予選会から立て直し、早稲田の意地を見せられるか/全日本展望

駅伝

 9位での通過となった東京箱根間往復大学駅伝予選会(箱根予選会)からわずか1週間、早大は全日本大学駅伝対校選手権(全日本)に挑む。今年は出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)に出場していないため、今大会が早大にとっての学生駅伝初陣となる。今までになく厳しい日程の連戦での参加となるが、「春から戦う準備をしてきた。(箱根予選会9位という)結果を吹き飛ばすようなレースをしたい」と相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)は語る。また、太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)も「練習は十分できている。失敗を恐れずに積極的に走っていきたい」と意気込むように、短期間で気持ちを切り替え、コンディションを整えて臨みたい。出雲では東海大、青学大、東洋大などの強豪校をおさえて國學院大が優勝し、波乱の幕開けとなった今年の学生三大駅伝。全日本でも大混戦が予想されるなかで、早大はどこまで粘りを見せられるか。本記事では11月2日時点での区間エントリーをもとに、伊勢路の展望をお伝えする。

 全区間で唯一10キロを切る1区には、期待のルーキー井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)が抜てきされた。高校時代には全国都道府県対抗男子駅伝1区区間賞を獲得するなど、スピードとロードでの勝負強さを兼ね備えた選手だ。箱根予選会では、ハーフ未経験ながらも主将の太田智に続くチーム内2位でゴールするなど、チーム内でも存在感を示す。「トラックよりもロードが好き」、「同学年に勝てるようなレースをしたい」と意気込みを語る井川。初めての学生三大駅伝でも持ち前のスピードを生かして上位に食らいつき、好位置でタスキをつなぐことができるか。舞台が愛知から三重へと移る2区には主将の太田智が出走予定。箱根予選では序盤から日本人先頭付近で粘り、チーム内1位でゴールするなど、走りでチームを引っ張ってきた。前回大会のこの区間には、明大の阿部弘輝や、出雲優勝に貢献した國學院大の浦野雄平など各校エースが投入されて順位が大きく変動したように、距離こそ短くなったものの依然として勝負を左右する重要区間である。箱根予選後には「キャプテンの走りがしっかりとできませんでした」と悔しさを口にしたが、伊勢路ではエンジのタスキを胸に、チームを勢いづける走りをしたいところだ。続く3区には2年連続で中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)が登場予定。夏合宿から続く怪我の影響で箱根予選を回避したが、昨年驚異の7人抜きを達成した同区間で復活の走りを見せることができるか。夏合宿では「区間賞を2つの駅伝で獲得することを目標にしていきたい」と語った中谷。まずはこの全日本での快走に期待したい。アップダウンの攻略が求められ、前半の勝負どころの4区にはルーキー小指卓也(スポ1=福島・学法石川)がエントリーされた。高校3年次の全国高校駅伝2区で区間賞を獲得したようにスピードが自慢だ。大学入学後には「夏合宿では距離を踏み、駅伝シーズンに向けてしっかりと距離を走れるように頑張りたい」と語る。長い距離への対応にも取り組んだ成果をここで発揮したい。

中谷は昨年と同様に3区にエントリーされた

 全区間の中間地点が位置し、勝負が後半戦へと突入する5区には太田直希(スポ2=静岡・浜松日体)が名乗りを上げた。前半シーズンは足を痛めて練習を離脱してしまった時期もあったが、夏合宿では昨年以上に走り込んだことで「走りのキャパシティが広がった。秋以降に研ぎ澄まして実戦で生かしたい」と駅伝シーズンへの意気込みを語る。箱根予選会後には「本当に不甲斐ない」と自身の走りに対し危機感を口にしたが、「ここからしっかり調整して、完璧に走りたい」と立て直しを誓う。昼の暑さとの戦いを強いられる6区には、ルーキー鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)が抜てきされる。大学入学直後、4月の日本体育大学長距離競技会では1万メートルで29分26秒34をマークして自己新記録を更新すると、関東学生対校選手権(関カレ)1万メートルにも出場。さらに全日本選考会ではラストスパートを見せつけ組1着でゴールしたように、勝負強さが伺える。続く7、8区の長距離区間に各校エースが控えることを考えると、ここで少しでもいい位置でつなぎたいところだ。17.6キロと大幅に距離が延長されたことにより、各校エース級の選手が投入される7区には、新迫志希(スポ4=広島・世羅)を投入予定。今季は関カレなどの主要大会には出場していないが、7月の関東学生網走夏季記録挑戦競技会5000メートルにおいて14分14秒20をマークし、1年次以来となる14分15切りを達成。昨年はここで青学大が東海大を逆転してそのまま優勝したように、後半随一の注目区間となる7区で、ラストイヤーの奮起に期待したい。最終にして最長の8区には山口賢助(文2=鹿児島・鶴丸)が出場予定だ。9月の大東文化ナイター競技会では1万メートルで自己新記録の29分52秒11をマークし、続く箱根予選会にも「自信を持って臨むことができた」と語るなど調子は右肩上がりのようだ。スピードやスタミナの面で力不足を感じたと言うが、予選会を経て見つけた課題を詰めて、エンジを背負う準備を整える。19.7キロの長距離に加えてラストには上り坂が選手を待ち受けるタフな区間で、粘りを見せたいところだ。

7区に抜擢された新迫。長距離区間で輝きを放てるか

 なお、区間エントリーは3日当日の午前6時30分まで変更可能だ。早大の補員には千明龍之佑(スポ2=群馬・東農大二)や、次期駅伝主将の吉田匠(スポ3=京都・洛南)などの有力選手も控える。現時点では各大学主力選手を控えに温存しており、全体的なエントリーに変化が見られると予想される。戦況を大きく左右する当日変更からも目が離せない。13年ぶりに箱根予選会に出場したことにより、例年とは違う状況での勝負を余儀なくされる早大。それでも『強い早稲田』の復活に向け、『全日本3位以内』という目標は変えずに挑む。混戦必至の伊勢路で、早大はどこまで存在感を示すことができるか。令和最初の『日本一』を決めるこの大会での、エンジのタスキの行方に注目だ。

(記事 布村果暖、写真 町田華子、後藤あやめ氏)

早大エントリー選手(11月2日時点)

1区(9.5キロ)

井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)

自己記録

5000メートル:13分54秒59

1万メートル  :29分42秒03

2区(11.1キロ)

太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)

自己記録

5000メートル:13分58秒72

1万メートル  :28分56秒32

3区(11.9キロ)

中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)

自己記録

5000メートル:13分45秒49

1万メートル  :28分50秒77

4区(11.8キロ)

小指卓也(スポ1=福島・学法石川)

自己記録

5000メートル:14分09秒37

1万メートル  :30分03秒53

5区(12.4キロ)

太田直希(スポ2=静岡・浜松日体)

自己記録

5000メートル:14分09秒43

1万メートル  :29分21秒83

6区(12.8キロ)

鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)

自己記録

5000メートル:14分06秒58

1万メートル  :29分26秒34

7区(17.8キロ)

新迫志希(スポ4=広島・世羅)

自己記録

5000メートル:13分47秒97

1万メートル  :29分07秒06

8区(19.7キロ)

山口賢助(文2=鹿児島・鶴丸)

自己記録

5000メートル:14分24秒23

1万メートル  :29分52秒11

補欠選手

三上多聞(商4=東京・早実)

自己記録

5000メートル:14分38秒65

1万メートル  :29分46秒49

宍倉健浩(スポ3=東京・早実)

自己記録

5000メートル:14分04秒54

1万メートル  :29分17秒12

吉田匠(スポ3=京都・洛南)

自己記録

5000メートル:14分07秒40

1万メートル  :29分58秒90

千明龍之佑(スポ2=群馬・東農大二)

自己記録

5000メートル:14分02秒16

1万メートル  :29分03秒19

向井悠介(スポ2=香川・小豆島中央)

自己記録

5000メートル:14分36秒12

1万メートル  :29分32秒41