国立競技場にて、東京五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」が開催され、早大からは5人が出場した。男子200メートルでは、松本朗(スポ4=福岡・戸畑)が20秒57の自己ベストをマークして2位に。また、男子400メートル障害の山内大夢(スポ4=福島・会津)は自己新、早大新、さらには東京五輪参加標準記録突破という快挙を成し遂げた。
先日の静岡国際で好成績を収めた三浦励央奈(スポ3=神奈川・法政二)と藤好駿太(スポ2=福岡・修猷館)が、それぞれ男子100メートルと男子400メートルに登場した。100メートルの三浦は予選でジャスティン・ガトリン(アメリカ)と同組になったが、スタートで足をつり、思うような走りができなかった。ただ、先日の織田記念、静岡国際から連続で、日本あるいは世界トップクラスの選手とともに走った経験から得るものは大きいだろう。400メートルには静岡国際で自己ベストを更新した藤好が出場した。今回の記録は47秒台にとどまったものの、こちらも世界リレー代表選手らのそろうハイレベルなレースで堂々と走り切った。
9人がスタートラインに立った男子200メートル決勝は、そのうちの2人が、エンジをまとっていた。3レーンの澤大地(スポ3=滋賀・草津東)と、9レーンの松本だ。6日前の静岡国際で澤は自己新記録、松本もシーズンベストタイで走るなど波に乗っている中での出場となった。ウォーミングアップの時点で好感触だったという松本は、その予感の通り前半から勢いに乗る。コーナーを過ぎてからは、元々の持ち味である後半の伸びも発揮され、スピードを保ったままフィニッシュラインへ。最後は接戦の中で、1位と約0・1秒差の2位に食い込み、20秒57で自己新記録をマーク。「周りの選手が速く、レベルの高い大会で自分のベストを出せたことは率直にうれしい」(松本)とレースを評価した。また6位の澤も20秒80の自己新記録でフィニッシュした。
静岡国際男子200メートルでゴールする松本
男子400メートル障害に出場したのは山内。静岡国際からの連戦となり若干の疲労もあったというが、「優勝を狙っていて、それに結果的にタイムがついてくればいいなと思っていたので、49秒中盤を出せれば」という思いで挑んだ。
迎えたレース本番、スタート直後から内レーンの黒川和樹(法大)が快調に飛ばし、2台目付近で既に山内を捉える展開に。しかし「前半(黒川選手に)行かれることは分かっていたので、焦らず、後半しっかり差せればと思って走った」と動じず自分のレースに集中した。前半からリズム良く進み、7台目の時点でも余力は十分に残っており、「そこからもう一段ギア上げるぞという気持ちもしっかりできていた」。
8台目以降ぐんぐん加速すると、フィニッシュラインを越えた時には1位の黒川とわずか0・16秒差にまで迫る。記録は48秒84で、従来の自己記録49秒89を一気に1秒以上更新。また早大記録も上回り、初めて48秒台に突入した。さらにこの記録は東京五輪参加標準記録をも突破しており、学生という枠にとどまらず、日本トップレベルに到達したことが証明された。「ここまでタイムが出るとは思っていなかったので、まずは(東京五輪)参加標準を切れたのがうれしい」。「トップレベルでも戦えるなともう一度実感できた」と語る。走力の成長はもちろん、この結果から得た自信を武器に、山内はさらに強くなるだろう。
静岡国際男子400メートル障害で2位となった山内
静岡国際で自己ベストを更新していなかった松本と山内が今回それを達成。春先から好記録の続出している短距離ブロックだが、この結果でさらに刺激を受けたチームメートも多いだろう。最上級生である2人のラストイヤーの活躍はもちろん、関東学生対校選手権を前に、チーム全体としてのさらなる躍進に期待がかかる。
(記事 布村果暖、写真 及川知世、手代木慶)
結果
▽男子100メートル予選(2―3+2)
三浦 10秒63(8位)(―0・2)
▽男子200メートル決勝
松本 20秒57(2位)(+1・4)自己新記録
澤 20秒80(6位)(+1・4)自己新記録
▽男子400メートル決勝
藤好 47秒01(7位)
▽男子400メートル障害決勝
山内 48秒84(2位)自己新記録、早大新記録、東京五輪参加標準記録突破
コメント
松本朗(スポ4=福岡・戸畑)
――レースを終えて、率直なお気持ちは
自己ベストが出たうれしさと、勝ちきれなかった悔しさ半々です。
――このレースでの目標は
自分の走りをして自己ベストを出すことだけに集中していました。
――レースを振り返っていかがですか
前半の100メートルで自分の課題であったフワフワする走りではなくて、腰の低い位置で、地面にインパクトを強く与えて走れたのが良かったかなと考えています。
――100メートルの通過タイムはいかがでしたか
10秒39でした。普段より0・5秒速いくらいです。
――前半部分を強化してきた成果が出てきたということでしょうか
その通りだと思います。
――後半はいかがでしたか
ラスト50メートルで少しだけバラついたかなと思います。
――順位とタイムはどう捉えていますか
周りの選手が速く、レベルの高い大会で自分のベストを出せたことは率直にうれしいです。
――このタイムが出るとは思っていましたか
思っていました。アップから「これ出るな」と。礒先生(礒繁雄監督、昭58教卒=栃木・大田原)が、「今日調子いいぞ」っておっしゃってくださっていたのですが、先生の言うことは大体合っているのでそれが自信につながりました。
山内大夢(スポ4=福島・会津)
――レースを終えて、今のお気持ちは
自己ベストを狙っていたのでそれを更新できたのはもちろん、2位に入ったこともうれしかったのですが、五輪参加標準を切れるということは自分でも全然想定していなかったので、それに一番驚いています。
――今は驚きが一番大きいと
少し現実を受け入れ始めて(笑)。自分も切ったんだという実感が湧いてきたのですが、国立競技場がすごく走りやすかったのもあるので、慢心しないようにというのを今一番思っています。
――このレースでの目標は
まずポイントが高くなる優勝を狙っていて、それに結果的にタイムがついてくればいいなと思っていたので、49秒中盤を出せればいいなと思っていました。順位もタイムも意識していました。
――静岡国際からの連戦となりましたが、体の調子は
若干疲労を感じていたのですが、体の状態はそこまで悪くないと感じていたので、しっかり調整すればタイムは出せるかなという手応えはありました。
――絶好調というわけではなかったのでしょうか
そうですね、体は不安な面も若干あったのですが、それが今日のアップの時点ではいけるかなという感覚にはなっていたので、心も体もちょうど整ったかなという感じでした。
――レースプランや意識していた点は
静岡では前半のリズムの流れが悪かったので、そこを焦らず刻んでつなげられればいいかなと思って走りました。
――実際のレースを振り返っていかがですか
競技場が走りやすかったのもあるのですが、自分の体もしっかり動かすことができて、前半14歩で7台目まで走ったときにまだ全然余力がありました。そこからもう一段ギア上げるぞという気持ちもしっかりできていたのが、後半の走りにつながったと思います。
――前半かなり早い段階から、内レーンの黒川和樹選手(法大)が視界に入ってきたと思います
前半行かれることは分かっていたので、焦らず、後半しっかり差せればと思って走りました。
――後半についていかがですか
今までのレースの中でも後半にすごく余力のある状態で9、10台目に臨むことができました。最後差しきれなかったのは悔しかったですが、自分の中でしっかり走りきれたと思います。
――タイムと順位に関してはいかがですか
正直ここまでタイムが出るとは思っていなかったので、まずは(東京五輪)参加標準を切れたのがうれしいです。加えて、勝負のところでも、負けてはしまいましたが2位に入れたことで、トップレベルでも戦えるなともう一度実感できました。今後の試合でも気持ちで負けることなく勝負していきたいと思います。
――自己ベストを1秒以上更新しましたが、その最大の要因はどんなところだと考えていますか
単純に走力が上がったのと、今日のレースがリズム的には一番うまく走れたのが、自己ベストにつながったのではないかなと思います。