【連載】『逆襲』 第3回 高田康暉

駅伝


第3回目にお送りするのは期待のルーキー高田康暉(スポ1=鹿児島実)のインタビュー。駅伝デビューを果たした出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)で区間4位と好走すると、続く全日本大学駅伝対校選手権(全日本)にも出走。1年生ながら堂々とした走りを披露している今季、高田は何を感じているのか。箱根への意気込みも交えながら、ここまでのルーキーイヤーを振り返ってもらった。

※この取材は11月24日に行ったものです

「まだ思うような走りができていない」

にこやかに取材に応じる高田

――きょうから集中練習を始めたと伺いました。特にどういったことを意識して練習していきたいですか
上尾ハーフ(上尾シティハーフマラソン)であまり良い走りができなかったんですけど、けさも監督さんにはしっかり20キロに慣れることで、いかに体で覚えて走るかが大事だと言われて。自分でもそれは感じていたことだったので、本番をしっかりイメージしながら練習していきたいです。

――では、今季を振り返って率直な感想をお願いします
5月頃に一度体調を崩してしまって、関東インカレ(関東学生対校選手権)とかも全然ダメだったんですが、夏合宿を経て何とか取り戻すことができました。集中して自分の走りができるようになったし、強い先輩方とも一緒に練習をすることで自信にもなりました。でも駅伝シーズンに入ってからは、出雲でも全日本でもまだ自分の力が全く発揮できていないので、まだ今季は思うような走りができていないなという感じです。

――トラックシーズンに何か収穫などはありましたか
7月のホクレンディスタンスチャレンジ綱走大会に連れていってもらって、タイムは出せなかったんですけど、自分にとって大学に入ってから初の遠征だったので、良い経験ができたと思います。

――先ほど転機になったとおっしゃっていた夏合宿ではどんな点を中心に強化されたのでしょうか
まずは自分をリセットして、あとはできる限り強い先輩方と積極的に一緒に走るということを意識していました。一次、二次合宿では結構いっぱいいっぱいだったんですが、三次合宿あたりからは自分が入学当初からイメージしていたような高いレベルでしっかりできて、すごく良い練習になりました。先輩方と一緒にたくさん練習できたというのが本当に大きかったと思います。

――ではやはりそこからいまに繋がっている部分は多いですか
まだ夏合宿でやったことを実践で出せているわけではないんですが、それこそ今回の集中練習を経てその感覚を取り戻していきたいなと思います。

――駅伝シーズンのお話に移ります。出雲はご自身にとって初の大学駅伝でしたが、何か特別な思いなどはありましたか
憧れのエンジを着て走る初めての駅伝ということで、少しは意識した部分もあったんですが、走ってみると高校のときと変わらず、いつも通り平常心で走れました。

――普段からあまり緊張はされないんですか
しっかりいい準備ができたときは自信が持てるので、緊張しないんですが、もしできてなかったらすると思います(笑)。でもいまのところはしっかり練習ができているので、そういうときは緊張しないですね。

――出雲の内容を振り返ってみていかがですか
気持ちはいつも通りだったんですけど、それが結果にはつながらなくて、なんとか最低限まとめた、というような感じになってしまいました。

――全日本ではレース後「悔しい」とおっしゃっていましたが
そうですね。全日本では最初から抑えていたらそのまま伸びずに終わってしまいました。でも、経験という意味では、二つの駅伝を経験できて次につながっていくと思います。

――先ほど、あまり良い走りができなかったとおっしゃっていた上尾ハーフについては
自分の本来の走りができなかったです。緊張はなかったんですが、少し力んでしまって硬くなってしまったかなというのがあります。反省するというよりも本当にレースにならなかったという感じで、課題を上げればキリがないですね。なので、ここからの練習で一つ一つが試合だと思ってやらないといけないなっていうのは上尾ハーフを終えて感じています。

「負けたくない」存在

出雲では区間4位と健闘した

――ワセダを進学先に選んだ理由を教えてください
昔から正月に箱根駅伝とかを見ていて、竹澤さん(健介、平21スポ卒=現エスビー食品)の快走とかをかっこいいなと思っていました。あと、陸上を本格的に始めてから、やるんだったら世界を目指してやりたいなと思っていて、大迫さん(傑、スポ3=長野・佐久長聖)に憧れてきたので、そういう先輩方と一緒に走りたいなという思いからです。もちろん箱根とかにも憧れはあるんですけど、やっぱり一番は世界に踏み出したいなという気持ちからワセダを選びました。

――入部する以前はワセダの競走部に対してどんなイメージを持たれていましたか
もっと硬いと思っていたというか、寮とかでも試合のときみたいな雰囲気で生活してるのかと想像していたんですけど(笑)、思っていたよりも和やかでした。

――入部後は結構イメージとのギャップがあったんですね
そうですね(笑)。でもやっぱり練習になるとみんな目の色も変わりますし、そういう切り替えはすごいなと思います。

――では入部してから、ご自身で一番成長したなと感じる点はどこですか
高校時代はあまりスタミナがなかったんですが、大学に入ってから圧倒的に練習量が増えたので、それによってスタミナはついたと思います。

――高校と大学では練習量がそんなに違うのですか
そうですね、走る量っていうのは圧倒的に増えましたね。

――続いて注目選手も多い他大の1年生の選手について伺います。出雲のレース後には「(同学年の選手の活躍は)刺激になる」とおっしゃっていましたが
特に中学時代からずっと競っていた青山学院の久保田(和真)とは、高2の終わりくらいから力の差や経験の差が出てきて。久保田は世界の舞台を経験したり、2年時からエースとしてチームを引っ張っていたので、同級生ながらにすごく尊敬できる存在でもありますね。でもだからといって簡単に負けていい相手でもないですし、「あいつが走れるなら自分も走れる」という気持ちもあります。ただ、いまは一段も二段も上のレベルにいるので、まずは自分も箱根などの舞台で結果を残していきたいです。

――刺激になる、ライバルのような存在ですか
そうですね。でも刺激になるというよりは負けたくないというか、自分より良い走りをされると悔しいので、自分もあれぐらい走れるように頑張りたいです。

――では、同じワセダの1年生、柳利幸選手(教1=埼玉・早大本庄)の存在についてはいかがですか
すごく急成長していて、また新鮮な気持ちでやっているので、思い切りの良さがあるなと感じています。僕はこれまでの経験がある分、「ここでこうやったらきついな」とかいろいろ考えてしまうところがあるので、初心を思い出させてくれる存在でもあります。

――ライバルとして意識されたりはしますか
ライバルという意識はなくて、それよりも一緒に頑張っていきたいなという思いです。

――部活以外のプライベートでの仲はどうですか
そうですね…仲悪いわけではないんですけど(笑)、僕自身があまり外に出るタイプではないので、あんまり一緒に外出したりっていうのはないですね(笑)。

「チームの力になれるように」

――箱根まではあと1カ月程度となりましたが、全日本以降の練習で何か意識している点などはありますか
全日本では自分の動きが小さくなってしまったので、箱根では走る距離が長くはなるんですけど、でもだからといって動きが小さくならないように、思い切って走れるような自信をつけていきたいです。残り少ない練習期間ですが、一つ一つを試合だという思いで大切にしていこうというのは意識しています。

――上尾ハーフ以降も練習を続けてこられて、いまの調子はいかがですか
大学に入ってまだ一度も自分の走りができていないこともあって、上尾ハーフのあとには少しじっくり考える時間をとりました。集中練習が始まるきょうまでは軽めの練習だったので、自分の走り自体が(上尾ハーフのときから)変わったかはわからないんですが、気持ちとしてはしっかり前向きに、やるしかないという思いでいます。

――初めての箱根ということですが、ずばり個人の目標は何ですか
目標としては区間賞なんですけど、やっぱり出雲と全日本でチームに貢献できていないので、箱根こそは最低限しっかりチームに貢献して、チームの目標に向けて力になれるように頑張りたいです。

――チームとしての目標はやはり優勝ですか
はい、目指すのはやっぱり優勝ですね。

――では最後に、箱根に向けた意気込みをお願いします
まだまだ自分としても大学に入ってからは自分の力を出せていないですし、チームとしてもまだまだなので。他大がどうこうというよりも、僕らは僕らのやり方で、優勝を目指していこうと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 平岡櫻子) 

◆高田康暉(たかだ・こうき)
 1993年(平5)6月13日生まれのAB型。170センチ、54キロ。鹿児島実業高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分19秒40。1万メートル29分27秒06