19年ぶり日本新に挑戦 男子4×1500メートルリレー

陸上競技

 霧雨が降り、肌寒さを感じられる所沢のグラウンドには、いつもと少し違う緊張感が漂っていた。特別な大会でのみ着用が許されるエンジのユニホームに身をつつんだ選手たちが現れる。4×1500メートルリレーの日本記録更新に挑む4人だ。 一人1500メートルずつ走り、4人でバトンをつなぐこの種目。2002年に樹立された15分19秒33の日本記録に挑むべく、北村光(スポ2=群馬・樹徳)、菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)、栁本匡哉(スポ2=愛知・豊川)、石塚陽士(教1=東京・早実)という1・2年生の若いメンバーが集められた。

 

1走北村から栁本へのバトンパス

 第1走者の北村は、最初の2周を60秒ペースで順調に通過した。しかし、800メートル過ぎに先頭の明大・近藤亨がペースを上げると、それに対応できず。差はみるみる広がっていき、1000メートル時点で約6秒差に。さらに1200メートル付近では、北村の後ろについていた創価大の山下唯心にも逆転を許し、2走の栁本へは明大から11秒、創価大から5秒、日本新ペースからは10秒ほど遅れてバトンが渡った。

  最後尾からスタートした栁本は前をいく創価大との差を詰め、3分52秒で走り切る。2走終了時点では1位の明大から11秒差のまま、創価大とは2秒差にまで迫った。しかし日本新ペースからは12秒ほど遅れる苦しい展開に。3走の石塚は、バトンを受け取って600メートルほどで創価大をとらえ、2位に浮上。1500メートルのシーズンベストに匹敵する3分48秒で走り切り、菖蒲にバトンをつないだ。

 首位の明大から6秒、そして日本新ペースからは10秒ほど遅れてスタートしたアンカー菖蒲は、「絶対に1位で帰ってこよう」(菖蒲)と最初の400メートルを55秒で突っ込む。明大との差を一気に詰めて、ラスト800メートルでとらえた。並走が続いたが、ラスト1周の鐘が鳴ると菖蒲がギアチェンジ。単独首位に立つと、日本選手権からわずか4日という疲労を感じさせない鮮やかなスパートで、見事1位でゴールした。

 

明大を逆転し1位でゴールする菖蒲

 早大のゴールタイムは15分25秒97。日本記録には6秒あまり届かなかった。 しかし今回菖蒲が序盤から飛ばし、1500メートルの自己新に匹敵するタイムを出したように、リレーに挑むことが個々の限界突破の契機になり得るのかもしれない。そして、今後挑戦するチームが増えれば、中距離界の強化、盛り上がりにつながるともいえるのではないか。「これで他大学さんも加わるかもしれませんが、来年こそは同じチームでさらに強くなって(日本記録を)更新したい」(菖蒲)。早大が、はたまた他のチームが日本記録を塗り替える日は、そう遠くはなさそうだ。

(記事 布村果暖、写真 青山隼之介)

ゴール後記念撮影をする4人(左から菖蒲、石塚、栁本、北村)

結果

▽1500メートル

井川龍人(スポ3=熊本・九州学院)3分47秒36(2着)自己新記録

佐藤航希(スポ2=宮崎日大)   3分59秒03(12着)自己新記録

石塚陽士           棄権

諸冨 湧(文2=京都・洛南) 棄権

北村 光           棄権

栁本匡哉           棄権

菖蒲敦司           棄権

▽3000メートル

安田博登(スポ3=千葉・市船橋)  8分14秒55(1着)自己新記録

白井航平(文構3=愛知・豊橋東)  8分20秒92(3着)自己新記録

室伏祐吾(商4=東京・早実)    8分23秒81(4着)自己新記録

中山遥稀(スポ1=千葉・専大松戸) 8分28秒94(7着)自己新記録

菅野雄太(教1=埼玉・西武文理)  8分35秒92(11着)自己新記録

濱本寛人(スポ2=熊本・宇土)   8分39秒36(12着)

草野洸正(商1=埼玉・県浦和)   8分53秒99(16着)自己新記録

伊福陽太(政経1=京都・洛南)   棄権

小玉瑞葵(文1=福島・安積)    棄権

中田歩夢(人1=埼玉・所沢北)   棄権

▽4×1500メートルリレー

早大 15分25秒98(北村ー栁本ー石塚ー菖蒲)(1着)

コメント

菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)

――日本選手権の3000メートル障害から、わずか4日後です。コンディションはいかがでしたか

疲労はあったのですが、アップしてみたら意外と動いたので、今日は疲労を感じず、いい状態で臨めました。

――1から3走の展開はどう見ていましたか

もうちょっと1走が稼いでくれるはずだったのですが、僕のところで1位になったらいいと思ったので、絶対に1位で帰ってこようと決意しました。

――追う展開になりましたが、どんな思いでスタートしましたか

1500メートルしかないのでいつ足が止まってもいいやと思って、最初から思いっきりいった結果あれだったので、良かったです。

――最初から全力で突っ込んでいったと

そうですね、垂れたら垂れたでもういいや、と(笑)。記録も順位も狙いにいきました。

――実際きつくなったところはありましたか

集中していたので、あんまり感じず。ラスト一周で自分が仕掛けたところで明大の方にもついてこられたのは本当にきつかったですが、最後勝ちたかったのでもう無理やり体を動かして、という感じでしたね。

――ラップは見ていましたか

集中していたのでほぼ見ていませんが、最初の1周が55秒というのは一回だけ聞こえたので、「そんなタイムで走っているんだ」というくらいで。別に驚くことなく落ち着いて走れていました。

――自分の走りとチームとしての結果についてはどう捉えていますか

僕自身の走りは、100点に近い走りができたかなと。日本選手権から3日しか経っていませんが、日本記録更新を目標にやってきたので、達成はできませんでしたが、個人的にはベスト以上の走りができたので良かったです。チームとしては日本新には数秒届きませんでしたが、来年もやるということだったので、また他大学さんもこれで加わるかもしれませんが来年こそは同じチームでさらに強くなって更新したいと思います。