新型コロナウイルスの影響で2年ぶりの開催となった出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)。学生駅伝3冠を目指す早大は、序盤で流れに乗る。4区では3大駅伝デビュー戦となった石塚陽士(教1=東京・早実)が区間賞を獲得し、チームを2位まで押し上げた。しかし終盤の2区間で失速し、6位でのフィニッシュとなった。
1区には今季好調の菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)が起用された。序盤は集団の中盤から後方のあたりでレースを進める。6キロを過ぎたあたりから集団の人数も徐々に絞られてくるが、菖蒲は先頭に近い位置で勝負の時をうかがう。ラストスパートで青学大の近藤幸太郎に離されはしたが、トップと4秒差の2位でタスキリレー。「区間賞は取れなかったが、満点に近い走りができた」とレースを振り返った。続く2区には3年生唯一の出場となった井川龍人(スポ3=熊本・九州学院)が登場。「本当だったら1区、3区、6区などの距離が長い区間を走らないといけないが、正直調子が上がらなかった」という井川だが、すぐに前を走っていた青学大を捉える。しかし、2キロ手前で再び追いつかれると、その後もなかなかペースが上がらず、順位を4位まで落とした。続く3区の太田直希(スポ4=静岡・浜松日体)も一度は先頭集団に追いつくが、「ハイペースで体がついていかなかった」と、東京国際大の丹所健のペースアップに対応しきれない。だがそれでも大崩れしないのが太田。その後は粘りの走りを見せて順位は維持し、後半区間へつないだ。
険しい表情でゴールする中谷
4区は、「緊張よりは楽しみの方が大きかった」というルーキーの石塚。スタート直後に前を走る青学大と創価大に追いつくなど、積極的な走りを見せる。中盤までは青学大の若林宏樹との並走となったが、その後は若林を突き放し、見事に区間賞を獲得した。早大のルーキーの3大駅伝区間賞は、2011年東京箱根間往復大学駅伝(箱根)1区区間賞の大迫傑氏(平26スポ卒)以来だ。5区は同じく期待のルーキー伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)。伊藤は前を走る東国大を懸命に追う。しかし、苦手とする暑さや向かい風の影響もあり「自分の弱さが出てしまった」と、なかなかその差を縮められない。5キロを過ぎると、後ろから猛追してきた東洋大に、最後は国学院大と青学大にもかわされ、5位で最終区間へ。アンカーを任されたのはエースの中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)。「アンカーの重圧はあったが、とにかく順位を上げたい一心だった」と前を懸命に追うが、なかなかペースが上がらない。4年生の意地を見せ最後まで粘りの走りをしたが、フィニッシュ直前で駒大のエース田澤廉に抜かれ、6位でゴールした。
「学生駅伝3冠」を目指した早大の初戦は、後半の失速が響き、目標としていた優勝には遠く及ばなかった。その一方で、ルーキーの石塚が区間賞を獲得するなど収穫も多くあった。「こんなところで終わるわけにはいかない」(中谷)。1カ月後には全日本大学駅伝対校選手権(全日本)が迫っている。この敗戦を生かし、チーム一丸となってエンジの輝きを取り戻す。
(記事 加藤志保、写真 EKIDEN News)
結果
第33回出雲全日本大学選抜駅伝 | |||||
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区間 | 距離 | 名前 | 記録 | 区間順位 | |
1区 | 8・0キロ | 菖蒲敦司 | 23分45秒 | 2位 | |
2区 | 5・8キロ | 井川龍人 | 16分25秒 | 6位 | |
3区 | 8・5キロ | 太田直希 | 24分54秒 | 4位タイ | |
4区 | 6・2キロ | 石塚陽士 | 18分40秒 | 1位 | |
5区 | 6・4キロ | 伊藤大志 | 20分28秒 | 12位 | |
6区 | 10・2キロ | 中谷雄飛 | 30分48秒 | 6位 | |
早大 2時間15分00秒 6位 |
コメント
1区
菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)
――調子はいかがでしたか
調子が良いということで、相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)も1区に起用してくれたと思います。調子はいい状態で来ていたと思います。
――初めての出雲駅伝にはどのような気持ちで臨まれましたか
春シーズンを終えて、夏合宿に入る段階で、出雲を走って活躍するというのを目標の一つにやってきました。それが達成できたので良かったです。
――1区に起用されたこと、またどのような走りをしたいと考えていましたか
自分は集団で走るのが得意だったので、起用された時はいい順位で来て、2区につなげようと思いました。1区としての役割が果たせる走りをしたいと思いました。
――集団走の中で意識していたことはありましたか
出雲特有の風が吹くというのは最初から聞いていましたし、試走した時も感じていたので、できるだけ後ろの方で体力を使わないようにしようと思って走っていました。
――先頭集団が動いた時はどのようなことを考えていましたか
位置取りが悪くて、ラスト1キロのカーブのところで位置が後ろになってしまったのですが、冷静に対応してラスト1キロ力を出せば、秒差でつなぐことができると思っていました。粘って粘って2区につなげようと思っていました。
――レースを振り返ってどのように感じていますか
役割を果たすのが重要だと感じていたので、満点に近い数字は与えられるのかなと思います。唯一悔やむところは区間賞を取れなかったところですが、個人的にもまさかここまで走れると思っていなくて、実際最後あの場で気持ちの差が出たのかなと思いました。しっかり走れるというのは今回走って分かったので、次は絶対に区間賞を取るという気持ちで臨みたいと思います。
――全日本、その後の駅伝シーズンへ向けての意気込みをお願いします
3冠という目標を掲げてやってきたのですが、一つ取れずにこれまでにない悔しさを味わったというか、駅伝で勝つ難しさを知ったというか、今回走ってみて感じたものがかなり大きいです。次の全日本は必ず、言葉だけではなく、チームを引っ張って勝ちたいという思いがあります。
2区
井川龍人(スポ3=熊本・九州学院)
――レースを終えて、今の率直な気持ちをお聞かせください
個人としてもチームとしても、悔しい結果に終わったなという感じです。
――2区という区間配置は、どのような経緯でしたか
本当だったら1区、3区、6区などの長い距離を行かないといけないのですが、正直そこまで調子が上がっていなかったので、2区という短い区間でつなぐという感じになりました。
――調子が上がらないのは、どんな部分なのでしょうか
痛みとかは無いのですが、何かまだうまくかみ合ってないというか、納得できる走りが最近はできていないなという感じです。
――2区出走が決まってからはどのような走りをしようと考えていましたか
5・8キロという短い区間なので、攻めの走りができたらなと思っていました。
――攻めの走りというところで、実際最初青学大に追いつきましたが、どんなプランを考えていましたか
前がいたらそれに追いつき、そこについて、最後上げるというのがレースプランではありました。
――走り出してから、体の動きはどう感じていましたか
体の動きは思っていたよりは良かったのですが、青学に追いついてから、そこまで青学の選手のペースが上がっていなかったので、自分でいくしかないのかなという感じになり、あまりいい感じに走れなかったです。
――暑さ等の気象の影響はありましたか
かなり暑かったので、100パーセント出し切れたとは言えないかなと思います。
――序盤に青学大に追いついた後の、終盤にかけてのスタミナの残り具合はいかがでしたか
かなりキツかったのですが、そこで順天と国学院に追いつかれたときにつけなかったのは良くなかったなという気はします。
――自分の走りはどう振り返りますか
区間賞を狙えるレースではあったので、区間6位で、順位を上げられなかったので、悔しい結果になってしまいました。1カ月後また駅伝があるので、そこでこの悔しい気持ちを挽回できたらなというふうに思っています。
3区
太田直希(スポ4=静岡・浜松日体)
――チームの結果を振り返って今はどのような思いですか
勝ちたいという気持ちが強かっただけに、この順位は悔しい思いが一番強いです。
――当日の体の調子はいかがでしたか
軽すぎず重すぎずで、走ってみないと分からない状態でした。今日だけ見ると万全ではなかったかなという感じです。
――3区のレースプランは考えていましたか
監督からは最初に突っ込んで、中盤で耐えて後半上げるレースをしてこいと言われていました。気温が高かったんですが、僕の位置で先頭と数秒差があったので、最初はこれは行くしかないと思っていました。
――序盤はすぐに追いつこうと考えていたのですか
結果的に中盤あたりからかなりきつくなってしまって、完全に脚が止まってしまっていたんですが、あの位置だったので行くしかないと思っていました。周りもかなり突っ込んでいて、最初の1キロが僕で2分40秒切っているくらいでした。
――レースでは2キロ付近で東京国際大が抜け出しました。振り返っていかがでしたか
あの時はついていこうと思えばいけたんですが、結構ハイペースで、ついていけなかったです。結局青学と一緒に追う展開になってしまったので、あそこは行くべきだったと思うんですが、結果的に中盤からきつくなって後半は全然ダメだったので、同じような結果になっていたかなと思います。
――終盤は青学大に離されてしまいました
本当は残り3キロから(ペースを)上げられたら一番良かったと思うんですが、かなり脚にきている状態で、なかなか抜かされても思うように対応できなかったです。
――結果は区間4位で、タスキリレーも4位のままつなぎました
後半耐えられたらもっといい順位が取れたかなと思います。1、2区でいい流れでつないでくれただけに、僕のところで流れが切れてしまったというか。4年生としても情けないなと思います。
――悔しい思いが残りますか
春の調子からいえばようやく戻ってきているかなという感じではあります。でもやっぱり勝つという目標を立てた以上は、僕のところでもっと流れをつくって、それこそ石塚が区間賞をとってくれたので、流れをうまくつないでいけたらなと思っていました。
――3冠を目標にしていた中での6位でした。結果についてはどう評価しますか
1位を狙っていて6位なので、もちろん悔しいという思いはあります。全然満足していないですし、あと1カ月でなんとかしないといけないという思いが強いです。
4区
石塚陽士(教1=東京・早実)
――大学入学後初めての駅伝でしたが、レースを終えての率直な感想は
ゴールしたときはタイムがあまり良くないと感じて、区間賞が取れるとは思っていませんでした。うれしいというより驚きの感情の方が強かったと思います。
――4区の出走となりましたが、レースプランは
レースがある程度決まってきたタイミングでさまざまなパターンがあると思い、臨機応変に対応することが大事だと思っていました。特に事前に決めるということはせずに展開を見ながら、という感じです。
――東京国際大、創価大、青学大を追ってタスキを受け取りました
10秒差くらいで前が見える状態でもらったので、そこは良かったと思います。最初突っ込んで追いついて、その後は周りのペースを見ながらというつもりで入りました。
――その後の展開は
最初の1キロを2分40秒くらいで突っ込んで追いついて、その後の500メートルから1キロはちょっと前に出た青学についていきました。そこでペースを判断したときに、このままだと後ろが詰まってくるなと、優勝を目指すならここで出ないといけないなと思って前に出て引っ張って、中間地点過ぎくらいで離していきました。そこからは一人で押してという感じでした。
――緊張はされましたか
元々あまり緊張しないタイプで、楽しみのほうが強かったかなと思います。
――青学大の若林宏樹選手と並走というかたちになりましたが、同じ1年生ということで意識した部分は
1年生だから意識するというよりは、チームとして優勝候補の青学さんを意識しました。
――気温が高く、向かい風も強かったと思います
前半突っ込んだというのもあって、向かい風の後半はたれてしまいました。耐えなきゃいけない場面で、そこはきつかったです。
――改めて、初の駅伝で区間賞を獲得しました
区間賞が取れたのは素直に喜びつつ、ただ後半は伸び悩んだ部分もあって、今後距離も長くなっていくので耐えるところは耐えていかないと、大ブレーキになってしまう可能性もあると思います。そこはしっかり改善して全日本、箱根に向かっていければと思います。
――チームとしては、優勝を目指した中で6位という結果でした
優勝を目指していたので悔しいです。でももう終わってしまったことは仕方がないので、残っている全日本と箱根の2冠を目指してやっていくしかないのかなと思います。
――最後に今後の意気込みをお願いします
先ほども言った通りまだ全日本と箱根があるので、そこでも区間賞を取ってチームを勢いづけられるような走りができればなと思います。
5区
伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)
――大学初めての駅伝でしたがどのような気持ちで臨まれましたか
チームとして駅伝3冠を掲げていた中で、5区に出場させてもらうことになりました。もちろん、どの位置でも優勝につながる走りを一番の目標としていましたし、周りの選手に影響されずにできるだけ自分の走りをして先頭に追いつこうという気持ちで臨みました。
――ご自身のレースを振り返っていかがでしたか
正直、すごく不甲斐ない結果に終わってしまったなと感じています。事前に気候状況などが分かっていた中で、調子もすごく良いなと感じていました。しかし、5区特有の風や暑さというものにやられ、優勝を断ち切ってしまうような走りになってしまったので、すごく不甲斐ないです。
――体調の面ではいかがでしたか
試合前はすごく調子が良いなと感じていました。アップでも万全の走りができると感じていましたし、スタート直前にも体調はかなり良いなと感じていました。
――5区を走る上でどのようなレースプランを考えていましたか
4区の石塚がトップが見える位置まで運んできてくれました。ですので、序盤からハイペースで入り、できるだけ1位の東京国際との差を縮め、追いついて中谷さんに渡そうと考えていました。しかし、そういうふうにはいきませんでした。
――5区にどのような難しさを感じましたか
一番は自分の弱点である風や暑さというものに負けてしまいました。芯の強い選手であれば、そういったことに言い訳せずに今の自分の最大限に発揮して、勝つというレースができると思います。トラックシーズンや夏の合宿で課題になっていた暑さと、単独走での風が、今回もすごくネックになってしまいました。そこに選手としての弱さが出てしまったなと感じています。
――1年生として後半区間を任されたことをどのように捉えていましたか
やっぱりアンカーにつながる大事な区間であるとは捉えていました。しかし、6区間しかない駅伝の中では全ての区間が大事だと思っていたので、気負いなく走ることができました。
――前後の差は意識していましたか
一番はスタート時に見えていた東京国際に追いつく一心でスタートし、後ろは意図的に考えないで、勝つことしか考えずにスタートしました。レース中に苦しくなっていく中で、どうしても走りの弱さだけでなく精神面での弱さの方が出てしまいました。後ろは確認しまいと思い、確認しませんでしたが、怖いなとは感じていました。
――石塚選手からのタスキをどのような気持ちで受け取りましたか
入部してから一緒にいる石塚からタスキを受け取ることができたことはすごくうれしかったです。区間賞も取ってくれて、すごく心強かったです。
――中谷選手にタスキを渡す際の気持ちも教えてください
走る上では東京国際がトップを走っていたので、できるだけ楽な位置で中谷さんに渡そうと考え、意気込んでスタートしました。結果的には中谷さんに負担をかけるような走りをしてしまったので、ものすごく不甲斐ない気持ちと申し訳ない気持ちでした。
――今後の大会に向けての意気込みをお願いします
やっぱり上半期から出てしまった暑さや風への弱さが露呈し、一番出してはいけないところで出してしまったレースになりました。今後、自分が何をしなければいけないのかをもう一度考え直します。正直走れるかは分かりませんが、全日本や箱根に向けて、出雲の経験をただの失敗レースに終わらせてはいけないなと強く思っていますし、相楽さんからもそういったお話を頂いています。今回の経験を全日本、箱根につなげられるようにもう一度作り直していきたいなと思います。
6区
中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)
――ご自身の結果に関して、率直な気持ちをお聞かせください
僕のところで順位を上げられなかったので、申し訳ない気持ちです。シンプルにもう少し僕が頑張っていたらな、というのが一番感じたことです。
――日本学生対校選手権(全カレ)の時の状況について、お聞かせください
試合前の最後のポイント練習で右のふくらはぎに軽い痛みがでてしまっていて、全カレまでの期間は練習量も落として治療も通いつつ、脚の状態をコントロールしながら合わせていきました。しかし、レース当日のアップの際痛みが突発的に発現してしまい、最後まで走り切るのは厳しいとレース前から感じていました。急激なペースの上げ下げをせず、一定のペースで押していけば、何とかなるかなと思いましたが、うまくいかずに途中棄権となりました。
――その後の練習についてはいかがでしたか
丸3日間は、練習を全くせずに休養を取りました。ポイント練習も10日前ぐらいから開始できた感じです。ですので、ポイント練習はトータルで2、3回ぐらいしかできませんでした。
――暑さは得意な方ですか
正直、苦手です。しかしそこに対する準備は万全に行ってきました。
――レースプランについては
元々気温が高いことは分かっていたので、前半である程度ペースをつくって、後半勝負という指示を受けました。僕自身もそういう走りを心がけました。
――どのような思いで走り出しましたか
あまり他校と差がない状態で走り出したので、とにかく順位を上げたい一心でした。
――前半から体はあまり動いていない印象でしたが、ご自身の感覚はいかがですか
少し、動きは悪い印象はありました。やはり気温も高くて風も向かっていたので、走りづらさは感じました。ただ、全体的に見れば、前半に関してはわりと思惑通りに走れたのかなと思います。
――後半はいかがですか
最初は前のチームとの差が詰まっていて、捉えられるかなと思いましたが、中間点を過ぎてからなかなか詰まってこなくて。前のチームが集団で走っていることもあって、一人で詰めることが難しく、精神的にも苦しかったです。
――田澤廉選手(駒大)と並走したときの状況についてはいかがでしたか
あの段階で、いっぱいいっぱいで。追いつかれてからしっかりとついていきたいと考えていましたが、やはり体がうまく動かなくて、シンプルに力負けをしてしまいました。
――チームの結果に関しては、どのような気持ちですか
目標とはかなりかけ離れてしまった順位になってしまったので、残り二つ(全日本、箱根)でで結果を残したい気持ちがあります。こんなところで終わるわけにはいかないので、また切り替えて頑張ります。
――個人としては、どのようなことに重きを置いて練習していきたいですか
特別なことは考えていませんが、まずは故障をせずに継続することが一番だと思っているので、体を休めつつ次に向かって、トレーニングを順調に積めたらなと思います。