鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)は、6月の全日本大学駅伝対校選手権関東学連推薦校選考会(全日本予選会)を皮切りに、好走を重ねてきた。11月には1万メートルで28分台に突入。ルーキーながらチームを引っ張る自覚が芽生えたという鈴木は、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)でどのような走りを見せてくれるのか。大舞台を前にした今の心境に迫った。
※この取材は12月4日に行われたものです。
「少しずつ速いペースに慣れてきた」
笑顔で質問に答えた鈴木
――集中練習が始まっていますが、現在の調子はいかがですか
今の調子は良いですね。練習をコツコツ積めていますし、以前の1万メートル記録挑戦会が自信になったこともあって、少しずつ速いペースに慣れてきたと思います。
――集中練習で、特に意識して取り組んでいることはありますか
距離を踏むことが数字として目安になるので、意識して取り組んでいます。でもやはりその中でけがとの兼ね合いには気を付けていかないといけないと思うので、走る距離には注意していきたいなと思っています。
――練習の際、チーム内で特に意識している選手はいますか
井川(龍人・スポ1=熊本・九州学院)が一番気になりますね。1年生同士なので頑張っていきたいという気持ちがあります。
「Wを背負っているので、やるしかない」
――トラックシーズンについて伺います。関東学生対校選手権で対校戦デビューを果たしましたが、入学以降練習は順調に積めていたのですか
高校時代に比べて走りこむ距離は増えたのですが、入寮が1月30日くらいで結構早かったこともあって、しっかり対応できたと思います。
――初の対校戦となったレースを振り返っていかがですか
主観的な感情としては苦しかったのですが、他大との差を感じたことが一番大きかったです。
――全日本予選会では、2組1着の走りでチームを勢い付けました。レースを振り返っていかがですか
関カレで悔しい思いをした分、そこから練習でも自分の課題に真摯(しんし)に向き合ってやってきたので、結果が出たのではないかと思います。
――夏合宿の際に、合宿前に故障があったとおっしゃっていましたが、その後の状態はいかがですか
全日本予選会が終わってから菅平合宿までけがしていて、そこからも少し長引いて、結局走り始めたのが9月くらいでした。今は完治しています。
――夏合宿での練習はどの程度こなせたのですか
3.5次合宿という全カレ(日本学生対校選手権)組の合宿に参加させてもらって、その最後の最後に少し走れたくらいでした。
――合宿を経て成長を感じた部分はありましたか
成長というよりは、痛みがなく気持ちよく走れたことがその時は素直にうれしかったです。前半は全カレメンバーと練習して、途中までしか付けなかったのですが、後半になるにつれて段々体力が戻ってきたことを感じることができました。
――夏合宿で距離を積めなかったことに対して、不安はありましたか
チーム内でも走った距離はほぼビリだったと思うので、不安しかなかったです。
――1万メートル記録挑戦会で28分台に突入しましたが、好記録の要因をどのように考えていますか
夏合宿で走れなかった分をどう取り返すかということしか考えていなくて、走れるようになってからは集中練習のようなかたちで距離を積むことに励んでいたので、走れているなという感触があったことが大きいと思います。箱根予選会、全日本、記録挑戦会とリズム良くいけたと思います。それでも、記録挑戦会では29分10秒くらいを想定していたので、予想外の記録でした。
――集中練習のような形で距離を積んだのはいつ頃のお話ですか
3.5次合宿が終わってから箱根予選会までの間、自分で距離を踏もうという試みをしていました。
――年間を通じて安定して結果を出していた印象ですが、高校時代と比べて成長を感じた部分はありますか
大学に入って、環境が変わったことに対しての高揚感があります。箱根予選会でも全日本でも、やはり高校時代とは応援して下さる方の人数も全く違いますし、自分がWの文字を背負っているということに対して、期待されているんだなと感じて責任感を感じながら走っているので、そこがトラックシーズンからここまであまり失敗せずに走ることができた要因だと思います。
――反対に伸びしろだと感じている部分はありますか
箱根予選会でハーフマラソンを走ってみて、まだいけるという感触がありました。1万メートル28分台ももちろんですが、5000メートル13分台を簡単に出せるようになれば、おのずとハーフマラソン1時間2分台もいけると思うので、今はスピードの余裕度を付けていかないといけないと思っています。
好記録を出して芽生えた責任感
全日本では悔しさを感じた
――ロードシーズンについてお伺いします。新入生対談の際に、ロードが得意とおっしゃっていましたが、ロードでの自分の走りの強みはどのようなところですか
トラックをぐるぐる回るより景色が変わる方が好きです。もしかしたらロードの方が向いている走りをしているのかもしれないですけど、感覚的なものでよくわからないです。
――箱根予選会ではチーム内3番手でしたが、65分台の記録で予定よりは2分ほど遅れたと伺っています。レースを通してどのような課題を見つけましたか
結構気温が高くてきつかったのですが、怪我から戻って1カ月ほどでできることはやったと思っています。でも後から振り返るともう少し前半から攻められたらよかったかなと思います。
――予選会で手応えを得た部分はありましたか
10キロくらいで既にきつかったのですが、そこからは結構粘れたなという感触があって、スタミナの面で高校時代より成長していることを2回目のハーフを走って感じましたし、もう少しいけるのではないかという期待感を持つことができました。
――先にゴールした井川選手とは17秒差でしたが、レース中意識していましたか
最初は結構暑かったので、少しペースを落として後半上げていこうという判断をした結果、後半選手を拾っていくことができました。井川も前に見えている状態で、追い付きたいなという気持ちだったのですが、井川も譲らず追い付いたり離されたりというのを繰り返していました。
――箱根予選会から全日本までの間はどのように立て直しを図りましたか
ただただ休みました。土曜日に予選会があって、火曜日までは一切走らないで本当にゆっくり休んで、水曜日に軽めのポイント練習をやって、そこからはジョグも30分くらいしかやらないで、とりあえず疲労を抜くことに徹しました。
――ハーフは予選会で2回目とのことでしたが、それだけ疲労を感じたということですか
2、3日経てば筋肉痛はなくなったのですが、内面的な疲労が残っているなという感じがありました。
――全日本が大学駅伝デビュー戦になりましたが、どのような思いで臨みましたか
あまり緊張はしなかったです。エンジのユニホームを着てWを背負っているので、やるしかないという気持ちでいっぱいでした。
――全日本では区間6位で、「後半に粘れなかった」と振り返りましたが、走りを振り返っていかがですか
悔しさがあります。高校の同期だった西澤侑真(順大)に今までずっと勝っていたのに負けたのが悔しかったですね。少しの差というわけでもなかったので、力不足を感じました。
――箱根予選会、全日本の両レース後に後半の走りを課題として挙げていましたが、その後克服していますか
そうですね、だいぶ良くなっていると思います。最初にハイペースで入った結果その後伸びてこなかったので、ハイペースで入ったところで余裕を持って走れないといけないという考えに至りました。全日本では1キロ2分50秒くらいのペースで5キロまで行って後半落ちてしまったので、2分50秒ペースでもっと余裕を持って走れれば、後半も粘れるかなと思います。
――1万メートル記録挑戦会の後に、「2分55秒で余裕を持って押していきたい」とおっしゃっていましたが、その手応えはつかめていますか
手ごたえはつかめています。先日の練習で5000メートルを3本走った時も、ラスト1本で引っ張らせてもらったのですが、2分55秒ペースが体に染み込んでいる感じがあって、気持ちよく走ることができました。きょうの練習でも後半上げていくところできちんと上げることができたので、段々余裕度という自分の課題を克服できているのではないかと思います。
――集中練習では先頭に立つ場面も多いのですか
そうですね。28分台を出せたことで、1年生というよりもチーム内で上位にいるんだという気持ちが出てきたので、責任感を持ってチームを引っ張っていかないといけないという気持ちに変わってきました。
「区間賞を取って、良い流れをつくれたら」
――箱根に向けてのお話を伺います。箱根まで残り1カ月ほどですが、どのような心境ですか
楽しみです。緊張するというよりも、ここまでやれることをコツコツやってきたので、それを出し切れたらいいなと思っています。
――箱根でご自身に求められている走りはどのようなものだと考えていますか
ここまで安定した走りをできていることが強みとしてあるので、外さないことを相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)には期待されていると思います。でも自分は区間賞を取りたいと思っているので、どの区間を走っても、僕の区間賞がいい流れで作用するような走りができたらいいなと思います。
――走ってみたい区間はありますか
どこでもいいかなと思っているのですが、3区、4区、7区あたりですかね。他大の選手がいる中で競り合って走れたらいいと思います。あとは平坦なところを走りたいです。
――集団走の方が得意ということですか
集団というより、前にいる選手を捕まえていく走りをしたいと思っています。
――個人の目標は区間賞ということでしたが、チームの目標は
チームとしては3位以内を目標としていて、そのためには僕が希望する区間を走れたとしたらその時点で5番以内にはいないといけないと思うので、僕の所で5位以内を意識して走らないといけないと考えています。
――他大で意識している選手はいますか
あまり気にしないです。でも、1万メートル記録挑戦会と同じ日に田澤(廉、駒大)が28分13秒を出していて、この選手に勝たないと世代トップになれないという気持ちはあります。
――世代トップを意識しているのですか
自分が3年生になる時には大学でトップを取りたいと思っているので、上の学年も含めて意識しています。
――今のチームの空気はいかがですか
良いと思います。集中練習に入った中で、今までBチームにいた選手も混ざってきて、彼らには負けられないという危機感もいい意味であって、相乗効果を生んで集中できているのではないかと思います。
――チームをまとめる太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)はどんなキャプテンですか
本当に背中で引っ張るキャプテンだなと思います。僕が中学1年生の時に智樹さんは高校1年生で、浜松日体中学だったので同じグラウンドでずっと練習してきた中で、大きな背中だなとずっと感じてきました。いつか追い付かないといけない存在だと思います。
――最後に箱根駅伝に向けて意気込みをお願いします
チームの3番という目標に対して貢献したいと思っているので、区間賞を取って良い流れを作れたらいいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 町田華子)
オノマトペで箱根のイメージを書いてもらいました!
◆鈴木創士(すずき・そうし)
2001(平13)年3月27日生まれ。173センチ。51キロ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分06秒58、1万メートル28分48秒26。ハーフマラソン1時間5分07秒。TETSUというお店のまぜそばが好きで、ベストを更新した1万メートル記録挑戦会の後にも食べに行ったそう。プライベートについては表情を緩めて話してくださった一方で、競技に関する質問には言葉を選びつつ丁寧に答えてくださいました。競技への真摯(しんし)な姿勢が箱根で実を結ぶでしょうか。安定感の光る走りに期待がかかります。