【連載】『頂』第7回 光延誠

駅伝

 前回の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では区間14位と悔しい結果に終わった光延誠(スポ3=佐賀・鳥栖工)。今季は5000メートルとハーフマラソンで自己ベストを更新し、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)でも5区で出走を果たしたが、本人はまだ満足していない。チームのために、そして尊敬する4年生のために走り続ける光延が目指すものとは。今シーズンを振り返るとともに、箱根に向けた意気込みを伺った。

※この取材は11月30日に行われたものです。

「上で勝負がしたい」

真摯(しんし)に質問に応える光延

――きょうはどういった練習をされていましたか

 集中練習が始まって2日目のポイントで、きょうの練習は5000メートル3本でした。

――設定タイムはどのくらいでしたか

 2本を14分55秒~45分で、ラスト1本は14分40秒~45秒を意識してやりました。

――出来はいかがでしたか

 この1か月くらいしっかり練習を詰めたので、ちょっときつかったんですけど、感覚としてはいい感じで走れました。まだ始まったばかりなんですけど、手応えはあります。

――上尾シティマラソン(上尾ハーフ)が終わってから調子はいかがですか

 上尾ハーフが終わってから1週間休養期間が与えられて、そこで他のスポーツをやったり温泉に行ったりして疲労を抜いていたので、体の疲れは結構取れてはいます。

――続いて今シーズンを振り返っていきたいと思います。まず東京六大学対校大会(六大学)での優勝がありました。六大学はご自身にとって初めてのレースとなりましたが、振り返ってみていかがですか

 僕は最初金栗(第25回金栗記念選抜陸上中長距離熊本大会)の方に行きたいと思っていたんですけど、そっちには平さん(和真、スポ4=愛知・豊川工)が行くことになって、僕が急きょ六大学のメンバーに選ばれて5000メートルに出るってなりました。持ちタイムも1番良いということで優勝を目標にやって、実際に僕が先頭に出てレースを引っ張るかたちでした。しっかりラストも上げられて、そこは六大学以降のトラックシーズンに生かせたと思うのでそこは良かった点なんですけど、正直もっと離したかったという気持ちもありました。

――その後日本体育大学長距離競技会において今シーズンが始まってからチームで初めて13分台を出されました。やはりその時の調子は良かったですか

 そうですね。調子は上がってきている中で(13分)40秒台を狙っていたんですけど、ちょっと力みすぎて後ろからスタートしてしまった分、(13分)53秒という結果で、もうちょっと攻めの姿勢が必要じゃないかというのを終わった後に感じました。

――関東学生対校選手権でも5000メートルに出場されましたが、そちらを振り返っていかがですか

 平さん(和真駅伝主将、スポ4=愛知・豊川工)と表彰台を目指してやってきた中で、8位という最低限の結果になってしまったので悔しい気持ちはありますね。

――振り返ると今季のトラックシーズンを良い記録でまとめられていますが、今のところトラックとロードでどちらが好きというのはありますか

 自分でもロードの方に行きたいと思う部分はあるんですけど、今の段階ではトラックの方が自分に向いているんじゃないかなと思います。

――今シーズンを振り返った時に印象に残っているレースはありますか

 自分は出ていないんですけど、全カレ(日本学生対校選手権)が一番印象に残っていますね。

――それはご自身が出場できなかった悔しさがあるからでしょうか

 そうですね。5000メートルのメンバーに入ることを目標にやってきて、でも選ばれずに補助員に回って(他の選手を)見る立場になった時に、自分も鈴木洋平さん(スポ4=愛媛・新居浜西)とか平さんとか新迫(志希、スポ1=広島・世羅)みたいに上で勝負したいなっていう気持ちが芽生えてきましたね。

――次は夏合宿についてお伺いします。夏合宿期間はずっとAチームで練習をされていましたか

 そうです。一次(合宿)と二次では全カレに出ないということで、しっかり距離を踏むことを意識してやってきました。三次は出雲まで残り少ないということで駅伝の実戦練習みたいな感じでやって、三次もポイント練習とかを良い感じでできていたので、ことしは手応えのあった夏合宿だったと思います。

――夏はどういったところを意識しながらやってこられましたか

 前回の箱根の反省から、夏合宿前に距離の不安をなくすことを目標に立てました。どんなポイントでも泥臭くやって、フォームも結構改善できて、故障もなくしっかり走り込みもできたので良かったです。

――光延選手はバネで走るタイプのフォームだと思いますが、そういったところも変えたりされたのですか

 そこは変えていません。もうちょっと筋肉をつけないといけないと思っていたので、トレーナーさんや監督に「ここの筋肉が使えていない」など、自分の脚を見た感想を言ってもらって、しっかり普段やらないトレーニングとかもやってきました。そのおかげで結構フォームも変わってきたんじゃないかと思います。

――夏明けにトラックのレースには出場されていませんが、意図があってのことなのですか

 駅伝シーズンが始まることを考慮してトラックよりもロードで走りたいと思っていたので、トラックレースに出たかったんですけど、前回の(箱根の)リベンジもあるのでロードに絞っていきたいと思っていました。

「どんな状況でも本来の走りができる選手に」

――では駅伝シーズンのことをお聞きします。出雲の時はタスキを受け取った時に東洋大と秒差でしたが、その時はどのようなお気持ちでしたか

 東洋大の(5区を走った)野村(峻哉)は僕と同期で、去年の全日本(全日本大学駅伝対校選手権)も好走していた選手で、ここで東洋大を離すことが自分の仕事だと思って走っていました。結果後ろの東洋大を離すことはできたんですけど、前とは差が広がってしまって、どんな状況でタスキをもらってもしっかり攻めるというか、自分の本来の走りができる選手になりたいなと感じました。

――全日本では8人のエントリーに入ることはできませんでした。メンバー落ちしてしまったときの気持ちは

 悔しいという気持ちはありました。でも付き添いに回ってたくさん学ぶこともできたので、そこを生かしてやっていきたいという思いもあります。今回は平さんの付き添いをやらせてもらって、来年は僕が1区を走るという気持ちを強く持ったので、今回の付き添いは走れなかったという面では悔しいんですけど、たくさん学べたので、それを来年につなげていきたいと思っています。

――全日本が終わってから上尾ハーフまで2週間弱ありましたが、その期間はどのような練習をされてきましたか

 1回1万メートルのレースに出て、29分半と設定時間内で走ることはできたんですけど、まだまだ力不足だと感じました。(上尾ハーフまで)残り1週間は走り込みをして臨んだんですけど、本番では最初の10キロで先頭と離れてしまい、その段階で勝負に負けてしまっていたので、箱根まではしっかり先頭集団に絡んでいけるように練習をしていきたいと思います。

――上尾ハーフでは63分台ということで決して悪くはない結果だったと思いますが、この結果をどのように受け止められていらっしゃいますか

 僕もベストを出せたんですけど、全体が良すぎて。うれしい気持ちもあったんですけど、正直悔しい反面のほうが大きかったですね。

――武田凜太郎選手(スポ4=東京・早実)が61分台を出されましたが、そちらはどう光延選手の目に映りましたか

 10キロを過ぎてからは第一集団が見えないという感じで、加えて自分もどのくらいで走っているか分からない状態でした。(トップの武田選手が61分台ということで)やっぱり先頭集団に付いていれば62分台、せめて63分台前半は出ていたんじゃないかというのを終わってから思うと、もったいないレースをしてしまったんだなと思います。

――続いてチームのことについてお伺いしていきたいと思います。ことしは4年生に力のある選手が集まっていると思いますが、光延選手にとって4年生はどのような存在ですか

 今の4年生は入学当時からかなりお世話になっているので、たくさん学ぶこともあります。今の4年生に力がある分、4年生に食らい付いて練習でも1つでも勝てるようにしていきたいなって思いますし、来年は僕らが最上級生となることで、しっかり今の4年生の姿を見て生かしていきたいというのはあります。

――中堅学年の3年生として意識されていることはありますか

 3年生になって、しっかり競技に集中できる環境になりました。僕たちが結果を残さないと下も付いてこないし、4年生も良い意味でバチバチした感じにならないので、そこはこれからの練習でも意識していきたいと思っています。

――3年生の同期の選手はどういった存在ですか

 普段は仲が良いんですけど、練習になるとライバル意識をもってやっているので、そういう面ではとても良い関係だと思います。

――先月の幹部交代式で安井雄一選手(スポ3=千葉・市船橋)が次期駅伝主将に就任されましたが、どのように決められたのですか

 安井はもともと長距離主将になりたいと言っていて、だったら僕たちがサポートしていくからということを話し合って決めました。

――来年ご自身はどのように安井選手を支えていきたいとお考えですか

 僕の長所はスピードを出せるということで、そのスピードでガツガツ練習を引っ張って、安井の負担を減らしていけるようにしていきたいと思っています。

――集中練習も始まりましたが、光延選手から見て今のチームの雰囲気はいかがですか

 集中練習は毎年同じ(メニュー)なんですけど、とても良い雰囲気でできているので、この雰囲気をしっかり箱根まで保っていきたいなというのはあります。

「しっかりリベンジしたい」

出雲では区間5位の力走を見せた

――箱根についてお伺いします。現在の光延選手個人の目標は何でしょうか

 前回7区で失速してチームに迷惑を掛けた分、ことしは何としてでも貢献したいという気持ちです。正直往路に行きたいんですけど、今の4年生に力がある分、現状からしたらもう一回7区を走って最低でも区間3位以内、区間賞を狙っていけるようにやっていきたいなと思っていますし、これまで4年生にたくさんお世話になっているので、最後くらいはしっかりチームに貢献したいなという思いはあります。

――ことしも走りたい区間は7区ということでしょうか

 主要区間を走りたいんですけど、現状を見たら自分はまだまだ戦えないので、それなら7区でしっかりリベンジしたいなという気持ちがありますね。

――上級生になって見方も変わってきたと思いますが、箱根は光延選手の中でどのような存在ですか

 中学・高校のときからテレビで観ていて、僕もここの舞台で走りたいと思っていましたし、ワセダのユニフォームを着て走りたいというのは今でも変わりないので、しっかりエンジに恥じない走りをしたいなと思っています。

――エンジの重さというものは光延選手も感じられますか

 そうですね。言い方は良くないんですけど、高校のユニフォームは失敗しても先生から怒られるだけで次があるみたいな感じだったんですけど、ワセダは伝統もあってオリンピック選手なども輩出している大学なので、エンジを着る時は重圧もあります。でもその重圧を自信に変えられるようにこれからしていきたいです。

――チームとして現在掲げられている順位というのは

 総合優勝です。僕自身も今の4年生には本当にお世話になっているのでどうしても勝ちたいなという思いがありますし、優勝してらいねんにつなげられるようにしたいので、総合優勝しか狙っていないです。

――では最後に、読者の皆様に向けて箱根への意気込みをお願いします

 自分もことしで3年目と上級生になりました。3、4年生がいい走りをして1、2年生に勢いを与えられるようにしていきたいですし、前回のリベンジもあるので、何としてでも区間上位で走って次の選手にいい位置で渡したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 平野紘揮)

箱根への意気込みを書いていただきました!

◆光延誠(みつのぶ・まこと)

1995(平7)年7月18日生まれのB型。167センチ、51キロ。佐賀・鳥栖工高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分53秒08。1万メートル29分03秒47。ハーフマラソン1時間03分44秒。初めは『リベンジ』と色紙に書いていた光延選手。しかし、近くにいた鈴木洋平選手から「THEをつけた方がかっこいい」との助言(?)を受け、『THE リベンジ』に変更されていました。箱根では、『THE リベンジ』を懸けた光延選手の走りに期待です!