【連載】箱根事前特集『実』 第11回 安田博登

駅伝

 入学後2年間は故障が多く、満足な練習が積めなかった安田博登(スポ3=千葉・市船橋)。今シーズンは体の状態を把握し、ケアの時間を大切にすることで、順調にトレーニングをこなした。秋には1万メートルの自己ベストを2度更新し、調子を上げ初めて東京箱根間往復大学駅伝(箱根)のエントリーメンバーに入った。これまでを振り返りながら、箱根への思いを伺った。

※この取材は12月12日に行われたものです。

初めてケガ無く練習できたシーズン

質問に答える安田

――現在の調子はいかがですか

 ポイント練習では全体の中でも割と調子が良くて、ラストも余裕を持ってこなせています。

――過去2年はケガもありましたが、入学してから2年間を振り返ってください

 ケガなどで継続した練習ができなくて、高校の時よりは体力的にも厳しいと感じていました。それを直そうと思って3年時からはケガを絶対にしないことを意識して練習して、メンバーにも選ばれたので今は良い調子です。

――今シーズンはどのような目標でスタートされましたか

 前回の箱根が終わった時点では力不足で、メンバー入りも厳しい状況でした。まずそこに絡める力をつけることを目標に春から始めて、夏明けから力がついている感じがしたので、箱根を走る目標に切り替えてどんどん目標を上げていき、それに近づけるようにしていきました。

――監督の取材で、今シーズンが今までで一番練習できていると伺ったのですが、ご自身でも手応えはありますか

 結構順調にきています。

――要因はありますか

 1、2年の時にケガで全然走れていなくて、継続した練習ができないとやはり長距離は力がつかないと感じました。そのことを意識した3年では、練習もこなさないといけないですが、その中でも抜いて練習をするなど自分の足の状態を把握してケガにつながらないくらいの疲労度でこなすようにしていました。

――5月の部員日記で、記録会で思ったような走りができなかったとありますが、思っていた走りとはどのようなものですか

 自分の長距離の課題として、5000メートルだったら残り1、2キロのラストでの失速というのがありました。今でもラストの粘りは克服できていないですが、そこでスタミナ切れを起こさないようにしていました。

――どのようなところでうまくいかなかったですか

 突っ込んで走るレースが今は主流なので、前半で足を使ってしまい、後半もたないことが結構ありました。

――次に夏合宿について伺います。夏の練習ではどのようなことを意識して練習に取り組みましたか

 夏合宿の時点では僕はBチームにいて、Aチームに上がるために練習していたこともありますが、距離をしっかりと踏むことと春シーズンの課題として『粘り』があったので、距離とペース走での終盤にかけて上げきることは意識していました。

――夏の練習の消化具合や手応えはいかがですか

 1、2年は夏に練習した後の秋にかけてケガが多かったので、今年はケガをしないことを大きな目標にしていましたが、ケガせずに練習できているので良いと感じています。

――今年、秋にケガがなかった要因はありますか

 走り込んで自分の体力も上がったこともありますが、自分のケアの時間を作り、食事を気にすることで体重にも変化があったことが大きいかなと思います。

――上がってからの練習の手応えはいかがですか

 A(チーム)とB(チーム)だと練習の強度が違うので、それにギャップを感じないように、Bの練習にプラスしてAに行ってもついていける練習をやるようにしていました。なので上がってからも出遅れた感じはなかったです。

――次に駅伝シーズンについてお伺いします。全日本大学駅伝対校選手権(全日本)にエントリーされました

 エントリーされましたが、まだ力不足だと思っていました。運良く入ったのは良いですが、足りないことがたくさんあるので練習をしなければいけないと感じていました。

――『3冠』を目指していましたが、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)と全日本では勝てなかったことをどのように感じていますか

 今年はケガ人が多く、そういうところを含めて早稲田は層が薄いので、上位の選手はしっかりレースに合わせ、走るか走らないかというボーダーの選手はレースで戦える準備は必ずしないといけないと思っています。

――10月13日の早大競技会で自己ベストを出されたことを振り返ると

 ペースメーカーがいたので、それにしっかりとついていく練習の一つみたいなものでした。もっと28分台とか目指すところはありましたが、ひとまず夏から積み上げたものが自己ベストになったので良かったです。

――11月22日にさらに更新されましたが、これは今シーズン練習を継続できていることが大きいですか

 そうですね。

――ロードでのご自身の強みはありますか

 ハーフは一度も走ったことはないですが、これからのロードでの練習でエース級の選手が上げてくると思うので、そこについていければレースでも走れると思います。

――長い距離は得意ですか

 10キロまでのレースしか体験したことがないので、未知数な部分が多いですが、知らない分思い切って突っ込めるのかなと思っています。

――逆にロードで苦手な部分はありますか

 駅伝だと一人で押していくことが求められると思うので、その部分だと思います。ペース感覚が必要になってくるので、そこを3週間で習得していきたいです。

「(箱根は)目標というか走る場所」

11月10日の早大競技会で集団を引っ張る安田

――話が変わるのですが、部内で仲の良い同期はいらっしゃいますか

 鈴木創士(スポ3=静岡・浜松日体)と井川(龍人、スポ3=熊本・九州学院)です。

――一緒にいるときは何をされていますか

 本当にくだらないことで、ずっと騒いでいます(笑)。

――よく話す先輩や後輩はいますか

 栁本(匡哉、スポ2=愛知・豊川)と中山(遥稀、スポ1=千葉・専大松戸)とはほぼ一緒にいます。

――後輩と仲が良いのですか

 まあ、なめられがちです(笑)。

――部内でのご自身のキャラクターは

 ガミガミ言うタイプではないので、流れに任せていてそんなには考えていないです(笑)。

――部内でライバルだと思う選手はいますか

 そんなに気にはしていないのでいないです。

――他校ではいますか

 他校も全然気にしていないですが、同学年の良いタイムは気になるので競っているといえばそうですが、自分から意識することはないです。

――他校で仲の良い選手はいますか

 高校の同期や後輩とかは連絡を取ります。

――次に箱根についてお伺いします。今は何を意識して練習に取り組まれていますか

 監督からも言われているのですが、20キロ持つスタミナ作りです。小さいことですが普段のジョグの距離を踏むなどを意識しています。

――箱根に向けて調子は良いですか

 良いと感じています。

――エントリーメンバーに選ばれた率直な感想をお願いします

 夏明けはメンバーに入ることは厳しいと思っていましたが、(その後は)そこから調子を上げてきて、メンバーには入れると思っていました。そこがゴールではなくて、自分がチームにどうやって良い影響を与えられるかは考えています。

――チームに影響を与えられる、与えたいと思うことはありますか

 今年度はBチームからスタートして、Aに上がってもできることは証明できたのでチームの底上げということで、影響を与えられたと思っています。

――箱根での自身の強みやアピールポイントは

 まだまだ力不足だとは思いますが、ずっと課題だった後半の粘りを克服できました。レース時にラスト競ったときには勝つ自信があるのでアピールポイントだと思います。

――希望区間はありますか

 復路で8区か10区かなと思います。

――8区にはどんな印象がありますか

 8区は最後に坂が結構あります。適性まではないのですが上りを苦だと思ったことはないです。

――走るときに、自分のメンタル面には自信がありますか

 走っているときはそんなに考えないので、メンタルというよりは何も考えていないかなという感じです。

――ご自身にとって箱根とは

 高校から陸上を始めて、高校でも箱根を走るだろうと思って練習していました。陸上競技を大学で終える可能性もあるので、走らないと終われないかなと思っています。目標というか走る場所だと思います。

――チームとしてどのような目標を持って練習に取り組まれていますか

 3冠を目指していたので、全員で優勝目指していくことは相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)の挨拶でもよく聞くので、みんな優勝する気持ちでいると思います。

――箱根への意気込みをお願いします

 全区間力を出し切れば優勝が見えるので、自分が走ったときは、前に選手がいたら抜くし、後ろに差をつけて次につなぎたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 森山裕介)

◆安田博登(やすだ・ひろと)

2000(平12)年9月11日生まれ。170センチ。千葉・市船橋高出身。スポーツ科学部3年。たまたまできたことから、口でアサルト銃の音を出す特技を少しだけ習得したという安田選手。自己ベストを2度更新と好調を維持している今季は、箱根にも期待がかかります!