出雲全日本選抜駅伝、全日本駅伝対校選手権と不本意な3位に終わり、厳しい展開になると予想された東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。大学三大駅伝、最後にして最大のタイトルだけは死守すべく健闘したが、4位という結果に。往路東洋大に水をあけられ、わずかな望みを託した復路でも、『三強』の牙城すら崩されるという憂き目を見ることになった。
往路は決して悪い内容ではなかった。1区・大迫傑(スポ2=長野・佐久長聖)は目標通り区間賞の走りで鶴見中継所へ走り込み、その後の3区間も区間5位前後と特に目につくブレーキはない。『鬼門』と言われた5区に至っては、1年の山本修平(スポ1=愛知・時習館)が1時間20分というひとつの大きな壁を破る快走を見せた。昨年東洋大が打ち立てた往路記録に2秒遅れを取るだけの5時間29分52秒という数字からも、その健闘ぶりはうかがえる。しかし、5分もの大差をつけて先に芦ノ湖のゴールテープを切っていた東洋大には、渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)も舌を巻くことしかできなかった。それでも、「ここで諦めたら終わってしまう」(渡辺監督)とあくまで逆転を狙う姿勢で挑んだ復路。東洋大との差を少しでも縮めようと攻めた一方、後続の猛追に遭う。
明大にかわされゴールする市川
5区の流れを引き継いで一気に駆け下りたい6区、ワセダは区間15位と出遅れてしまう。そんなワセダのつまづきを、駒大が見逃すはずはなかった。6区で70秒近く差を詰めワセダの背中を認めると、その後2区間でもワセダとつば競り合いを繰り広げる。箱根初出場となった佐々木寛文(スポ3=長野・佐久長聖)、志方文典(スポ2=兵庫・西脇工)の快走も駒大を突き放すことはできず、駒大に28秒だけ先行する形で8区を終えた。
9区に駒大のエース・窪田が控えているこの状況に、立ち向かったのは前田悠貴(スポ3=宮崎・小林)だった。昨年度は4区で区間2位と優勝に力添えをした前田が、ことし任されたのは裏のエース区間・9区。「去年勝たせてもらった分、ことしはしっかり仕事をしたい」と語っていた通り、権田坂付近で一旦窪田に追いつかれるも、食らいつく意地を見せる。その後横に並ぶなど駆け引きをする余裕もあるかのように思えたが、ラスト5キロ、窪田のスパートに前田がついていくことは敵わなかった。残す10区では、1万メートルで大学生最高のベストを誇る明大・鎧坂にかわされまさかの4位転落。ワセダが思い描いた青写真は実現することなく大手町に散った。
ことしの選手起用は、「きちんと来季以降につながるように」(渡辺監督)との意図が明確に感じられるものだった。一方選手たちも、大迫の区間賞を始め、エース区間・2区での区間5位、7区での区間3位、8・9区での連続区間2位などその期待に応えたと言える。来年への気概は充分だ。再び頂上へ。悔しさと経験を携えて、若いチームはあすから始動する。“箱根の借りは箱根でしか返せない——。”今回の敗北を価値あるものとし、この言葉を是非体現してほしい。
(記事 深谷汐里、カメラ 杉山幸美)
第88回東京箱根間往復大学駅伝競走 | |||||
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区間 | 距離 | 名前 | 記録 | 区間順位 | |
早大 往路 5時間29分52秒 第2位 | |||||
1区 | 21.4キロ | 大迫傑 | 1時間02分03秒 | 1位 | |
2区 | 23.2キロ | 平賀翔太 | 1時間08分47秒 | 6位 | |
3区 | 21.5キロ | 矢澤曜 | 1時間03分34秒 | 5位 | |
4区 | 18.5キロ | 大櫛顕史 | 55分36秒 | 5位 | |
5区 | 23.4キロ | 山本修平 | 1時間19分52秒 | 3位 | |
早大 復路 5時間33分18秒 第4位 | |||||
6区 | 23.4キロ | 西城裕尭 | 1時間0分54秒 | 2位 | |
7区 | 18.5キロ | 佐々木寛文 | 1時間03分37秒 | 3位 | |
8区 | 21.5キロ | 志方文典 | 1時間05分23秒 | 2位 | |
9区 | 23.2キロ | 前田悠貴 | 1時間10分41秒 | 2位 | |
10区 | 21.4キロ | 市川宗一朗 | 1時間19分52秒 | 9位 | |
早大 総合 11時間03分10秒 第4位 |