第6回にお送りするのは、2年生の成長株・中村信一郎(スポ2=香川・高松工芸)と三井泰樹(人2=山形東)。ことし順調に練習を積んできた中村は、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲駅伝)で大学駅伝デビューを果たした。一般入試でワセダの門をたたいた三井も秋に入ってから記録を伸ばし、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では初のエントリーメンバー入り。着々と力を付け、今後チームの戦力として活躍が期待される二人に現在の心境を伺った。
※この取材は11月27日に行われたものです。
「信一郎と同じような練習ができるようになれば」(三井)
リラックスしてインタビューに応える三井(右)、中村
――きょうはどのような練習をされたのですか
中村 集中練習3日目で、2万メートルのペース走をしました。今週の土日に大事な練習が入っているので、きょうはまだ軽い方で週末に向けてという感じです。
――お二人の現在の調子はいかがですか
中村 僕は、練習自体はずっと調子良くできています。いままで試合でそれが出せていなかったのですが、上尾ハーフ(上尾シティマラソン)でようやく練習の結果が出せたかなという感じですね。その後も、調子がいいのか悪いのかはあまり分かりませんが、練習自体はできています。
三井 ずっと練習できていませんでしたが、僕も最近ようやく練習できるようになりました。夏が明けて、たまにAチームでやらせてもらう機会もあったのですが、そういう時も全然付いていけなくて、離れてしまうことも多くて。でも最近は、少しずつ成長しているかなと自分で感じています。
――集中練習自体は、きょねんよりできていますか
三井 そうですね。1年経っているので、きょねんよりかは余裕を持ってできているのかなとは思います。でも、やっぱりきついですね。
中村 僕はきょねんちょうどこの時期にケガをしていたので、ことしが初めてです。きついとは思いますが、とにかくケガをせず、あと体調管理に気を付けていけたらいいなと思います。
――箱根駅伝まで約1カ月となりましたが、現在の心境としてはいかがですか
中村 ここ1カ月がかなり早く感じたので、また箱根まであっという間に来るのかなという思いです。それまでにできるだけのことをやっておかないといけないなと思います。
三井 1カ月しかないので、できることをしっかりやっていきたいです。僕は多分、相当のことが無いと10人には入ることができないので、できる限りのことをやっていきたいですね。
――今季はお二人共に結果を出している印象ですが、ご自身で振り返っていかがですか
中村 僕はきょねん2カ月間も故障してしまったのですが、ことしは大きなケガもなく、あと練習もあまり外すことなくきちんと距離も踏めているので、実際のところ結果はもう少し欲しかったですね。ちゃんと距離を踏んできた分が上尾ハーフで出せたかなという感じではあるのですが、もう少しトラックの5000メートルや1万メートルでも結果が欲しかったなというのがあります。
三井 僕はことし1月から5月までケガをしていて何もできていなくて、7、8月の合宿の練習も全然こなせませんでした。それで、3次合宿でAチームは岩手に連れて行ってもらえるのですが、僕はこっち(所沢)に残らされて。このままじゃ駄目だなと思って、ちょっとそこから頑張りました。
――三井選手は10月の早大長距離競技会で14分17秒7を叩き出すなど、秋に入って大幅に記録を伸ばしました
三井 そうですね。その時はやってやったぞと思いました(笑)。でも、まだ僕の力で常にあのクラスの記録を出せるとは思えません。たまたま出てしまった記録というか、あれに見合う力をどんどん付けていけたらいいなと思います。
――Aチームの力のある選手との差は縮まっていると感じますか
三井 いや、僕の中では信一郎との差もすごいですし、まだまだ遠いなと思っています。
中村 僕はきょねんより本当に近くに感じられるようになったというか。それなりに(練習も)できてきたので、らいねんと言わずことしのうちに、この集中練習だけでも練習を引っ張っていけるような存在を示したいです。
――Aチームではどのような刺激を受けていますか
中村 きょねんと違うところが、きつくなってからもみんなで声を出していく、というのをことしは心がけています。一体感というか、そういうものを感じます。
三井 僕はことしもBチームに居る期間が長かったので、Aチームの先輩であったり、強い1年生の平(和真、スポ1=愛知・豊川工)や(武田)凜太郎(スポ1=東京・早実)であったりと関わる機会はそんなに多くありませんでした。でも最近一緒に練習をやるようになって、やはり取り組みの違いであったり、そういうものを感じるようになりました。
――平選手や武田選手など強い1年生の活躍に対してどのように思いますか
三井 もう少し、あと2年くらい大人しくしていてほしかったですね(笑)。やはりすごく刺激になりますが、だいぶ先に行かれているなという感じがしますし、早く追い付きたいです。
中村 いや、もうその通りですね(笑)。
――中村選手は夏合宿が良かったとお伺いしましたが、具体的にどのような点が良かったのですか
中村 大きく外すことも無く、あと岩手合宿の最後の10マイルのラスト5キロの上がりも上位の方で行けました。それで、その後も調子が良かったので出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝)も使っていただいたのですが、なんだか夏が終わってからあまり調子をうまく合わせることができなくて…。
――大学駅伝デビューとなった出雲駅伝はいかがでしたか
中村 エンジの重みは1年生の時に全カレ(日本学生対校選手権)に出場したので知っていたのですが、やはり責任というかプレッシャーをすごく感じました。大学駅伝初ということで舞い上がっていた部分もあり、本来の力は出せなかったかなと思います。
――夏を終えてから本来の力を出すことができずにいたとのことですが、上尾ハーフでようやく力を発揮できた要因は何だったのでしょうか
中村 正直、調子自体はそんなに良くなかったのですが、1キロ3分ペースなら15キロまでは先頭集団と絡めたので、本当に底力が付いたことが分かりました。あとは、集中練習で補っていけたらいいなと思います。
――三井選手は中村選手が出雲を走る姿を見て、どのように感じましたか
三井 信一郎がさっき言っていましたが、夏もずっと練習できていましたし、やはりちゃんと練習できている人が使ってもらえるんだなと思いました。同学年ということもあり、駅伝デビューしてくれてうれしいという気持ちと、やはり先を越されたなという悔しさもありました。あとは信一郎が走ってくれたことで、信一郎と同じような練習ができるようになれば、僕にもチャンスはあるのかなと思うようになりました。
――全日本では見事、初のエントリーメンバー入りを果たしました
三井 全日本のメンバーの13人で練習していた時期があったのですが、その頃の練習では僕だけできないという状態がずっと続いていました。全日本は8人が走ることができるのですが、その選考に全く僕は関わっていない状態だったので…。悔しさを感じられたという意味では良かったかもしれませんが、13人に入っても意味はないなと思いました。
――「自分が駅伝を走る姿は想像できない」と以前おっしゃっていましたが、まずはメンバーに入った事で現実的になってきたのではないでしょうか
三井 はい、そうですね。以前より少しは身近に感じられるようになったと思います。
「走れる位置に居る」(中村)
その後の集中練習も順調にこなしているという中村
――2年目となることし、ご自身で成長したと思う部分は何ですか
中村 僕はよく、体がしっかりしたねと言われるようになりました。下半身は細くなって上半身はしっかりして、軸がブレなくなったとはよく言われます。…まあ、顔は成長してないって言われるけど(笑)。童顔ってよく言われていて、顔は成長していないみたいなんですけどね(笑)。
三井 僕は、きょねんより単位はちゃんと取れるようになりました(笑)。走りの方では、きょねんのビデオを見ると、フォームがすごく汚かったのですが、それよりいまは良くなっていると思います。
――改めて、きょねんより箱根駅伝に対するモチベーションは高いですか
中村 そうですね、もちろん。走れる位置に居ると思っているので、やはり早いうちに走っておきたいですし。出雲駅伝では区間8位だったのでその借りを返したいというのもありますし。活躍したいです。
三井 はい、全く同じです。
中村 一緒でいいの(笑)?
三井 うん、信一郎と同じっていうことはうれしい(笑)。
――お二人は仲がいいのですか
中村 きょねんより絡むようになったよね。
三井 そうだね。きょねんは1年生で、寮内で当番の仕事があるのですが、僕が結構失敗してしまうので。寮の掃除とか皿拭きとか、いろいろと時間が決まっているのですが、その時間内に僕ができなかったりして信一郎君が怒ったりしていたので…。
中村 いやいや、怒ってない(笑)。
三井 その頃より少しは穏やかに過ごせているのかなと思います(笑)。
中村 上尾ハーフの日にもご飯に行ったね、田口さん(大貴、スポ3=秋田)と3人で。
三井 日本の陸上界の未来について語ったね(笑)。
中村 そういうこといつも話しているもんね(笑)。
――寮生活には慣れましたか
中村 そうですね。寮生活自体が初めてでしたが、自分が想像していたよりも自由なところがあるので、そういう意味ではやりやすいです。
三井 僕も、畳で4人で寝る、みたいな(笑)。そういうのを想像していたので、結構プライベートな時間もあって過ごしやすいですね。
――そもそも、ワセダを選んだきっかけは何ですか
中村 やはりエンジに憧れて、ですね。
三井 ワセダが大学駅伝三冠を取っていた年に、僕は駅伝を初めてテレビで見ました。ちょうど、うわめっちゃ強いこの大学、と思って。かっこいいなと思いました。
――それまで大学駅伝に対する憧れが特にあったわけではないのですか
三井 そうですね。やはり高校時代は自分の競技力も無かったですし、絶対に自分とは関係のないところだなと思っていたので。でも高校3年時に少し結果を出すことができたので、その前年にワセダが三冠していて、面白いかもしれないなと思いました。
――般入試ということで入部当初はブランクに苦労されたのではないでしょうか
三井 そうですね。受験でブクブク太って、いまより8キロほど体重が重かったので。陰口に耐えながら、頑張って絞りました(笑)。
中村 見た目はそんなに太ってなかったよ(笑)。
――中村選手がエンジに憧れたきっかけは何ですか
中村 最初は順大の今井さん(正人、トヨタ自動車九州)の山上りが格好いいなと思っていたのですが、やはりワセダの一般入試のたたき上げの選手とスポーツ推薦の選手が一緒になって走っているという姿が格好いいなと思いました。僕は勉強で入るのは絶対に無理だったので、なるべく早いうち、高校1、2年生のうちに結果を出しておこうと頑張っていました。
――尊敬している選手は居ますか
中村 僕はかなり身近ですが、臼田さん(稔宏、基理3=長野・佐久長聖)です。最初は怖いなと思っていたのですが、話していくうちにやはり考えて走っているし、ストイックさも半端ないというか。それでいろいろ真似している部分もあり、ことし結果がちゃんと出せてきたので、いろいろ教わる部分があります。
三井 うーん。
中村 俺?俺?
三井 いやもう、信一郎は言わずもがな(笑)。2年生に前野君(陽光、スポ2=神奈川・多摩)という子が居るのですが、その子がすごくケガしがちで、全然試合も出られていなくて。僕とケガをしている時期が被っていた時があって一緒にトレーニングしていたのですが、その頃の取り組みを見ていると、ああやはり前野はしっかりと考えてやっているんだなと思いました。ケガ中の体のケアの仕方など、すごく勉強になる部分があり、そこはいろいろ尊敬しましたね。
――ケガをしている時はどのような気持ちになりますか
三井 ちゃんと練習できている人のことをうらやましく感じますし、すごくもどかしい気持ちが大きいですね。
中村 正直なところ、走れないと僕はもう本当につまらなくて。1年生の時は、ずっと走っているのがつまらないわけではないのですが、楽しく走っていませんでした。でもケガをして、逆に走らなくなったらそれはそれで楽しくなくて。そこで考えが変わったというのもあります。ことしは楽しんで走っています。
「あとはもう信じて結果を出すだけ」(中村)
三井はケガにより、惜しくも箱根エントリーはかなわなかった
――お互いの普段の生活や練習に対する態度に、どのような印象を持っていますか
三井 ことし信一郎が練習を外しているのを見たことがないですし、全部確実にこなしていてすごいなと思いますし。競技に対する意識の高さというのはすごく感じていて見習いたいとは思っているのですが、なかなか…。早く追い付きたいなという気持ちです。
中村 三井は、いい意味でマイペースなんです(笑)。練習の時は練習で、それ以外の時はちゃんと寝たりとかリラックスしたりとかメリハリもついていますし。僕は時々神経質になり過ぎてしまって、考え込むこととか多くて、それで気疲れもしてしまうので。いろんな意味の、いい意味でマイペース。
三井 悪い意味で、考えていない(笑)。
中村 考えない時がいい時もある。
三井 そうだな。
――では、ご自身の強みは何だと思いますか
三井 僕は、普段の練習の内容の割には試合で結果が出るところだと思いますね。全然練習でできていないような内容で、レースができていたりしますし、そういうところが自分のいいところなのかなと思います。
中村 逆に僕は練習ができているので、あとはもう本当に信じて結果を出すだけです。練習はできているので、なんとかそこをモチベーションに頑張っています。
――これから箱根を走るメンバーになるためには何が必要だと思いますか
三井 やはりAチームの上の方でやっている人たちと自分は、何が違うのか考えてやっていくことが大事だと思います。せっかくいま集中練習で一緒にやれる機会なので、少しでも盗んで近づいて、追い越す気持ちでやりたいと思います。
中村 いろいろと足りない部分はあるとは思うのですが、かといっていまから違うことをしても、なんというか、はまらない気がするので。いままで通りの調子をキープしつつ、うまいことピークを持っていけたらいいなと思っています。
――何区を走りたいというのはありますか
三井 僕は平坦なところがいいです。
中村 僕は10区がいいです。きょねんの田口さんが出雲駅伝の5区を区間8位で、全日本は補欠で、上尾ハーフを走って、10区という流れだったので。僕もそういう流れに作って10区を走れたらいいなと思います。
――最後に箱根駅伝に向けて意気込みをお願いします。どのような走りがしたいですか
中村 力的に流れを変えたりだとかインパクトがある走りというのはなかなか難しいですが、きちんとつなぐだとか、自分の持っている力を出せればいいかなと思っています。
三井 僕もきっと流れを変えたりというのは難しいと思いますし、自分が任されたところでしっかり出せればいいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 加藤万理子)
箱根への意気込みを書いていただきました
◆中村信一郎(なかむら・しんいちろう)(※写真右)
1993年(平5)4月14日生まれのO型。174センチ、57キロ。香川・高松工芸高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル14分27秒29。1万メートル29分55秒75。ハーフマラソン1時間03分49秒。物腰が柔らかく、どの質問にも丁寧に答えてくださった中村選手。ドラマが好きで、取材当日は『リーガルハイ』を楽しみにしていたようです
◆三井泰樹(みつい・たいき)(※写真左)
1993(平5)10月6日生まれのAB型。169センチ、48キロ。山形東高出身。人間科学部2年。自己記録:5000メートル14分17秒7。1万メートル29分58秒72。ハーフマラソン1時間04分45秒。真摯な姿勢で取材に応じてくださった三井選手ですが、中村選手とのやりとりで所々ユニークな発言を挟むなど笑いのセンスも抜群。和やかな対談取材となりました