【連載】『頂を目指した男たち』第3回 永山博基

駅伝

 全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では4区区間賞の好走を見せるなど、エース候補として成長を遂げた今季。そして迎えた2度目の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では各校のエース級がひしめく2区を任される。昨年とは異なり、今年は「チームのために」という強い思いを胸にスタートをきるが、納得のいく走りはできなかった。あれから2週間。永山はあの舞台を振り返り、何を思うのか。

※この取材は1月18日に行われたものです。

正直不安しかなかった

しっかりとした口ぶりで、箱根までの日々を振り返る永山

――箱根から2週間ほどが経ちましたが、最近の調子はいかがですか

 今週の日曜日に都道府県(全国都道府県対抗男子駅伝)があるので、それに向けて練習しているところなんですけど、そんなに良い状態とは言えないかなという感じです。

――具体的にはどのような練習をされていますか

 都道府県に向けて1人で練習しているんですけど、そんなたいした練習はしていないです。

――箱根が終わってから実家には帰省されましたか

 はい。

――ご家族やご友人から何か言葉は掛けられましたか

 成人式もあったので友達にも会ったりして、みんなから「箱根おつかれ」みたいな言葉はいただきました。

――集中練習を振り返っていかがですか

 質、量ともに多かったんですけど、結構自分に合わせた練習をやらせてもらったので無理なく最後まですることができました。

――集中練習の後に少し足に違和感があったということですが

 最後の集中練習のポイント練習が18日で、終わって21日ぐらいに腓骨に痛みが出て、そこからは足の痛みの様子を見ながら練習というかたちで最後まで調整しました。

――その時は不安などありましたか

 そこからはあまり練習もしなかったですし、正直不安しかなかったです。ただ12月31日まですごく不安だったんですけど、年が明けたら不安も飛んで本番は何もなく臨めました。

遅れた瞬間を鮮明に覚えている

――2度目の箱根となりましたが振り返っていかがですか

 チームも優勝が懸かっていましたし、2区ということで他大のエースとしっかり競り合って結果を残したかったんですけど、思ったようにはいかなかったです。

――2区を走ることはいつ頃決まりましたか

 決まったのは12月29日の区間エントリー発表の日で。ただ12月下旬には監督(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)から1区、2区の準備ということで言われていたので覚悟はしていました。

――事前取材で興味があるとおっしゃっていた1区にも出走の可能性はあったのですか

 そうですね。

――2区というとエース区間と言われますが走ることが決まったときはどのようなお気持ちでしたか

 正直大丈夫かなという不安はあったんですけど、他大のエースと競り合ったこともなかったですし、どちらかというとどれだけ戦えるのだろうという楽しみがすごいありました。

――2区を走る上での目標はありましたか

 往路の重要区間であるので、タイムで言えば最低68分切りと思っていました。ただ1、3、4区と強い先輩がいて、先輩からも「つなげられればいいよ」と言われていたので、そんなに気負うことなくいきました。

――箱根の前日はどのように過ごされましたか

 特に何もなくいつも通りに過ごしました。

――武田選手(凛太郎、スポ4=東京・早実)と一緒にいらっしゃったそうですが、何かお話しはされましたか

 練習が終わってから昼も一緒で夜も一緒という感じで、ずっと一緒にいて安心できました。

――箱根当日は武田選手がトップと3秒差でタスキをつないでくださいましたが、どのようなことを考えてスタートしましたか

 そのくらいで来るとは思っていたので、あとは自分のところで勝負だなと思っていました。応援もすごいですし、ライバル校のすごい選手たちとトップ争いをしていたので走りながらどんどん興奮しました。

――レースプランはどのようなものでしたか

 (武田選手が)あのような位置で来ましたし、割り切って、いけるだけいってあとはしっかり戦いたいなと思っていました。

――16キロ過ぎに集団から遅れ出して、後ろから拓大のワークナー・デレセ選手や順大の塩尻和也選手が追い上げてきていましたが

 焦りましたし、今でもトップから遅れた瞬間とかすごく鮮明に覚えていて、後ろから拓大とか順大に抜かれたのがすごく屈辱というか、悔しかったです。

――監督からはどのような声が掛けられましたか

 後半とかも声掛けはあって、必死な声掛けは伝わったんですけど、自分も必死すぎて今は何も覚えていないです(笑)。

――最後は粘りで一度抜かれた順大の塩尻選手とほぼ同着でタスキリレーとなりましたが、どのようなお気持ちでしたか

 やっぱり目の前にいたので負けられないなと思ってタスキは渡せたんですけど、トータルで見たとき納得のいく走りではなかったなと思います。

――タスキリレーの際、平主将(和真、スポ4=愛知・豊川工)には何か言葉を掛けましたか

 必死だったので声掛けはできなかったんですけど、スタートの日の朝連絡が来て、「どんな順位でもいいから2区を楽しんで来い」と言われました。4区の(鈴木)洋平さん(スポ4=愛媛・新居浜西)からも「しっかり3、4区準備しているから楽しんで来い」と、二人の先輩から言っていただいて肩の荷が下りました。

――そういう二人の先輩方が後ろに続いてくださっていたのは頼もしかったですか

 そうですね。やっぱり安心できましたし、大好きな先輩だったので最後まで頑張れました。

――タスキリレー後、足がつっているようにお見受けしたのですが

 16キロ以降から足をつって、正直途中タスキ止まるんじゃないかなとかそういう不安もあって、なんとか最後まで走りきれたんですけど、最後の方もずっとつっていました。言い訳みたいになるんですけど、足がつって追い込めなかったというか。怖くて最後も足のことばかり考えてしまって追い込みきれなかったのかなと今思うと、そこがやっぱり悔しいです。

――区間10位、タイムについていかがですか

 区間賞を目指していましたし、結果的にもやっぱり神奈川大の鈴木健吾さんは強かったですけど、目標通りいけば2位とかになれたのかなと思うと悔しかったです。

――復路では往路の4年生方と応援に行かれていましたが、どのようなお気持ちでしたか

 復路は先輩方と一緒に6、7、8、9、10区全部行って、もう応援しかできなかったんですけどしっかり全力で応援しました。

――10区は同期の清水選手(歓太、スポ2=群馬・中央中教校)が走られましたが、箱根に向けて何かお話などはされましたか

 よくしました。区間エントリー発表の日に10区に入ったので、「これは走るな」と思いましたし、うれしかったです。

――やっぱり同期と走れることになったのはうれしかったですか

 うれしかったです。でも僕が言えることじゃないんですけど、(走りは)そんなに良くなくて、お互いやっぱり悔しい思いをしたので来年はリベンジしたいです。

――チームとしての総合3位という結果はどのように受けとめられていますか

 優勝を目指していたのに、結果的にはトップにあれだけ離されてしまって悔しかったです。

――昨年の箱根と比べて永山選手ご自身で何か変わったことはありますか

 去年は初めてでしたし自分が走りたいというかどちらかというとそういう思いだったんですけど、今年はチームのために、という思いがすごく強かったです。注目もされていましたし個人としても2区ということで、去年より良い区間を任されたので去年以上に燃えていました。

――今の4年生の先輩方が抜けてしまうことについてはいかがですか

 グラウンドが寂しいです。ジョグとかも一番よくしていましたし、ポイント練習とかも強かったので毎日ワクワクしていたんですけど、そういうのがなくなると思うと寂しいですね。

1位にこだわりたい

各校のエースがひしめく2区出走を果たした。来年の飛躍に期待が高まる

――今後はどのような練習をされていく予定ですか

 一応今週の日曜日に都道府県があって、福岡クロカン(日本選手権クロスカントリー)も出る予定なんですけど足の状態もそんなに良くないのでとりあえず休んで、春の兵庫リレーカーニバルを一番狙っているのでまずはそこに向けてという感じです。

――足の状態が良くないというのは箱根の疲れがまだ残っているという感じですか

 そうですね。箱根前から痛みがあって終わってからも完全には良くなっていないですし、とりあえず痛みをなくしてしっかり疲労を抜きたいです。春にたくさんレースに出る予定を立てているので、それに耐えられるだけの体づくりをしたいなと考えています。

――今お話にもあったように2月の終わりに福岡クロカンに出場される予定ですが、意気込みと目標は

 まだ標準をきっていないので優勝すれば日本選手権に出られますし、世界クロカン(世界クロスカントリー選手権大会)とかも懸かっているので調子が良ければそういうところを目指していかないといけないと思っています。でも今の段階ではそこまで重要視していないですし出るか出ないかもまだはっきりしていないので、ひとまず自分の体を治すことを優先して、出られれば状態によって優勝を狙いにいくか状態の確認になるかどうか、まだ分からないです。

――夏のユニバーシアードは兵庫リレーカーニバルで狙うということですか

 そうですね。そこはやっぱり確実にやっていこうと思っています。

――来季は上級生となり、チームを引っ張っていく立場となりますが

 上級生ということで1年生、2年生の後輩ができますし、走りでどんどん引っ張って結果を出したいなと思っています。

――来季のトラック、ロードでの目標を教えてください

 秋に全日本で区間賞を取ったことが自分の中で大きくて、八王子(八王子ロングディスタンス)でもタイムが出せましたし、2017年はトラックでもロードでもしっかり1位にこだわりたいなと思っています。

――今回の箱根では悔しい思いの方が大きかったと思うのですが、来年は2区でリベンジしたいという気持ちはありますか

 そうですね。もうほんとうに2区が悔しかったのでリベンジしたいです。

――最後に読者の方に一言お願いします

 箱根で結局勝つことはできなかったんですけど、たくさんの応援の言葉もいただきましたし、沿道での応援が力になって感謝しています。ありがとうございました。チームとしても次の箱根は総合優勝という目標を掲げたので達成できるように頑張りたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉村早莉)

◆永山博基(ながやま・ひろき)

1996(平8)年7月20日生まれのB型。168センチ、50キロ。鹿児島実高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル13分58秒81。1万メートル28分25秒85。ハーフマラソン1時間2分55秒。2016年箱根駅伝4区55分54秒(区間4位)。2017年箱根駅伝2区1時間8分50秒(区間10位)。