【連載】『早稲田人たれ』第2回 400メートル障害 関本萌香×山内大夢

陸上競技

 男女400メートル障害で日本のトップレベルを走る二人の対談が実現した。関本萌香(スポ4=秋田・大館鳳鳴)は競走部史上唯一56秒台の自己ベストを持ち、日本選手権の優勝候補にも挙げられる。山内大夢(スポ4=福島・会津)は関東学生対校選手権(関カレ)連覇がかかるだけでなく、今月9日のREADY STEADY TOKYOで参加標準記録を突破したことで一躍東京五輪代表の有力候補となった。

 そんな二人が今トップ選手として、そして競走部の一員として見据える地点とは。現在の心境に迫った。

※この取材は5月15日に行われたものです。

 

関カレ400メートル障害 アベック優勝へ

今季女子主将を務める関本

――お二人は高校時代からの知り合いとのことですが、お互いを紹介していただけますか

関本 選手としては、安定して強い選手というイメージがあります。ケガも時々あるのですが、そこから自分でメニューを組み立てて実行して、調子を戻してくるのがうまいなと思っています。なので、あまり心配な要素がないです。試合も後半型で、前半少し遅れても後半必ず来ると分かっているので、安心して見ていられる感じです。

 

――普段の様子はいかがですか

関本 高校の時から知っていて同じ種目、同じ東北出身なので、他の人よりも話す機会が多いですし、親近感があってよく話しますね。みんなが頑張ってくれたらすごく嬉しいし、それも刺激になるのですが、やっぱり山内が記録を出すと「頑張ろう」となります(笑)。ほぼ部員日記だね(笑)。

山内 それな(笑)。関本はインターハイも優勝していたのでもともと高校時代から知っていて、夏頃に早稲田を受けることを聞いてから話すようになりました。高校でトップレベルを走っていて、大学に入ってからも1年目から順調に結果を残していたので、自分とは違う世界、上のレベルにいるなと感じていました。

 大学1年目から早くそこのレベルに追いつきたいと思っていて、1~2年目はなかなか差が縮まらないなと感じていたのですが、3年目でようやく同じ日本選手権の舞台に立てました。早稲田のヨンパー(400メートル障害)は女子が強いと言われる中で関本がトップを引っ張っていたので、同じ種目ということもあり自分も頑張ろうと強く思える選手の一人です。

 

――普段に関してはいかがですか

山内 僕も部員日記の内容になってしまうのですが(笑)、結構何でも話します。競技面の悩みを聞いてもらったり、逆に自分が聞くこともあって、他の部員よりも絆っていうのかな…? そういうものがあると思います。

 

関本 うん、分かる分かる。

――お互いはどんな存在ですか

関本 やっぱり一緒に頑張りたいなと、他の選手よりちょっと強く思う存在ではあります。今回の関カレも女子だったらワンツースリーだったり男子も決勝に残って上位入賞という目標を立てているのですが、その中でも山内とはアベック優勝したいなと思っています。

山内 僕もアベック優勝を狙っています。去年も開催のかたちは違ったのですが小山さん(佳奈氏、令3スポ卒)とアベック優勝できたので、次は関本と同期でできれば一番いいかなと思います。身近な目標でもあるのでしっかりお互いに高め合っていければという思いがあります。

 

関本「去年までの陸上のやり方とはだいぶ変わった」

 

――関本選手は今年女子主将に就任されました

関本 幹部ではないのですが、女子をまとめるのに必要だなと言うことで女子主将としてやらせて頂いています。同期で話し合って決めたのですが、誰とでも話せるからまとめ役としては最適じゃないかと言ってもらえたので、 「じゃあ頑張ろう!」となりました。

――先輩が卒業されて、後輩を引っ張る立場となったことで心境の変化はありましたか

関本 去年までの陸上のやり方とはだいぶ変わりました。去年までももちろんチームに貢献したい気持ちはありましたが、やっぱり自分の記録を上げることが最優先で、そのためにはどうしたらいいかを考えて陸上をやっていました。

 今年になってからは、自分だけではなく後輩や同期みんなで記録を上げたいなという思いがすごく強くなって、自分だけでなく周りの走りもよく見るようになりました。あと私は後輩の面倒を見るのが好きなタイプなので、相談に乗ったりすることも苦にせずやっていけているかなと思います。

山内 僕も結構自由に競技のことだけを考えていたので、4年生が抜けて代替わりした瞬間から、言い方は良くないのですが『動きづらいな』と。今までより責任感も伴ってくるので、ただ陸上してるだけではだめだなとすごく実感しましたね。よく周りを見て1~3年生のサポートをしながら自分の競技力向上に努めていかないとどっちも中途半端になって、チームとしても個人としても良いかたちで4年目を迎えられないと思ったので、代替わりからはできるだけそれを意識して取り組んでいました。

――「動きづらい」と感じたのはなぜですか

山内 昨年は4年生の折田さん(歩夢氏、令3スポ卒)や小山さんが場の雰囲気や方向性を作ってくれて、僕たちはある程度それをサポートしながら競技は自由に頑張っていいという感じでした。特に3年生が一番自由に競技ができていたのですが、4年生が抜けたことによって次は僕たちが軸となる存在になるので、4年生がどう動いていたかを考えた時に、自分のことばかりではだめだなと考えていました。でもどうやって動いていけばいいのか最初は全然見えなかったので、自分のやりたいことができない矛盾を抱えていて、そこが『動きづらさ』につながっていたと思います。

――今は解消されつつあるのでしょうか

山内 そうですね。ちょうど新年度になる前あたりはチームとしてもなあなあで進んでいた感じがして、あの時は「このままじゃやばい」と感じるような危ない雰囲気もありました。関本も4年生のミーティングでそのことを言ってくれて、そこから4年生としても考え方が変わった印象が強くて、チームとしてもどんどん流れが良くなっていたのかなと感じました。

 

お互いの走りについて

 

静岡国際女子400メートル障害で優勝した関本

――ハードルの練習では、男女の垣根を越えてアドバイスし合うこともありますか

関本 そうですね。メニューは一緒ですし、ハードルを跳ぶ日も合わせてお互いに見ながらやっています。

山内 お互いにアドバイスをし合うことが強みなのかなと。

――ハードラーとしてお互いの走りはどう見ていますか

関本 すごい真反対のレース展開なんですよ(笑)。山内は後半型、自分は前半から行くタイプで。山内は前半はちょっと遅れをとっても、後半周りよりも落ち幅が少ないので必ず伸びてきます。そういうレース展開を見ていると、最後にうわーと上げてくるのがいいなと。見ていてすごく気持ちがいいし、自分の中でもすごく盛り上がるレース展開をしてくれるなと思います。やっぱり自分ができないからこそ、いいなと思いますね(笑)。

山内 僕はその逆です。前半からしっかりトップを取れる位置でレース展開をするのが関本の持ち味で、特に僕はそんなにハードリングがうまくなくて、そこのロスで置いて行かれたりしているのですが、関本はもうハードルが低く見えるぐらい脚が長いので(笑)。しかもハードリングもきれいで越えているというよりは走り抜けているようなレースなので、そこは真似したいと言うか取り入れないといけないなと見てて思います。

――走りでもそれ以外の部分でも、選手として互いにどんな所に刺激を受けていますか

関本 ストイックに練習していて、自分に足りないなと思ったらそこから逃げずに、一人でも絶対にそれをやり抜く強い姿勢を見てるので、「(山内が)頑張ってるから私もやろう!」となります。私は結構ネガティブなのですが、その姿を見ているとやる気が出ます。

山内 そうだな…。さっきも言ったのですが、女子のヨンパーの選手を見た時も一人だけハードリングのきれいさや完成度が群を抜いていると感じるので、こういうハードリングでロスが少ないレースをしたいと思います。関本は最初こそ弱いところから逃げている部分もあったのですが(笑)、3年、4年となるにつれて後半(ペースが)落ちやすいところに目を向けて冬季に取り組んでいたのを見てたので、自分も苦手意識を克服しないとなと感じました。

――関本選手は周りからの紹介でポジティブな印象を受けていただけに、ご自身をネガティブと評しているのが意外です

関本 試合前になると「怖いな」と。やっぱりヨンパー自体がきつい種目ではあるので、勝てるかどうかよりも走り切った後のきつさが怖くて、びびったりします。練習もきつくて長い距離を踏んだりもするので、毎回毎回緊張してしまって。

 でも試合で失敗したり負けるのが嫌なので、練習の時から常に緊張感を持っています。練習では失敗してもいいとは思うのですが、本番で失敗しないように練習から成功させるイメージは持っているので、ネガティブですけど(練習を)やりはします(笑)。

山内 多分、他の人に対してはポジティブでいてくれるんですよ。ただ自分のことになると、確かに結構ネガティブなことを言いますね。試合前や練習前も、「私むり~」みたいに自分から言葉を発してしまうタイプなので、今思い返せば周りに対しては「大丈夫だよ」と声をかけてくれる分、自分では抱え込んでいるのかなと感じます。

――周りの方に対してはポジティブになれるのですね

関本 それはそうですね。自分がネガティブになったりきついなと思うのはずっと前からなので慣れていて、いつも通りなので大丈夫なのですが、後輩が不安に思っていたりきついかもしれないと試合前に言ってくれたら絶対に励ましたくて。安心してくれる存在になれたらいいなと思っています。私は小山さんにそうしてもらったことが心強くて、小山さんがいる試合は不安はあってもいけると思っていました。今度は私がそれを後輩にできたらいいなと思ってます。

――プレッシャーや難しさはありますか

関本 後輩とも一緒に練習して、参考にしてくれたりするので、自分がアドバイスする分参考になるレースや練習の姿勢を見せたいなと思っています。だからプレッシャーではないのですが、自分が入ってるぶんそれを背中で見せたいなと。

 

山内「早稲田の競走部に入ったからこその学びがあった」

3年間を振り返る山内

――お互いに4年間で変わったところはありますか

関本 山内はめっちゃ変わりました(笑)。どこかと言われると難しいのですが、性格もすごく変わったんですよね。

山内 そうかな?(笑)

関本 絶対良い方向に変わってますね。元々周りを見るというよりは自分の事を一生懸命頑張るタイプだったのですが、すごく周りが見れるようになってるなと、近くで見ていて感じますし、3~4年生になってからはすごくしっかりしてるなと感じました。1年生の頃はそんなに思ってなかったですけど(笑)。だからチームのこともすごく相談しやすくて、私の考えを真っ先に聞いてくれたり、逆に提案してくれたこともあったので、そこはすごくいいなと思います。

――山内選手は変わった自覚はありますか

山内 まあ、多少は(笑)。さすがに1年生の時とは変わったかなと思います。早稲田の競走部に入ったからこその学びがあって、(競走部に)入って良かったな、ここでなければたぶん自分は高校時代のままだったかな、と思い返すことが多いです。競走部だったからこそ周りの部員や先生やコーチ陣に手厚く指導してもらったことで、競技面だけでなく人としても大きく成長できたのかなとすごく感じています。

――関本選手の変わったところは

山内 性格面では1年時から逆に一貫している気がします。変わった部分…(笑)。

関本 私も分からない。

一同 (笑)

山内 でも練習に対する姿勢は変わりましたかね。もっと強くなりたいという気持ちが走りだけでなく補強の時にも強く表れていたので、苦手を克服することについては1年時と比べると全然違いますね。

――これまでの3年間について、まず1、2年時はどんな年だったと振り返りますか

山内 1年目はこっち(所沢)に来て右も左も分からない状態で、ただの田舎の高校生が上京してきた感じで(笑)。まずは慣れることが第一でした。競技ではケガばかりで秋に1~2本ベスト付近で走ることが精一杯で、正直競技よりも生活で手一杯でした。

 2年目は大学の生活に慣れて結果もある程度出すことができて、海外遠征にも行ったり色々な経験ができたのですが、まだ人としては全然甘かったなと感じました。1年目も失敗は多かったのですが、2年目も失敗をあまり克服できなかったので、タイムは伸びたのですが他の面も含めると微妙だったと思います。

――3年目はいかがですか

山内 3年目ではコロナに見舞われてチームがバラバラになった時に、自分たちがどのように活動したらいいのか、ヨンパーブロックでもどうすれば気持ちを切らさずに練習できるのかを各自で考えました。

 秋のインカレで集まった時に全体的にもいい結果で、自分もケガ明けで1本目のレースだったにも関わらずいきなり自己ベストで走れて、いい雰囲気でいけたことがすごく印象的でした。

 3年生ということで多少周りを見る気持ちもあったので、そうした意識の変化も競技力に影響したのかなと思います。競技面では全カレ(日本学生対校選手権)で49秒台で走って4位入賞できたことが一番大きくて。日本選手権にも初めて出て決勝に残って、全然勝負はできなかったのですが経験値としては大きかったです。

――関本選手はいかがですか

関本 1年目が一番良くなかった年で、体重が増えてしまったり走っても体が重かったり、練習についていけないことも多くてそれがつらかったです。あとは先生から指導されたことがあまり理解できずに悩んだ時期が長く、記録もそんなに伸びませんでした。ただ世界ジュニアに出場する機会があり、海外でのレースを経験できたことが一番の経験だったと思います。

――練習スタイルの変化が大きかったのですね

関本 はい。早稲田の競走部は自分たちで考えて、練習メニューの目的を明確にした上で取り組むことが多いので、質が大切なことに気付きました。高校生の時は量ばかりを踏んでいてそういう経験があまりなかったので、どうすればいいのか分からない状態が続いていてきつかったですね。

 ハードリングも、高校生の時はただ跳び越えてたんですよ。『来たら跳ぶ!』みたいな(笑)。大学生になってからは、跳ぶ姿勢だけでなく踏切の前が重要な役割を果たしていることも先生が話してくださったのですが、それが1年生の時は分からず、高校時のまま跳んでいました。

――2年生以降でそれを習得できたのでしょうか

関本 2年生で試合の分析の仕方を教えていただいたり、みんなにアドバイスをもらったことで先生の言っていることが理解できるようになり、練習に取り入れられるようになりました。2年生では大幅に自己ベストを更新して急に57秒台が出るようになったので、大きな変化があったかなと思います。

 今でも1年生の時のビデオを見返すのですが、もう全然違います(笑)。ハードリングもうまくなりましたし、ハードル間の走りも変わったので、そういう苦労があって記録が伸びたのかなと思います。

――3年目はいかがですか

関本 3年目では2年生で新たにできるようになったことを定着させられた年だったと思います。自粛期間に地元に3カ月帰っていて、一人でメニューを組み立てて練習するところから始めました。最初の方はちょっとモチベーションも下がっていたのですが、それでもまた大会があった時に負けたくない思いがあったので、モチベーションが上がらなくてもちゃんと練習することができました。気づいたら人一倍走っていましたね。

 3年生に上がった時にまた記録を出せるかなと自分でプレッシャーをかけてしまっていたのですが、自粛期間で一旦リフレッシュでき、地元で色々な刺激をもらってからまた大学で練習できたことが一番大きかったです。その後すぐに自己ベストが出たので、コロナ禍があった中でもうまく取り組めたのかなと思います。

 

今季の調子

静岡国際のレース後に笑顔を見せる山内

――関本選手は静岡国際でも好記録を出しましたが、今の調子は

関本 調子は、いい感じです(笑)。初戦の静岡国際でセカンドベストを出せたことは、結構自信になっています。あとやっぱり、五輪標準を切った同期がいるので。やっぱり、刺激をすごくもらっているので。「あ、自分も強くならなきゃ」って思っている分が練習にも表れていて、自らきつい練習とか、追い込みもしています。走り込みで体づくりは結構やるようにしていて、6月に重要な試合も入ってくるので、そこでその練習の成果が生かせたらいいなと思ってやっています。

――ちなみに、9日のREADY STEADY TOKYOのレースはどこで見ていましたか

関本 家で見ていました。会場には入れなかったんですけど、テレビをつけて、スタンバイして。100とか200メートルも早稲田の選手がみんないい感じに走っていて、いいなと思ったんですけど、山内の時は私もすっごい緊張して(笑)。行けるぞって分かっていたんですけど、やっぱりちょっと緊張しちゃって、ドキドキしながら見てました。テレビの前で叫んじゃいました(笑)。

――山内選手の調子はいかがですか

山内 練習から走りの手応えがあったので、(READY STEADY TOKYOでは)最低でも自己ベストは出るかなと思っていました。なぜ自己ベストが出たかを振り返ると、自粛期間中に競走部内で勉強会というか、自分たちのレースを分析して、自分の強みや弱みをしっかり見て、足りないところを練習で取り入れたことがありました。それが結果的に自分の後半の強みを生かすためのレースづくりに合っていたと思います。

 また、冬季や春シーズンで先生に「こういうプランでやってみたらどうだ」と言われたことや、自分で学んだこととか、意識してきたことを生かせたことがあのレースでの48秒8というタイムにつながり、自分の中でも今までにない手応えのあったレースになったのかなと感じました。

――山内選手は、後半になぜあそこまで余力が残せるのでしょうか

山内 一つは、黒川(和樹、法大)や安部さん(孝駿、ヤマダHD)という前半速い選手がいることによって、自分は後半勝負だという気持ちで常に焦らないようにしています。「全員抜かしてやるぞ」くらいの気持ちで、最後7台目辺りから一気にギアを変えています。7、8、9、10台目でその気持ちを続けることで、最後は疲れるというより「いけるいける」と自分の中で思いながら走っているのが、後半の原動力になっているのかなと思います。

――精神的な要素が大きいのでしょうか

山内 そうですね。ダメなときは本当に後半も「ああ、ダメだ」となっちゃうので、自分で勝つレースができてないと思われるかもしれないんですけど、前に目標がいることが自分の中でもモチベーションというか。抜いていくことが楽しいですね。走るって、結局「競走」なので。勝ちたいという最後の気持ちの部分で、一人でも多く抜いてやりたいという気持ちがあるので、精神面も結構走りに影響しているのかなというのはあります。

――関本選手は前半型ですが、これを聞いていかがですか

関本 あの、メンタル強いなって思いました(笑)。

山内 強いのか?(笑)。

関本 前半で使い切ることはないんですけど、リラックスはしながらもスピードを上げてくタイプなので、山内よりは後半余力が残ってなくて。あと後半100メートルくらいでだいたいトップに立っていることが多いので、抜かされないようにするっていう方が大事になってきます。それで、自分もちょっとつらくなってきて「粘れ粘れ」と思いながら、自分を鼓舞しながら走っているんですけど。レース展開が違うと気持ちの持ち方も違うなと思いました。

山内 確かに。

――同じ組に後半型の選手がいるとき、最後はどんな思いで走っていますか

関本 怖いです。足音とかだんだん近づいてくるのが聞こえるんですよ。それで「やばい、来てる」と思って。「早くゴールしたい」と思いながら走ってます。

――山内選手は追うことが得意ということは、後半に誰も見えないアウトレーンよりインレーンの方が得意ですか

山内 いや、特にないですね。なんなら逆にアウトレーンの方が走りやすいかなと。基本どこでも走れないといけないので特に苦手意識はないんですけど、前半内側にいてパーンと置いていかれるよりも、内側から抜かれていって「それを抜いてやる」という気持ちの方が、自分的には走れるのかなというのはあります。今回7レーンだったのは、レーンには恵まれたかなと思います。

――関本選手はレーンの得意、不得意はありますか

関本 いや、私も特にはないです。外側のレーンだと、自分が先頭で走っていくので、自分のスピードが周りと比べてどうなのか分からない不安は正直あるんですけど、外側のレーンで走って優勝した試合もあるので。それを思うと、自分でもちゃんとペースつくれるんだな、大丈夫だなと思ってます。

――関カレは女子がたくさん出場されますが、女子全体の調子をどう見ていますか

関本 全体的には上昇傾向にはあるなと感じています。みんなで「関東インカレ目標達成のためにがんばろう」という雰囲気もすごく出てきているので、いいかたちで迎えられるんじゃないかなと思います。ちょっとケガ人もちらほらいて出ない選手もいるので、その選手たちは残念なのですが、サポートをしっかりしてくれるということだったので、お願いして、みんなで勝てたらいいなと思ってます。

――今後の学生の大会でも、シニアの大会でも、ライバルや意識している方はいますか

山内 それは、もう黒川です(笑)。毎回あと0・1秒差以内で負けているので、なんとか次の関カレで1回勝つレースをして、今後の試合、日本選手権に向けて弾みをつけたい思いはあります。

 シニアだと強い選手はたくさんいますし、自分としては、あのレース(READY STEADY TOKYO)1本は雰囲気で出させてもらったタイムだと思っているので、まずは自分の実力をしっかり発揮できるように。自分が作ったレースでそれに迫るタイム、もしくはそれ以上のタイムで走ることができたら、ちゃんと実力に伴ったタイムだったと思えるので、そこを意識していきたいと思っています。

――ちなみに黒川選手とはどんな間柄ですか

山内 普通に仲はいいです。最初は、後輩ですがとっつきづらいなと思ってました。でも話してみると結構普通(笑)。黒川がどう思っているかは分からないですが、自分的にはこの前のタイムや結果も黒川がいてこそだと思っているので、いいライバルかなと思います。

――関本選手はライバルや意識している方はいますか

関本 意識しているのは、この前のREADY STEADY TOKYOで自己ベストを出している宇都宮さん(絵莉、長谷川体育施設)。本当に強い選手なので。前半も強いし、後半も強いっていう。芯もしっかりしてて本当に強い選手という印象なので、絶対にオリンピックに向けて上げてくるなと分かります。この前静岡国際で勝ってはいるのですが、全然安心はできなくて、自分よりも早い自己ベストを更新しているので、追いつけるように頑張ろうと思っています。

――レース外での関わりはありますか

関本 試合では会ったら話します。試合前はみんな集中しているけど、レース後が終わった後は解放されてみんなばーっとしゃべり出すんです。その時に話したり、挨拶したりします。

 

今後に向けて

 

――今年は4×100メートルリレーにも取り組みます

関本 やっぱり100メートルも普段からハードルの練習をしているので、練習中にあそこまでスピードを出すことがほとんどなくて。そのスピード感に足がついていかなくて春先にケガもありましたが、注意しながらスピード練習も入れられているので、それが400メートル障害にも生きてるなと思ってます。そこからまた100メートル障害の方も上がってきていて、その流れで調子がちゃんと上がっていると実感できています。スピード練習を入れたのも新たな刺激かなと思っています。

――どうやって練習の兼ね合いをしているのでしょうか

関本 4種目出場するので…。でも4種目全部頑張りたいですし、いい成績を残したいので、長い系もやるし、スプリント系もやるしで、あれもこれもやりたいのが正直なところです。

 一日のなかでもいろんな練習を入れてしまったり欲張ってしまったりするんですけど、そうなるとケガがついてきてしまうので…。ちゃんとスケジュール管理をして、今週はここを重点的にやるとか、そろそろ足も慣れてきたからスピード系もちょっと入れてみるとか、そういう工夫はしています。

――関カレは非常にハードスケジュールになると思います

関本 大学に入って、一番走るんですよ、今回(笑)。さすがに4種目出たことなくて。今までの関東インカレでは100メートル障害も出てたのですが、予選落ちしてて、まだ準決勝を走ったことがないです。

 でも今年はベストも更新できて決勝を狙っています。そうなると400メートル障害も3本とかになってくるので、本数の多さと、スピードが違う競技なので切り替えられるかという不安はありますが、どっちもいけるように練習を積んでいるので、なんとか乗り切りたいなと思っています。

――お二人とも個人種目とマイルやリレーに取り組まれていますが、それぞれどんな思いで取り組んでいますか

山内 去年400メートル障害で優勝しているので、黒川に勝って2連覇、男女アベックもあるので絶対優勝したいなと思っています。たぶん風が強くなって条件的には厳しいと思いますが、その中でも今まで先生やコーチ陣と作って積み上げてきたレースをしっかり実行して、タイムにつなげられればいいかなと思っています。

――マイルに関してはいかがですか

山内 強い先輩が抜けて、周りからも力が落ちたんじゃないかと思われがちですが、全体的に今男子は自己ベストを更新している人も多くて、層も厚くなってきた感覚があります。各自が自信を持って走ることができれば、ちゃんと優勝もできて去年に引けをとらないタイムで走ることができるのではと思っています。

――関本選手は、まず個人種目についてはいかがですか

関本 100メートル障害は4回目の出場で、決勝に残るのが一番の目標です。ただやっぱりチームに貢献したいという思いも強いので、決勝に残れたら1点でも多く取りたいです。まずは、決勝に残ることを確実にやっていきたいなと思っています。

 400メートル障害は、今まで小山さんが4連覇していて1回も勝ってないので、小山さんが抜けた後の次の優勝は自分がしたいなと思っています。今回は(レースの)本数もすごく多くて、負担もすごく大きくなる試合になってくるので、記録というよりは確実に勝って点数を取る方を重要視してやりたいです。

――リレーはいかがですか

関本 4継は関カレでは初めての挑戦になるので、他の強い大学の選手たちと走れるいい機会だなと思います。スピード感をもらいながら全カレの標準記録突破と同時に、決勝に残って1点でも取れたらちょっと変わってくるかなと思うので、そこに向けてみんなで頑張りたいなと思っています。

 マイルは今年3連覇がかかっていて、早稲田は関東では一番強いんだぞというところを見せたいなと思います。絶対的エースだった小山さんが抜けたことは痛手ではありますが、それでも強い選手がそろっているので、みんなで3連覇を目指したいなと思っています。

――男子のマイルリレーもメンバーが変わりました

山内 冬季から新チームになって、やっぱり戦力が落ちたと思われがちで、自分たちでも引け目を感じていた部分もあったんですけど、ここにきてみんなの調子がしっかり上がっています。藤好(駿太、スポ2=福岡・修猷館)も46秒5という日本でも上のレベルのタイムで走っていて、小竹(理恩、スポ4=栃木・佐野)もしっかりチームをまとめてくれて、マイルでは去年からずっと安定した走りができているので、そこに関しては心配ないです。

 あとは新上(健太、人2=東京・早実)とか竹内(彰基、スポ2=愛知・瑞陵)も個人でしっかりベストを出してくれているので、短長ブロックはいい流れで関カレに向かえているのかなと思います。

 200の松本(朗、スポ4=福岡・戸畑)も六大学対校で走りましたが、READY STEADY TOKYOで自己ベストを更新していて、さらにマイルに対してやる気が(笑)。やっぱり4年目だからというのもあるかもしれないですけど、俺もやってやるぞみたいなのが、練習からも出てくるようになってきたので。雰囲気がすごくいいので、チームとしても個人としても、結構みんなに期待しています。

――最後に、早稲田でのラストイヤーをどんな1年にしたいか、意気込みをお願いします。

山内 早稲田に入って競技でも人としても成長できて、4年目で集大成ということもあるので、自分が教わってきたものや学んできて培ったものを、この1年を通して結果や普段の行動で示したいです。「あいつ、早稲田に行って良かったな」「ちゃんと成長したな」って周りからも思ってもらえるように、1年間しっかり早稲田の競走部員として走り抜けたいなと思います。いろいろと感謝の気持ちもあるので、目に見えるかたちの結果を追い求めていきたいと思います。

関本 ラストイヤーということで、悔いなくというのが一番あります。「やりきった」と思えるくらい今年は出し切りたいので、もちろん記録は自己ベストを狙っていますし、オリンピックも視野に入れています。

 それにプラスで4年生になってから後輩の指導で面倒を見たりするようになって、早稲田の競走部全体で盛り上げていい成績を残したいという思いがすごく強くなっています。自分もそうですけど、自分だけじゃなくみんなで頑張りたいなという思いがありますね。早稲田の競走部で良かったと言ってもらえるくらい、どちらの面でも出し切りたいなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 名倉由夏、布村果暖)

最後に力強く目標を書いてくださりました。 学生陸上界、いや日本陸上界のトップで活躍するお二人から、今後も目が離せません!

◆関本萌香(せきもと・もえか)(※写真右)

2000(平12)年2月23日生まれ。166センチ。秋田・大館鳳鳴高出身。スポーツ科学部4年。実は大のスプラトゥーン好きで、同期の林裕之選手とよく対戦しているそうです。競走部内でスプラトゥーンをプレイしている人が少なく、「switchを持ってる人は多いのでみんな買ってほしいです、本当に」と嘆いていました。最近は佐野陽選手に勧められて「HUNTER×HUNTER」のアニメも見ているそうです!

◆山内大夢(やまうち・ひろむ)

1999(平11)年8月24日生まれ。178センチ。福島・会津高出身。スポーツ科学部4年。寮ではアニメを見ることが多く、「僕のヒーローアカデミア」や「デジモンアドベンチャー」(1999年放送)など幅広い世代のコンテンツを押さえているようです。アニメ以外ではプロデュース101を見ており、こちらも広く推しているそうです!