今季5000メートル、1万メートル、ハーフマラソンという3種目全てで自己記録を更新した佐藤淳(スポ2=愛知・明和)。その躍進ぶりは目覚ましいものの、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では思い通りの結果を残せなかった。最大のターゲットとしている東京箱根間往復大学駅伝(箱根)を直前に控えたいまの心境を伺った。
※この取材は11月26日に行われたものです。
「今季は継続して練習ができている」
真剣な表情で取材に応じる佐藤淳
――改めて上尾シティマラソン(上尾ハーフ)を振り返っていかがでしたか
上尾ハーフは調子が良くて、実力通りというより走れちゃったという感じなので、全日本のこともあったので上尾ハーフは上尾ハーフで気持ちを切り替えて、また箱根に向けて一回気を引き締めてやってますか。
――レース中に転倒もあったと聞きましたが、現在に影響はあるのでしょうか
すり傷とかだったので足とかには影響がなかったので、良かったです。
――上尾ハーフで心掛けたことなどはありましたか
これまでとは違って思い切って調整フォームを変えてみて、レース前にがっつり練習を落として疲れを抜くような感じでいったのが良かったのかもしれないです。
――集合練習も始まりましたが、現在の調子はいかがですか
若干上尾が終わってから足に不安があるので、そこは注意しながら慎重にいまはやっています。
――具体的にはどのようなメニューを行っていますか
僕はコーチと相談した結果、少しメニューを落とし目でやっているので、みんなよりはあんまり走ってはいないですね。
――きょねんはケガによりエントリー漏れされましたが、ことしの感触はいかがですか
きょねんは本当に一番大事な時期にケガをしてしまって、箱根はエントリーもできなかったので、すごく悔しい思いをしました。きょねんは無理しちゃって自分で体を壊しちゃったという感じなのですが、ことしは本当に、慎重にコーチと相談しながらやっています。自分の体は自分でしかわからないと思うので、そこは自分と相談しながら、走らなきゃいけないときはそうなんですけど、無理しちゃってって壊してもきょねんと同じになってしまうので。そこは休むときは休む、走るときは走るとオンオフを切り替えてやっている感じです。
――集合練習は授業期間に行われているため、夏合宿とはまた違った厳しさがあるのでしょうか
でもこっち(所沢)のキャンパスなので、空き時間とかも結構寮に帰ってゆっくりできているので、本キャン生よりは全然マシですね。合宿のほうがきついです。
――では今シーズンを振り返っていきます。まずトラックシーズンを振り返っていかがでしたか
5000(メートル)、1万(メートル)と(自己)ベストは出たんですけど、パッとしないタイムと言うか、13分台、28分台からは程遠いようなタイムでした。ベストは出たんですけど、満足はできない結果でした。
――佐藤選手は5000メートル、1万メートル、そしてハーフマラソンという3種目で今季自己記録を更新されていますが、好調の要因は何でしょうか
やっぱり継続して練習できているというのが一番だと思います。きょねんの箱根の前に大きなケガをしてからは、そんなにあそこまで大きなケガをすることはなく、練習を継続できていたので、それが良かったのかなとは思います。
――関東学生対校選手権(関カレ)のハーフマラソンでエンジデビューをされましたが、初めてエンジのユニフォームを着た時どのようなことを思われましたか
初めてのエンジでちょっと失敗してしまったんですけど、やっぱり普段着ている白いユニフォームとは重みというか、走っていてワセダの代表としてやっているんだという意識が本当に強くありまして。それで多分空回りしすぎちゃって失敗してしまったと思うので、そこはエンジに恥じないような走りをこれからしていきたいです。
――夏合宿を振り返っていかがでしたか
特にケガなくはできたのですけど、2次合宿くらいで一回調子を落としてしまいました。でも一番大事な3次合宿では良い練習ができたので、合宿はことしもしっかり走り込めたんじゃないかなと思います。
――2次合宿の前半、菅平での練習では佐藤選手はBチームで練習されていました。Aチームの選手との差は感じていましたか
タイム的にもそうですし、練習内容も負荷の高い練習をやっていました。多分僕だとまだがっつりとした練習をやっちゃうと故障しちゃうかなと思ったので、Bチームもかなりレベルが高い選手ばかりいたので、競り合ってできたので良かったかなと思います。
――3次合宿はいかがでしたか
きょねんとほぼ同じようなメニューをやっていましたが、きょねんよりも余裕度と言いますか、練習やった後の疲労がきょねんとは全然違ったので、感覚的になんですけど、きょねんよりは楽に、余裕を持ってやれたかなというのはありました。
「去年はエントリーで満足していた部分があった」
――駅伝シーズンでは、佐藤選手は出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)へのエントリーはかなわずその後の記録会に出場予定でしたが、どちらも中止になりました。影響はありましたか
自然のことなので(中止は)しょうがないですけれど、あの辺りは結構体も動いていたので、合宿の成果を確認するためにも5000(メートル)を1本走りたいという気持ちがあったので、正直ちょっと悔しいですね。
――出雲が中止になったことで、チーム全体への影響はありましたか
中止になっても引きずるというよりは、全日本へ向けて気持ちを切り替えていこうという雰囲気でした。なので特に支障はなかったと思います。
――全日本では初の大学三大駅伝出走を果たしました。まずエントリーされたときのお気持ちはいかがでしたか
武田凜太郎(スポ2=東京・早実)が故障気味で僕が(エントリーメンバーに)入ったという感じだったので、正直不安と言いますか、僕で大丈夫なのかという気持ちはありました。ですがちょっと前から自分が走るだろうなということをなんとなくわかっていたので、駅伝の代表としてしっかり走ろうという気持ちでした。
――きょねんの出雲、全日本、そしてことしの出雲と、全てエントリーはされていたものの出走はかないませんでした。その時はどのようなお気持ちでしたか
正直きょねんとかは、エントリーで満足しちゃってた部分があったので、多分きょねんはダメだったと思います。ことしは出雲はエントリーに入って、でも走らないということを言われた時に、きょねんよりはだいぶ悔しい思いがありました。2年生の内に駅伝でデビューしないと、3、4年生でパッと出てくることは厳しいじゃないかと自分の中で思っているので、何とかあのようなかたちでしたけど全日本で一発走れたのは良い経験になったんじゃないかと思っています。
――愛知県出身の佐藤選手にとっては全日本は地元だと思いますが、特別な思い入れなどはありましたか
地元が近いということもあって、結構「走ったら見に行くよ」と友達なども言ってくれていたので、全日本も箱根と同じくらい走りたい気持ちがありました。どちらかというと、出雲よりは全日本のほうが地元なのでやっぱり思い入れがありました。
――実際にレースにご家族やご友人の方はいらっしゃいましたか
そうですね、結構来てくれて、家族や友達もたくさん来てくれました。あと中学校のほとんど会ったこともない先生とかも出ることを聞いたらしくて、駆け付けてくれて久しぶりに先生に会えて応援してもらえたので良かったです。また高校の先生もワセダのOBなので、レース当日は仕事があって来れなかったみたいなんですけど、レース前に決起会みたいなのがあったのですが、それに顔を出してくれて、「頑張れよ」と声を掛けてくれたのでうれしかったです。
――やはり声援は力になりますか
そうですね。うれしかったんですけど、みんなの期待に応えられなかったのが本当に申し訳ないです。
――改めて全日本のレースを振り返っていかがでしたか
展開が展開だったので、前を追わなきゃという気持ちが強すぎてしまい、前半は冷静になれなくて突っ込んで入ってしまいました。自分で崩れてしまった感じだったので、もう少し冷静な気持ちと言いますか、自分の状態を判断できるように頭を使ってレースができていれば、もうちょっと、あそこまで崩れずにいけたのかなとは思います。
――焦りの要因は何だったと思いますか
後ろから山学(山梨学院大)が来ていて、最後には(エノック・)オムワンバ選手が来るとわかっていたので逃げなきゃと思い、あと前にも見える位置で大東(文化大)が走っていたので捉えなきゃという気持ちが強すぎてちょっと前半ハイペースで入ってしまいました。
――走っている時にシード権については意識されていましたか
(ワセダは)シード権を落としてはいけないチームだと思うんですけど、どうしてもあの場面では意識をせざるを得なかったですね。
――同級生の井戸浩貴選手(商2=兵庫・竜野)からタスキを渡されたとき、どのようなことを感じていましたか
いつものようにラストスパートをかけてきてくれたので、良い勢いでもらえるなと思っていたので、一般(受験)で入って一緒に這い上がってきたので、そのあたりは少しは思いがありました。
――逆に田口大貴選手(スポ4=秋田)にタスキを渡す時はいかがでしたか
いやもう本当に申し訳ないですって感じでした。「すいません田口さん」って感じでした。
――佐藤選手は一般受験を突破したことで、たたき上げとして見られることも多いのではないでしょうか
結構ワセダだと一般、一般って言われることが多いと思うんですけど、入部してしまえば一般だから優遇されるということはないので。一般、スポーツ推薦関係なく、入部したらチームメイトですけどライバルでもあるので、一般だからゆっくり上がっていけばいいやというわけでもないので、必死で頑張ってました。
――同じ一般受験組の井戸選手とは、現在では少し力の差が開いているのではないでしょうか
きょねんの夏くらいまでは同じような練習ができていたのですが、でも井戸のほうが早く(駅伝)デビューしてちょっと悔しいなという気持ちはありました。
――その時に焦りなどはありましたか
いや焦りなどはなかったのですが、一緒にやってきていたので頑張って共に成長できれば良いなと思っていました。ですがあいつの方が上に行ったので、いまは井戸に追いついて、追い越してやろうという気持ちです。
――同期で昨シーズン活躍されていた武田選手や平和真選手(スポ2=愛知・豊川工)についてはどのような印象を持っていますか
やっぱり強いんですけど、いつか見返してやるぞという気持ちです。
――部内でライバルを一人挙げるとしたらどなたですか
そうですね(笑)。やっぱり井戸で(笑)。
――では他大で意識している選手はいらっしゃいますか
やっぱり同じ県出身の同学年の選手は、高校の時から知っていたので良いタイムで走ると刺激にもなりますし、よく知っているメンバーなのでこっちも頑張らなきゃと思えますね。なので同じ県の人たちには特に負けたくないです。
――ワセダの2年生の雰囲気はいかがですか
比較的にだいぶ仲が良いほうだと思います。学年でご飯に行ったりとかもします。でも勝つには仲良しだけじゃダメじゃないですか。なので仲良しグループで終わるんじゃないかって最近もよく言われていますけど、ちゃんと言う時には言い合えるような、雰囲気づくりっていうことが今後は絶対に大事になってくると思います。でも言い合える仲をつくるにはお互いのことを知らないとダメだと思うのですが、そこはしっかりとできていると思います。だからこれからは良い方向に自分たちの学年でつくっていきたいです。
――「仲良しだけじゃダメだ」と思われたきっかけは何ですか
慰めとかではなくて、厳しい言葉も懸けなければ強くならないと思いますが、この間あったミーティングなどでビシッと言える人が少ないという話になりました。確かに僕らの学年のことを考えたら言える人があまりいないなと思ったのですが、そのままじゃダメなのかなとは思いました。
――全日本が終わってから、長距離ブロックに変化などはありましたか
記録会などでみんな良いタイムで走って、「勝てるぞ」という雰囲気があったと思います。でも全日本で全部それが崩れて、危機感を持ってやっています。全員が一人一人しっかりと走らなきゃ勝てないチームだと思うので、(全日本で)負けたのが良いってわけじゃないですけど、いまは箱根へ向けてもう一回気持ちを切り替えてやっています。
――後輩が入ってきたことで、先輩としての自覚を持つなど何か変化したことはありますか
きょねんは本当に練習でも普段の行動とかでも先輩についていくだけだったのですが、後輩ができてからは自分は2年生なので、練習とかでもしっかりしなきゃという気持ちが生まれましたし、1年生が走っているんだから、自分が離れるわけにはいかないという気持ちも生まれるようになってきました。あと私生活でも後輩が真似しちゃったらダメだと思うので、しっかりとした規則正しく生活しなければいけないなと感じています。
――後輩の印象はいかがですか
やっぱりかわいいですね(笑)。
――オフの時間も一緒に過ごされたりしますか
僕結構なめられていると思うので(笑)、みんなガンガン(話に)来てくれるのでそこは本当にうれしいですね。でも特定の後輩とだけ話したりするわけじゃなくて、どんな(持ち)タイムでも、下のチームでも全員になるべく声を掛けるようには心掛けています。
――全体に目配りをするよう意識しているのでしょうか
目配りというほどじゃないんですけど、コミュニケーションはくだらない話でもとるようにはしていますね。
――オフの日はどのように過ごされていますか
基本部屋にいることが多いのですけど、結構「買い物行こう」とか誘われたりするとついていくことが多いですね(笑)。
――どこによく行かれますか
服を買いに誘われるのですけど、そこにある(狭山)アウトレットとか、都内に行ったりしますね。
――どの選手とよく行かれますか
いつも一緒にいるのは同学年だと平、(武田)凜太郎、あと鈴木洋平(スポ2=愛媛・新居浜西)とかと色々なところに行ったりしてますね。
――3、4年生の印象はいかがですか
普段は本当に優しくて、過ごしやすくて本当にありがたいのですけど、練習とかでは厳しい言葉なども掛けてくださるので、オンオフがしっかりできているなとは思います。
「『総合力』を固めていくうちの一人になる」
粘りの走りを信条とする佐藤淳
――特に注目している他大はありますか
優勝争いするなら駒大や東洋大ですね。
――駒大や東洋大の印象はいかがですか
一人一人がしっかりしていると言いますか、多分ワセダより私生活も含めて厳しい生活をしていると思います。なので一人一人が自覚を持って走っているなと思います。
――いま名前を挙げられた駒大や東洋大などの強いと評されている大学にあってワセダに足りないものは何だと思いますか
よく渡辺監督とかがおっしゃっているんですけど、反骨心が足りないのかなと…。この前マネージャーの山下さん(尋矢副務、スポ3=静岡・浜松西)にも言われたんですけど、速いやつをぶっ倒そうというような気持ちが、ワセダには足りないのかなと思います。ですが全日本が終わってからは、チーム全体的がそのような気持ちを持つようにはなったと思います。
――渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)や山本修平駅伝主将(スポ4=愛知・時習館)は『総合力』をチームのアピールポイントとしていますが、佐藤選手自身はどうお考えですか
きょねんみたいに大迫さん(傑、平26スポ卒=現日清食品グループ)のような選手がいないので、一人一人自分の仕事をしなければ勝てないチームだと思うので、自分も底上げと言いますか、『総合力』を固めていくうちの一人になれれば良いなと思います。
――では箱根についてですが、走りたい区間はありますか
任されるなら復路だと思うので、7区か8区ですね。
――前回大会で7区を走った柳利幸選手(教3=埼玉・早大本庄)や、8区を走った井戸選手からアドバイスは受けられましたか
アドバイスというよりかは、井戸が8区を走っていたので、後半の遊行寺の坂がきつかったとかはちょくちょく聞いていましたね。
――チームとしての目標は
(総合)優勝しか狙ってないです。ワセダは長い距離の方が強いということは監督やコーチ陣からも伝えられていますし、山のお二方もいらっしゃるので、箱根は優勝しかないです。
――指導陣から佐藤選手に直接アドバイスをされることはあるのですか
直接はないのですが間接的にと言いますか、駒野さん(亮太、平20教卒=東京・早実)も自分から聞きに行けば色々なことを言ってくださいますね。直接言われていることはあまりありませんが、コーチ陣が意図していることをこちらでくみ取らないと強くなれないと思うので、そこは「何を考えているんだろう」と常日頃考えるようにはしてます。
――自分の走りにおけるアピールポイントは何ですか
淳は粘れるということを言ってもらえていますし、僕自身も苦しくなってから粘れるほうかなと思っているので、粘りの走りですかね。
――反対に課題だと思うところはありますか
全日本のように突っ込んでしまうと、僕は全然走れないタイプだなと思います。僕はスピードが元々ないので、マックススピードの余力と言いますか、速いスピードで走った時の余力が人よりもないと思うので、速いペースでガンガンいくのはあまり得意ではないですね。
――最後に、佐藤選手自身の箱根への意気込みと目標をお願いします
チームの優勝に貢献するには区間上位で(タスキを)持って来ないとダメだと思います。区間3位以内で持って来ることができればブレーキにはならないと思うので、しっかりと任された区間を走って強気な気持ちを持って、チームの総合優勝に貢献できるように頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 八木瑛莉佳)
箱根への意気込みを書いていただきました
◆佐藤淳(さとう・じゅん)
1994(平6)年4月12日生まれの。168センチ、47キロ。愛知・明和高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル14分16秒38。1万メートル29分20秒04。ハーフマラソン1時間2分49秒。高校時代から試合前日には糖質補給のため必ず甘いものを食べているという佐藤選手。箱根で出走するとすればショートケーキを食べる予定だそうです。スイーツパワーで快走に期待ですね!