主力欠き、『五冠』の夢途絶える…

駅伝

 大学三大駅伝の初戦である、出雲全日本大学選抜駅伝が10日に開催された。ケガなどで八木勇樹主将(スポ4=兵庫・西脇工)をはじめとする主力メンバーを欠く布陣で臨むこととなった早大。主力の抜けた穴は埋まらず東洋大、駒大に先を越され3位に甘んじ、関東学生対校選手権、日本学生対校選手権、三大駅伝制覇の『五冠』の夢はここで途絶えてしまった。

表情を歪ませながら前に食らいつく大迫

 早大は『五冠』という偉業を成し遂げるべく出雲にやってきた。1区を務めたのは、いまや学生長距離界をけん引する存在となった大迫傑(スポ2=長野・佐久長聖)だ。大迫は必死に外国人留学生に食らいつき、日本人トップの3位で2区・矢澤曜(教4=神奈川・多摩)へタスキを渡す。矢澤はトップに立つものの、なかなか後続を離せない。終盤には明大に抜かれ、第1中継所では東洋大と20秒あった差が4秒まで追い上げられてしまった。3区・山本修平(スポ1=愛知・時習館)がタスキを受け取ると東洋大と並走する展開になり、激しい競り合いになる。これが大学駅伝デビューとなった山本だが、「最低限の走りは果たせた」(山本)と言うように初めての大学駅伝を冷静にまとめてみせた。ラストは東洋大をつきはなし首位で三田裕介(スポ4=愛知・豊川工)に中継した。

 三田は序盤から東洋大を離しにかかるも、3キロ過ぎに逆に捕らえられてしまい苦しい走りが続く。三田は意地でも先頭を守ろうとするが、3区とは対照的にこの区間では東洋大に振り切られてしまう。5区の前田悠貴(スポ3=宮崎・小林)が懸命に追うも差が詰まらない。「夏に練習できなかった」(前田)との言葉通り練習を満足に積めていない前田の調子は良いとは言えず、差を詰めるどころか東洋大の背中が遠くなってしまう。距離の短い出雲駅伝において25秒という痛い差をつけられ、逆転の命運は平賀翔太(基理3=長野・佐久長聖)に託された。しかし、「うまく調整ができなかった」(平賀)という理由からか実力を発揮できず東洋大に独走を許し、終盤ではじわじわと順位を上げてきた駒大にもかわされ3位でのフィニッシュになった。

苦しい走りとなったアンカーの平賀

 『五冠』を狙っていった早大にとって3位という結果は満足できるものではない。また、「120%で仕上げていかないと勝てないということが分かった」(渡辺康幸駅伝監督=平8人卒、千葉・市船橋)というように、主力の復帰が早急の課題になるだろう。ここからワセダの逆襲なるだろうか。まだまだ目が離せない。

(記事 西脇敦史、カメラ 片貝早輝子、谷口奈津希)

第23回出雲全日本大学選抜駅伝競走
区間 距離 名前 記録 区間順位
1区 8.0キロ 大迫傑 23分01秒 3位
2区 5.8キロ 矢沢曜 16分32秒 6位
3区 7.9キロ 山本修平 23分09秒 2位
4区 6.2キロ 三田裕介 18分42秒 2位
5区 6.4キロ 前田悠貴 19分24秒 3位
6区 10.2キロ 平賀翔太 30分25秒 6位
早大 2時間11分13秒 第3位
コメント

渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)

――残念な結果になりました
 これで2年連続三冠はなくなりましたので、このまま良い感じで終われるということはまずあり得ないです。やはり絶対勝たなくてはいけないので気持ちの切り替えはしたいですね。ことしは早々と僕が三冠宣言できなかったことでチームの士気の問題もあったでしょうし、去年の三冠でちょっと満足したところもありました。やはりなんとなくできるんじゃないかなという気持ちで勝てるほど甘くなかったですね。
――東洋を見て
 東洋さんも駒澤さんもきちっと来ればこれくらいのチームということは分かっています。やはりうちはうちで120パーセントで仕上げていかないと勝てないということが分かりました。あとは選手の層なども駒澤さんは厚いですから、これからうちもいま故障している選手が戻って来てくれないと最終的には厳しいかなというのがあります。
――その中できょうの収穫は
 3区に使った1年の山本がそこそこ計算できるという目処が立ったので次の駅伝も含めて主要区間などで少し使ってみようかな、というのはありますね。
――スタートの大迫は
 大迫に関してはいまちょうど調子が上がりかけのところでした。ことしはユニバーシアードがあって9月にかなり練習を積んでくれたので、まだまだ力的には頂点ではなくこれからもっとよくなるはずです。

相楽豊コーチ(平15人卒=福島・安積)

――きょうの結果について
 途中まではうまい組み立てができていたんですけれども、最終的にごまかそうとしたところのボロが出たかなと思います。
――途中までとおっしゃいましたが、具体的に何区まででしょうか
 1区、2区、3区、4区までですね。狙った通りにうまく運んでくれたと思いました。
――ごまかすことができなかったとは具体的にどのようなことでしょうか
 やはり主力を故障で何人か欠いてるので、チームとしては万全な態勢ではなかったということです。負けるべくして負けてしまいました。
――きょう選ばれたメンバーは好調を維持していた選手でしょうか
 そうですね。不安のある選手よりは調子の良い選手を優先して使ったのですけど、やはり結果的にああなってしまうのは、主力を使えないという状況になってしまっているからなので。力不足ですね。
――八木勇樹主将(スポ4=兵庫・西脇工)の現在の状態は
 かなり回復はしているんですけど、まだ出雲には間に合わない感じでした。
――全日本大学駅伝が復帰になるのでしょうか
 エントリーも近いので、またそれは確認したいと思います。ただ時間もないので、とりあえず練習はしっかりと積めるような状態でなければまた間に合わない可能性もあります。
――1年生の山本選手を3区という重要な区間に起用しましたが
 元々ロードに強いのと、1区向きでなかったので、1年生ですが任せました。本当によく頑張ってくれました。練習でもかなりチームを引っ張ってくれるので、うまく育ってくれればいいと思います。
――今後の課題についてお伺いします
 きょうもミスが出たのはうちの練習不足が原因だと思っています。そのあたりを1カ月しっかりやらないとまた同じ失敗をしてしまうので、その辺りをしっかり引き締めて、立て直したいと思います。

1区:大迫傑(スポ2=長野・佐久長聖)

――いまの気持ちは
 悔しい思いはあるんですけど、次に頑張れば良いと思うので、次に向けて頑張っていこうと思います。
――個人としては日本人トップで1区区間3位でした
 最低限の役割は果たせたと思うんですけど、目標としていた区間賞が取れなかったので、そこが残念です。
――拓大の選手が前半飛び出しましたが焦りはありましたか
 飛び出したというか置いていかれただけなので、しっかり粘っていこうという考えで走っていました。
――表情は苦しそうでしたが
 はい、苦しかったです。課題は多く残ったんですけど、次につながるレースだったと思います。
――課題と言いますとどのあたりが改善できる点でしょうか
 まだまだ体が動いていない部分があったので、しっかり調整して次には満足いく走りができればなと思います。
――個人としては昨年悔しい思いをした出雲でしたが、今回の出雲路はいかがでしたか
 昨年とは違って今回はチームとしてすごく悔しさが残ったので、箱根ではチームで喜びを味わえるようにしたいと思います。

2区:矢澤曜(教4=神奈川・多摩)

――レースを終えて
 今回3位ということで…悔しかったです。
――2区というレースの流れを左右する重要区間でしたが
 大迫は調子がよくなかった中で、最後粘って日本人1位でつないでくれたので、何とかトップで次に渡そうと思っていたのですが…。
――全日本学生選手権(全カレ)は欠場されましたが、調子はいかがでしたか
 ユニバーシアードで無理をして頑張ってしまったので、今後の駅伝シーズンを見据えて全カレ欠場を決めました。
―チームの調子や雰囲気は
 主将の八木がいなかったので、その穴を埋められるように4年生が頑張ろうという話をしていたんですけど…。この悔しさを全日本で晴らしたいと思います。
――全日本に向けて
 本当に1日1日が大事になってくるので、しっかりやっていきたいと思います。

3区:山本修平(スポ1=愛知・時習館)

――レースの感想は
 最低限の仕事は果たせたかなと思います。
――大学に入って初めての駅伝でしたが
今まで経験してきた駅伝とはやっぱりスケールが違いました。
――渡辺監督が「山本は良かったので次は主要区間で使いたい」とおっしゃっていました
 まだまだ物足りないです。区間賞は取りたかったですね。1秒差と言えど負けてしまったので。
――前を行っていた明大は同じ学年の1年生、追いついてきた東洋大は元々同世代の2年生でしたね
 ライバル意識はあります。2年生には勝ちたかったです。
――全日本の意気込みをお願いします
 個人のリベンジもありますし、全体でも東洋に勝って優勝したいと思います。

5区:前田悠貴(スポ3=宮崎・小林)

――きょうのレースを振り返って
 練習が遅れてしまっていて9月から走り始めました。夏合宿もほとんど走れていなくて…。調子は良かったんですけど、やっぱり駅伝になるとごまかせないんだと思いました。
――1位と3秒差でのスタートとなりましたが、焦りは
 落ち着いて走ろうと思っていましたが、なかなか前との差が詰まらなかったのでちょっと固くなってしまいました。思うように走れませんでした。
――後半かなりきつい走りになりましたが
 夏に練習できなかったのがちょっと…。言い訳にはしたくないんですけど、自分としてはもっと自信をもって走るつもりでした。それでも、直前になってちょっと弱気になった部分があったと思います。
――シーズン残りの意気込みを
 今回こういう結果になってしまったので、あと2つでしっかり取り返していかないといけないと思います。

6区:平賀翔太(基理3=長野・佐久長聖)

――きょうのレースを振り返って
優勝を狙えるところにいたのですが、最後に抜かれてしまって、悔いの残るレースになってしまいました。
――5区の様子はわかっていましたか
中継地点のテレビで見てわかっていました。少し差が開いてしまっていたので、自分抜かなくてはいけないなとは思っていました。
――今回は先頭を追う立場でしたが
自分がやらなくてはいけないというプレッシャーは少しありましたが、それだけでの問題ではなかったと思います。
――続く全日本駅伝に向けて
今回はうまく調整ができなかったので、しっかりと調整をして走りたいと思います。