【連載】日本インカレ特別企画 『矜持〜Dominate the game〜』 第2回 鷺麻耶子×山越理子

陸上競技

 前半シーズンで個人選手権(日本学生陸上個人選手権)、関カレ(関東学生対校選手権)、日本選手権など大きな試合にも出場し、自己ベストをマークした鷺麻耶子(スポ3=東京・八王子東)と山越理子(人2=東京・富士)。そんな2人に、出会った頃のエピソードから前半シーズンの振り返り、全カレの目標まで様々なことを伺った。

※この取材は8月22日に行われたものです。

大きな舞台で受けた刺激がモチベーションに

早慶戦のレースを走る鷺

――他己紹介をお願いします

 山越理子。19歳。理子はよく鼻歌を歌っています。あとは・・・足が速くて走りの調子が悪い時があまりないです。不思議そうな雰囲気があって、話すとすごく可愛いです。

山越 鷺さんは3年生になって後輩が増えたこともあってか、より一層周りを見てくださっているように思います。でも少し抜けているというか、そういった可愛らしい一面もあって親しみやすい先輩です。

――お二人は高校時代から関わりがありましたか

 私が高校2年生で理子が高校1年生の時の国体(国民体育大会)に一緒に出場していました。中学生の頃って知り合いだったっけ?

山越 顔見知りではありました。

 全中(全国中学校体育大会)では隣のレーンで走ったりしていたので。長い付き合いです。

――その時の第一印象や、覚えているエピソードはありますか

山越 鷺さんのいた学校が、全く練習せず鬼ごっこしかしていないのに足が速いという話を聞いていて(笑)。それをすごく覚えています。

 なんだったかな・・・。私より先に11秒台を出されて、めちゃめちゃ焦りました。

山越 あれは自分でも驚きました(笑)。

――お互いの共通点はありますか

 ちょっと変なところ?(笑)。

山越 共通点・・・難しいですね。

 東京出身とかですかね。

山越 性格的にはそんなに似ていないです。

――では早速ですが、前半シーズン全体を振り返っての感想をお願いします

 私は前半シーズンの大きな目標を、個人選手権、関東インカレ、日本選手権と3つに絞っていました。個人選手権は自己ベストが出て悪くはなかったのですが目指していたものには届かなくて。そのまま関東インカレも日本選手権もパッとしないというか、自分が時間をかけて準備してきたものがうまく噛み合わなかった、というような感じでした。

山越 私も学生個人と関東インカレと日本選手権は重要視していました。正直、「今の状態でできるだけやってみよう」という感じで挑んで、予想していた以上の結果が出たので、前半シーズンは良かったかなと思います。でも、まだ自分に足りない部分はたくさんあって。それに、上に行くともっと上がいてどんどん上を狙いたいという気持ちも出てくるものなので、これからもっと上を目指したいと思うようになりました。

――お二人とも自己ベストを出されたと思うのですが、タイムの部分についてはいかがですか

 私はコーチ陣だったり他の先輩方から「200メートルで絶対に23秒台を出せるはず」と言われていて、自分でもやはり100メートルのタイムからしたらそのタイムを出すべきだと思ってやっているので、そこはまだまだ満足には程遠いかなと思っています。

山越 一番の目標は200メートルで23秒台を出すことですが、今シーズンの自分のフィジカルなどから見ると妥当なタイムではありました。今はうまく色々なものが噛み合わないと23秒台が出ない状態なので、うまくいかなくても23秒台で走れて、さらにもう一段階上でタイムを安定させられるようにすることが必要だなと感じています。

――個人選手権・関カレ・日本選手権と大きな大会が続く中で見えた課題などはありますか

 特に100メートルに関しては、練習でできている動きが本番で全くできていなかったり、みんなで同じスタートラインに並んで雷管を鳴らされた時に焦ってしまって落ち着いて走れかったりという部分が試合をこなしていく中でもなかなか改善されてこなくて。それは全カレ(日本学生対校選手権)までに絶対に直していきたいことなので全カレまでにもう一試合走って、そこで練習でやってきた動きと試合を噛み合わせていくことが大きな課題かなと思います。

――メンタル的な部分ということですか

 そうですね。メンタルもそうですし、100メートルの短い時間の中で本番に速く走れる人は動きが完全に自分の中に自動化されている人だと思うので、まだ練習としても足りていない部分もあるためそこを改善していきたいと思っています。

山越 自分の中でももちろん狙ってはいたのですが少し意図しない形で偶然出場することができ、さらに日本選手権はシーズン終わりで少し力が尽きてきたという感じもありました。そのため自分が狙ったところできちんと走れるように、もっと精度をあげていけるようにしたいと思いました。

――大きな大会が続く中で得た収穫はありましたか

 今回の練習はこういうメニューでやってみようか、こういう調整をしてみようか、と工夫しながら毎回試合に臨んでいました。例えば200メートルをもっと強化したいと思ったら久保田コーチ(久保田裕是女子短距離コーチ、平24スポ卒=千葉・東海大浦安)と相談してもっと長い距離を取り入れたりしています。その中で、自分が試合で狙うところや自分自身にとっての合うメニュー、合わないメニューが少し見えてきたかなと思います。

山越 去年のベストタイムに近いタイムが、あまり調子が良くないなと感じる時でも安定して出るようになってきたことで、自分のベースが上がってきていると確認できて、それは今年の収穫だと思います。

――山越選手はベストタイムに近いタイムを安定して出されていると思うのですが、その要因などはありますか

山越 中高生の頃は考えるということをあまりせずにただただ練習をしていて、良いタイムが出たらラッキーという感じでした。大学生になり前よりも考えて練習をするようになったことで、「こうしたら良いタイムが出る」というようなことも自分の中で少しわかってきて。そういった技術的な部分を自分で調整できるようになってきたことは大きいかなと思います。

――前半シーズンはトップ選手と競う機会も多かったと思うのですが、その中でご自身の意識などに変化はありましたか

 先程挙げた3つの大きな試合は特に、アップ場から雰囲気が全然違います。そういうところを意識しすぎないようにそろそろ慣れたいと思いつつもやはり多少緊張してしまう部分があって。ただ、「レベルが違うな」と感じる選手の方々と一緒に走ってその背中が自分よりかなり前に見えていたことは練習のモチベーションにもなりました。

山越 自分の中で成長してももっと強い選手はいるのだということを実感してやはりまだまだだなということは感じたのですが、それは鷺さんがおっしゃっていたようにモチベーションになりました。

冬季練習・来シーズンにつなげるために

U20日本選手権のレースを走る山越

――自分の走りの強みを教えてください

 今はあまりうまくいかせていないと感じるのですが、元々高校生まである程度のタイムが出ていた要因としては蹴る力が強いことや、鍛えればすぐに筋肉がつくことがあると思います。

山越 陸上をやっている人でないと分かりにくいことかもしれませんが、私の強みは足首が硬くてその分地面から反発がもらえるところです。後は200メートルだとスタートの前半はいつも遅れてしまうのですが、後半のカーブを抜けた辺りから加速することができることもある程度自分の強みだと思っています。

――走りやメンタルの部分で、自分にはない相手の強みだなと思うところを教えてください

 理子が今言っていた足首の硬さ・強さというものは生まれ持ったもので、彼女の強みだと思います。あと理子は疲れている顔を表に出さなくて、それは大事なことですし私にはできないことなので理子は大人で強いな、と思っています。

山越 やっぱり鷺さんはスタートから力強く進むことができるパワーがあるので、200メートルでも前半からガーッと行けるし100メートルもすごく速いタイムで走られるので、その部分は私も欲しくて練習しないといけないなと思います。

――普段の練習や大会での短距離女子の雰囲気はどのようなものですか

 私の上の代には女子の短距離の先輩がいなくて、理子が入ってきて今年はその下に上島(周子、スポ1=東京・富士)や山本(真菜、スポ1=三重・伊勢)が入ってきたのですが、みんなが対抗の選手で個人種目に出れるという状態はまだあまり多くないので、試合の雰囲気となると少し難しいです。

山越 練習では最近、走りについてどういう感じかという話が増えてきていると思います。

 4継(4×100メートルリレー)のチームも全カレに向けて指導しているので、走りや体の状態について結構話せるようになってきたと感じます。

――最近の練習で意識されていることはありますか

 女子はどうしても夏の間に体重が落ちて筋肉も落ちてしまうので、全カレに向けてそこをフィジカルやウエイトで補うということと、200メートルをきちんと走り切ってまとめられるように250メートルなどもう少し長い距離に取り組むことを大事にしています。

山越 私もフィジカル面はすごく大事だと思っていて、まだ自分には基礎的なフィジカルの部分が足りていないと思うのでそこを大事にしていかないといけないな、と感じています。

――全カレをむかえるにあたって、去年と違うところはありますか

 私はもう3年生で、次の冬が終わってシーズンを迎えたら引退ということもあるので、やはりこの冬の取り組みに弾みをつけるためにも3回目の全カレは入賞したいなと思っています。

山越 私は去年は入賞にもほど遠く、走ってどこまで行けるかという感じだったのですが、今年はある程度結果もついてきて期待されているレベルも少し変わってきていると感じます。それをプレッシャーに感じる訳ではないのですが、今までは準決勝止まりが多かったのでそういうことを変えていくためにも今年はきちんと入賞できるようにとは思っています。

――今のお話の中にもあったのですが、全カレに向けて意気込みや目標をお願いします

 今は200メートルをメインで練習しているので、やはり入賞したいです。100メートルに関しては、200メートルを練習していく中でトップスピードが上がってきてどこまで行けるか、という感じです。4継も入賞することが目標です。

山越 400メートルとマイル(4×400メートルリレー)は走ることがまだ確定していないのですが、200メートルと4継と、出場する全ての種目で入賞したいと思っています。

――チームとして戦う全カレ、そこへの意気込みなどはありますか

 総合の得点換算は男女で分かれているので直接的に貢献できるわけではないのですが、流れや女子の勢いというものは来年にも繋がっていくと思うので、チームの雰囲気をどんどん盛り上げていけるように結果を残したいと思っています。

山越 私も、貢献できることとしては雰囲気や流れがあると思うのですが、女子としてもトラック入賞などをしっかり狙って、今年は早稲田の女子の存在感を出していけるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤志保、髙杉菜々子)

◆鷺麻耶子(さぎ・まやこ)(※写真右)

2003(平15)年1月3日生まれ。167センチ。東京・八王子東出身。スポーツ科学部3年。自己記録:100メートル11秒67、200メートル24秒31。犬が可愛くて好きという可愛らしい一面を持つ鷺選手ですが、人狼ゲームの議論では恐れられる一面があるようで、最初に人狼と疑われて襲撃されてしまうそうです。

◆山越理子(やまこし・りこ)(※写真左)

2004(平16)年3月13日生まれ。165センチ。東京・富士出身。人間科学部2年。自己記録:100メートル11秒94、200メートル24秒24、400メートル55秒38。カメラが好きで、よく風景や人物を撮影しているそうです。山越選手のカメラの腕前を鷺選手も絶賛していました!