今年の『漢』は日野がつかんだ! 大幅自己新でチームを勢いづける走りに

陸上競技

第7回早大競技会・2024漢祭り 12月27日 埼玉・織田幹雄記念陸上競技場

  東京箱根間往復大学駅伝(箱根)まで残り6日と迫ったこの日。『漢祭り』の愛称で親しまれる大みそか恒例の早大競技会が、今年は一足先に開催された。箱根のエントリーメンバーに入ることのできなかった選手たちが5000メートル、1万メートルに出走。1万メートル最終組では、日野斗馬(商4=愛媛・松山東)が自己記録を51秒更新し、2024年の『漢』に輝いた。

 1万メートルでは、2組に宮本優希(人2=智辯学園和歌山 )と佐藤広人(創理1=埼玉・早大本庄)が出場。2人は国学院大の選手が引っ張る26人の大きな集団中央でレースを展開した。3200メートル手前で、集団が2つに分かれると、先頭についていったのは佐藤。先頭集団の後方で競り合い続ける。遅れた宮本も、3人で第2集団をつくり、必死に前を追った。 5000メートルを先頭が14分37秒で通過すると、先頭集団から佐藤が脱落。両者ともに大きく引き離されるが小さな集団を引っ張り、前との差を詰めにかかる。残り2000メートルでは集団がばらけ、苦しい単独走になったが、宮本がペースを上げ、 佐藤を抜き去り、組16着となる30分17秒06でフィニッシュした。

集団を引っ張る宮本

 そして、1万メートル3組には日野、伊藤幸太郎(スポ3=埼玉・春日部)、小平敦之(政経2=東京・早実)が出場。『漢』を懸けて、本競技会に早大から出場している唯一の4年生と、エントリーメンバー選出の当落線上にいた選手たちによる、寒さを吹き飛ばす熱いレースが繰り広げられた。スタート直後、外国人選手がハイペースで引っ張ると、3人は第2集団の中央に位置取る。最初の1000メートルと次の1000メートルを2分52秒と、一定のペースでレースが展開された。4000メートル手前で先頭近くに立ったのは昨年『漢』を逃した伊藤幸。徐々に上がるペースに日野と小平も懸命についていく。しかし、5000メートルを過ぎると、伊藤幸は後退し、大きく離されてしまう。7000メートル付近では先頭と200メートル離れて、単独走に。その後ろで集団を1つずつ抜き去り、迫ってきたのは日野だ。日野は「4年生として(早大内で)トップを取りたかったので、(伊藤幸が)近づいてきてより力が出た」という。そう語る日野は厳しい表情を浮かべながらも、魂のラストスパートを見せ、目標の早大トップでフィニッシュ。自己記録を51秒更新する29分48秒77で2024年の『漢』を獲得した。

 「4年生として、絶対いい走りを見せたい」という思いで挑み、最後に自己記録を大幅に更新した日野。仲間からのいつも通りの「頑張れ」と、「4年間の最後を出そう」、「4年間の思いを出し切れ」というレース中にかけられた特別な言葉が力になったという。日野はケガや貧血に悩み、思うようにいかなかった大学での陸上生活を「何物にも代え難い4年間」だと振り返る。4年目の冬に駆け抜けたかった場所はここではなかったかもしれない。しかし、努力を重ねてきた競技場で、最後に最高の輝きを放ち、笑顔でラストランを飾った。日野の走りが間違いなくエントリーメンバーを勢いづけたことだろう。

レース後に撮影に応じる日野(写真左から4番目)と4年生

 5000メートル3組に出場したのは立迫大徳(スポ1=鹿児島城西)。1000メートル過ぎに集団が二分されると、第1集団の中央で2分50秒前後の安定したペースを刻む。ペースを保ったまま、3000メートルを8分29秒で通過したが、後ろについていた選手に抜かれていき、3400 メートル以降は集団から完全に大きく離れてしまう。 終盤は険しい表情も見られたが、最後は渾身のラストスパートをかけ、14分29秒61でゴールした。5000メートル2組には安江悠登(法2=埼玉・西武学園文理)が出場した。レース序盤は15人から成る集団の中央に位置取り、駿河台大の選手らがつくるリズムに乗って様子をうかがった。3000メートルを8分43秒で通過すると、スピードを着々と上げ3番目につける。しかし、周りが反応しペースを上げると、ついていくことができず失速。先頭からは大きく離されていったものの、力を振り絞って走り切り、わずかながらに自己記録を更新した。

レースを走る立迫

 5000メートル1組には大和田春(スポ1=高知追手前)、舩生颯太(先理1=静岡・韮山)、栗原周平(創理2=栃木・真岡)の3人が出場。スタート直後に飛び出した大和田を先頭に、序盤レースは進められた。縦長の集団が形成され、舩生と栗原は集団後方でペースを刻む。なかなか全体のペースが上がらないものの、2800メートルを過ぎると、徐々に集団が2つに分かれ始める。先頭集団からこぼれてしまった栗原は第2集団を引っ張り、ペースアップを図るも、前との差を詰められず中盤以降苦しい走りに。一方の第1集団では大和田が前方で城西大の3人の選手に食らいつき、粘りを見せる。スローペースで推移してきたレースが動いたのは4200メートル。城西大の選手が一気にペースを上げると、他の選手もペースアップし猛追。先頭集団から離れかけた舩生もラスト1周で大和田に迫るスパートをかけたが、大和田がそのまま逃げ切り14分54秒23の早大トップでフィニッシュした。

集団の中でレースを進める大和田

 日野を含め3人が自己記録を更新した今年の『漢祭り』。箱根のエントリーメンバー入りが叶わなかった選手たちが、選ばれた16人を勇気づける走りを見せ、今年のレースを締めくくった。箱根まで残り6日。総合3位以内を「みんなで」勝ち取る日はもうまもなくだ。

(記事 佐藤結、写真 草間日陽里、植村皓大、早崎静、會川実佑)

結果

▽男子5000メートル

大和田春(スポ1=高知追手前)  14分54秒23 (1組6着)

舩生颯太(先理1=静岡・韮山)  14分58秒60 (1組8着)

栗原周平(創理2=栃木・真岡)  15分12秒65 (1組12着)

安江悠登(法2=埼玉・西武学園文理)  14分49秒20 (2組7着)自己新

立迫大徳(スポ1=鹿児島城西)  14分49秒20 (3組11着)

川端春叶(スポ2=北海道・北見北斗)  DNS

鈴木翔瑛(人1=群馬・富岡)  DNS

▽男子1万メートル

宮本優希(人2=智辯学園和歌山 )  30分17秒06 (2組16着)

佐藤広人(創理1=埼玉・早大本庄)  30分23秒36 (2組19着)

日野斗馬(商4=愛媛・松山東)  29分48秒77 (3組16着)自己新

小平敦之(政経2=東京・早実)  30分04秒55 (3組22着)自己新

伊藤幸太郎(スポ3=埼玉・春日部)  30分08秒18 (3組23着)

武田知典(法2=東京・早実)  DNS

選手インタビュー

日野斗馬(商4=愛媛・松山東)

――今日のレースにかけた思いを教えてください

 タイム的な目標を立ててしまうと、失敗することが多かったので、目標は立てませんでした。直前の早スポさんの特集でも、竣平(山口竣平、スポ1=長野・佐久長聖)や智規(山口智規、スポ3=福島・学法石川)を始めとする下級生が4年生のためにという言葉を言ってくれました。4年生として、ここでしっかりした走りを見せないと、こいつのために頑張ろうとは思ってくれないと思います。ですので、絶対いい走りを見せたいという思いで臨みました。

――12月10日にエントリーから外れた中で、どのような思いで練習を積んできましたか

 (外れたことは)競技者として悔しいところではあったのですけど、自分の中で箱根に向けてやれることはやってきたうえでの(エントリー外という)結果でした。ただ僕にも4年生としてできる仕事はまだあったので、チームに一つでもいい勢いを作れればいいなという思いでここまでやってきました。

――いい流れを持ってこられたのではないでしょうか

 多少はできたと思います(笑)。

――メンバーからレース前にはどのような言葉をかけられましたか

 いつも通り、「頑張れ」でした。

――どのようなレースプランでレースに臨まれましたか

 先頭のペース設定が28分40秒ということは聞いていました。自分の力からすると速かったので、ばらけた時に後半上げていければと考えていました。大方予想通りのレース展開でした。

――中盤以降、前を行く伊藤幸太郎(スポ3=埼玉・春日部)選手が近づく展開でした

 4年生として(早大内で)トップを取りたかったので、近づいてきてより力が出ました。

――早大内トップ、自己記録を更新されましたが振り返っていかがですか

 タイム自体は正直20秒、30秒上回ればうれしいなというところではありました。順位としては、4年生としての意地を見せることができたと思います。この勢いが箱根に向かってつながればいいと思います。(順位に関しては)結構満足しています。

――レース中に掛けられた言葉で印象的なものはありますか

 普通の「頑張れ」もうれしかったですが、「4年間の最後を出そう」や「4年間の思いを出し切れ」という言葉は、頑張らなくてはいけないと思わせてくれました。

――最後に箱根駅伝を走るメンバーに向けてエールをお願いします

 強いメンバーがそろっていて、僕がいる4年間では一番いいチーム状態になっていると思います。あとは自信をもって3位以内を目指して走ってほしいですし、僕も精一杯サポートをして、みんなで勝ち取れたらなと思います。