日本学生対校選手権(全カレ)総合優勝。それを果たす上で鍵となる種目が110メートル障害だ。この種目は、総合優勝を争うであろう順大の昨年覇者村竹ラシッド、ワールドユニバーシティゲームズ(ユニバ)で金メダルを獲得した豊田兼(慶大)など強敵揃い。そんな110メートル障害で表彰台・得点が期待されるのが池田海(スポ3=愛媛・松山北)と西徹徹朗(スポ2=愛知・名古屋)の2人だ。池田は関東学生対校選手権(関東インカレ)で優勝を果たし、西徹は夏に入り13秒台を連発している。そんな着実に結果を残している2人に、今季の振り返りそして全カレへの展望を伺った。
※この取材は8月22日に行われたものです。
「海さんの競技に対する情熱は人一倍」(西徹)
取材に応じる西徹
――始めにお互いの他己紹介をお願いします
池田 西(徹朗)くんは、真面目に取り組んでいる部分が多い中でも、色々なところでユーモアを大事にしているというかユーモアが溢(あふ)れている印象が強いです。ただふざけているというよりかは、すべてに対して真剣だからこそ楽しんでいるのかなと思います。競技面に関しては、常に上を目指して自分に何ができるのか、チーム全体にどういう影響を与えられるのかを考えながら練習しています。
西徹 海さんは1年生から対抗戦に出て、得点も取り続けていて、今ケガをしていて走れていない状況が続いていますけど僕が見ていて心配するくらい補強をしたり走ったりしていて競技に対する情熱は人一倍あるのかなと。来年は確実にチームを引っ張っていく存在になると思います。そういう覚悟を持って今から取り組んでいて、競技に対して一番真摯(しんし)に取り組んでいます。生活面では寮の部屋が同じなのですが、もう一人同じ部屋の高須(楓翔、スポ1=千葉・成田)と一緒に楽しそうにしています。ずっと気を張っているわけではなくて、抜くところは抜くというオンオフの切り替えがしっかりできている人かなと思います。
池田 ありがとうございます。
西徹 あと、晩御飯をパスタだけで済まさせてしまうのはやめた方がいいと思います。
池田 ちゃんとプロテインを入れています(笑)。
一同 (笑)。
――お互いの第一印象を教えて下さい
池田 第一印象は結構変わっているなという印象でした。ただ関わっていく中で、単に変わっているというよりは、色々芯や自分の考えがあっての結果(変わっている)というのが現在の印象です。
西徹 最初に会ったのは一緒に試合に出た時ですね。
池田 高校の時だね。
西徹 とよけんさん(豊田兼、慶大)を始めとして周りが細い人が多い中で、1人だけ骨格がすごくてでかい人だなという印象でした。そういうのもあって怖い人なのかなと思ったのですけど、いざ(競走部に)入ってみて、一緒に話してみたら、遊び心もあって面白い人だなと思います。
――お互いの意外な一面はありますか
池田 慣れてしまうから今となっては意外な一面はないのかもしれないですね。西徹くんは結構頭がいいので勉強の知識もありますし、漫画やゲームにはあまり興味がないのかなと思っていたら、僕よりも詳しいです。また雑学もあるので、すべての知識が広くて深いですね。それが最初は意外というかびっくりしました。
西徹 あんまりパッと出てこないですね(笑)。部屋が同じなので、会話は全部聞こえているしそれが普通になってしまいます。
「自分の目標としている部分には届いていない」(池田)
取材に応じる池田
――それでは前半シーズンの振り返りをお願いします
池田 僕は冬季からケガの影響で理想の計画通りにはやってこられていなかった中で最低限のパフォーマンスをなんとか出せているという感じです。ただ関東インカレ(関東学生対校選手権)が終わって、正確には関東インカレで右足の恥骨を痛めてしまいました。現状は自分の目標は変えずに、目標に向かってどれだけ進んでいけるかを大事にしています。あとは、チームに対して自分に何ができるのかを考えながらやっています。
西徹 昨年は、試合に全く出ないで何もできませんでした。今年はようやく試合に出られて対抗戦で点を取れたり、グランプリを取ったりできているのですけどトップ層との差はまだまだあるなと思いました。日本選手権も結局出ることができなくて上の人と走る機会がなかったので、自分と上で戦っている人との差がより広がっていることを今実感しています。今、僕はケガなしである程度練習を詰めているので今年と来年で上にいる人たちとの差を完全に埋めることを目標にしてやっています。
――池田選手は関東インカレを自己ベストで優勝されました。その優勝についてはどのように振り返りますか
池田 優勝という結果自体は嬉しいものですし、チームに点を持って帰れたという点では良かったと思います。ただ内容やタイムを考えると自分の目標としている部分には届いていないです。練習でやってきたことがしっかり出せたのかという面では不完全な状態だったと思います。自分の足りない部分や未熟さを全く詰めることができていないと改めて理解させられた大会だったと思います。
――タイムはもう少し出そうだなという感覚はありましたか
池田 13秒66というのはベストではあったのですけど、到底日本の中では戦える記録ではないです。自分の中ではもっといけると思っていますし目標はもっと上なので、やることをしっかりとやっていくしかないです。
――西徹選手は池田選手の優勝をどのように感じていましたか
西徹 二日目に対抗戦で優勝して8点を取ってきたというのが、チームに大きな影響をもたらしたと思います。自分もチームに対して活気を与える存在になりたいです。また、関東チャンピオンの方と同じチームで競りながら色々練習していく中で自分もさらに上に行けると思います。
――西徹選手はご自身の関東インカレの走りをどのように振り返りますか
西徹 自己ベストには全く届いていないですし内容としても池田さんや宮崎さん(宮崎匠、中大)に離されてしまってさらに同学年の選手にも最後ギリギリ競り負けてしまいました。あの試合で2年ぶりぐらいに13秒台を出してそこから先につなげていくというビジョンは見えたのですけど、それ以降にケガをしてしまいました。(13秒台を)出したということはすごく評価していますけど、次につなげることができなかったと思います。
――前半シーズンで得られた手応えや課題を教えて下さい
池田 先ほども述べたようにまだまだ詰めが足りない部分が課題です。ただ自分の目標に向けて積み上げていけたら、確実に目標としているところに届くというのは感じました。
西徹 学生トップや日本トップとの差があることを実感しました。上で戦うためにはもっと自分が強くなっていかないという課題が明確になったと思います。その課題をどんどんクリアしていくために、この競走部という速い人がたくさんいる環境でやっていけるのはすごいことだなと感じました。
――ご自身の走りの強みを教えて下さい
池田 1つ挙げるとするならば技術的な部分は置いておいて、最後まで冷静に走り切ることができるというのは最近少しずつ強みになってきていると思います。
西徹 強みと言えるものは今完全になくなってしまったのかなと。何を挙げたとしても自分より上の人はいるし、かといって競っても負けないというそういう強さもないので強みという強みが今はないのかもしれないです。強いて言うなら、ハードルを降りてからの2歩は速い方なのかなと。それをしっかりと次のハードルへの加速につなげていければいいのかなと思います。
――お互いの自分にはない強みはありますか
西徹 海さんは圧倒的なフィジカル、体感の強さや筋力の強さを持っています。僕にはまだまだフィジカルの強さが足りていないですし。また、(僕は)安定感が欠けているところが多いのですが、海さんは走りに安定感があります。ですので、フィジカルの強さと安定感ですね。
池田 このように言っていますけど、フィジカルは(西徹も)1年間突き詰めてやってきたのでそこまで大差はないのかなと思います。動きに対して教わったことを自分の動きに転換するスピードは僕より全然上なので、だからこそ1年間走れていなかった中で今シーズン徐々に記録を上げてこられているのかなと思います。
「全カレではチームに貢献したい」(池田、西徹)
関東インカレ決勝で、ゴール後に抱き合う2人
――現在のハードルブロックの雰囲気はいかがですか
池田 試合に出るごとにそれぞれが試合の振り返りを行うのですけど、どの選手も自分の種目に対して考えの深さの平均が深いと感じています。全体として目標に向けて練習を積み上げていけているという感じです。
西徹 同上です(笑)。
――池田選手のケガの状況はいかがですか
池田 かなり長引いている状況ではあるのですけど、現在痛みはなくなっています。ただ不安があるので、リハビリをずっと続けているという感じです。リハビリの段階的にはかなり上げてこられてはいるのですけど、復帰には至っていないです。全カレ(日本学生対校選手権)にしっかり出場するために今はやっています。
――西徹選手はこないだの富士北麓ワールドトライアルで優勝されました
西徹 日本選手権の時期にハムストリングを痛めてしまって1カ月くらい走れていませんでした。完全に復帰してから1か月経ったくらいなのですけど、その間に合宿に行って確実に自分の走りのベースは上がっていると感じています。その結果として富士北麓ワールドトライアル、SANOスプリント、早慶戦(早慶対抗競技会)で内容は置いておいて13秒台を揃えることができました。高校3年生の時よりもベースが上がったことを実感しています。
――全カレに向けて、現在どのようなことを意識して練習していますか
西徹 僕はスタートで置いていかれることが多くて。それに追いつける走力があればいいのですけど、僕はそこまで高くないので1台目に対してしっかり高いスピードで入って置いていかれないようにスタートの改善をしています。あとはハードル間の走りがどうしても1セクションでぶつ切りみたいな動きになっているので、しっかり全体として捉えられるように走りのイメージや体の動かし方を変えていっている段階です。
池田 僕に関しては走れていない状況ではあるのですけど、体の使い方を改善するリハビリを行なっています。走ったり、跳んだりという部分に取り組めていない中で思考は止めずに、いざ走るとなった時にイメージした動きを行えるようにイメージを固めるということは継続してやっています。
――全カレに向けて気持ちの部分で昨年とは異なる部分はありますか
池田 僕は1、2年ともに全カレでは成績は残せずチームに貢献できていないので、そのことに関して負い目や悔しさを持っています。それを払拭(ふっしょく)できるようにしたいです。最低限のことをやれば、結果は出ると思うので無駄な不安なしで迎えられるのではないかと思います。
西徹 昨年はケガをしていて、チームが総合優勝を目指すという話に対して現実感が薄かったです。自分がチームの中で一緒にやっている実感がなかったのですが、今年は関東インカレにも出て実際に対抗戦に関わることができました。昨年は、そもそもスタートラインに立てていない状態だったのがすごく悔しくて。今年はしっかりと出たうえで、関東以外の選手も出てくるのでレベルは上がりますけど得点や表彰台に上がることでチームに勢いを与えたいです。
――総合優勝に向けての思いを聞かせて下さい
池田 総合優勝はどの代も目指してきたものだと思うのですけど、この代で絶対に取るし取れるメンバーが揃っているので(総合優勝を)取りにいかなければいけないと思っています。一人一人が欠けないように、全体で優勝を目指して取りにいきたいです。
西徹 関東インカレが数点差の2位で、僕が個人でもっと上の成績を取れていたら逆転できたのかもしれないなど細かいことを色々考えていたら、関東インカレも総合優勝を取れたのではないかという悔しさもあります。優勝するために、自分がしっかり点数を取らないといけないしチームの皆が上を目指して頑張っていると思うので、チーム全体の雰囲気を上げていけるようにしたいです。
――最後に、全カレに向けて意気込みをお願いします
池田 やるべきことをやって結果をしっかり出して、チームに貢献します!
西徹 しっかり得点を取ってチームの総合優勝に貢献します!
――ありがとうございました!
(取材・編集 川上璃々、加藤志保、飯田諒)
◆池田海(いけだ・かい)(※写真左)
2002(平14)年4月26日生まれ。188センチ。愛媛・松山北出身。スポーツ科学部3年。対談では西徹選手から、普段の生活で抜けているところを暴露されていた池田選手。レースでの凛々しい姿とは対照的な一面を垣間見ることができました!
◆西徹朗(にし・てつろう)(※写真右)
2004(平16)年2月5日生まれ。186センチ。愛知・名古屋出身。スポーツ科学部2年。富士北麓ワールドトライアルで優勝した景品で桃を頂いたという西徹選手。同期皆で食べる予定が叶わなかったとか・・・。リベンジに期待です!