トラックでは自己新を連発し、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では初出走を果たすなど充実したシーズンを送っている菅野雄太(教3=埼玉・西武学園文理)。しかし、全日本の結果には悔しさをあらわにした。今回2度目となる東京箱根間往復大学駅伝(箱根)出走へ向けて、目標や意気込みを伺った。
※この取材は12月13日に行われたものです。
「90点」のトラックシーズン
関東学生対校選手権(関カレ)のハーフマラソンを走る菅野
――トラックシーズンの目標を教えてください
今年は昨年よりもスピードをつけていかなければならないと思っていたので、5000メートルと1万メートルでそれぞれ自己ベストを大幅に更新するという目標を立てていました。
――実際に4月に5000メートルと1万メートルの自己ベストを立て続けに更新されましたが、練習で意識していたことはありますか
トラックシーズンは絶対にスピードが重要となってくるので、練習後に流しを結構取り入れていました。
――そのような取り組みが自己ベストの更新につながったと感じていますか
練習後の疲労がある状態での流しというのは、(レース)後半の乳酸が溜まってきた中でもある程度の出力を出せるというところにつながったので、そういう面で特にトラックに生きたと思います。
――5月の関東学生対校選手権(関カレ)のハーフマラソンでは入賞に迫る走りを見せましたが、レースを振り返っていがですか
ひとつ詰めが甘かったかなというのがあります。8位の集団が思ったよりも遅くて、後ろの集団に追いつかれる可能性があったので、焦って自分でペースを上げて作ったのですが、それ相応の走力はなかったです。自分の現状分析をもう少し事前にしてレースプランをいろいろ考えておくべきだったと思いました。
――ご自身のトラックシーズンの満足度はどれくらいですか
目標としていた5000メートルと1万メートルの自己ベスト更新を達成できたので、90点くらいだと思います。一方で、5000メートルではあと6秒くらいのところで13分台を逃したり、1万メートルでも思ったほどのタイムが出なかったりしたのは、満足しきれなかった部分です。
――トラックシーズンで得られた収穫や課題はありますか
流しを練習に取り入れたことで切り替える力が養われて、レガシーハーフなどのロードでも生きていると思うので、切り替え力の向上が収穫だと思います。課題としては、他大の選手と比較して、勝ち切る力がまだないと思っています。ペースの変化に弱いタイプで、それがトラックレースにも現れてしまったので、他大と勝負していく上でそういう揺さぶりにも対応できるようになればより良いかなと思います。
――続いて、夏合宿について伺います。夏合宿の目標はどのように定めていましたか
余裕を持って練習を完遂するという目標を定めていました。
――練習の消化率はどれくらいでしたか
95パーセントくらいです。1回距離走を中殿筋のエラーで抜けたことはありましたが、それ以外は基本的に余裕を持って練習を完遂できました。
――練習メニューをこなすにあたって意識していたことはありますか
睡眠はかなり重要視していました。やはり授業期間だと十分に睡眠をとれない日が続くときがありますが、合宿中はうまく時間を使えば寝られる環境にあると思っていたので、平均7時間くらいは寝るようにしていました。
――夏合宿で得られたことはありましたか
昨年よりもはるかにベースは上がっていると感じました。練習メニューは昨年と同じような感じでしたが、設定タイムが昨年よりもだいぶ速いところで余裕を持ってこなせたことを踏まえると、昨年よりはるかにベースアップできていると思います。
――合宿後、10月の東京レガシーハーフでは自己ベストを更新されましたが、手応えはありましたか
手応えがあったというよりは、自己ベストが出てしまったという感じで正直自分でも予想していなかったです。レガシーハーフの2週間前に高熱を出してしまい、直前の練習もきつい状況だったので、セカンドベストぐらいを狙えればいいと思っていたので、そういう背景も踏まえて記録が出ちゃったという印象が強いです。
「悔しさが残る」全日本
全日本のレースを走る菅野
――駅伝シーズンについて伺います。まず初戦の出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)ではチームエントリーされましたが出走とはなりませんでした。当時はどのような心境でしたか
夏合宿の消化率的に言えば、 走っても大崩れはしないという思いはありました。ただ、先ほども申し上げたように出雲の直前に体調を崩してしまったので、出走できないことはある程度割り切って今後に繋がる準備、例えば、レガシーハーフに向けてなどにしっかり焦点を当てていこうという心境になりました。
――チーム順位としては6位という結果になりましたが、その結果を見てどのように感じましたか
チーム順位としては目標が3位だったこともあって、かなり悔しいものではありました。ただ、長屋(匡起、スポ1=長野・佐久長聖)含めルーキーがしっかり走れたことなど、結構収穫もあったと思います。
――全日本では初の出走となりましたが、出走が決まったのはどのくらいの時期でしたか
全日本の出走が決まったのは4日前ぐらいだったと思います。 花田さんは結構直前の調子までしっかり見て決める人なので、直前まで調子を上げ続けたことが出走に繋がったと思います。
――ご自身の全日本での走りを振り返っていかがですか
一言で言うと非常に悔しさが残る走りだったと思います。やはり4区以降少し流れが低調な状態で来てしまい、自分自身の崩れないという特徴を生かして、しっかり悪い流れを断ち切っていい流れとはいかなくても流れを中和するぐらいの仕事はしたいと思っていました。しかし、結局前を追うという思いでレースに臨んだにも関わらず、レースが始まってからやはりシード圏のボーダーっていうのが本当に真後ろにあって。その恐怖心で本当に弱気になってしまって守りの走りしかできず、そういった点でとても悔しさが残るレースだったとは思います。また、レガシーハーフから期間が近かったこともあり、走り込みの面でもあまりできておらずもう少ししっかり準備しておきたかったっていう思いもありました。悔しさが非常に残っています。
――チームとしての最終結果はシード権外の順位となりましたがこの結果をどのように受け止めていますか
本当に先ほどから悔しい悔しいと言っているのですが、もうその通りで悔しい結果かなとは思います。やはりアクシデントはあったにしても、前半本当に上位で繋いできて中盤区間で自分含め、結構順位を落としてしまった面があるので、総合的に見て崩れない走りがチーム全体としてできていればアクシデントあってもシード権内に入れた可能性もあったと考えると自分含め全体的に悔しさが残る大会だったと思います。
――それでは、今シーズンのこれまでについて振り返っていきます。まず、今シーズンを通してご自身の出来についてどのように感じていますか
点数つけるとすれば75点ぐらいだと思います。全日本が終わって数週間経ってから現在にかけては調子をすごく上げてきましたが、やはり体調不良があったという面などで自己管理がしっかりできていなかったと思います。また、その体調不良を受けて焦って練習に臨んでしまったというところも良くなかったと思います。そして疲労のコントロールも、うまくいかなかったと思っていて、レガシーハーフから全日本の連戦を受けて、全日本の後2、3週間調子を落としてしまったということもあったのでそういった点に関して、現在は調子がいいですが、高い点はつけられないと思います。
――今シーズン特に成長できたと思う点はありますか
成長できた点としては単純に体の土台が非常にしっかりしてきたと思います。走り込みの量も昨年よりもかなりできています。また、全日本後からは今まで課題に感じていたものの大会が近かったり合宿中だったりしてあまり手を出せなかったウエイトトレーニングを本格的にやり始めました。1カ月ぐらい継続して推進力だったり、走りの安定感だったりがすごく出てきたというのは、自他共に感じています。そういった点で、体の土台は昨年度と比べて非常に成長できた点だと思います。
――ここからは、箱根に向けての質問をしていきます。箱根まで1カ月を切りましたが現在の調子はいかがですか
現在の調子としましては、今年度で1番良いというくらい、非常に好調です。練習の強度なども12月に入って上がってきているのですが、先ほど申し上げたように、土台がしっかりしてきたので練習を安定して結構余裕を残して消化できているという印象はあります。設定タイムも昨年よりか上がった練習もあるので、年間通して見ても、特に今の調子は上がっていると思います。
――昨年箱根初出走となりましたが、一度経験したことで箱根への印象は変化しましたか。
プレッシャーという点で考えた時に、少しハードルが下がったと思います。やはり初めて走るのと1回経験しているのでは全然プレッシャーも変わってくると思うので、そういったことを踏まえると、もし今年走ることになった場合は自分の走りを昨年よりも出していけるような環境にあるのではないかと思います。
――全日本の後に箱根に向けて距離を踏みたいとおっしゃっていましたが、ここまでいかがですか。
全日本の後はかなり距離を順調に踏めているかなと思います。授業の関係で、一部練になってしまう日とかもありますがそのような日もロングにしてみるなど自分で習慣の練習スケジュールみたいなものを立ててうまくやりくりしています。また日曜日にロングのメニューを出されることが多いのですが、ノルマよりも5キロぐらい多く走ることもあり、非常に走り込みとしては順調に行っていますし、結果としてスタミナ面も強化されて距離走のような練習にも余裕が出てきていて良い循環になっていると思います。
――ここまで良い練習が積めているという菅野選手ですが、チーム内で意識している選手はいますか
チーム内で意識しているのは、やはり同じく一般組で同じように長い距離に強い伊福(陽太、政経3=京都・洛南)になります。伊福の練習を見ているとロードでやるメニューや、最近ではトラックなのですが、本当に絶対的な強さを感じることが多いです。箱根で戦っていく上で切磋琢磨していく中ではあるので、伊福をすごく意識しています。
――では、他大学の選手で意識している選手はいますか
国学院大の佐藤快成選手を非常に意識しています。同じ埼玉県の高校から来ているということで、高校駅伝で何回か同じ区間を走ったのですが、その時は1分以上の差をつけられてボロ負けでした。ただ昨年箱根の10区で対戦した時は、少し差を詰めることができていて、このまま在学中にしっかりリベンジ果たせれば良いと考えている選手です。また、佐藤選手はロードに強いこともあり、意識しています。
――箱根の事後対談では次の箱根駅伝でもまた10区を走りたいということでしたが、その気持ちは今も変わっていませんか
はい、変わっていないです。昨年のリベンジもありますし、ゴールテープを切る際の達成感や、応援の圧力が本当にすごくて。応援が力になっている感じがする感覚は10区ならではのものだと思っていて、それを本当に魅力に感じているので10区は走りたいと思っています。
――昨年の箱根での走りと比べて特に成長したい点はありますか
昨年の展開としては、国学院大の佐藤選手と同時にタスキをもらって、向こうはつっこんだのに対してこちらは抑えて守りに入ってしまった部分がありました。それがやはり国学院大が4位まで浮上できて早稲田大学が6位に停滞してしまった決め手になってしまったと思っています。昨年度と比べて、攻めるレース展開も視野に入れた上で、レースプランの引き出しを増やしていきたいと思っています。
――箱根で達成したい個人としての目標はありますか
個人としての目標は、もし出走となった場合、任された区間で区間5位以内に入ることです。総合で5番というところを狙うには、どの区間もやはり安定して区間1桁、上位を取っていかないと厳しいと思っています。チーム順位には貢献したいと思っているので、区間5位以内を個人の目標としています。
――それでは最後に、箱根に向けての意気込みを教えてください
個人としてもチームとしても昨年よりももっと良い順位を取っていきたいと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 會川実佑、沼澤泰平)
◆菅野雄太(かんの・ゆうた)
2002(平14)年5月7日生まれ。165センチ。埼玉・西武学園文理出身。教育学部3年。レース前に音楽を聴いてテンションを上げているという菅野選手。クラシック音楽がお気に入りだそうです!