東京箱根間往復大学駅伝(箱根)まで残り2週間を切った12月20日、合同取材が開催された。箱根前恒例の集中練習を終え、いよいよ仕上げに入る選手、監督、コーチが、箱根路での戦略や現在の状態について話す場だ。10日に発表されたチームエントリーでは、主力が順当に名を連ねた早大。この日も吉田匠駅伝主将(スポ4=京都・洛南)が、「総合優勝も視野に入れることができるようなチーム状況になっている」と自信をあらわにした。集中練習は質・量ともに高まるが、現在けがを抱えているメンバーはいないといい、『総合3位以内』の目標達成に向けて、充実の布陣が仕上がってきている。
16人のエントリーメンバー。前列中央が吉田駅伝主将
16人の登録メンバーのうち、この日ひときわ注目を集めたのは、太田直希(スポ3=静岡・浜松日体)と中谷雄飛(スポ3=長野・佐久長聖)のダブルエースだ。12月4日の日本選手権長距離でそろって27分台をマーク。大会直後は快走の代償に疲労感が強く出たそうだが、現在は他の選手と合流して箱根に向けた練習にシフトしているという。共に希望区間は特にないというが、「往路で大きく遅れないことが必要条件」という相楽監督の戦略からすれば、往路での出走が濃厚だ。全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では3区の中谷が区間賞の走りで先頭に立ち、4区太田がその差を広げて独走態勢を築いた。箱根でもそれを再現できれば、他大学にとっても脅威になりそうだ。
太田、中谷を筆頭に、3年生からは最多の7人がエントリーされている。室伏祐吾(商3=東京・早実)や、山口賢助(文3=鹿児島・鶴丸)ら、Bチームから力を伸ばしてきた『たたき上げ』の選手も多い。特に全日本8区で区間6位と健闘した山口は、集中練習の締めくくりの10マイル走で「最後まで先頭でゴールできた」といい、さらにレベルアップした走りを見せてくれそうだ。また、故障により秋以降戦線を離脱していた千明龍之佑(スポ3=群馬・東農大二)の復帰も、明るい材料だ。5000メートルで自己記録をマークした7月頃に近いレベルまでスピードが戻っている実感があるといい、「往路でも戦える手応えがある」と好調ぶりをアピール。「4区で昨年のリベンジを果たしたい」と意気込む。
全日本メンバー外から復帰を果たしたのは千明だけではない。全日本では一人も出走を果たせなかった4年生からは、吉田と宍倉健浩(スポ4=東京・早実)がエントリー。吉田は前回と同じ5区を熱望し、宍倉は「特にこだわりはない」としつつも、「10区でいい形で終われたら」とアンカーとして有終の美を飾るイメージを持っている。1万メートルで28分10秒台のタイムを持つ宍倉をアンカーに配置することができれば、後半失速した全日本のリベンジが叶いそうだ。前回往路、復路のゴールテープを切った二人が、今年はどんな表情でタスキを運んでくれるだろうか。
宍倉(左)と吉田は有終の美を飾ることができるか
下級生にも、井川龍人(スポ2=熊本・九州学院)や鈴木創士(スポ2=静岡・浜松日体)をはじめ、実力者がそろっている。井川は今季トラックで自己記録を大幅に更新しており、その成長を昨年は悔しい思いをした箱根で示したいところだ。鈴木は本練習以外でチーム内でも特に距離を踏んでいるという。「もともとトラックの短い距離よりも、ロードレースの⻑い距離の⽅が得意」というだけに、7区2位の好走を見せた昨年を上回る走りに期待が持てる。全日本1区でルーキーらしからぬ堂々とした走りを見せた辻文哉(政経1=東京・早実)ら1年生も強力で、誰が出走してもおかしくない状況だ。
目標達成に向けて懸念材料があるとすれば、「例年に比べて質を高めてやったせいもあってみんな疲れている」という相楽監督の言葉だろうか。避暑地での夏合宿をほとんど実施できなかった影響で長距離の練習が不足していたため、集中練習で質を高めたうえに、各自で距離を踏んだ結果だと考えられる。上位校の実力は拮抗しているとみられるだけに、ここから2週間弱をいかに過ごし、いかにピークを合わせるかが、明暗を分けそうだ。高速化が進む箱根では、わずかなミスが致命傷になりうる。「可能性を秘めたチームだと思っているので、チャンスを無駄にしたくない」という中谷の言葉通り、総合3位以内、あわよくば10年ぶりの総合優勝に向けて、万全の準備を重ねていきたい。
(記事 町田華子、写真 布村果暖、町田華子、池田有輝)
集団走の様子