【連載】『箱根路への挑戦状』 第4回 井戸浩貴×佐藤淳

駅伝

 一般入試から早大競走部の門をたたいた井戸浩貴(商1=兵庫・龍野)と佐藤淳(スポ1=愛知・明和)。井戸は全日本大学駅伝対校選手権(全日本)で大学駅伝デビュー、佐藤淳は前哨戦2戦にエントリーと、ともに既に大事な戦力になっている。成長著しいお二人にワセダへの思い、東京箱根間往復駅伝競走(箱根)への憧れなどを伺った。

※この取材は11月27日に行われたものです。

「伸び伸びとできている」

競走部での生活を楽しそうに話す井戸(左)、佐藤淳

――ワセダに入学した理由を教えてください

佐藤淳 高校時代はあまり実績など残せなかったので、大学から推薦などの声はかかりませんでした。一応、高校も進学校で回りの友達も大学に進むので、大学で陸上がやりたいと思っていました。どこでやりたいかと考えたときに、ワセダはブランドもあり、勉強と陸上どちらも頑張ってほしいと親に言われ、ワセダを選びました。

井戸 進学校に進んだのは、勉強と部活どちらも頑張りたいと思って入りました。その両立を果たせたという証とこれからも両立が頑張るという意味を含めて、ワセダならそれができると思いました。

――ワセダへの憧れはありましたか

佐藤淳 学生駅伝三冠を達成したときに山を登った猪俣英希(平23スポ卒)選手が一般受験で入学し、下から這い上がってきたという話を聞いて、一般でも頑張れば箱根で走れるという話を聞いて自分もできるのではないかと思っていました。

井戸 やはりワセダで一般受験で入学した選手が走るのは注目されますし、自分もそういう選手になりたくて決めました。

――受験期は練習していましたか

佐藤淳 僕は12月までは走っていました。その後は焦って勉強勉強となってしまって(笑)、そこからはあんまり練習はできませんでした。本当は練習を挟みながらいきたかったんですが…。

井戸 全体の練習はかなり減らしたんですが、2月に地元の駅伝に市の代表で出場してくれと言われ、一番短い区間を走りました。それまではもちろん強度はかなり落としていましたが、練習を挟みながらでした。

――入学直後、練習にはついていけましたか

佐藤淳 受験で2か月ぐらい(練習が)空いていて、合格した後に練習について行けなかったらどうしようとの思いから、焦って練習してしまいケガしてしまいました。そこからは焦らずゆっくりやろうと思っていました。

井戸 最初はジョグとかばかりだったので、ある程度練習しといたほうがいいなと思いながらやっていました。実際、朝のペース走とかに参加しだすと、付いていくのはきつかったです。

――そのブランクから抜け出したのはいつ頃でしたか

佐藤淳 夏合宿頃から上のチームでやれるようになり、そこからは段々走れるようになりました。CチームからBチームに上がり、上級生の方々とも一緒にポイント練習とかでくらいついて行けて、ちょっと大学の練習にも体も慣れてきたかなと感じ始めました。

井戸 6月の日体大記録会が終わったあとにBチームに上がって、そこから練習で走れてきているのではないかという感覚が出てきました。一番大きかったのは、岩手合宿でAチームを含めて全員で同じメニューをやった際に、かなり走れるようになっていた時ですね。

――合宿がターニングポイントになったということですか

佐藤淳 合宿をこんなに長い期間やったことも高校時代なかったので、体はきつかったですが、自分のなかで走りこめたと感じました。あと、練習もあまり離れずに、しっかり(先頭に)付けるようになったので、そこでちょっとは変われたのかなと感じました。

――AチームとBチームの練習では違いを感じますか

佐藤淳 ちょっとの間Aチームでやらせてもらいましたが、雰囲気といいますか、緊張感とが違います。一番上でやっているんだという自覚もあるので、簡単に諦めたり、離れたりしてはダメだと感じました。メニュー自体はそんなに変わらないですか、周りの雰囲気が全然違いますね。

井戸 僕はBチームにいる間は8割方ぐらいの力でこなせていたのが、Aチームではメニューによっては全力を出さないといけないキツさを感じました。

――夏合宿で相楽豊長距離コーチ(平15人卒=福島・安積)から調子の良い選手にお二人の名前が挙がっていました。首脳陣からの期待感などは感じますか

佐藤淳 たぶん相楽コーチや渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)も(僕が)スポーツ推薦ではない分、過度な期待はしてくれていないと思います。ただ逆にこっちもプレッシャーなく、伸び伸びとできているのかなとは感じます。結構スポーツ推薦はいろいろ言われているので、僕らはその点気楽っちゃ気楽ですね。

井戸 別に直接「期待している」だとか、「できるんじゃないか」と言われたことはないですね。僕は授業の関係から一人でポイント練習などをすることが多くて、その時にメニューの量が減らなかったりすると、ある意味期待の裏返しなのかなと思ったりします(笑)。

――井戸選手は商学部ということで毎日早稲田まで行くのは大変ですか

井戸 行くのが本当に大変です。筆記のテストは大丈夫なんですけど…。

佐藤淳 僕は所沢で、空きコマも結構あるので、全然楽です(笑)。本キャン生に比べれば、朝練もしなくていいですし、移動時間もなく部屋でゆっくりできるので、(本キャン生は)大変だなあといつも見ています。

井戸 空きコマに寝るという現実がありえないですね(笑)。

――スポーツ科学部には競走部の選手が多く在籍しますが一緒に授業を受けたりされますか

佐藤淳 そうですね、なので本当に僕、競走部にしか友達がいないです(笑)。

井戸 商学部には臼田(康一郎、商1=長野・佐久長聖)というやつがいまして。そいつが僕を頼りにして、いつも「助けて、助けて」と僕に言ってきますね。助け合われた記憶はないですね。

一同 笑

井戸 こっちが何かを教えてあげたら、「ありがとう!」と言って去ってしまい、同じ授業を取っても、彼は知らない間に休み続けるという感じです(笑)。

――ほかに仲のいい選手とかはどなたかいらっしゃいますか

佐藤淳 おまえから先いけよ(笑)。

井戸 なんでやねん!

佐藤淳 1年生は全体的に仲がいいです。

井戸 (同室で取材を受けている平和真選手(スポ1=愛知・豊川工)、武田凜太郎選手(スポ1=東京・早実)を指差して)気づいたら彼ら二人が僕の部屋で遊んでいたりします(笑)。僕の部屋にゲームキューブがあるんですが、彼ら二人がスマブラとかが好きで。平が「スマ~」とか言って入ってきて、知らない間にもう一人いて(笑)。僕のお菓子食べながら、荒らすだけ荒らして去っていきます。

――1年生は食事当番などあり、大変だと伺いますが

佐藤淳 朝が早すぎて、やばいです。

井戸 かなりしんどいですね。平日と休日の当番はかなりウエイトが違って、遊びに行けなくなってしまうので、そこは休日の当番決めのじゃんけんは勝負です。

――4年生にはどういった印象を持っていますか

佐藤淳 田中さんが入寮したての頃に話しかけてくださったりしました。寮内でも優しくしてくれて、たまに絡んでくれたりもします。でも練習になると、垂れたりするとアドバイスしてくださったりするので、メリハリがつけられて頼りになる先輩です。

――合宿でも田中選手がBチームを引っ張っていましたね

佐藤淳 4年生が引っ張るという風潮があるので。僕らは1年生なので後ろからついていくだけですが、4年生自体が少ないので、そこは田中さんがいつも引っ張ってくれています。

井戸 引っ張る分だけある意味強いという証拠なので、誰も文句を言わずにその人についていくというのは、その人の強さこそだと思います。やっぱりすごい人だと思います。

好対照の前哨戦

集中練習でも好調ぶりをうかがわせている井戸

――井戸選手は全日本出走が決まったときどう思いましたか

井戸 最初はすごく嬉しかったですが、実際優勝を目指すチームでこれまで駅伝を走ったことがなかったので、いざ雰囲気に立ってみると緊張した部分が多かったです。

――タスキをもらった瞬間は

井戸 タスキを貰って走り出したら、ある程度吹っ切れたのですが、高田さん(康暉、スポ2=鹿児島実)が見え始めてから来るまでが、すごく緊張して大変でした。来るまではすごく短かったですが、すごく緊張した一瞬でした。

――改めてレースを振り返ってください

井戸 最初はちょっと飛ばして入るつもりが、結果的には前半を抑えた走りで、後半を持たせる走りになってしましました。全体的には良かったですが、レースプラン的には、前半から突っ込み気味で入る予定でした。後ろから来た明治の選手に30秒くらいを詰められ追いつかれていたので、ここで抜かれてタスキを渡したらマズイなというのが率直に頭の中にありました(笑)。そこは田中さん(鴻佑、法4=京都・洛南)が見えたので、最後は頑張ってスパートしました。

――田中選手が見えたときはホッとしましたか

井戸 やっぱりホッとしましたね。

――佐藤淳選手は出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)、全日本とエントリーされながら出走できずとなりましたが

佐藤淳 そもそも出雲は主力の先輩たちの故障でたまたま入ったような形だったので、今の力ではエントリーが精一杯だったかなと思います。全日本は監督からは井戸と僕で悩んだと言われましたが、学内で行われた5000メートルと1万メートルのタイムトライアルどちらでも負けてしまって、それが決め手となって井戸が選ばれたので、率直に実力がなかったのだと感じています。

――外れた時は悔しかったですか

佐藤淳 そうですね。夏までは一緒にやっていたので。

――上尾シティマラソン(上尾)で井戸選手は62分台の好記録を叩き出しました

井戸 前半からありがたいことにスローペースで入ってくれて、それを利用してひたすら走りました。15キロまでは先頭集団にいて、そこから前のペースが上がりました。そこから離れてしまったのですが、なんとか上げて第2集団には追いつけました。でも、ラスト1キロでバテてしまって、(62分台は)無理かなと思って、時計見たら62分59秒だったので、ラッキーと思っていました(笑)。

――他大の主力選手も多く出場する大会でしたが

井戸 もともと届かないところだとは思っていたので、走ってみたら意外と近いのではないかと感じました。そんなに意識して走っていたわけではありませんでした。追いかける立場として落ち着いて走れたとは思います。

――全日本、上尾と走ってみて感じたことはなんですか

井戸 全日本はまだまだ自分のレースが組み立てられない弱さを感じました。上尾ではラスト1キロは田中さんの前にいたのですが、抜かれてしまって。ラスト1キロを走りきれないのは気持ちが足りないのかなと思いました。

――ラストスパートにはどういった意識をもっていますか

井戸 1万メートルぐらいの距離だったらラストスパートをかけられる自身はありますが、20キロでは完全に疲れてしまって、最後はダラダラとした感じになってしまいました。

――佐藤淳選手は途中棄権という形になってしまいましたが

佐藤淳 上尾の4日ぐらい前から足に違和感がありましたが、上尾は大事だぞとずっと言われてきたので、走りたいと思って練習を継続していました。最後の仕上げの練習も調子良く、体もかなり動いていたのですが、その次の日にいきなり痛みが来た感じでした。本当に直前で、気の迷いもあり、あんまり監督などに相談できないままレースには出場しましたが、やはり痛くなってしまい10キロ辺りでやめました。

――上尾シティマラソンは重要性の高い大会ですか

佐藤淳 監督にも大事な選考になると言われています。集中練習などでも考慮するが、まず上尾でしっかりと走らないと意味がないよといわれていたので、走りたかったです。

――集中練習が始まって4日目、ここまではいかがですか

井戸 いやあキツいですね(笑)。走る距離が長いですし。ペース自体は今のところはなんとかいけるんじゃないかというぐらいなのですが、距離が長くて。毎回走るたびに、「まだなんぼあるのか」と考えながら走っちゃいますね(笑)。

――具体的にどれくらい走るのですか

井戸 初日からまず30キロ走をやりました。もう本当に合宿と変わりません(笑)。

――自らの持ち味を教えてください

井戸 長い距離にあまり不安を感じていないところです。あとはラストさえ上手くいけば、一定のペースで保ちながら、最後で勝負できるというのが持ち味です。

佐藤淳 自分の中では、苦しくなってから粘れるところです。後半キツくなっても大崩しないところだと思います。

「4年生でゴールテープを切りたい」

箱根エントリー入りはならなかったものの、来季以降が楽しみな佐藤

――箱根にはどういった印象を持っていますか

井戸 憧れはすごくありましたが、一般入試で入ったこともあり、入学直後はまだ遠い存在でしかありませんでした。実際、全日本と上尾と走ってみて、やっと近づいてきたかなと率直に感じています。

佐藤淳 今はどうなるか分かりませんが、夏は調子が良くてレベルアップもできていたので、しっかりとちょっとは争いに加われるかなと思っていました。今はこういう状態ですが、チャンスがあれば、上級生や速い同期達に刺激を与えられるような存在になりたいです。

――走ってみたい区間などありますか

井戸 ことし優勝できれば一番良いのですが、やっぱり自分が4年生のときに優勝するってかっこいいじゃないですか。4年生でゴールテープを切りたいみたいな願望はあります。かなり余裕でタスキをもらって、テレビにひたすら映って、最後はガッツポーズみたいなのがやりたいですね(笑)。

佐藤淳 将来的には僕は往路には向いていないと思うので、復路を走りたいですね。エースとかそんなタイプじゃないので、つなぎの区間をしっかりと役に立てればいいかなと思います。

――他大で注目している選手はいらっしゃいますか

佐藤淳 1年生だと駒大の中谷選手、西山選手です。出雲、全日本と見て、1年生でもここまでやれるのかと思いました。

井戸 僕は駒大の中谷選手は中学校の地区が同じで、一緒に走ってました。高校時代は負けたときにいつも突っかかってきて、「腹立つな」といつも思っていたので(笑)、大学では勝ちたいなと思います。

――箱根へ向けて一言ずつお願いします

佐藤淳 こんな状態なのでどうなるかは分かりませんが、チャンスがあれば、チームは春からずっと箱根は優勝を目標にしているのでどんな形でもチームに貢献できればいいと思います。

井戸 全日本で追いつかれてしまったので、先頭でもらうのが一番良いですが、誰かに追いつきたいです。集中練習はまだ続くので分かりませんが、その中でしっかりやって、誰かに追いつく走りができればと思います。あわよくば先頭に追いつく走りを見せたいです。

ありがとうございました!

(取材・編集 井上義之)

箱根への意気込みを語っていただきました

◆井戸浩貴(いど・こうき)(※写真左)

1994年(平6)7月10日生まれのAB型。171センチ、58キロ。兵庫・龍野高出身。商学部1年。井戸選手の在籍する商学部の授業は英語のプレゼンテーションなどが頻繁にあるようで、それが苦手な井戸選手は「なんでこんな人前で話さなきゃならないんだろう」と思いながら生活しているそうです。

◆佐藤淳(さとう・じゅん)(※写真右)

1994年(平6)4月12日生まれのO型。168センチ、45キロ。愛知・明和高出身。スポーツ科学部スポーツ科学科1年。残念ながら1次エントリーから漏れてしまい、今季の箱根出走がなくなってしまった佐藤選手。早くケガを治して、また来年、元気な姿を見せてほしいです!