【連載】箱根事後対談『復活』第4回 千明龍之佑

駅伝

 「エースになる」。東京箱根間往復大学駅伝(箱根)の1カ月前、箱根への意気込みをそう色紙に記した千明龍之佑(スポ2=群馬・東農大二)。1年時から希望していた4区への出走を果たすも区間7位に終わり、個人として満足のいく結果とはならなかった。終了後のインタビューに「まだ準エースだなというのは感じました」と言葉を残した千明。レースから約1カ月が経った今、何を思うのか。レースの内容や今後の目標、チームに対する思いについてお話を伺った。

※この取材は1月29日に行われたものです。

隙のないチームづくりを

質問に答える千明

――箱根が終わってから、どのように過ごされましたか

 1月の後半に都道府県対抗男子駅伝があったので、それに向けて、帰省をしながら練習しました。都道府県(対抗男子駅伝)を走った後にインフルエンザにかかってしまい、今週から練習を再開しました。

――今年20歳ということで成人式もあったと思いますが、ご友人とも会いましたか

 地元の友達とも結構会いましたね。高校にも行って、OBの先輩、同期、後輩に会ってきました。

――箱根の走りについて、友人から声を掛けられましたか

 僕のところはあまりテレビに映らなかったのですが、見てくれている人もいて、早稲田の応援もしてくれていて、色々と声を掛けてもらいました。去年があまり良くなかったので、今年シードが取れて良かったねという声が多かったです。

――箱根からもうすぐ1カ月が経ちますが、疲労は抜けましたか

 もうだいぶ休んだので、次の試合に向けてという感じです。

――4区への出走はいつ頃決まりましたか

 11月ぐらいからずっと、僕自身としては(4区に)いきたいと思っていました。比較的早めの段階、12月に入ったぐらいから決まっていました。

――相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)から直々に言われたのですか

 監督から言われたのは12月の中旬頃で、昨年よりは早かったです。

――4区への出走が決まった時は、どのような気持ちでしたか

 小刻みなアップダウンが多く、少し難しいコースなので、対策をしないといけないなと思っていました。

――昨年4区を出走した清水歓太(平31スポ卒=現SUBARU)さんから、アドバイスをもらいましたか

 一週間くらい前に連絡をして、「前半の5キロは勢いでいけるけど、10キロからがきつくなる」というふうに聞きました。後半の3キロの上りで差が付くとは聞いていました。

――当日の自身のコンディションはどうでしたか

 集中練習中は足の不安があったのですが、当日は問題なく痛みもなかったので、いいコンディションで臨めたと思います。

――3区までのレースを、どのように見ていましたか

 1区で中谷(雄飛、スポ2=長野・佐久長聖)がいい位置で渡してくれて、智樹さん(太田駅伝主将、スポ4=静岡・浜松日体)で一時はトップだったので、その時点ではいい位置でもらうのが初めてだったのですごく緊張しましたけど、井川が(順位を)落としてくれたので(笑)、いつも通りにスタートができました。

――8位でタスキを受け取った時の心境は

 前にポツポツと選手がいたので、まずはその選手たちに追い付いて、どんどんと順位を上げていこうと思ってスタートしました。

――走る前に監督からの指示はありましたか

 あまり指示はなかったですが、最初から突っ込み過ぎないようにという声はもらいました。

――前半は単独走になった部分も多かったと思うのですが、走っている時はどのようなことを意識しましたか

 最初の5キロまでは2、3人で進んで、10キロを通過した辺りから離されてしまったので、そこからはなんとか前の選手との差を広げないように、走ることを考えていました。

――後半は創価大に徐々に離される展開となりましたが、後半の走りを振り返っていかがですか

 10キロで上りから下りになるところで給水があるのですが、給水で苦しくなってしまって、その後の下りで前に行かれてしまいました。苦しかったのですが、そこで前に付いていければ良かったと思います。その後5キロくらいの間差が広がらなかったので、苦しい場面で付いていれば、休めて一緒にいけたのではないか、もう少し状況が変わったのではないかと思います。そこは一つ、心残りな部分です。

――箱根後のインタビューの際に語っていた、中だるみと同じ部分でしょうか

 そうですね。一瞬の判断で一人になってしまい、そこからダラダラと行ってしまったので、無理して付いて二人で行った方が良かったのかな思います。

――課題であったラストスパートでは、それなりの成果があったとありましたが、その部分を振り返って

 残り3キロから徐々に上っていて、残りの1キロは上りも激しくなるのですが、そこで20秒、30秒も差が付き得ると相楽さんからは声を掛けてもらっていましたし、残りの1キロで5秒、10秒詰めようとも言われていました。苦しい中でも残り3キロ、残り1キロで削り出すことを意識して、残り1キロは出し切れて終われたのは良かった点です。

――小田原中継所では吉田匠(スポ3=京都・洛南)選手とのタスキ渡しとなりましたが、中継所に入った時の心境は

 順位を上げられなくて、本当に申し訳ない気持ちもあったのですが、吉田さんのことも信頼していたので、お願いしますという気持ちで渡しました。

――4区7位という結果を今振り返ってどのように感じていますか

 10キロ通過が区間4、5番だったので、そこからの落ち込みが課題です。全日本の12キロという距離では落ちずにいけたのですが、20キロとなって前半ハイペースで突っ込むレースになると、15キロからの5キロで、まだ伸び切れない部分がありました。そういった部分は11月と12月で少し足を痛め、距離を踏めなかったことも関係していると思うので、練習量をあまり積めなかったのが、後半落ちた要因だと思います。

――例年よりも高速レースとなった今年の箱根ですが、走っていてスピードの速さは感じましたか

 自分の設定したタイムで走ることができれば区間3、4番には入れると思っていたのですが、走っている途中で区間6、7番だよと後ろから声を掛けてもらって、そこで今年は去年よりも突っ込んで入っている選手が多く、すごく速いレースになっているなと感じました。そこでもう少し(ペースを)上げなければいけなかったのですが、上げることができませんでした。その時点でもう少しペースを上げることができれば良かったのですが、分かっていてもペースを上げることができなかったので、そこはやはり準備の段階でもう少し距離に対する不安をなくせていれば、ハイペースに切り替えられたのかなと感じていました。

――4区を走って、改めて感じた課題は

 上りでしっかりとリズムをつくれたのですが、下りでスピードに乗ることができなかったなと感じたので、上りはこれまで以上にストロングポイントとして捉えていき、下りでの走りを練習から意識していければいいかなと思いました。

――昨年の箱根に比べて、成長を感じた部分はありますか

 やはり15キロからの5キロは、アップダウンがあるにも関わらず今回の方が良かったので、20キロという距離に対しての耐性は付いてきているかなと思います。今年は出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)・全日本大学駅伝対校選手権(全日本)と出場できるのですが、短い距離には自信があるので、出雲・全日本でしっかり結果を出し、箱根の20キロでもしっかりと区間上位でいけるだけの練習をしていきたいと思っています。

――往路終了後のチームの雰囲気はどうでしたか

 悪くはなかったですが、2区の段階で2位にいっていたにも関わらずゴールが9番だったので、もう少しできたなと思う部分はありました。うまくかみ合っていたらもっといい結果で終えられたのかなというのは、中谷などと話していました。

――最終的にチームは復路で順位を上げて7位でゴールしましたが、復路の走りはどのようにご覧になっていましたか

 鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)と太田直希(スポ2=静岡・浜松日体)の調子がいいのは分かっていたので、そこの二つで上げられたことは良かったですし、新迫さん(スポ4=広島・世羅)と宍倉さん(スポ3=東京・早実)も攻めの走りをしてくれて、去年とは違う復路を見ることができて少し安心しました。しかし、6区の半澤(黎斗、スポ2=福島・学法石川)が少しブレーキしてしまったので、そういう部分が改善できる部分でもありますし、一時はシード圏外までいったので、危機感も持たないといけないと思います。7位という順位に満足したら駄目だなと、ゴールした後すぐに感じました。

――ゴール直後は危機感が強かったのですか

 皆は総合7位ということで、去年の順位と比べて良かったので、ほっとしている様子もあったのですが、それで満足していたらこの先絶対上では戦えないなと感じました。中谷ともずっと、復路を応援しながらこのままでは駄目だよねと話していて、7位で満足しないようにチームにも発信していければいいなと、思っています。

――今回のレースの中で印象に残った選手はいましたか

 青学の2区を走った1年の岸本(大紀)は、1年生から2区を走って67分台で走っているので、そこには負けてられないなとは思います。来年2区行く可能性もあるので、そういった選手たちと今年はしっかりと渡り合って、智樹さん(太田駅伝主将・スポ4=静岡・浜松日体)の穴を埋めるような走りをしたいと思います。

――箱根が終わった後に、監督から言葉はありましたか

 あまり覚えてはいないですが、あれが限界ではないよねという話を二人で話した気がします。

――中谷選手とレース中から話されてたとのことですが、具体的にはどのようなことを話されたのでしょうか

 昨年のチームの甘い部分についてですね。その部分を今年引き継いでしまったら、また今回のようなブレーキが2つも3つもあるような駅伝になるので、今年はしっかり上級生がそういった部分を徹底的に直していって、隙のないチームをつくっていかないといけないと思います。

――春からは上級生となりますが、そのことについてどのように捉えていますか

 いろいろな責任も生まれてきますし、これまで許されていた部分や、妥協していた部分も多少はあったのですが、そういった部分も3、4年生になったからには後輩も見ていますし、チームの雰囲気にも影響してくるので、いいお手本を見せることができるように、心掛けていきたいと思います。

――箱根前の集中練習では上級生にも臆することなく意見を言っていた印象があるのですが、今後チームにどのように関わっていきたいですか

 新4年生が去年の代に比べると戦力が落ちて、僕たちの代が強い選手が多いので、練習では僕たちが主導権を握って盛り上げていかないといけないと思います。チームを盛り上げて、離れそうな人がいれば声を掛けていくことは、これまで通りやっていこうと思います。また、去年は走りでチームを引っ張っていたのが太田智樹さんでしたが、そういう存在に僕や中谷や直希(太田・スポ2=静岡・浜松日体)がなっていかないといけないと思うので、3年生になってからは走りで引っ張っていきたいと思います。

「トラックで存在感を示したい」

他大の選手と並走する千明

――4年生が引退されましたが、現チームの雰囲気はどうですか

 昨年よりもけが人は少ないですし、練習もできている人が多いので、昨年よりはいいと思うのですが、まだまだ雰囲気としてはオフモードという感じがしています。大会に向かって練習している人と、まだ箱根の余韻から抜け切れてない人がいるので、注意しながらやっていきたいと思います。

――今年の三大駅伝をどのように現時点では捉えていますか

 来年の新入生も強い子が入ってきますし、戦力的に上位を狙える布陣になるので、今年こそは出雲・全日本で優勝争いをしたいです。それだけの力を持っているので、しっかり優勝を狙って3位以内という目標を達成できるようにしていきたいです。

――その中で走りたい区間はありますか

 出雲に関してはどこでもいいですが、全日本は前半区間がいいです。

――先程2区を来年走るかもしれないとありましたが、来年の箱根で走りたい区間はありますか

 1区以外ならどこでもいいです。

――今後出場する試合は決まってますか

 今の段階では福岡クロカン(日本選手権クロスカントリー競走)と立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)を予定してます。

――目標は

 クロカンは10番以内を目標にして、立川ハーフは入賞を目標に走りたいと思います。

――立川ハーフを終えるとトラックシーズンが始まりますが、目標はありますか

 去年5000メートルの自己ベストを更新できなかったので、まず5000メートルの自己ベストを更新したいです。13分台は出したいですし、10000メートルも28分台前半を狙いたいと思っているので、まずはその二つを目標にやっていきたいと思います。

――最後に、今年一年をどのような年にしたいか、意気込みをお願いします

 去年は春先にけがをしてしまいトラックシーズンは思い通りにいかなかったので、春先にしっかりと練習を積んで、トラックで存在感を示したいです。トラックで波に乗れれば駅伝シーズンでもいい結果が出ると思うので、まずはトラックシーズンに重点を置こうと思います。去年できなかったことを、今年はやりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大島悠希、橋本和奏)

◆千明龍之佑(ちぎら・りゅうのすけ)

2000(平12)年3月3日生まれ。169センチ。52キロ。群馬・東農大二高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル14分02秒16。1万メートル29分03秒19。ハーフマラソン1時間3分40秒。2019年箱根駅伝3区1時間3分30秒(区間10位)。2020年箱根駅伝4区1時間2分25秒(区間7位)。