【連載】『逆襲』 第4回 柳利幸

駅伝

 第4回は、陸上歴2年にして全日本大学駅伝対校選手権(全日本)の1区で大学駅伝デビューを飾った1年生の柳利幸(教1=埼玉・早大本庄)。出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)での出走はならなかったが、全日本での経験を生かし、次なる舞台は箱根。その大舞台を前に、現在の心境を聞いた。

※この取材は11月24日に行ったものです

「全日本で箱根の前に大きな舞台を経験できた」

充実の今季を振り返る柳

――上尾ハーフを終えて現在の調子はいかがですか
1週間ずっと自分なりに、上尾(上尾シティハーフマラソン)からあまり距離を落とさず、走るスピードを落として、徐々に疲労を抜いていこうかなと思って調整してきました。案の定、疲れは抜けてきたと思うので、これからの集中練習に向けては、良い流れできていると思います。

――集中練習で鍛えたいことは具体的に何でしょうか
やはり上尾ハーフでも全日本でも、後半に他の選手にスタミナの面で置いてかれるということが多かったので、後半のスタミナを強化したいと思います。

――現在のチームの雰囲気はいかがですか
朝練習からいままでよりも緊張感があって、集中しているというのもあって自分もいつも以上に練習に身が入りました。

――1年目の夏合宿を終えて、得たものはありましたか
高校時代から練習がこんなにハードではなかったので、練習が積み重なっていることが大きな収穫だったし、そのポイントポイントのなかでも、自分では部内上位の方で練習することができたので、それは収穫だと思います。

――逆に足りないと感じた点はありましたか
ポイントはしっかりこなせているのですが、間のジョグとか、自分自身に任せさせられた練習、何キロ走ればよいとかの指定がないときに、自分に厳しくもう少しできたかなと思います。自分の体の調子を優先してしまったところがあって、もう少し追い込むべきところがあったと思います。

――次々と記録を更新されてきましたが、それとともに自信も少しずつついてきたでしょうか
正直競走部に入ったときは、1年目は土台づくりで箱根などもメンバー入りすることはないだろうと思っていましたが、出雲からメンバー入りさせてもらって、チームのトップで練習させてもらっているということは、本当にうれしいですし、モチベーションにもなりますね。

――そのことでプレッシャーなどは感じていますか
陸上を始めたばかりの僕が、ここにいてよいのかなという気持ちもありました。でも逆に初心者なりに、周りを気にしないというか、雰囲気に流されないというのびのびとした感じはありましたね。

――出雲ではエントリーされましたが出走はなりませんでした。悔しさはありましたか
現地にいって、他の大学の選手とかが走っているのをみて、自分も走りたいなという闘争心が出てきたりしました。その分、前日にメンバーを外されて、それはかなり悔しかったです。

――その悔しさとは
やはり夏合宿は自分なりに頑張ってきたので、その頑張りがまだ足りなかったのかなと思いました。あと、他のメンバーもみて、メンバーに入れるかなという自信もあったので、いざメンバーから外された現実を言われたときは、本当に悔しかったです。

――全日本では1区を任されました。出走が決まった時の正直なお気持ちは
正直1区と言われたときは何のことだかわからなくて、いきなり初めての大学駅伝でしかも1年で1区を任されるとは思わなかったので、びっくりしました。そのあと、自分で考えたりして、緊張もあったし、何より責任が重大だなと思いました。

――走り終えていかがでしたか
東洋や駒澤に勝って優勝を狙うためには、競って大迫さん(傑、スポ3=長野・佐久長聖)にタスキを渡したかったんですけど、優勝候補と言われていない他大学にも差をつけられてしまったので、経験のなさというのを感じました。

――ご自身の駅伝デビューを振り返って
出雲は距離が短いし、自分でも自信のある距離だったので、そこで一回本番をしていたら全日本も変わっていたかもしれないですけど、それを考えれば箱根前に大きな舞台を経験できたので、この経験が箱根に結び付けば良いと思いました。

――駅伝デビューを迎えるにあたり、周りの反応はいかがでしたか
前日までに友人から頑張れというメッセージをもらって、家族もお母さんが愛知まで応援にきてくれたし、中学校時代からの友達とか高校の陸上部の友達とかも現地に応援しにきてくれていたので、うれしかったです。

――駅伝デビューを経て駅伝に対する気持ちの変化はありますか
駅伝はやはり団体のスポーツだと思いますが、区間ごとに個人が頑張っていかないと全体として良い成績が得られないので、全体で良い結果を出すには一人一人がしっかりと力を出さなければと思いました。

――駅伝ならではの沿道の応援はどうでしたか
初めて沿道の応援がある中で走りましたが、走っている途中も応援がすごくて。応援してくださる沿道の方を見たりしちゃいましたが、そういう応援があって自分も最後まで走れたと思うので、感謝したいです。

――やはり応援は力になりましたか
そうですね。一番きつい時に、友達とか近い関係の人が応援してくれていたので、すごく力になりました。

「陸上との出会い」

全日本で初エンジをまとった柳

――陸上を始めたのはいつですか
高校2年の1月です。

――陸上を始めたきっかけは何でしたか
中学校まで部活がさかんな学校に通っていて、高校でもサッカーを続けて大学でもやろうという感じでいたんです。ただ高校に入学して、周りにはクラブ上がりの人とか個人のレベルが高い人が多くて、自分なりに1年2年の時に頑張ったんですけど、周りとの差が埋まらなくて悩んでいました。その時に同じ学年で部長をやっていた子に相談して、自分の代の新人戦にレギュラーで出られなかったら、サッカー部を辞めて、自分の進路について自分のやりたいことを見つけたら、それをやろうという感じで冬休みを過ごしていました。そんな中で、高校の陸上部の長距離のブロック長をやっていた友達に勧誘を受けて、自分もサッカー部時代から持久力には自信があったし、まだ体を動かしたいなというのもあって、やってみたいなと思い1月から体験入部みたいな感じで入ったのがきっかけです。

――ワセダの競走部に入ろうと決意したきっかけは
高校3年時に高校総体の3000メートル障害でケガをしながらも良い成績が残せたし、そのあとの全国予選の駅伝でも自分でも良い走りができたと思って、そこで少し大学でもやってみようかなという思いが出ました。それが確実になったのが都道府県対抗駅伝です。埼玉県代表に東洋大の設楽悠太さんと日体大の服部翔大さんも一緒にいて、その人たちから大学駅伝とかの話を聞いて、高校だけじゃやはり得られないものもあるかなと思って、大学で駅伝をやりたいなという思いが確実になりました。

――陸上を始めた頃と、入学後のこの競技に対する心境の変化はありますか
高校時代はやはり学校が遠かったというのもあって、朝練とかもやれずに、そんなに練習を積んでいませんでした。いまこのしっかりとした組織の中で、上下関係とかも大変だと思ったし、陸上は礼儀とか私生活の面でも正していかないと、競技にうまくつながらないなと思いました。

――授業、部活、寮生活などの両立にはなれましたか
慣れていません(笑)。本キャンなので1限が週3日あって、その日は一人で朝練をやって、放課後は授業の都合で夜になってから一人で練習するというときもあったので、やはり授業との両立が難しいなと感じています。

――身近にいる先輩方は自分にとってどういう存在ですか
先輩方は大迫さんをはじめ、大学生のトップでやっている人が多いので、競技面だけではなく私生活の面でどういう生活をしているのかなどは参考になります。先輩と同じ寮に住んでいて話をしたりする機会もあるので、そういうときに色々な、競技でも私生活でも学校でも、くだらない話とかもできるので、すごくプラスにはなっています。

――同期にも共に活躍が期待される高田康暉選手(スポ1=鹿児島実)などがいらっしゃいます
高田くんは練習も強いので、すごく尊敬しています。

――ライバル意識はありますか
今季はまだ僕の方が良いタイムで走れていますが、これから2年3年となっていく中で高田くんの刺激になればいいし、逆に僕自身のモチベーションになればいいなと思います。

――他大にもルーキーとして注目され活躍されている選手がいますが、意識はされますか
やっぱり青学の久保田(和真)くん、東洋の全日本アンカーを走った服部(勇馬)くんとかは同じ1年なのでライバル意識もありますが、自分の中では、埼玉県出身で東海や明治や中京にもおなじ高校時代戦った人たちがいるので、そういう人たちにも負けないように頑張りたいと思っています。

――この1年間の経験は自分にとって大きなものでしたね
そうですね。いままでの自分よりは成長できたかなと思います。初心者だし1年だし他の先輩とかに比べたら経歴もそんなにないので、自分が頑張ればそんな先輩たちが僕に負けないようにとか、相乗効果でさらにみんなが良い走りができるのではないかなと思います。

――監督やコーチからの期待を感じることはありますか
あまり話す機会はないですけど、記録会ごとに声をかけてもらって、全日本が終わってからコーチや監督から背中を押してもらう言葉などを聞くと、期待してもらっているのかなとは思います。全日本の自分の走りはやはりショックで、1週間ぐらい調子が上がらなかったんですけど、監督、コーチから自分はまだ1年だし、経験も浅くて想定内。これからの集中練習で力は伸びていくだろうから下ばかり向いてないで先見据えて前向きにやっていこうという言葉をかけてもらいました。

――全日本の出走が決まった際にも言葉をかけてもらいましたか
何も考えないで自分の思うように走って、大学駅伝というものを楽しんでこいと言われました。

――理想の選手像、または目標としている選手はいますか
駒澤の窪田(忍)さんのような力強い走りで、チームに貢献できる走りができたらいいなと思います。

「箱根での走りを、自信に変えたい」

――箱根に対してどのようなイメージをお持ちですか
正直、陸上を始める前は箱根とかにも興味がなくて、自分が陸上に携わるようになってから、箱根駅伝というのは大学4年間の集大成だし、世間からも注目されるというのもあって、一つの自分の人生にとってプラスになるものなのかなと思うようになりました。

――箱根を控えて、緊張や不安はありますか
いままでの一連の記録会とかレースではまだ他の有力校には力及ばずという感じはあるのですが、やはりこの集中練習でどれだけ追い込むかで箱根の結果とかその先も変わっていきますし、そこは自分でどうにかしようと思います。

――その分、楽しみもあるのでは
やっぱりこの期間でどれだけ成長できるかというのと、自分の力がもし箱根で結果を出せたら、またそれも大きな自信になりますし、これからに大きく影響があると思います。

――走ってみたい区間はありますか
やはり全日本の悔しさを晴らしたいので1区も若干興味がありますが、4区で最後の上りの山本さん(修平、スポ2=愛知・時習館)にタスキが渡せたらなと思います。

――現在、ご自身ではどのような課題を持って取り組んでいらっしゃいますか
自分の走りを見直して若干体のキレとかが気になりますし、他大学の選手とかもみて、走り方と精神的にもう一回りレベルアップしなきゃならないと思っています。

――生活面で意識されていることはありますか
体調管理はしっかりしなきゃいけないと思っていて、課題とかそういうものもありますが極力早めに寝るようにしています。あとは甘いものが好きなんですけど、間食とかは控えるようにしています。

――箱根を迎えるにあたって、どのようなお気持ちですか
箱根という大舞台までの調整の仕方なども見直さなければならないし、最後まで気持ちの強い人が勝つと思うので、走っている途中の気持ちを強くしたいです。

――箱根での個人の目標は
チームのために上位でタスキを渡したいし、自分自身も区間上位で結果を残せるようにすることが、自分のいまの目標です。

――全体としての目標は
出雲、全日本と王座奪還を目標にやってきましたが、まだ1冠も獲れていないので、箱根こそは優勝して4年生の先輩方に良い結果で卒業してほしいし、渡辺さん(康幸駅伝監督、平8人卒=千葉・市船橋)を胴上げしたいという気持ちがあるので、一生懸命頑張りたいと思います。

――自分のここを見てほしいというポイントはありますか
最後まで粘り強く食らいついていこうと思うので、そこを期待して欲しいです。

――最後に箱根への意気込みをお願いします
やはり早稲田大学は優勝を経験して伝統のある学校なので、王座奪還を含め、良い結果でこの駅伝シーズンを終えられるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松田萌花) 

◆柳利幸(やなぎ・としゆき)
1993年(平5)4月23日生まれのO型。172センチ、57キロ。埼玉・早大本庄高出身。教育学部教育学科1年。自己記録:5000メートル14分12秒67。1万メートル29分11秒80