【特集】長距離夏合宿特集『再燃』相楽駅伝監督インタビュー

駅伝

 昨年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では総合3位まで早大を導いた相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)。しかしチームが新体制になってからというものの思うような結果が出せずにいる。何が足りないのか。夏合宿でのチームの現状、駅伝シーズンの展望についてお話を伺った。

※この取材は8月15日に行われたものです。

「主力の故障がチームの結果に大きく響くようなシーズンだった」

インタビューに答える相楽駅伝監督


――チームが発足してからを振り返っていかがですか


 4年生が抜けて新チームが発足して、安井(雄一駅伝主将、スポ4=千葉・市船橋)を中心によくまとまっていた印象でした。滑り出しはストレスもなく始まった印象でした。1月、2月もそれなりに都道府県駅伝とかで結果もそこそこ出ていて、2月の合宿も順調にできていた印象だったんですけど、合宿の途中で体調不良者が出たり、2月の後半から故障者が出るようになったりして立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)でチームとして思うような結果が出ない、というより想定より悪い結果が出てしまって、なんでかなと振り返ったときに年を明けてから、体調不良者、故障者が出てしまっていて。これは何とかしなければいけないと思いながらトラックシーズンに入ったんですね。トラックシーズンに入っても故障とか体調不良とかはなかなか収まらなくて、関カレ(関東学生対校選手権)にしても目標にしていた入賞数、表彰数には届かなくて、チームとしてちぐはぐな状態が続いていました。やっと7月に入ってホクレンの網走大会とか、その後の早稲田記録会とかで自己記録だったり、網走なんかも自己記録こそ出なかったものの内容自体はいいレースができていて、春の立川ハーフと関カレについてはなかなかチームとしてのピークを持ってくることはできなかったんですけど、7月に入ってうまく歯車が回りだしてこの合宿に入れたかなというような感じです。


――ケガが多かったとおっしゃっていましたが、原因などはありますか


 多かったといっても結果的には下級生、いうなれば1年生にケガが多くて、そういう意味では上級生についてはそれほど大きな故障がなくやれているんですけど、例えば関カレに永山(博基、スポ3=鹿児島実)が出られなかったりとか、新迫(志希、スポ2=広島・世羅)がうまく持ってこれなかったりとかチームの主力の選手がきょねんより少ないチームなので、主力が誰か欠けたときにカバーする人がいないというのが今年のチームなのでそういう意味で主力の故障がチームの結果に大きく響くようなシーズンだったなという感じです。


――その中でも関カレのハーフマラソンで4年生がダブル入賞されましたがそちらはいかがですか


 自信をもって送り出したメンバーだったのでそこは安井も頑張ってくれましたし、石田(康幸、商4=静岡・浜松日体)は思ったより頑張てくれたなというのがある一方で、練習が一番順調にできていた清水(歓太、スポ3=群馬・中央中教校)が力を出せなかったりというところで、うまくいって手ごたえを感じた部分と、さっきも言ったようにことしのチームは人数が少ないので出た人間が100パーセントの力を出さないといけないと思っていた中では満足はできなかったかなという感じですね。


――監督3年目ということですが、慣れてきた部分はありますか


 特にはないです。卒業生が出て新入生が出てとメンバーは毎年変わってチームのキャプテンによってチームのカラーも変わりますし、そういう意味では毎年一から作るつもりでやっているので慣れないですし。慣れたことと言えば監督と呼ばれるのに慣れたことくらいですね(笑)


――ことし変えたことはありますか


 特にはなくて一年目から知野さんの知野トレを取り入れて技術的に進化させたというところがあって、3年目はそれをさらに消化していくというのが大事ですし、あとはきょねんと変えたっことで言えばことしのチームはしつこいくらい言いますが人数が少ないのでAチームでもBチームでも一人当たりの責任とか仕事の質量とかを高めないといけないよという話はしているので、意識改革というのを取り入れました。まずBチームから始めて。具体的にメンタルトレーニングをBチームの4年生の谷口、河合を中心にそこからBチームの変革を始めまして。それがBチーム全体に広がって意識改革とか行動改革とか合宿のテーマに『変わる』を掲げたりきょねんまでの流れを引き継いでいくのではなく自分たちのところから流れを変えようという意識が引き継いできたような感じがあって、そのあたりが今年変えたことです。


――A、B、Cチームの入れ替わりの激しさはいかがですか


 ことしはなかったんですよ。それこそチームが危機的な状況になってもなかなかBから上がってくることがなくてそれはやっぱりここでチャンスがあるのに彼らが故障したり体調不良で離脱してしまうことがあって、なかなかなかったんですけど、7月の記録会で真柄(光佑、スポ2=東京・西武文理)がチームの先頭でゴールするということがあり、今回もAチームの合宿に帯同させていますけどやっとそこで真柄が上がったことでBチームのメンバーも同級生の子なんかは俺らも頑張れば上がれるんじゃないかというような雰囲気が出てきてチームの中でも活性化されてきたというかそういう意識が出てきたという感じです。この合宿の1カ月間でBチームから上がってくればAチームの子が故障したら落ちてしまうような危機感が出てきたりという競争原理が出てくればと思います。


――B、CチームでAチームを脅かすような存在はいますか


 誰というのはないんですけど、上級生ですかね。4年生と2年生ですね。2年生あたりを中心にやってやるぞというような気持ちが練習に出ると出てきたように感じます。それも合宿の直前にお前ら活気がないという喝を入れてこの合宿に入って。合宿では目に見える形で行動に起こし始めてきたなといったところなのでこの合宿が終わる頃だったり9月に入ってからですかね。


――前期のMVPはいらっしゃいますか


 石田ですかね。関カレも入賞しましたし、1万メートルのベストを出してホクレンのレースでも組の上位でゴールしたりとかタイム以外にも勝負強さも光りだしてきたところで、この合宿でもAチームで安定した練習をこなしているので、去年の鈴木(洋平、平28スポ卒=愛三工業)ほどのインパクトはありませんが、地味に石田ということで。


――練習を見させていただいて、4年生が練習を引っ張っている様子がありました


 石田、安井、藤原(滋記、スポ4=兵庫・西脇工)、光延(誠、スポ4=佐賀・鳥栖工)は学年が下の頃からチームの主力としてやってきたメンバーなので、もちろん2、3年生で元気なメンバーも多いですけど4年生がしっかり走らないことにはチームは機能しないと思ってますので、特に前期が振るわなかったメンバーが多かっただけにこの合宿からやってくれたらいいなと思っています。


――チームのムードメーカーのような存在はいますか


 ことしのチームはおとなしいので(笑)。去年がうるさすぎたというのはあるんですけど。食事のときも去年ほど騒いでいる子がいなくて。やっぱり4年生ですかね、光延なんかはよく盛り上げてくれています。永山は別で合宿していたり新迫は1次合宿は離脱していたり途中から合流してきて、まだこのチームとしての本当の姿というのは見えてきていないんですけど、中心にいるのは4年生になるんじゃないかなと思います。


――ことしのチームのカラーというのは大人しい様子でしょうか


 良く言えばおとなしいですね。堅実、静かに燃える、ようなタイプの子が集まっていて、みんなやることは丁寧ですし、それこそBチームに対して活気がないと怒ったんですけど、それが伝わったのかAチームの子も声を出してくれるようになって周りが見えてる選手が多いですかね。1人で突っ走るタイプはいないんですけどみんな周りを見ながらやってるメンバーが多い気がします。


――ことしのルーキーについてはいかがですか


 吉田(匠、スポ1=京都・洛南)も春からベストを連発して、関カレは失敗しましたけど、逆にそれ以外の試合は安定して力を出しています。3000メートル障害だけでなくて5000メートルとか駅伝もしっかり走っていますので、思ったよりもすんなりチームに順応していて秋からもしっかり力を出してくれると思います。宍倉(健浩、スポ1=東京・早実)は故障して入ってきて、体が弱いところがあってケガが心配だったんですけど、丁寧な体のケアをしたりプロのアドバイスを素直に聞いてやっているので。聞いたら、陸上を高校のときと比べても一番練習が継続できているらしくて、春を見ても自己ベストこそ出なかったですけど、自己ベストに近い記録で何回も連発して走っていますので、吉田と宍倉はほんとに練習もできれば秋以降もチームの戦力になってくれるかなと思います。渕田(拓臣、スポ1=京都・桂)が3000メートル障害をやったあとに体に故障が出てきたりしてうまく回っていないのでBチームで下積みをさせていますけど、もともと能力の高い選手なので派手な活躍はなかったですけど3人ともメンバーに絡んでくれたらいいなと思います。


「自分の力に自信を持って試合に臨んでほしい」

――合宿の進み具合はいかがですか

1次合宿で去年と同じような水準をこなしていって順調にいっていたんですけど、最後の最後で去年の練習と比べるとなかなか消化率が悪いところがあったので、「どうしようか」と学生に相談しました。「箱根で優勝という目標を掲げているんだけれども、それに照らして今の消化率だと届かないんだけれど、目標を軌道修正するとかするか」と聞いたところ、修正しないで去年の水準に自分たちが追いつきたいという答えが彼らから返ってきましたので、この2次合宿についても去年と同じ水準でやっていこうとしているところです。今すでに2次合宿に入っているのですが、昨日の練習を見ても去年と変わらないところまできていて、1次合宿から解散期間を挟んで調子を戻してきているので、その辺りは高い目標に向かって努力したいと思っています。そういった中で故障者が出てしまうとチームとしては大きな痛手となってしまうので、私の仕事としてはケガの管理だけはしっかりやっていきたいと思いながら合宿に入ってます。

――Aチームの人数が例年より少ないことに関して、どう考えていますか

結局Aチームって全カレで入賞を狙えるようなレベル、駅伝でレギュラーメンバーに入れるようになるレベルということでやってます。なので、この合宿の中でも3次合宿まである中でそれにBチームも何人か喰らいついていって、Aチームのメンバーが増えてきてほしいとは思いますし、今少ないからといって私たちの基準を下げてむやみやたらに人数を増して、「Aチームの人数が多くて良いよね」というわけではないと思いますので、あくまで自分たちの目標を達成するために一番必要な戦力をAチームと定めてやっていきたいと思います。いまAチームが少ないことは苦しいですけど、この状況についてAチームBチーム関係なく全員が危機感を持って力をつけてくれれば良いかと思っています。

――合宿に永山選手や車田選手(颯、スポ3=福島・学法石川)がいないようですが、別で練習なされているのですか

永山は別のところで練習していまして、車田は休養させています。今は一緒にいることがプラスではないと判断したので。今は休養させていますが、関カレの前は出そうかと思うくらい力を取り戻していたところもあったので、この後チームに合流してくれれば良いかなと思っています。

――永山選手の調子はいかがですか

バリバリ順調です。3次合宿から合流するので、元気な姿を見せてくれると思います。

――前期を踏まえて選手に求めることは何ですか

自分の力に自信を持って試合に臨んでほしいと思いますし、同じくらい自分の走ったレースの結果とかについて責任を持ってやってほしいと思います。やっぱり去年、おととしと強い4年生エースがいてチームを引っ張ってくれていて、いまの4年生達も出走はしていましたけどなかなかエース区間は担えずにつなぎ区間を走ることが多かったんですけど、ことしのチームは彼ら、自分達がやるしかないという状況の中で誰かがやってくれるではなくて、自分ががやらなくては駄目だっていう意識を持ってもらうことが大事だと思うんですね。1年生の頃から(4年生を)ずっと見ていて、本当に力のある選手たちだと思っているんですけど、インカレなどの大舞台で力を出せないで終わっていることが多いように感じています。なので、そういうところでことしのチームは誰かがやってくれるではなくて、自分がやるという意識を何人の選手が持てるかが大事かと思っているので、自信持ってやってほしいですし、自分の出られる試合の成果に責任を持ってやってもらいたいなって思ってます。

――具体的なAチームの理想はありますか

全カレ(日本学生対校選手権)は出る人数が限られていて、出るメンバーについては戦えると思って出しますので、出る以上全員入賞してほしいというのがまず一つです。また逆にチーム全体でみると出ないメンバーの方が多くて、8月9月で強化できる期間を確保できるということなので学生三大駅伝をしっかり見据えてやってほしいです。チームとしては箱根(東京箱根間往復大学駅伝)の優勝というのが目標なんですね。メンバー的にもトラックのスピードというよりはロードの距離が長い方が強いタイプが多いチームで、出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)よりも全日本(全日本大学駅伝対校選手権)、全日本よりも箱根というようにウエイトが高くなっていくと思いますので、目の前の出雲だけを見ないで三大駅伝全体で上手くビルドアップしていけるように先を見据えてやって目標に到達できるようにやってほしいというのが思いですね。

――学生三大駅伝の位置づけはどのようなものですか

3つとも全力でもちろんやりますけど、チームのカラー的にもスケジュール的にもどうも出雲が苦手みたいで(笑)。去年も結構頑張って調整したつもりだったんですけど、結果がああいったかたちになってしまって。決して手を抜いているわけではないんですけど、どうしても結果がなかなかついてこないのが出雲なんです。ことしはスピードランナーというよりもハーフマラソンが得意なメンバーが多いので、出雲での多少の苦戦は覚悟して全日本に繋がる出雲にしたいし、箱根に繋がる全日本にしたいというのがあります。なので、今の時点では明確には見えていないところもありますが、全力で戦いますけど出たとこ勝負の出雲になるのかと思います。

――先ほどもおしゃっていた箱根総合優勝というチームの目標の決め方を教えてください

毎年学生が話し合っているんですけど、4年生が決めて年明けの時に目標を伝えてきて私の方からもコメントして、お互い意思疎通して共通理解のもとで目標を決めています。今回は『三冠』という目標を最初出してきたので、ちょっと現実的に考えようという話を4年生にしました。スタート時点で決めるのもあれですけど、チームの1万メートルやハーフマラソンのタイムからみても少なくとも前の代よりも落ちるという状況の中で今の時点でこの目標はどうなのかという話をして話し合いを重ねて、さっき言った通りロードが得意な選手が多いので箱根というのをベースに考えていって、年度の途中に方向修正することはあるけれどもという話をして、この目標に落ち着きました。

――その目標に対しての監督のアプローチはどのようにしていきますか

今うちのメンバーはスピードがないんだけれども粘り強く我慢して走るタイプの選手が多くて、全カレについても出る選手が少ないということで、しっかり先を見据えて強化が出来ると思っていますので、箱根に向けて強化していく感じですかね。

――監督の後期注目選手を教えてください

去年トラックでも結果を出して、チームのの中心であった永山と新迫ですかね。前期不調が続いてましたので、彼らがどういう成果を出していくかを注目してほしいですね。あとでいえば、一番伸びてきていると思うのは太田(智樹、スポ2=浜松日体)かなと思うので、太田がこのあとどういう走りをして駅伝でどういう役割を担うのかというのがチームにとっても彼にとっても大事なことになるかと思います。

――現時点で気になる他大学はありますか

えー。やっぱり東海大さんですかね。スピードの強化がすごくうまくいってる印象がありますので、距離が伸びてきた時にどうなるのかなっていうところですかね。去年も全部って言った気がしますが、全大学動向は見ていて春に上手くいった大学そうでない大学ありますけど、夏でがらっと変わってきますので、全大学気にはしています。けど、東海大学さんは、っていう印象ですね。

――最後に秋の展望を教えてください

去年やおととしの成果があって、どういった練習が出来てどういうメンバーが揃った時に結果が出るっていう『物差し』は私だけでなく学生も共有していますので、戦い方を知っているメンバーもたくさん残っていると思うんですね。その中で、自分たちのチームの特性を良く理解して、賢い戦い方が出来るかっていうのがことしの駅伝シーズンで大事になってくるかと思います。先ほどから言っている通り、箱根優勝に向けてそのための出雲、全日本としていきたいので、学生三大駅伝で全てでなかなか上手くいかないこともあるかもしれないですけど、チームの最大目標に向かって右肩上がりでいければ良いかと思っています。

――ありがとうございました!

(取材、編集 平松史帆・朝賀祐菜)