最上級生としてチームを引っ張る鈴木創士駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)と井川龍人(スポ4=熊本・九州学院)。夏合宿の取材では、個人インタビューに加えて、2選手の対談を実施。前半シーズンの振り返り、最後の駅伝シーズンへの意気込み、そしてお互いについての話も伺った。
※この取材は8月18日に行われたものです。
チームについて
練習でともに先頭を引っ張る井川(左)と鈴木
――4月に鈴木選手にお話を伺った後にトラックシーズンが本格的に始まり、駅伝監督も変わりましたが、今のチームの印象はいかがですか
鈴木 監督が変わって、どうすれば良いんだろう、というところから、今はだいぶチームとして固まってきて、花田監督(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)の方針の意図などを8割方はみんな理解できるようにはなっています。その中で、それぞれのやらないといけないこととか、花田さんとの関わり方というものも分かってきたので、チームとしては良い方向に来ているのではないかと思います。
――キャプテンに就任してから、試行錯誤してチームを変えていく、という話がありましたが、改革の手応えはいかがですか
鈴木 主に花田さんがこうしたい、とおっしゃってくださるので、どちらかというとそれをサポートするかたちで、花田さんと選手をつなげる役割という感じでやっています。(成果としては)どうなんでしょう(笑)。それは直近だと予選会(東京箱根間往復大学駅伝予選会)や全日本(全日本大学駅伝対校選手権)、大きなところだと箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝)の結果が出た時に、ここまでやってきたところが正しかったのかどうなのかがしっかり出ると思うので、今この時点で手応えがあるかどうかは言えない感じです。
――キャプテンに就任した時に思い描いていたものと、花田駅伝監督就任以後の相違はありませんでしたか
鈴木 少しありました。花田さんがこうやりたいということがありましたし、僕もやりたいことがあって、その2人のものを全部やっていく、というとチームがバラバラになってしまうので、最大公約数を出すというような感じでやっています。どちらかと言えば花田さんがやりたいものを尊重するのが一番、という感じです。
――井川選手から見て今のチームはいかがですか
井川 今まで3年間見てきたチームよりは、なんとなくですけど、僕的には一番好きなチームではあるという感じです。でも、本気で優勝を目指そうと思うのだったら、全部が一つになっている感じはまだしていないので、それを気付かせる必要があるのか、みんな気付いていくのか、そのあたりが難しいです。それができたら、良いチームになるのかなと思います。
――具体的に今のチームの好きなポイントはありますか
井川 どんなところが好き?
鈴木 仲良いよね。僕らが1年生の時の4年生の先輩は怖いな、というのがあって気軽に話せるような存在ではなかったので…。僕は4年目になってなぜか一番大人数の部屋に入れられたんですよ、じゃんけんで負けて。でもそこの中でも難なく過ごさせてもらっている、というか、1年生も話しかけてくれます。それは僕がつくりたかったチーム像に近いところでもありますし、チームとしても、まとまっていくためにその仲の良さはあったらあっただけ良いと思います。例年に比べたら相当仲が良いと思います。
井川 下級生が伸び伸びできているというのが良い点なのですが、その分上級生が自覚を持ってやらないと、と思っています。
――今までに無い早稲田にしたい、といった話が新チーム始動当初からあったと思います。今までに無いところというのもそういった仲の良さになりますか
鈴木 それにつながるかもしれないのですが、例えば、2年生や1年生が引っ張れる、そういう主体性が出るようなチームや、自分を主張できるような、ある意味自由なチームという感じです。上級生が引っ張らないといけないという固定概念にとらわれているのではなくて、学年関係なく、1年生でも引っ張れるんだったら引っ張っていく、という気持ちでやっています。それは一つここまでには無かったところかなという感じです。
――自由は度合いが難しいと思うのですが、気を付けているところはありますか
鈴木 自由の中でも、例えば練習があって、練習をやっても良いよと言われた時にやらない、ってなってしまったらそれはちょっと危ないかなと思っています。譲歩されているような状況だった時に、勝ちを求める姿勢であったり、上を求める姿勢であったりは忘れないでやってもらいたいかなと思っています。
今は特に下級生は、すごく積極的に練習をやってくれていて、それに3、4年生はどちらかというと引きずられているような感じなのですが、そこは僕らが引っ張っていけるようになっていけば理想的な展開かなと思います。今は元気な大志(伊藤、スポ2=長野・佐久長聖)とか石塚(陽士、教2=東京・早実)とかが引っ張ってくれているので、うまい感じで自由の統制が効いているかなと思います。
お互いについて
1年次の箱根前合同取材で肩を組む二人
――井川選手から見て、キャプテンになってからの鈴木選手はいかがですか
井川 選手を引っ張ろうという意志を感じるので、それはすごいなと思います。やっぱり創士は練習する姿勢がすごくて、僕は逆に練習がすごく弱いので、そこを見習って、創士が頑張っていたら頑張ろうと思えます。
――キャプテンになってから変わったと感じることはありますか
鈴木 変わるよな。
井川 相当変わったんじゃないかなと思います。僕らとずっとふざけ合っていたのも結構今は真面目にやっていたりして。
鈴木 真面目にやっています(笑)。
井川 それはすごいなと思います(笑)。
――鈴木選手から見て、井川選手は4年生になってから変わりましたか
鈴木 話の趣旨とずれてしまうかもしれないのですが、ここまでトラックシーズンは僕がふがいない結果ばかりで、井川以外の4年生も結果が振るわなかったり練習ができていなかったりしていた状況の中で、一人でここまで関カレ(関東学生対校選手権)だったりを戦ってしっかり結果を出してくれたというのは4年生の威厳が保たれている一つの要因ではないかなと思っています。そこは感謝しかないですし、次は僕の番だなというくらいの気持ちでいます。4年生になって変わったなってところある?
井川 いや(笑)。
鈴木 変わってないよなあ(笑)。でも下級生がいる場でしっかりチームを引っ張ってくれようという意識だったり、調子がよければ引っ張ってくれるので(笑)。調子が悪いと後ろにいるんですけど。
井川 分かりやすいよね(笑)。
鈴木 分かりやすい(笑)。でもそれで引っ張ろうという姿勢は伝わるなという感じです。
――4年間を通してお互いの印象や関係性は変わりましたか
鈴木 最初から変わらないですね、僕は。最初から最後まで、井川はこういう人、みたいな(笑)。
井川 特に変わりはないんですけど、ずっとキャプテンになる前まで、ずっとふざけ合っていた中でも、どこかで創士は真面目な部分があると感じていて。その良さを今4年生になって出して、しっかりやってもらっているので、そこは助かっています。
競技について
関カレのハーフマラソンでは途中棄権となった鈴木(左)。井川は1万メートルで2位に入った
――個人の競技についてお聞きします。前半シーズンの振り返りや自己評価をそれぞれお願いします
井川 結果を出すことを意識してやっていて、関カレ(関東学生対校選手権)は優勝を狙っていたのですが、結局勝ち切れずに2位だったりとか、ホクレンの1万メートルでも優勝を狙えた中で2位だったので、悔しさが残るレースが続きました。速さ自体は少し上がってきているので、あとは勝ち切る強さをこの夏、精神的にも鍛えて、駅伝シーズンで勝てる選手になっていきたいと思います。
鈴木 僕は前半シーズンは、うまく行っていると思ったら行っていなくて、胃腸炎になったり、蕁麻疹(じんましん)が出たり 、厄年かなと思うくらいうまく行かなくて。走れていて、ポイントもしっかり積んで、じゃあここ継続で、ってなると胃腸炎になって1週間くらい走れなかったり、というのが2回くらい続きました。それで結局トラックシーズンは試合で全力で走る機会が無かったのですが、なんとか7月には立て直せて、しっかり練習が継続できるようなかたちで夏合宿まで挑めたので、そこはなんとか秋シーズンに向けて踏みとどまったところかなと思います。夏合宿もケガをせずに乗り切って、秋につなげていけたらなと思います。
――秋以降のレースに向けての具体的な目標はありますか
井川 1万メートルでは、調整もそれほどせずに8割くらいの力で27分台で走れたら、そんなに影響も出ずに駅伝シーズンも良い調子でいけるのではないかなと思うので、そのために頑張るのと、駅伝では区間賞がまだ取れていないので、しっかり目立つ走りをして、目標の優勝に貢献できたらなと思います。
鈴木 僕も個人的には、駅伝シーズンはやっぱり区間賞が欲しいなというところです。あとはどちらかというと人数が少ないチームで、全日本の方が優勝を狙えると思うので、チームでしっかり全日本で優勝を狙いたいです。それで、俺らもいけるんだぞ、というチーム状況で迎えられたら箱根も優勝も狙えるのではないかなと思うので、まずは全日本で勝つことが一番大事かなと思っています。そこはしっかり良い流れで持っていけたらなと思っています。トラックは5000、1万も1本か2本くらい走る機会があると思うので、僕もなんとか27分台に乗れたらなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 及川知世、戸祭華子)
◆鈴木創士駅伝主将(すずき・そうし)
2001(平13)年3月27日生まれ。174センチ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部4年。風通しの良いチームを目指すと話していた鈴木主将。今は一番大人数の部屋で後輩たちと仲良く過ごしているそうです!
◆井川龍人(いがわ・りゅうと)
2000(平12)年9月4日生まれ。178センチ。熊本・九州学院高出身。スポーツ科学部4年。今のチームが4年間で一番好きなチームだ、と言う井川選手。後輩たちも気軽に話しかけてくれることに関しては、「僕らが優しいからかも」と笑顔でした!