前回の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)は直前に交通事故で負傷し、惜しくも出場を逃した吉田匠(スポ3=京都・洛南)。次期駅伝主将として臨んだ今大会は、区間15位に終わった。総合7位となったチームの現状、そして自身の結果について、語ってもらった。
※この取材は1月22日に行われたものです。
「きつくて周りが見えていなかった」
質問に答える吉田
――箱根後はどのように過ごされていましたか
チームが変わって、主将としてスタートしたのですが、チームがどの方向を向いて進んでいくのを決めるなどして、バタバタしています。まだチームの方針は決まりきっておらず、練習はまだハードではないのですがチームの取り組みなどで考えることが多いと感じています。
――練習はいつから再開されましたか
1月10日まで解散期間にして、11日集合というかたちにしたので、11日の朝練習から再開しました。
――チームは7位でゴールしましたが、今回の結果について周りからの反応はどうでしたか
去年の結果がシード落ちだったこともあり、そういうところと比べたら頑張ったねと言ってもらえることが多くて、見てもらえてうれしいなという気持ちもあります。でも、本来は3位以内を目標にしていて、7番でおめでとうと言われているので、本当はそこで悔しい気持ちを持たないといけないと思います。僕自身も安心した部分があったのですが、来年に向けてスタートしているので、もっと強いチームをつくっていかないといけないなと、そういった声を聞いて感じます。
――ご自身は箱根初出走となりましたが、周囲からはどのような反応がありましたか
惜しいところまでいって、2年間走れず、3年目にして初出走。走れたのは一ついいことだったので、周りからは見たよと声を掛けてもらえました。友達が応援に来てくれたり、親も来てくれたりしました。見てくれる人も多くうれしかったですが、その分いい結果を見せることができなかったことについて悔しさも大きいなと感じることが多かったです。
――ご両親はどの辺りで観戦をされていたのでしょうか
山の頂上、最高地点くらいで応援してくれていました
――走ってる最中に気づきましたか
気がつきました。
――新チームでは、どのような目標を定めて始動されましたか
先週辺りにチーム目標は『三大駅伝3位以内』に決まりました。全カレ(日本学生対校選手権)に関しても、しっかりと結果を残さないといけないと思うので、全種目入賞者を出すという目標を決めて、チームをスタートしました。少し遠いところにあるのですが、そこに向けてスタートしています。
――三大駅伝3位以内という目標は、どのように決まりましたか
正直3冠というのを目指せるなら目指したい気持ちはあるのですが、現実的には少し厳しい部分があります。去年も3位以内を目指してきましたが達成できていないので、僕自身最後のチームですし、強い後輩もいるので優勝を狙いたい気持ちはあります。3位を狙って3位以内ではなくて、しっかりと優勝を狙っていく中で最低でも3位以上は取っていこうという意味での『(三大駅伝)3位以内』にしました。チームの中でも三冠したいという意見が出るなどして、もめる部分はあったのですが、(目標を)それにしました。下からも優勝したいという気持ちを多くの人から聞くことができて、強いチームをつくっていく中でそういう気持ちも大切だと思うので、そういう意思をチームとして持ってくれているのは、すごいうれしいなと思いました。
――4年生が引退されましたが、現在の新チームの雰囲気はどうですか
まだ結構ゴタゴタしています。都道府県駅伝組がいることもあって、まだ一つになれてない部分はあると思うのですが、去年に比べるとしっかり練習できている人も多いと思います。テーマではないですが、今年はこの1、2月を大切にしようとチームで何度も声を掛けているので。例年箱根駅伝が終わり、あと都道府県駅伝が終わると、気が緩んでしまい体調を崩す人が出てきたり、けがをする人が目立ったりするので、そこをしっかりとやっていかないといけないなと思います。4年生がいなくて、僕自身苦労している部分もあるのですが、チームとしてはいいスタートを切れているのではないかなと、練習を見て思います。
――その中で自身の状態はどうでしたか
解散期間が終わってからしっかりと練習に取り組めています。1月、2月は狙った大会があまりなく、次は立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)になってくるので、そこへの強化期間として練習で距離を積めていると思っています。
――5区への出走が決まったのは、いつ頃でしたか
はっきり決まったのは1、2週間前だったと思うのですが、正直走れるだろうなというのは1カ月前や2カ月前から意識していて、準備はしていました。
――区間エントリー(12月29日)が決まった際、監督から声は掛けられましたか
前日の28日には「吉田で入れるけど大丈夫だな」と確認をもらっていました。自分でいくんだなというのを明確に伝えられたので、期待されてるんだなと感じました。
――事前対談では5区を走ると決まったら安井(雄一、平30スポ卒=現トヨタ自動車)さんからアドバイスを受けたいと言ってましたが、どのようなアドバイスをもらいましたか
細かいアドバイスはもらっていないのですが、安井さんからは連絡をもらいました。どういう走りがいいよとかではなく、楽しんでと言ってもらえて、それは力にはなりました
――具体的なアドバイスをもらおうという思いはありましたか
直前に何かをやっても、付け焼き刃でいっても、自分の走りを崩すだけだと思っていたので、技術的なことよりも、ペース配分や気持ちの面でのお話をもらいました。
――全日本(全日本大学駅伝対校選手権)が終わってから、5区に向けて準備をされたと思うのですが、特別な取り組みはしましたか
山を走る上で、タフさも必要になってくると思うので、練習の合間にスレッド走や、足に負荷をかけるトレーニングや、山を見据えた坂を使ったトレーニングをしました。ただ、12月に1週間くらい足を痛めた時期があって、治すことに必死だったのもあり、練習はしていたのですが、しっかりとした準備をし切れなかったと今でも思ってます。
――集中練習の消化具合としては、足を痛めたこと以外は満足のいくものでしたが
集中練習の前半までは基本的に全部をやっていて、しかも余裕を持ってできていたので、いい練習できているなと思っていたのですが、けがで抜けてしまったのが大きかったと感じます。
――何が原因だったのですか
足首周りの痛みです。(痛みが)一カ所ではなく、痛いところを庇って逆の足のアキレス腱の辺りを痛め、足首周辺を複数箇所痛めてしまいました。庇いながらやるのが良くないということで、一回まとまった休みをもらったかたちになりました。
――箱根後のインタビューでは調子自体は悪くなかったと答えてますが、当日の調子はこれまでの駅伝と比べるとどうでしたか
そうですね。特別調子がいいという感覚ではなかったのですが、悪くはなかったです。いつも通りの走りをすればそれなりの結果が付いてくると思って挑めるくらいの調子ではありました。
――その中でチームは戸塚中継所でトップと1秒差でしたが、どのようにご覧になっていましたか
テチームが3位以内を目指すなら、最低でも往路は3番以内、できることなら優勝を狙わなければと話をしていたので、その位置にいたのは自分にはプレッシャーにもなりましたが、それ以上にそういう位置で走れるかもしれないことにワクワクしていました。しっかり勝負をしたいなという気持ちを持ち、テレビを見ていました。
――小田原中継所では先頭との差が開いた状態でのタスキ渡しとなりましたが
そうなることも考えていたので、想定内でした。ここから上げていこうという気持ちでしたし、前が見える位置でもあったので、しっかりと自分で前を追っていかないといけないなと思ってスタートした記憶があります。
――大平台のポイントでは明治大と創価大と並んでの通過となりましたが振り返っていかがですか
正直きつくて、周りが見えていなかったです。給水でも、ここからいけるぞという声は掛けてもらったと思うのですが、はっきりと覚えていないくらいキツかったです。
――給水は、どなたからもらったとか覚えていますか
元から確認していたので覚えてはいたのですが、もらっている時はそれを意識できないくらい、周りを見ることができていなかったのかなと、今考えれば思います。
――山登りで失速してしまった一番の要因をどのように分析しますか
準備不足が大きいのかなと思っています。10キロ過ぎくらいまではペースは落ちていたのですが、ある程度粘れていました。それ以降前との差が開いた場所で体がはまってしまって動かなかったので、集中練習の時のコンディションの部分だったり、そもそもの走力の部分だったり、いろいろと自分に足りないものがまだあるんだなと実感させられるレースになりました。
――その中で73分台で走り終えましたが
数年前だったらもしかしたらそんなに悪くないと言ってもらえるタイムだったのかもしれないですが、実際のところ周りのレベルが上がっていて、区間順位が15位ということで、それが今の自分の現状だと思うので、73分台は遅いと思います。まだ決まってはいないですが、来年リベンジしたいなと思っていて、来年は71分代前半、71分代を切るくらい。2分、3分近く上げていく必要があるのかなと思います。
――箱根後のインタビューでは失敗できない学年での今回の結果を重く受け止めてる印象があったのですが、今もその気持ちは変わらないですか
気持ちは変わらないです。今主将になって、やはり主将になる前のレースはチームにも影響を与えると思いますし、周りを気にするわけではないですが、やはり周りの人から見ても早稲田の主将は強いと思われる方が、チームとして一つになれると思うので、結果を残さなければいけなかった試合だと思うので、そこで失敗したことは重大な責任があると思います。
――来年70分台を狙っていく上で、今年のレースで得た手応えはありましたか
まだ何していいのか分からない部分はありますし、これをしたら速くなるということは絶対に分からないと思います。自分で分析した時におそらくここが足りなかったのかなと考えられる部分は何点もあるので、そこを一つずつつぶしていくしかないのかなと思っています。
ラストイヤーに最高の結果を
箱根の山に挑んだ吉田
――どのような経緯で駅伝主将になられたのですか
話し合いになって全員が同じ意見ではなく、反対意見も出て総意とはいかなかったですが、同期の中では一番実績残していたこともあり、最終的には僕がやらせてもらうことに決まりました。
――昨年とは違い、三大駅伝全てで予選会がありませんが、その部分はどのように捉えていますか
一昨年はどん底を味わい、昨年はその結果を受けて全て予選会を走らないといけない、出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝)を走れないという苦しい一年になったのですが、そこから比べるとシードのありがたさも感じます。実際にありがたさを感じるのは、ここからのシーズンになってくると思うのですが、気持ちもすごく楽ですし、ただその分やるべきことがあるのかなと思っています。予選会がないからその期間練習を積めるわけであり、出雲があるから出雲に向けて体づくりをしないといけないと思うので。1、2年でその流れは経験しましたが、上級生になった今だからこそ、何が必要かを昔よりも分かっていると思うので、そこをしっかりとやって1、2年目に残せなかったいい結果を最後の一年で残せるように準備していきたいと思います。
――その中でチーム全体として強化していきたい部分はありますか
チームの底上げは必要だと思っています。青学大は箱根のエントリーに入っていなかった選手でも、1月12日にあったハーフで62、63分台が続出しました。どのような練習をしているのかは分からないですけど、優勝するチームは力があるのだなと感じさせられる結果です。僕たちももちろん、上が力を付けるのは大切だと思うのですが、どれだけチーム全体として強化できるかが大切だと思います。今は距離を積んで足づくりをして、故障しない体をつくった上でトラックシーズンに挑むことが大事なのかなと思ってます。
――事前対談の際には4年生全体でチームを引っ張っていくという話もありましたが、箱根を経て思いに変化はありますか
気持ちは変わらないです。やはり4年のチームになると思うので、4年生を中心に引っ張っていきたいと思いますし、ただ下の代が強いことに変わりはなくて、中谷(雄飛・スポ2=長野・佐久長聖)、千明(龍之佑・スポ2=群馬・東農大二)、直希(太田・スポ2=静岡・浜松日体)など強い選手はたくさんいるので、そこの辺りを巻き込みつつ、4年がメインで引っ張っていければとは思っています。
――太田智樹前駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)から主将を引き継ぐにあたり、声を掛けられましたか
そういうタイプの人ではないので、特には掛けられていないです。結構力でグイグイと引っ張っていくタイプの人だったので、僕とはタイプが違うのを分かってのことかは分からないですが、こうした方がいいよとかは言われなかったです。
――目指していく主将像はありますか
最近考えていたのですが、過去の主将も一人一人個性がありますし、似ている人でもやっていくチームの姿は違うと思うので、相楽さん(相楽豊駅伝監督・平15人卒=福島・安積)やチーム、特に4年生を頼りながら、自分なりの主将像をつくっていくことが大事かなと思ってます。
――新チームで期待する選手はいますか
下で言えば創士(鈴木、スポ1=静岡・浜松日体)とかが箱根ではいい結果を残していて、ここからエース格になっていくのかなと思いますし、千明と中谷は既にそういう力を持っているので、さらに力を伸ばしていって欲しいです。同学年にも期待しているので、スポーツ推薦の選手に加え、宍倉(健浩、スポ3=東京・早実)のほかに今回メンバーに住吉(宙樹、政経3=東京・早大学院)が入ったので、走れるくらいまで力を付けてくれればなと期待しています。
――競技面での個人目標は
まずトラックシーズンは関カレ(関東学生対校選手権)、全カレ優勝を目指していきたいです。3000メートル障害を得意にしているので、最低限そこでは結果を残さないといけないと思っています。三大駅伝に関しては、しっかり3つとも全部走って、チーム目標の3位以内を達成するためには区間賞を取る力が必要になってくると思うので、個人としても最低でも3位以内を目指していきたいと思っています。
――日本選手権にも出場すると思うのですがいかがですか
去年決勝に行くことができて、上を絶対に目指していきたいので、入賞を目指します。今の状態では3位は厳しいのですが、8分30秒近くを出せるようになったら目指せるので、3番以内を目指せるくらいに成長したいとは思っています。
――次に出走するレースは決まっていますか
青梅マラソンに出ることは決まっているのですが、おそらく練習として出場するので、しっかりと合わせる試合は立川ハーフになってくるのかなと思っています。
――目標は決まっていますか
立川ハーフは63分20秒を目標にしていて、1キロ3分ペースでいくと大体それくらいになると思うので、1キロ3分でハーフの距離を押していける力を付けていきたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 大島悠希)
◆吉田匠(よしだ・たくみ)
1999(平11)年3月25日生まれ。172センチ。57キロ。京都・洛南高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分07秒40。1万メートル29分58秒90。ハーフマラソン1時間3分55秒。2020年箱根駅伝5区1時間13分56秒(区間15位)。