10月7日と8日に東京・国立競技場で開催された日本選手権リレー。この大会は、4年生の集大成となった。男子4×100メートルリレーでは、予選、ともに慶大に後塵を拝し2位に。また、連覇を狙った男子4×400メートルリレーでは、決勝で大会新記録のタイムで駆け抜けたものの、第3位に終わり、リレーの難しさを感じさせる大会となった。これまで、リレーを引っ張ってきた4年生と挑む最後の大会で感じた悔しさと、4年生と過ごした時間を、来年以降の糧にできるか。3年生以下のさらなる躍進にも期待だ。ここでは、本大会に出場した4年生の戦いを終えた声をお届けする。
(取材・写真 加藤志保、堀内まさみ、松平将太朗、飯田諒、草間日陽里、近藤翔太、髙杉菜々子、戸祭華子)
稲毛碧(スポ4=新潟・東京学館新潟)
力走する稲毛
――今大会の目標は
何度も銀や銅ばかりだったので、一番高い金メダルを取ろうということで、目標では金でしたね。金を狙いにいって、あわよくば学生記録というところでした。
――予選、決勝を総括していかがですか
1走、2走でうまく流れを作れなかったというのが正直なところです。何で慶應に負けたかと言われれば、そこなので。自分たちの走力不足というのもありますが、1走の先行逃げ切りのほうが有利に進められるというのは分かっていたのですが、戦略を組み立てられなかった、勝ちパターンにうまく持っていけなかったのが敗因かなと思います。
――予選と決勝のそれぞれを詳しく振り返っていかがですか
予選ではあまりにも僕のコンディションが整っていなかったという感じです。トレーナーさんと話して、緊張感持ってレースに臨むというのをまず(決勝での)目標にしました。予選ではリズムがゆっくりとした走りになってしまったので、そこをうまく修正して、(決勝では)コンパクトにまとめつつ、脚の回転を早くするイメージで取り組みました。(決勝では)昨日よりかはうまく改善できたというのが、僕の中の2走の中の収穫です。
――予選、決勝ともに慶大に1着を譲る結果になりました。その点に関しては
確実に力不足でもありますが、予選からの組み立て方がうまくいかなかったなと。予選でもいい流れ、決勝でもいい流れという流れが作れなかったというのが予選でも決勝でも慶應に負けた理由だと思います。
――早大でのラストエンジでのレースとなりました。4年間を振り返っていかがですか
遅い方のタイムで入部した中で、自分を一番伸ばしてくれたのはエンジだなと思います。エンジに感謝しています。僕は運もあって4年間エンジを着れる機会があったので、エンジに対して恵まれていたなと終わってみて思います。後悔はいろいろありますが、エンジに対しての悔いはない4年間だったと思います。
西裕大(教4=埼玉・栄東)
レース後、スタンドにいる部員の声援に応える西裕
――4×100メートルリレー(4継)の結果を率直に振り返っていかがですか
悔しいですし、リレーって難しいです。予選はガタガタの(バトンパスで)3着抜けで、自分たちがきれいなバトンパスをすれば優勝できると思っていたのですけど純粋にその上をいかれてしまいました。
――自分たちの走りについてはいかがですか
今できる限りのことはできました。ただケガ人がいたり調子が上がり切らないメンバーがいたりで。リレーは100パーセントでは勝てなくて、120パーセントを出して初めて勝てる種目だと思っています。それが90パーセントや80パーセントだったらどれだけ地力があっても勝てないと感じました。
――予選を振り返っていかがですか
ボロボロでしたね、過去最悪だったと思います。1、2走で詰まって2、3走でバトンが流れて3、4走で早出して。バトンパスは散々でしたけど、あれで予選を突破できるということは個々の力が今シーズンの始めと比べたら上がってきたのかなと思いました。
――ミスが出たのは、バトンパスのやり方を変えたなどの要因があったのですか
特にないですね。練習不足です。井上(直紀、スポ2=群馬・高崎)がケガで出られないと分かった段階で全カレ(日本学生対校選手権)からメンバーも走順も固定していったので、全カレ後から練度を上げ切った慶大と上げ切れなかった僕らの差だと思います。
――決勝までにバトンパスやメンタル面で変えたことはありますか
いつも言っていることですが1位でなくてはいけないので。もし攻めたバトンをして通らなくて負けたらしようがないという気持ちで思い切り出ようとは話していました。とはいってもミスをしていいわけではなくて、出し切って1位をとろうと考えていました。
――続いて決勝のレース内容をチーム全体として振り返ってください
正直1、2走の時点で勝敗が決まりかけていたと思います。それでも3、4走で慶大を詰め切れなかったというのが敗因です。
――ご自身の走りはいかがですか
調子はすごくよかったです。体も昨日から動いていましたし、正直この会場の中で自分が一番速いという確信がありました。だからどのような差で来ても抜くという気持ちでいましたが、抜けなかったです。
――4×400メートルリレー(マイル)決勝について伺います。本日2レース目となりましたが疲労などはありましたか
そこまでなかったです。というのも関カレ(関東学生対校選手権)や全カレのマイルの決勝が基本的に最終日に行うので、今までは200の準決勝や決勝後に疲労困憊で走っていました。今回は4継だけだったので体はフレッシュでした。過去最高のコンディションでマイルに臨めました。
――実際走ってみていかがでしたか
いつもは始まる前から疲労困憊なのに、今日は体が動くなと(笑)。自分のとこで差をつくるオーダーだったのでそれができてよかったです。ラップも45秒08の大幅なベストだったので、自分としては会心の走りができたと思います。
――チーム全体としてはどのように振り返りますか
竹内(彰基、スポ4=愛知・瑞陵)に残せるリードが少なかったです。正直あのリードだと今泉選手(筑波大)は厳しいです。1、2、3走でもっとリードをつくるべきでそれができなかったせいで負けたと思います。
――結果についてはいかがですか
3番ということでやはり勝ちたかったです。リレーは結局勝てなかったので。去年はリレーで負けて悔しくて、悔しくて仕方がなかったのですけど今年は納得感があるというか自分の力を出し切って2位、3位という結果だったので楽しかったです。
――最後に早大で走った4年間はどんな時間でしたか
一言で言えば最高でした。メンバーは、マイル新上(健太、人4=東京・早実)は附属校、竹内はセンター入試利用、僕は一般で、4継の杜真寿(千田、スポ3=茨城キリスト教学園)は自己推薦で入ってきたように、早大は陸上エリートが集まるチームではないと思っています。それがすごいというわけではなくて、スポーツで入ってきた人もいれば、勉強を頑張って入ってきた人、両方頑張ってうまいこと入ってきた人がいて。スポーツ推薦の力に頼り切るわけではなくて、下からはい上がってくる人がいて早大が形成されているということが如実に出たのが今日のリレーだったと思います。だからこそ早大に入れてよかったです。自分は一浪をして色々な選択肢がある中でここを選んだのですけど正解だったなと。(当時その選択をした)自分やるなと思いました。
――リレーはどんな存在でしたか
唯一のチーム競技ということで、陸上の醍醐味だと思います。今日もマイルのラップで45秒08を出そうが、4継で2枚、3枚抜こうが、自分の力では勝てない。だからこそ面白いと思います。おそらくマイルのラップタイムも4継の個人タイムも自分が一番速かったのに、それでも勝てない、そんな面白い競技がもうできないと思うと寂しいです。
――後輩に向けてコメントをお願いします。
先ほども言った通り早大は色々な人が集まってくる大学です。でもそれと同時に勝たなくてはいけない組織で優勝以外は評価されないし、たとえ実力がなかったとしても常に一位を目指さなくてはいけない。だからこそ苦しさや難しさは絶対にあるのですけど、それすらも楽しんでほしいです。こうしたプレッシャーがあって、勝つことを義務付けられている組織ってそこまで多くないです。後輩たちにはエンジを背負うプレッシャーや背負ったことで勝たなくてはいけないという義務感を持ってほしいです。そのうえで楽しめた選手が強くなると思います。
――4年間はあっという間でしたか
1年生時はがむしゃらに強くなるために頑張って。2、3年生時は先輩に着いていって先輩を勝たせるために過ごして。4年生時は後輩を強くしながら自分も強くなくてはいけなくて。常に何かに迫られた4年間でしたけど、それが楽しかったです。楽しいことはこれからもあると思いますけど、ここまで充実していることは2度とないと思います。実は今回の日本選手権リレーで目標があって。優勝もそうだし、学生記録更新もそうなのですけど、それ以上にエンジに後悔を残さないようにしたかったです。エンジを一度も着ることができずに、1回も袖を通していないユニフォームを飾っているようなエンジに後悔を残している人も中にはいて。後悔が残るか残らないは今後分かることだから、今はまだ分からないけど後悔なく終われたと思っています。
新上健太(人3=東京・早実)
力走する新上
――調子はいかがでしたか
デンカ(アスレチックスチャレンジカップ2023)である程度自分の状態というのは確認できていたので、しっかり選手権リレーに向けて合わせることはできたかなと思います。
――予選の走りを振り返っていかがでしたか
予選はとりあえず1着で通るというところをチームで目標にしていたので、眞々田が作ったリードで楽に走らせてもらった部分もあるので、しっかりと1着で通過することができ良かったのかなと思います。
――予選から決勝で修正した点はありますか
予選は前半は抑えて後半でという部分があったので、しっかり前半から行くことは考えていました。順位もそうですが、記録を狙っていたので自分の出し切れるものは全部出そうと考えていました。
――決勝の走りを振り返っていかがでしたか
僕の部分で結構詰められてしまった部分があるので、そこは悔しいですが、このチームとしてはベストではあるので、全員が出し切ったレースなのかなと思います。
――最後に、4年間を振り返っていかがでしたか
マイルを走りたいという思いでずっとやってきて、成長できた部分もあるので、最後にマイルで終わることができて良かったなと思います。
竹内彰基(スポ4=愛知・瑞陵)
レース後、モニターを見つめる竹内
――まず、3位という結果に対して率直な気持ちは
僕が1番でもらって、そのまま1番で戻って来られなかったので、優勝を目指していた分、悔しさはありますが、楽しむことはできたかなと思います。
――2日間のコンディションはいかがでしたか
全カレが終わってから徐々に調子は戻していました。疲労がある中で、タイムより順位を目指していたので、4走の役割として1番で帰ってくることを意識していました。
――予選はどのように振り返りますか
2番の人と差をつけて、1番でもらうことができた中で、決勝に繋げられるように1着で帰ってくることを意識していました。
――予選から決勝に向けて、チームとして修正したところはありますか
予選のように、前の方でレースを組んで最後まで逃げきろうという話をしていました。
――決勝の走りを改めて振り返っていかがですか
速い選手がいっぱいいるのは知っていたので、前半は楽に後半の100メートルで差をつけようと考えていましたが、自分の調子的にうまくいかなくて、3着という結果になってしまいました。
――3分4秒台というタイムに関しては
チームベストと早大歴代2位だったので、今やれることはやり切ったのかなと思います。
――ラストエンジだと思いますが、競走部での4年間を振り返っていかがですか
大1、大2と記録が出ない中で、大3でエンジを背負うことに誇りを持って走り始めましたが、今年はなかなか貢献することが難しかったのです。悔いは少しありますが、楽しく競技を終えられるのかなと思います。
川村優佳(スポ4=東京・日大桜丘)
力走する川村
――予選の振り返りをお願いします
予選は結構前半から攻めて行けたのですが、200メートル地点で先頭を取りたいと力んでしまって、もたなかったです。走りは良かったのですが、前半の力みが課題かなと思います。
――予選から決勝にかけてはその力みを改善したのですか
そうです。最初スピードは出すのですが、後半になって力みすぎないようにというのを意識しました。しかし、混戦だったので冷静な走りができなかったかなと思います。
――最初のレースプランとは少し異なったのですか
そうですね。想像よりも前に他大学の選手がたくさんいたので、想定よりは少しレースプランが違った展開になり、冷静になりきれなかったのが反省点です。
――今日のコンディションはいかがでしたか
昨日のレースで少し疲労はあったのですが、トレーナーさんが来てから、超音波やマッサージをしてもらってかなり体が動くようになったので、コンディション的には完璧な状態でした。
――早稲田記録更新を狙っていたと思うのですが、記録についてはいかがですか
4人ともタッチダウンが良くなかったですし、私と津川(瑠衣、スポ4=東京・八王子学園)のところで他大学の選手と接触があったりとアクシデントがあった中だったのですが、もう少しタイムを狙いたかったなと思います。
――レース前に監督から何か声掛けなどはありましたか
自分の走りをすることというのと、やはり予選は反省が多く出た試合だったので、しっかり1、2走で流れを作っりながら自分の走りをするようにと言われていました。
――最後となったマイルのレースの感想をお願いします
やはり最後のマイルでもう少し記録を出したかったし、メダルも取りたかったので非常に悔しい気持ちがあります。しかし、その後に山越(理子、人2=東京・富士)や清水(奈々子、文構2=北海道・札幌南)が「来年は絶対取ります」と言ってくれていたので、来年に繋がるような形でこのマイルリレーが意味を持ってくれたらいいなと思います。
――4年間を振り返って率直な感想をお願いします
正直辛いことばかりだったんですけど、一緒に頑張ってくれた同期もそうですし、後輩たちのために何か残せるように頑張ろうと思って、(後輩が)一番の原動力になってくれました。だから、周りの人に非常に恵まれた4年間だったなと思っていて、周りの方々への感謝の気持ちで溢れています。
津川瑠衣(スポ4=東京・八王子)
力走する津川
――予選の走りはいかがでしたか
予選はみんなあまり良いラップタイムで走れなかったのですが、それでも決勝は絶対に勝ちたいという強い思いがあったので気持ちをしっかり切り替えて決勝に挑みました。
――予選から決勝までの間に修正した点などはありますか
4走の清水奈々子(文構2=北海道・札幌南)までに絶対1位でバトンを持っていきたいと思っていたのですが、なかなかみんな思うように自分の走りができなくて。私も他の選手とぶつかってしまったりして不完全燃焼なところもあったのですが、ここでこうやってまた4人でリレーを組んで走れたのは自分の中で財産でした。
――決勝のレースはいかがでしたか
早稲田記録を目標にみんなで頑張っていたのでそこから程遠いタイムになってしまったのは悔しいのですが、その分後輩たちが来年、再来年と頑張ってくれると思います。
――個人の走りについて振り返りをお願いします
コンディションはすごく良くてラップベストも狙えるかなと思っていたのですが、バトンのところで上手くいかなかったので悔しい気持ちがあります。
――来年の早稲田のマイルに向けて期待することやメッセージをお願いします
今は私がマイルの早稲田記録を持っているのですが、今の後輩たちは一人一人が強い意志を持って陸上競技をやっているので、その強い気持ちがあれば絶対にそれを超えてくれると期待しています。
――レース前に大前祐介監督(平17人卒=東京・本郷)から声掛けはありましたか
「最後だからやってこい」と言われました。
――競走部での活動を振り返って感想をお願いします
4年間苦しかったことが多かったのですが、その中でも頑張ってこれたのは仲間たちがいてくれたおかげです。走れない期間もあったのですが、またこうやって戻ってくることができ感謝の気持ちでいっぱいです。