学生三大駅伝で初めての出走となった、 昨年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。6区区間12位で青学大との差を広げられてしまい、石田康幸(商4=静岡・浜松日体)は唇を噛んだ。そうして迎えたことしは関東学生対校選手権(関カレ)での5位入賞をはじめ、5000メートル、1万メートル、ハーフマラソンでの自己ベスト更新など実力を発揮。箱根に向けて、主力としての存在感を示してきた。今回はことしのシーズンの振り返り、そして大学で競技を引退する石田康にとってラストランとなる箱根への思いを伺った。
※この取材は11月29日に行われたものです。
「関カレは自分のターニングポイントになった」
力強く、質問に答えてくれた石田康
――第30回上尾シティマラソン(上尾シティマラソン)を終えてから、2週間ほどですが、最近の調子や疲労などはいかがですか
調子は普通です。10月に2本、20キロメートルの距離を走ったので疲労は結構あります。見えないところで疲労を感じていますが、走る練習の量は落とさずになんとか走ったという感じです。
――集中練習中だと思いますが、現在の練習の様子はいかがですか
まだ30キロ走と5000メートルを3本しかやってないんですが、Bチームから上がってきたメンバーがある程度余裕をもって(練習を)やれている選手が多いです。この調子でやりつつ、ポイント練習以外の地道な練習もみんなで頑張っていきたいと思います。
――現在の自分の走りについてはいかがですか
疲れが取れてないので本調子ではないのですが、箱根でもう一皮むけた走りをするにはきついところでいつも以上に練習をしなければいけないと思っています。きつい中でももっとパフォーマンスをあげられるように意識したいと思います。
――チームとして昨年からの変化はありますか
集中練習をやっている人数は少ないですが、その分みんなでまとまってやろうという意識が去年よりはあるのではないかと思います。
――自分の中ではいかがでしょうか
去年は調子もあまり良くなく、練習でいっぱいいっぱいだったんですが、今は練習をやりつつも周りを見れているので気持ちの余裕はかなりあると思います。
――1年間を振り返る質問に移ります。新チームが発足して、立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)ではチームとしても個人としてもあまりいい結果ではありませんでした。今振り返っていかがですか
あの失敗が良かったわけではないですが、あの結果を踏まえて自分はかなりやばいと思い練習もしましたし、いい方向に持っていけました。他の何人かもそれを受け止めて頑張った人がいました。今、外から見れば悪いと思われるようになっていますが、今のチームの状態は悪くないと思いますし、あの立川ハーフがあったからこそみんな頑張れているのかなと思います。
――そこから関カレではハーフマラソンで入賞されました。そちらは振り返っていかがですか
4月と5月の頭は調子があまり良くなく、今までのような自分の弱さが出てしまった部分もありました。関カレ前から練習を工夫してやってみたら関カレで結果が出たので、自分の中ではきっかけになりました。走りのコツは完全にそこでつかんだ感じです。関カレは自分のターニングポイントになったと思います。
――関カレでは安井雄一駅伝主将(スポ4=千葉・市船橋)と最後に競り合う場面もありました
同じレースで一緒に走って勝つということがあまりなかったですし、他大の同期の主力とも自分がしっかり走れば戦えるということを実感したので、その後も他大の選手に勝てるようになったかなと思います。
――以前の取材でホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)の1万メートルで全カレ(全日本大学対校選手権)のタイムを切れなかったとおっしゃっていました
今振り返ると、ホクレンの気温が30度くらいあって。あのコンディションの中、組トップも29分26秒で自分も29分29秒の2着と(タイムが出なかったことは)仕方がなかったのかなと思っています。逆に「全カレに出場せずに、夏合宿で死ぬ気で走りこんで駅伝に向かえ」というメッセージだと勝手に思い込んでいました。ホクレンでタイムが出なかったのは気象条件が大きかったので悔しかったですが、悲観せずに次に向かいました。
――夏合宿の話になります。駒野亮太コーチ(平20教卒=東京・早実)が「2次合宿の消化率が完璧だった」という話をされていましたが、石田選手自身の手応えはいかがでしたか
これまでの3年間、夏合宿でジョグもやりつつ、ポイント練習をちゃんとこなすというのは完璧にはできていませんでしたが、4年生ではほぼ完璧にこなせました。疲れた状態で妙高駅伝の方にAチームでは自分だけが出て、結果を出せたので2次合宿は充実していました。
――3次合宿はいかがでしたか
3000メートルと10マイルは競り合うことがポイントで、チームでも上位で帰ってこれたので、自分の中では(今までより)何倍もいい練習ができたと思います。
――それが今活かされていることは感じたことはありますか
練習での手応えが自信になっているので、出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)も全日本(全日本大学駅伝対校選手権)も、何も不安なくスタートラインに立てたと思います。
――ロードシーズンの話に移ります。出雲では「なんで走れなかったのか分からない」とおっしゃっていましたが、エントリー漏れの理由について今、冷静に考えるといかがですか
今、冷静になると5000メートルの持ちタイムも他のメンバーと比べると遅いです。しっかり5000メートルでタイムを出していかないと次の駅伝につながらないという意味で相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)は自分に5000メートルで自己ベストを出させてくれたのかなと思います。次につなげさせたいという思いと、この悔しさを全日本と箱根にぶつけて欲しいというメッセージだと思いますし、あれがあって全日本も自分の力を出せたと思います。今にもつながっているので、時間がたって振り返ると問題なくできたと思います。
――その全日本では8区で区間6位でした
もう少し頑張れば区間3位になれたと思いますし、悔いが残る面もあって。ただ設定タイムは上回っていたので6割くらい手応えはありました。しかし、自分に絶対的な力があれば前の中央学院大を抜けたなと。神大の鈴木健吾選手のタイムで走って入れば確実に抜かせていますし、そこまでいかなくても自分に力があれば抜かせていたと思うので、そこは今反省しています。次は1分以上あっても絶対に抜くという気持ちで練習しています。
――チームとしては全日本でシード落ちしてしまいました
上位争いができなかったとしても、シードは必ず取らなければいけないと思っていました。下級生にも来年入ってくる1年生にも負担をかけてしまうことになるので本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。箱根でそれは取り返せると思うので、悔やむのは箱根で取り返してから考えようと思います。
――ことし全体として、チームの結果が振るわないということですが、4年生としてどのように捉えていらっしゃいますか
結局はそのチームの結果は中がどうであろうと、4年生の責任になりますし、核となる4年生4人が全日本でしっかりと走っていればこんなことにはならなかったです。後輩うんぬんより自分たちが完璧な結果を出そうとまとまってやっています。
――これまでの後輩の走りを見ていていかがですか
練習ができなくて試合に出てしまった後輩もいて、それは結果が出せなくて当然ですし、そこをうまくもっていくのが4年生の仕事でもあるので(後輩が)走りやすいように僕たちがしないといけないと思います。次の箱根では自分が精いっぱい走りたいと思います。
――太田智樹選手(スポ2=静岡・浜松日体)は好調な印象でしたがそちらはいかがですか
今僕が頑張ってるのも彼が下の学年からいい走りをして、僕に刺激を与え続けてくれているからでもあります。全日本では1区でいい走りをしてくれて8区で智樹に負けない走りにしないとと思いましたし、高校から2人同時に噛み合うレースが少なかったので、今こうやって噛み合ってこれているのは嬉しいです。
「最後なので最高の結果を出したい」
――箱根の話に移ります。ラストランにもなりますが、やはり特別な思いはありますか
特別な思いがとても強くて、最後なので最高の結果を出したいと思っています。この一年間平常心を忘れないということでいつも通りのレースに臨むような感覚で臨みたいと思います。
――走りたい区間はありますか
最近聞かれることも多くて、自分の中でも迷うんですが、去年の経験と悔しさを晴らしたいということで6区を走りたい思いもあります。しかし、今のチーム状況から考えて自分が平地の往路なら3、4区、復路ならば9区を走らないといけないとも思います。今のところは6区五分、3、4区五分といった感じですね。どこにでも行けるように準備しています。
――今回の箱根での役割はどのように感じていらっしゃいますか
これまで求められていたのは、安定して確実に結果を出して走るということだと思いますが、最後の箱根ですし自分の区間で流れを変える走りというのが求められると思います。悪い流れならば断ち切って、いい流れならばさらに加速するような走りをしたいと思います。
――箱根に向けて自分の中での課題はありますか
往路を走るのであれば、最初の10キロを28分台で通過してそのまま耐えるようなレースも考えられます。1万メートルのベストを考えればきついように思われますが、全日本で(最初の10キロを)29分9秒で通過できたようにそれをもうひと段階クリアすれば良くて。課題でもありますができることだと思うので、自分の自己ベスト以上のタイムで突っ込んでも耐えれるようなことを課題として取り組んでいます。
――チームとしての課題は
核となる選手が、100パーセントの状態で臨むということなので、練習をかなりやりつつ、全員がそろうということは課題になると思います。
――逆にいい点、アピールポイントはありますか
同期への思いが強いので、同期の走りですね。特にこれまで駅伝を走ってきた光延(誠、スポ4=佐賀、鳥栖工)、藤原(滋記、スポ4=兵庫・西脇工)、安井の4人で区間賞か区間3位以内で走れれば強いチームになると思うので、僕ら4人がアピールポイントになると思います。
――自分の走りではありますか
自分の走りのアピールポイントは絶対に外さない力ですかね。最強の安定感ということで(笑)。
――これから箱根までに詰めていきたいことはありますか
安定感から抜け出す爆発力です。箱根でどう爆発するかということだと思います。
――箱根は4年生のメンバーとしても最後となりますが、4年生への思いはありますか
これまでタスキを全員がつなぐことはなくて。主力でやってきた4人も毎回誰かが欠けてそろったことがないので、最後は全員でタスキをつないで区間上位で帰ってきたいと思います。
――最後に箱根への意気込みをお願いします
ことしは足がどうなろうと、ちぎれるまで走りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 平松史帆)
箱根への意気込みは「やりきる」。ラストランへの覚悟を感じます
◆石田康幸(いしだ・やすゆき)
1995(平7)年12月21日生まれ。175.5センチ、57キロ。静岡・浜松日体出身。商学部4年。自己記録:5000メートル14分10秒30。1万メートル29分29秒16。ハーフマラソン1時間3分28秒。お名前を渡辺康幸前駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)からいただいたという石田康選手。お父様が早大出身で、弊会の新聞の定期購読をしてくださってるそうです。お父様の影響で小さいころから憧れていたエンジを着て、有終の美を飾ります!