【連載】『箱根路の足跡』第7回 武田凜太郎

駅伝

 ことしの東京箱根間往復大学駅伝(箱根)では2年ぶりの3区に帰ってきた武田凜太郎(スポ3=東京・早実)。好走とまではいかなかったが悪い流れを断ち切る走りができた、と振り返る。しかし、それではもの足りない。来季は最上級生となり武田が目指すはワセダのエース。武田が思ういまのワセダに必要なもの、次なるワセダが向かっていくところとは。ことしの箱根を振り返るとともに今後の目標を伺った。

※この取材は2月9日に行われたものです。

「良い状態を維持できている」

冷静に自らを振り返る武田

――最近はどのような練習をされていますか

今週の佐賀県で行われる唐津10マイルロードレース大会に向けて距離を積むというよりはスピードを意識した練習を多く取り入れてこなしています。

――箱根から約1か月経過しましたが、その後の疲労や調子はいかがですか

調子は良い状態を維持できていると思います。でも、1月中はなかなか疲労が取れずに練習で少し苦しい場面が多かったのかなと。

――オフにはどこかに行かれましたか

オフは地元の友達とかと遊んだり、温泉にも行って積極的にリフレッシュするよう心がけていました。

――都道府県駅伝の際に武田さんの後輩にあたる齋藤雅英選手(早実)とお会いされたと思うのですが、会話などされましたか

そうですね。大学のことをいろいろ聞かれましたし、彼は中距離に特化した選手なんですけど、本人は長距離もやりたいという希望もあるらしくて結構悩んでいたので話を聞いてあげました。中距離、長距離どっちをやればいいよっていうアドバイスではないんですけど、自分にできるアドバイスはしてあげられたんじゃないかなと思います。

――武田選手から見て齋藤選手はどのような選手でしょうか

才能があるというか全国でも戦える選手でもあります。それは誰が見ても分かるんですけど、彼はすごく謙虚な選手ですね。インターハイなどの大会で結構良い成績を収めているんですけど、その割には控えめです。おごるとかそういった態度を一切見せません。

「高田さんの分まで僕が」

――それでは箱根駅伝の話に移らせていただきます。出雲全日本大学対校駅伝(出雲)での結果を乗り越え、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では区間2位の好走をされました。自信をもって箱根に臨めたのではないでしょうか。

練習は十分にできてはいたので自信という面ではあったんですけど、2週間前の練習で足に少し違和感を感じていて、そういったこともありコンディション的には良い状態で臨めても、ボロが出たというか、取りこぼしの部分は少しあって万全だったとは言えないのかなと思います。

――足の違和感というのは本番のレースには影響しなかったのでしょうか

3日くらい練習で走れないときがあったんですけど、それで治りました。でも、直前にそういうアクシデントがあったということで、少し戸惑ってしまった部分もあって、チームにも不安を与えてしまって反省しています。

――3区を任せられた時の心境を教えてください

1年間、3区を走りたいと思ってやってきたので、当然っていうわけではないですけど、スタートラインには立てたなという感じがすごくしました。それと同時に、3区で多大の選手たちと戦うという意識はより持てたのかなと思います。

――本番の調子や体調はいかがでしたか

体調に関しては良好だったと思います。前日もよく眠れましたし。

――レースプランはありましたか

予想していた順位でのタスキリレーではなかったので、少し戸惑った部分はありましたね。前を追っていくしかないなと走る直前にわかったので、一人一人抜いていこうというか、前だけを見て走ろうってことにチェンジしてレースに臨みました。

――14位でのタスキリレーでしたが、どういった思いで受け取りましたか

高田さん(康暉、スポ4=鹿児島実)が「すまん」という一言を言ってタスキを渡されました。高田さんは1番お世話になった先輩でもありましたし、僕自身、高田さんに支えられた場面がこの3年間で多かったので、高田さんの分までというか、高田さんが駄目だった分僕が代わりに頑張ってチームに流れを持っていこうと思ってタスキを受け取りました。

――3区を走り終えて見えた課題はありましたか

後半にもう少しペースを上げて走り切れると思っていたんですけど、思うような走りができていませんでした。それに、最初の入りも自分が理想としていたようなペースよりは少し遅いくらいだったので自分のレースの感覚と実際のタイムとのずれがあったなとも感じました。

――3区を走るにあたって目指したタイムは

63分前半を狙っていました。でも、実際は64分10秒くらいもかかったので、自分の中でびっくりしましたね。ここまで記録が伸びないのかと思っていなかったので、ちょっと信じられないといった感覚でした。

――ことしは例年と比べて気温が高かったと思います。その点いかがでしたか

僕はそんなに気温が高いとは感じなかったですね。でも、走っていてすぐ汗をかいていたので気温は上がっていたのかなと思います。

――同区間を走った1年の時と今回を比較して成長した点などありましたか

後半の走りに関してはすごい成長できたのかなと実感しましたね。海岸線沿いに入ってからの走りを前々から課題にしていたので、そこは克服できていたのかなと。

――区間5位という結果に対してご自身どう思われていますか

悪い流れを断ち切る走りはできたと思うんですけど、流れを変える走りまではできていなかったのかなというのが正直な気持ちです。

――最終的に1位の青学とは14分の差をつけられました、青学との差は何だと感じていますか

やっぱり各区間で区間賞争いをしてくる選手がいるのでその点では強いと感じます。チームのエースである大黒柱が必ず主要区間で必ず外さないというのがワセダと比較したときに際立つ強さなのかなと。

――昨年は体力の面ですごく力不足を感じたとおっしゃっていましたが、今回はいかがだったでしょうか

そんなには感じませんでしたね。ハーフマラソンの大会でも去年よりは良い走りができていましたし、スタミナの面ではそんなに心配はしていませんでしたね。

「『三強』と呼ばれている時代を打ち破りたい」

もうエース不在のチームとは呼ばせない

――チームから4年生が抜けて現状はいかがですか

必ず1区で良いスタートを切る信一郎さん(中村、スポ4=香川・高松工芸)やインカレや対抗戦で成績を残してくれる高田さんや柳さん(利幸、教4=埼玉・早大本庄)が チームから抜けるということはすごく大きな穴が開いたというか、なかなか埋めることのできない穴なのかなと感じています。

――最上級生になった今、感じることはありますか

最上級生にならないとわからないことがあるぞというのはずっと4年生の方が言っていたので、チームを作るというか、そういう難しさを感じているのは感じています。でも、下級生たちが素直で良い子たちなので 、あまり背中で見せるというか、何か僕ら最上級生がすごく大きく抱えるっていうことはしないようにして、僕たちは僕たちでやるべきことをやろうという風に方向性を持って取り組んでいます。

――チームをこれからまとめていくにあたって新3年生たちで話し合いの場をもうけたりはしましたか

3年生になった時から僕たちの代は4年生になった時にどういったチームにしていくのか、今の自分たちのすべきことは何なのかなどを話し合ってきました。それは今になっても変わらず、月に1回のペースで話し合っています。

――3年生の中では今のワセダにどういった方向付けをされているのでしょうか

あまりはっきりした方向付けはまだできていないんですけど、僕たちの代で今の『三強』(青学大・東洋大・駒大)と呼ばれている時代を打ち破りたいなと考えています。僕たちが今のワセダをそこまで持っていくことで後輩たちもプライドを持ってやっていけると思うので、とりあえずがむしゃらにというか、4位のチームなので変なこと考えずに自分たちのやるべきことを見つけてそれをしっかり取り組んでいこうといった感じです。

――武田選手はワセダをどのようなチームにしていきたいと考えていますか

ワセダにはエースがいないと言われてきているので、エースがいて周りもしっかり外さないといった安定感のある強いチームにしていきたいですね。それに東洋大学のスローガンだとか誰かに先着するだとか勝負にこだわれるチームにもしたいと思っています。

――今シーズンの目標を教えてください

インカレ(日本学生対校選手権)の1万メートルで優勝することがトラックの目標で、駅伝では『三強』崩しです。この2つを1番の目標として1年間やっていきたいと思います。

――記録ではどのくらいを目指されていますか

1万メートル28分30秒台を目指してやっていきたいと思います。

――最後に武田さんのファン方々へ一言お願いします

いつも応援してくださりありがとうございます。学生生活最後の1年は悔いなく頑張っていきたいと思っていますので今後も応援していただけると嬉しいです。よろしくお願いします!

――ありがとうございました!

(取材・編集 本田京太郎)

◆武田凜太郎(たけだ・りんたろう)

1994年(平6)4月5日生まれのA型。174センチ、54キロ。東京・早実高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分58秒83。1万メートル29分04秒20。ハーフマラソン1時間3分12秒。2014年箱根駅伝3区1時間4分00秒(区間5位)。2015年箱根駅伝7区1時間4分09秒(区間5位)。2016年箱根駅伝3区1時間4分11秒(区間5位)。