東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で4区に出走し、早大記録を更新する好走を見せた佐藤航希(スポ3=宮崎日大)。約1カ月後、2月12日に行われた延岡西日本マラソンに出場し、自身初となるマラソンで見事優勝を飾った。箱根から今大会に向けどのように準備していたのか、レース中の秘話や今後についても語ってもらった。
※この取材は2月13日に行われたものです。
地元での初マラソン出場に向けて
インタビューを受ける佐藤
――優勝おめでとうございます! 気分はいかがですか
地元で優勝することができて本当にうれしいです!
――地元入りはいつからしていたのでしょうか
2日前からです。
――地元に着いてから何かされましたか
特に何もしていないです。花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)とずっと行動を共にしていました。
――では、マラソンへの出場が決まった経緯について教えてください
昨年も、元々箱根が終わってから延岡に出る予定だったのですが、急遽なくなってしまったので、今年も必然的にマラソンをやろうかなという話になりました。まずはマラソンを走っておくことで、箱根駅伝につながるいいアプローチができるのではないかと考えていました。練習量も必然的に増やせるといった意味で箱根が終わってからの、この延岡マラソンを選びました。
――マラソンへの挑戦は不安と楽しみどちらが大きかったですか
地元なので、楽しみの方がやや大きかったと思います。
――初マラソンに向け、どのような目標を立てて挑んでいたか教えてください
自分的には、とにかく次につなげられたらと思っていました。どんな結果になってもしっかり受け止めるということしか考えていなかったので、特にこれといった具体的な目標はなかったです。
――今回のマラソンに向けて重点的に取り組んでいらっしゃったことはありますか
箱根前から、距離走などをチームでする機会が何度かありましたが、みんなが30キロやるのであれば、自分は35キロいく。2時間ジョグするなら2時間半しようとか、少しずつプラスして練習していました。
――マラソンを走るにあたり、アドバイスをいただくことはありましたか
レースの2日前に延岡に入った時に、旭化成の西さん(政幸氏、元旭化成陸上部監督)と創価大学の榎木さん(和貴氏、現創価大学駅伝部総監督)と花田さんも交えてお話をする機会があって、30キロ以降の走り方などのアドバイスを頂きました。「楽なときときついときが交互にくるから、きつくなってからもこれがマラソンかと思って走ればいい」と言われていました。きつくなったから最後までもたないというような考えではなくて、これがマラソンかというぐらいの気持ちでは臨むようにしました。
レースを振り返って
ゴール後、花田駅伝監督と
――レース前の調子はいかがでしたか
10日ほど前の練習が終わってから、疲れが出ていました。その後もビルドアップ走があったのですがペースが上がらず。4日前の仕上げ練習も3000(メートル)とビルドアップの練習でしたが、(3000メートル)8分50秒をもがくくらい状態が悪かったです。状態が良かったとは言えなかったですね。
――では、箱根駅伝の事後対談の際に痛めていたとおしゃっていた腹横筋の調子はいかがでしたか
今回はどうなるかなと思っていたのですが、痛みもあまり出ずに走れました。3分を切るといつも痛みが出てきてしまうのですが、そもそもあまりペースが速くなく、今回はそこまで大きく動かしてなかったので大丈夫でした。
――レースプランはありましたか
「とにかく先頭集団についてき、もし離れたとしても粘ってゴールすればいい」という話を花田さんから言われていました。ハーフで離れたパターンと30キロで離れたパターン、最後までいったパターンなど細かくいろんなパターンを指示されていたので、それに従ってレース展開も自分で見ながら走っていました。
――マークしていた選手はいましたか
個人的には、旭化成の松尾選手(松尾良一)の状態がすごく良いという話は聞いていたので松尾選手はマークしていました。もう一人、どこで仕掛けるか分からないという意味で村山選手(謙太、旭化成)をマークしていました。
――改めてレースを振り返っていかがでしょうか
途中でチャレンジできましたし、後半もスプリット(タイム)をあげて走ることができたので、すごくいい経験になったと思います。
――早大歴代3位の記録をどのように感じていらっしゃいますか
タイムはそこまで狙ってなかったので、3位だからどうこうというのはないですね。
――タイムをそこまで狙っていなかったということですが、設定タイムというのはあったのでしょうか
花田さんからは2時間11分フラットの3番以内と設定されていました。全然時計を見ていなかったのですが、通過時だけ時計をみていて、(2時間)11分台でいけるなと思ったので、ラップを落とさずに行こうと思っていました。
――ある程度設定タイムを基準にして走っていたのですか
僕自身はそこまでタイムは気にしていなかったのですが、花田さんがこれくらいはいけるんじゃないかという予想はされていました。ラップタイムも設定されていましたが、設定されているからといって特にそれ通りに走るわけでもなく。当日自分が実際に走ってみての状態を優先して、あまり気にせずに走っていました。
――何キロ地点が勝負だと考えていましたか
30キロ地点あたりです。自分は集団のちょうど真ん中くらいにいたのですが、僕の後ろにマークしている村山選手と松尾選手がいました。様子は見えませんでしたが、その2人が前に出てきてからが勝負かなと思っていたので、村山選手がスパートした30キロ地点あたりで勝負だと感じました。
――第2集団で走っていたときは余力があり、落ち着いて走れていたのでしょうか
呼吸などはすごく楽だったのですが、途中の村山選手のスパートに松尾選手と一緒についていったところで結構足を使ってしまい、足はかなりきつかったです。一回離れて後ろの集団で落ち着いて走ったことで頭の中を冷静にできたと思います。
――村山選手が仕掛けたときの心境はいかがでしたか
村山選手が仕掛けたとき最初はついていったのですが、ペースが速かったので1回離れました。離れてからも後ろの集団でずっと前の集団を見ていましたが、あまり差が広がっておらず、目で追える位置だったので自分の力、キャパシティを少しずつ出しながら後半に向けて前を追っていこうと思いました。
――レース状況から村山選手のスパートがいつくるか想定していたのでしょうか
どこかでスパートはかけてくるだろうと予想していましたが、それが何キロになるのかは分からなかったです。今回は30キロからスパートされましたが、ラストで勝負に出なかったら僕がロングスパートしようと思っていました。
――レース中に個人的なアクシデントはありましたか
大きいアクシデントは特にありませんでしたが、給水時に末尾の番号で給水ボトルを取る際に、前の選手とゼッケンの末尾が一緒でテーブルのドリンクをなかなか取れないということがあったことだけですかね。同じ末尾番号の選手の後ろにはいない方がいいということはすごく勉強になりました。
――レース中に花田監督からの声掛けで印象に残っていることはありますか
レース中は、「余裕もって」とずっと声をかけてくださっていました。自分もその声掛けに対して冷静に答えられたので、余裕があったと感じることができました。
――マラソンは30キロ以降足が棒になるという話を聞いたことがありますが、佐藤選手はいかがでしたか
よく30キロの壁という言い方をすると思うのですが、あまりそのようなことは考えませんでした。スパートされてから残り12キロしかないとに感じていたので距離に対してはそんなに悲観的になっていなかったですし、身体的にも余裕はあったので壁は感じなかったです。
来シーズンに向けて
――レース後の疲労はいかがですか
足がちょっと筋肉痛になっていますが、特に疲労はありません。もしかしたら、内臓疲労もくるのかなと思っていたのですが、きていないので割と自分が思っているより体は元気だと思います。
――今回のマラソンで、これまでのレースとは違うと感じたことはありましたか
ペースがハーフマラソンや1万に比べて遅かったので、単純に最初はペース走をしているという感覚になりました。
――やはり、地元でのレースは走りやすかったですか
地元なのでコースもすごく走りやすかったですし、沿道の方も自分の名前をたくさん読んでくださってすごくホーム感を味わいながら走ることができました。
――改めて今回のレースの収穫点を教えてください
落ち着いたレース運びでチャレンジできたことも含め、最後まで余力をもってゴールすることができたのが1番の収穫点だと思います。
――では、またマラソンに挑戦したいですか
そうですね(笑)。今回の結果で、力を出し切りもういいやという感覚ではなく、まだまだいけるような感覚なので、(次は)どのくらいタイムがでるのかと自分に期待している部分があります。また別の試合で狙えるときがあったら挑戦したいと考えています。
――春シーズンに向けて意気込みをお願いします
トラックから(シーズンに)入ると思います。昨年は1年を通じて体力強化とにウエイトを置いていたので、今年はスピードも磨きつつやっていこうと考えています。それがロードに生きると思うので、トラックシーズンも大切にしながらシーズンインできればと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 川上璃々)
結果
▽マラソン
★佐藤航希(スポ3=宮崎日大) 2時間11分13秒 (優勝)初
◆佐藤航希(さとう・こうき)
2001(平13)年8月2日生まれ。168センチ。宮崎日大高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分59秒96、1万メートル29分35秒12、ハーフマラソン1時間3分05秒。第99回箱根4区1時間02分18秒(区間6位)。箱根後も継続的に練習に励んでいた佐藤選手。マラソンを終え、これからやっと大好きな地元で長期オフを楽しむそう。「地元のチキン南蛮は内臓が休まってから!」、「優勝の賞品でもらった商品券を使いたい!」と笑顔で話してくださいました。さて、優勝という結果で締めくくった佐藤選手の今シーズン。この結果を糧に、来季は更に成長した走りを見せてくれることでしょう。皆さん乞うご期待です!