トラックシーズンは3000メートル障害を主戦場とし、日本学生対校選手権(全カレ)では見事3位に入った諸冨湧(文1=京都・洛南)。駅伝シーズンでも全日本大学駅伝対校選手権(全日本)に出走し、区間8位と1年生ながら堂々した走りを見せた。間近に迫った東京箱根間往復大学駅伝(箱根)へ向け、現在の調子、そして箱根への意気込みを聞いた。
※この取材は11月28日に行われたものです。
確かな成長
12月20日の合同取材にて
――全カレでは3000メートル障害で3位という好成績を収めました。シーズンを振り返っていかがですか
大学入ってから3000メートル障害をメインでやろうかなと思っていたので、その点に関しては良かったかなと思います。
――表彰台に上がった3000メートル障害では同期の北村光選手(スポ1=群馬・樹徳)が2位、そして高校の同期である三浦龍司選手(順天堂大)が1位という結果でした。この点に関して思うところはありますか
1年生3人で表彰台を独占できたらいいねという話はしていたので、それが現実にできて良かったです。
――トラックゲームズinTOKOROZAWA(トラックゲームズ)でも自己記録を更新するなど好調さをうかがわせていましたが、大学に入学してから成長しているという実感はありますか
あまり実感は無いですが、記録だったり結果がついてきてるので、力はついてきているのかなと思います。
――トラックシーズンで具体的に成長を感じた点は
障害の練習をけっこうやっていたので、シンプルな走力がついたのはそうですが、技術的なところでも成長したのかなと思っています。踏切のタイミング、足の合わせ方、ハードルのアプローチのところを高校時代よりも考えながら取り組むことでそれが結果に出たのかなと思います。
――課題は見つかりましたか
スピードが高校時代からあまりなく、競った時のスピードというのが今後の課題かなと思います。
――ロードシーズンの初戦は全日本となりました。初めての学生3大駅伝でしたが、雰囲気などはいかがでしたか
駅伝に関しては、高校時代と雰囲気やメディアの注目の仕方が全く違って、でもその中で自分なりに楽しんで走れたかなとは思います。
――その注目という点では、SNS上で『#諸冨湧ワク大作戦』というワードが話題になっていましたが、どのような作戦なのでしょうか
僕が考えた作戦では無いのでなんとも言えないのですが、先輩方がそういう発信をしていて(笑)走ってから注目されていると言うのを知って、「そんなになっているんだ」という感じでした(笑)。
――結果は区間8位、1位でもらったタスキを3位で渡すことにはなりましたが、秒差でつなぐことはできました
自分の力不足というのを痛感して、先頭でもらってそれを3位で渡しましたが秒差だったからむしろその数秒を稼いで、並んで渡すことが出来ればまた次の区間の選手の展開も変わりましたし、その点でもさっき課題にあげたスピードなど、改善すべき点はまだまだ多いのかなと思いました。
――以前の対談でご自身の長所を単独走などでの安定感とおっしゃっていて、レース後にも6区はそういう区間だったと話していました。その武器は十分に発揮できましたか
単独走になって、予想はしていたので最低限の走りはできたのかなと思います。
――チームは一時首位に立ちながら結果的には5位でしたが、2年連続のシード権獲得は果たしました。チームの結果について、改めて振り返ってください
チームの目標として3位以内というのがあって、個人でもチームでも悔しいという思いが大きかったと思います。
――レース後に相楽駅伝監督からはどのような話を受けましたか
「周囲からは『1年生だから』というコメントが多い中で、それでも大学を背負って走る以上、学年は関係ない。そういったところを言い訳にせずに」ということを言っていただきました。
――結果に関して、チームではどう捉え、どのような点が課題だと思いますか
チームとして掲げていた目標には届かなかったので反省するのとともに、これからの練習の質などを高めていかないといけないのではという話になりました。
――全日本以降意識的に取り組んできたことはありますか
自分は坂が得意なので、上り坂の強化というところを色々考えながら練習しています。
――全日本から3週間ほどたった先日、所沢で行われた21.1kmタイムトライアルでは62分53秒という好タイムでした
今年1年を通して、月間の走行距離を振り返ってもチーム内の選手と比べて距離が走れていないということがあり不安は大きかったですが、思った以上にしっかり走れたので、そこは自信がつきました。ただ、このタイムでもまだまだ他大の選手を見ると力が及ばない部分があるので、ここから強化していかないとなと思いました。
――箱根に向け、長い距離への適応が重要だと思いますがそれに関してはいかがですか
先週のハーフも前半は先輩について行くかたちで余裕を持てていたので、そこを詰めればもう少しいけるんじゃないかなと思っています。
「(箱根までの)過程を大事にしたい」
トラックゲームズ5000メートルで自己記録を更新した諸冨
――現在は集中練習の期間だと思います。練習の消化具合や調子はいかがですか
ハーフが初めてで少しダメージが残っている状態なので、今は完全にこなすというよりは少し様子を見ながら、来週くらいから本格的に入っていく感じになると思います。
――初めての集中練習ですがこれまでの練習との違いは何か感じますか
質・量ともに桁違いになっているかなという感じです(笑)。ただ予定は出されているので、どれだけ高い意識で、どうアプローチしてという部分だったりケアの部分だったりをしっかりやりながらこなせるかだと思います。
――箱根があと1カ月に迫っています。現在の箱根へのお気持ちはいかがですか
全日本とは比べものにならないくらい凄いという話だったり、さらに注目度も高いという話だったりを聞くので、本番になってみないとわからないですがワクワクするという部分と、いざ戦うとなった時にプレッシャーだったり周りの目に負けないくらいの自信をつけておかないとダメかなと思うので、集中練習を通して身体だけでなくメンタルも研ぎ澄ませていかないといけないのかなと思います。
――走りたい区間は
上りが得意なので5区だったり、8区も最後上り坂があったり、また復路の方は単独走が多いとも思うので、自分の長所を生かせるところでいえばそのあたりなのかなと思います。
――その5区という話でいえば、やはり箱根で注目度が高い区間であり勝負の分かれ目かなと思いますが、そこを走るとなった場合必要な準備はどのようなところですか
足腰がしっかりしていないとやはり上れないので、そこの強化に関しては集中練習は走ることが多くウエイトは難しいので、自分の中で色々工夫しながら、上りに特化した練習が必要なのかなと思います。
――ライバル選手はいらっしゃいますか
ライバル視している選手はあまりいないですね。最大限のパフォーマンスを出すことに周りは関係ないので、あまり周りを意識せずに走るタイプです。
――北村選手、辻選手、菖蒲選手など、今季は好記録をマークしている1年生の同期が多くいます。諸冨選手にとって同期の選手はどんな存在ですか
周りがどう思っているか分からないですが、とてもいい学年だなと思っていて、シンプルに仲がいいというのもありますし、力が拮抗しているというか強い選手が集まっているので、学ぶ部分も多いですし、色々な考え方を共有できるのはいいと思います。
――その中でも諸冨選手への期待・注目は大きいと思います
注目されたりというのもあるかもしれませんが、そういうところに左右されずに、自分は自分のことに集中して、それがまた結果や注目につながればいいかなと思います。
――箱根で求められる役割はどのような部分だとお考えですか
あまり爆発力みたいなものではなく、安定した走りが求められると思うので、練習から外さないように、1回1回の練習を集中して行っていきたいです。
――箱根への意気込みをお願いします
自分のやるべきことを残り1ヶ月しっかりやって、やるべきことをやったら最後はもう全力で走るだけなので、そこまでの過程、準備の期間というのをレース以上に大事にして、ここから何ができるかというのを考えながら頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 山崎航平)
◆諸冨湧(もろとみ・わく)
2001(平13)年10月12日生まれ。167センチ。京都・洛南高出身。文学部1年。5000メートル14分07秒20。3000メートル障害8分53秒89。全カレ3000メートル障害で自己記録を更新して銅メダルを獲得すると、トラックゲームズでも5000メートルで自己記録を更新。ムードメーカーとしてもチームを盛り上げています!