけという感じで食べているのですか
そうですね。
――最後に、箱根への意気込みをお聞かせください
まずはどの区間でも走れるようにここから準備をしっかりとやって、走らせていただけるのであれば区間5番以内を目標に走り、チームの目標である5位以内を達成していきたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 宇野結子、栗田優大)
◆間瀬田純平(ませだ・じゅんぺい)
2004(平16)年2月17日生まれ。172センチ。佐賀・鳥栖工高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル13分57秒41、ハーフマラソン1時間4分50秒。終始落ち着いた様子で事前取材を受けてくださった間瀬田選手。インタビュー中にはマスク越しからでも伝わる素敵な笑顔を見せてくださいました!