【連載】『十人の戦士たち』 第2回 田口大貴

駅伝

 ゴール直前のラスト勝負から1年。2回目の箱根路は復路最長区間、9区を任された田口大貴(スポ3=秋田)。東京箱根間往復大学駅伝(箱根)を具体的に振り返ってもらいながら、来季への意気込みを伺った。

※この取材は2月1日に行ったものです

「守る思考になっていた」

冷静にレースの様子を語る

――箱根を振り返っていただいて、いかがですか

全体として優勝を目指してきた中で4位になったことは悔しさもあります。その中でも次につながる走りをした選手が多かったので、また収穫のあるレースだったのではないかと思います。ただ、個人的には良い走りができず全く満足できないです。求められていることができなかったので。この結果に関して個人面では、かなり反省しています。

――復路最長の9区を任されました。決定した時はどのような心境でしたか

この1年間、ずっと主要区間で戦うことを意識してやってきていました。9区と言われてからも動揺というか、そのような感情はありませんでした。やってやろうという気持ちでした。

――レースプランはどのように考えていましたか

渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)からも言われていたのですが、最初にある程度突っ込んでそのリズムを維持しながら後半は粘るというのが、当初考えていたレースプランですね。

――そのプランを実行できましたか

全くできませんでした。突っ込んでいるつもりが、突っ込んでいると思って通過タイムを見た時に全く突っ込みきれていなくて自分の感覚と実際のタイムにズレがかなり生じていました。全く自分の思い描いていた通りには走れなかったです。

――自分の感覚と実際のタイムにズレが生じた原因は何だと思いますか

いろいろあると思いますが、まず状態がうまくかみ合っていませんでした。大きな部分ではメンタル的な部分が出てしまったことです。他の選手が突っ込んでいる中で、攻める気持ちを他の大学の選手以上に走りに出すことができなかったというのが一番大きな要因ではないかと思います。

――当日の体調で気にかかることはありましたか

いや、特にありません。いつも通りだなと思っていました。

――8区の井戸浩貴(商1=兵庫・龍野)選手からタスキを受け取った時、後ろの日体大との差は意識されていましたか

はい。とにかく3番以内には入りたいと思っていたので、後ろの日体大との差はかなり意識していました。ただ、今となってはそこがいけなかったのかなと感じています。優勝を目指すためにはどんな状況であっても、前を追っていかないといけないと思います。そのようなメンタル状態ではなく、3位を守るというような、守る思考になっていたのが良くなかったと思います。

――昨年、最後で競り合った帝京大の熊崎健人選手も9区を任されました。どのように思われましたか

きょねん、あのように競り合っていた選手が主要区間を一緒に走るようになったというのは良かったことではないかと思います。こいつにだけは負けたくないと意識するよりかはお互いに大学のために頑張れたらいいなと思っていました。

ケガをプラスに

――2度目の箱根となりました。1年前と比較して成長できた点はありましたか

本当は今回の走りでそのように成長した部分を見せられたら、自分の中でも感じることができたらと思っていました。しかし箱根に関しては、成長できたなと実感できる部分が正直なかったんですよ。それくらい、今回の走りは自分の中でダメだったので。一つあげるとするなら、そういう風に自分の中で思えるようになったことですかね。それなりの自覚を持てているということなので。強いてあげるなら、昨年よりも自覚を持って取り組んできていることです。

――目標の優勝には届きませんでした。ことしのチームに足りなかった点はどこにあると考えますか

難しいことなんですけど、他大学と比べて僕が一番かなとも思っているんですが、攻める気持ちが足りなかったと思いますね。あとはまだまだ、いろいろな面で足りなかったという部分はあると思いますが。

――シーズンの途中で故障し、11月の上尾シティマラソンから復帰されました。距離を積めない部分はありましたか

駅伝前の重要な時期にしっかり練習を積めなかったというのはあるんですけど、あまりケガをしてマイナス感情はありません。むしろケガをしたからこそ、自分の中で変われた部分があったので。ケガをしたこともむしろ自分が良い方向に変われるチャンス、きっかけになったととらえています。

――全国都道府県対抗男子駅伝(都道府県駅伝)でも秋田県代表として出走されました。練習はされましたか

しっかり都道府県駅伝に向けて調整して、それで臨みました。

――帰省などはされましたか

はい、しました。ただ、例年よりは都道府県駅伝のために短い帰省になりました。結果、こっち(埼玉)にいる日数の方が多くなりましたね。

駅伝主将を支える

9区での走りは悔しいものとなった

――来季は山本修平駅伝主将(スポ3=愛知・時習館)のもと、最上級生となります。どのように支えていきたいですか

修平はかなりチームに対して思い入れが強く、ワセダに対する思いも強い選手なので、今でもわりと細かいところまで全体を見てくれているのですが、どこかで修平にも精神的に苦しい部分が出てくると思うんですよ。そういった時に僕がうまく彼をフォローしてあげて、やっていけたらいいなと思っています。最上級生としてチームを引っ張る上で、そういったことが大切になってくると思います。

――来季に向けて、トラックでの目標は何ですか

関東学生対校選手権が大事です。まだどの種目に出るか決まっていませんが、出場してポイントを稼ぐことです。チームがトラックの総合優勝を目指しているので、最上級生として少なくとも貢献しなくてはならないと思っています。そこを一番の目標としてやりたいなと思っています。

――駅伝での目標は何ですか

一番の目標は箱根になります。ことし走った9人の選手が残っていて、山という特殊区間の所ではそれなりの戦力は残っていると思うので、それを他の区間でどう生かしていくのかが大事になってくると思うんですよ。だからこそ、もっともっと一人一人が自覚を持って優勝するんだという意識を1年間持ってやっていきたいです。箱根だけではなく出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)もあるので、それをステップとして、そこもしっかり勝負をしていきたいです。箱根だけを狙えばいいということではなく一つ一つ出雲、全日本でもしっかり戦って勝つというようにやれたらいいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 高畑幸)

◆田口大貴(たぐち・だいき)

1991年(平3)12月12日生まれのA型。168センチ、51キロ。秋田高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分01秒24。1万メートル29分14秒42。ハーフマラソン1時間2分53秒。2013年箱根駅伝10区1時間11分49秒(区間4位)。2014年箱根駅伝9区1時間10分33秒(区間7位)。