三浦が100メートルA決勝に進出! 一方で課題残る選手も

陸上競技

 男子100メートルをはじめ、日本トップクラスの選手が集結した今年の織田幹雄記念国際大会(織田記念)に、早大からは4人が出場した。男子100メートルでは、三浦励央奈(スポ3=神奈川・法政二)が見事A決勝に進出。山縣亮太(セイコー)、小池祐貴(住友電工)、桐生祥秀 (日本生命 )、多田修平(住友電工)ら日本代表選手と肩を並べた。また、男子3000メートル障害では、諸冨湧(文2=京都・洛南)が自己ベストを更新した。男子110メートル障害には、森戸信陽主将(スポ4=千葉・市船橋)と勝田築(スポ4=島根・開星)が出場したが実力を出しきれなかった。

 

★自己ベストを5秒短縮も、悔しさ残る(男子3000メートル障害)

障害を超える諸冨

 男子3000メートル障害には、4月18日の東京六大学対校大会で1位に輝いた諸冨湧が出場した。このレースでの目標は、日本選手権参加標準記録の8分40秒切り。「トラックシーズン前期としては一番大きく、重要なレース」という位置づけで臨み、8分45秒74の自己ベストをマークした。

 

 最初の1周は、潰滝大記(富士通)が集団の先頭に立ち、68秒で通過。諸冨は集団真ん中の7番手につけていた。2周目以降に塩尻和也(富士通)が抜け出すとその後ろに大きな集団が形成され、大きな変動はなくレースが進んでいく。しかし中盤になると「もう少し我慢して後半につなげていければ」と反省点に挙げたように諸冨はその集団内で徐々に後退してしまう。ラスト3周以降は、「中盤の悪い流れのままずるずる行ってしまった」と振り返るように、その集団からも少し離れた第3集団でレースを進め、10位でフィニッシュした。

 

 8分45秒74をマークし、昨年の日本学生対校選手権で出した8分50秒70の自己ベストを約5秒も更新した。それでも、「自己ベストですが全然納得はできていない」と、目標タイムに届かなかったことへの悔しさが大きいようだ。次なる舞台は関東学生対校選手権(関カレ)。日本選手権標準切りも見据え、「タイムを意識した、チャレンジするレースをしたい」と、リベンジを誓う。

(記事、写真 布村果暖)

 

★三浦がA決勝に進出! 日本代表選手とのレースで、大きな収穫得る

決勝レースを走る三浦

 男子100メートルには、三浦励央奈が出場。予選で10秒47(+0・9)の好タイムをマークし、見事A決勝に駒を進めた。日本代表選手が集う決勝では、10秒65(+0・1)の8位でフィニッシュした。

 

 当初、予備予選からの出場が予定されていた三浦。しかし当日急きょ繰り上がり、グランプリ予選からの登場になった。昼間に行われた予選は雨が降りしきり、気温も低い悪コンディション。また隣のレーンにはスタートを強みとする多田がおり、自身の走りへの影響も懸念された。しかし実際は「自分の走りにフォーカスできた」といい、10秒47の好タイムをマーク。組3着であったがタイムで拾われ、見事に学生で唯一A決勝進出を決めた。

 

 A決勝に進むことはあくまで「最低限の目標」だと冷静に捉えていたが、やはり日本トップクラスの選手が集結するレースを前に、一番は楽しみな気持ちが大きかったという。「陸上をやっていても、あの方々と一緒に走れる機会はなかなかない」という高揚感。そして、「そういう機会が自分に転がってきたのは無駄にしたくない」との覚悟のもとスタートラインに立った。号砲が鳴ると、一番に飛び出したのは、三浦だった。リアクションタイムは0・131秒でなんと組最速。そのまま20メートルほどトップ選手らと並んだが、「それで『おっ』と思った瞬間から自分のやりたかった走りが飛んでしまって、うまく走れなくなってしまった」と、スタートが想像以上に良かったことで動揺が生じた。「そこに対応できなかったのは、経験不足」だと、自分のレースを遂行できなかったことへの反省を口にした。

 

 決勝のタイムは、予選より遅い10秒65。ただそれでも、このレースは三浦にとって結果以上に『経験』として大きな意味を持つ。「あんなにワクワクしたレース」は今までになかったと言い、「走るまでの段階とか、召集所とか、ゴールしてから4人が隣で会話しているんですよ。『面白い話しているな』って。レースもそうですし、(日本代表選手たちの)レース前後の過ごし方も見て、色んな面で勉強になった」と、レースのみならず、その前後も含めて吸収するものが非常に多かったと語った。さらに「僕も織田記念の決勝でシードレーンに入れるような選手になりたいという思いが強くなった」と刺激も受けたようだ。この貴重な経験は間違いなく今度に生きてくるだろう。1年目から結果を残してきた三浦の、3年目でのさらなる飛躍に期待が高まる。

(記事、写真 布村果暖)

※掲載が遅くなり、申し訳ございません。

結果

▽グランプリ男子100メートル

予選(2組2着+2)

三浦 10秒47(+0・9)(2組3着)決勝進出

A決勝

三浦 10秒65(0・1)(8位)

▽グランプリ男子3000メートル障害決勝

諸冨 8分45秒74(10着)自己新記録

▽グランプリ男子110メートル障害

予選(3組2着+2)

森戸信陽主将(スポ4=千葉・市船橋) 14秒45(+0・5)(2組7着)

勝田築(スポ4=島根・開星)  14秒25(+0・7)(3組6着)B決勝進出

B決勝

勝田 14秒72(+1・4)(6着)

コメント

三浦励央奈(スポ3=神奈川・法政二)

――この大会には、どんな位置づけで臨みましたか

自分より速い選手がたくさんいて、そうした選手と走れる数少ない機会だったので、自分の経験値を上げるという意味を持っていました。さらに六大学(対校大会)で出た、一次加速と二次加速のつなぎ目をスムーズにして前半が後半に生きてくるように、という課題を修正できるか確認する意味もありました。

――目標は

10秒40を切ることと、A決勝に進出することでした。

――当日急きょグランプリ予選への繰り上げになりました

予備予選からのスタートを想定して行動していたのですが、7時に着いたら(レースが)なくて。12時になったので、大変でしたね。

――調子はいかがでしたか

体はすごく動くなと思っていたのですが、そこに頼ってしまって。自分の中でもう少し丁寧な動きづくりをウォーミングアップの段階でやっていればよかったなと思います。

――予選を振り返っていかがですか

後半多田さんとか速い選手が前に出られていた中でも、自分の走りはできたかなと思います。ただ最初の20、30メートルまでのところでスピードに乗れなかったわけではないですが、もう少しうまく、力ではなく技でスピードに乗せられたかなと思います。そこはもったいなかったかなと思います。

――隣のレーンに、スタートの速い多田選手がいました。自分の走りに影響はありましたか

もっと意識してしまうかなと思いましたが、(実際は)あまり意識せず、自分の走りにフォーカスできたかなと思います。

――予選の走りは全体的にどう評価しますか

10秒4台を出せるようになってきたのは成長を感じます。織田記念という舞台でもあったので、全体的な評価としてはよかったです。

――決勝が決まったときの心境は

最低限の目標は達成できたなと思いました。特にうれしいとかはあまりなかったです。ただ実際にスタートリストを見たときは、「ここに(自分が)立つのか」という気持ちになりました。

――決勝までの心境は

一番は楽しみだなという気持ちが強かったです。陸上をやっていても、あの方々と一緒に走れる機会はなかなかないですし、そういう機会が自分に転がってきたのは無駄にしたくないという思いもありました。

――緊張はあまり大きくなかったのですか

緊張はしました。ただやはり楽しみという気持ちの方が大きくて。スタートラインに立ったときもメインスタンドが埋まっていて、自分はまだそんなに有名な選手ではないですが、それでも選手紹介のときにすごく大きな拍手をしてくれて。それはうれしかったし気持ち良かったですね。スタートラインに立ったときも楽しさを感じました。

――決勝の走りを振り返って

スタートが良くて、20メートル手前くらいまでは代表選手と並べるくらいで。ただ、それで「おっ」と思った瞬間から自分のやりたかった走りが飛んでしまって、うまく走れなくなってしまいました。本来はある程度遅れたところで自分の走りを刻もうと思っていたのですが、自分が前に出てしまうのが想定外でした。そこに対応できなかったのは、経験不足が出たかなと思います。

――このレースを経験して得られたこととは

織田記念の決勝を走れたという事実と、9秒、10秒0台の日本代表選手と一緒に走ることができたという2つの事実からすると、自分の経験値自体は非常に上がったのかなと思います。陸上をやっていて、これから先そんな機会はたくさんあるわけではないので、非常にいい経験になりましたし、そこに自分が立てたのも自信になりました。

――経験値というのは具体的にどんなところですか

なんていうんですかね…。あんなにワクワクしたレースはないですよ、今まで。レース自体うまくいったわけではないですが、走るまでの段階とか、召集所とか、ゴールしてから4人が隣で会話しているんですよ。「面白い話しているな」って。レースもそうですし、(代表選手たちの)レース前後の過ごし方も見て、色んな面で勉強になりました。僕も織田記念の決勝でシードレーンに入れるような選手になりたいという思いが強くなりました。

――その経験を今後にどうつなげていきたいですか

段階を踏んで成長していくのがセオリーというか、成長していくステップだと思うので、(今回は)急に織田記念のA決勝にいってしまったというところがあると思います。まずはちゃんと学生の大会でメダルを取ったり優勝できる選手になって、そこからシニアの大会でも活躍できる選手になっていきたいです。

――次戦、静岡国際での目標は

最低限決勝進出を目標にしています。日本選手権の標準記録が20秒65になってしまったのですが、それに近いタイムを出して、うまくいけば3番に入れると思うので、決勝に進出して。それを目標に自分の走りをして、織田記念で得た経験をちゃんと咀嚼(そしゃく)して、自分のものにできたらいいなと思います。

――1番の課題は自分の走りをするというところですか

そうです。ただ自分が一番速いレースだとそれをできるのですが、周りの速い選手に並ばれるとやっぱり速く走らなきゃという思いと、勝たなきゃという気持ちが先行してしまって、焦点が周りに合ってしまうことがあるので、そこが課題です。

諸冨湧(文2=京都・洛南)

――この試合の位置づけは

日本選手権(参加標準記録)の8分40秒を切るところを狙った、僕の中ではトラックシーズン前期としては一番大きく、重要なレースでした。

――タイムと順位ではタイムの方を意識していたのですか

そうですね、周りのシニアの選手には強くて力のある選手がいたので、順位よりタイムをどこまで伸ばせるかを意識して走りました。

――目標はどのようなことを掲げていましたか

8分40秒を切るという一点に絞っていました。

――レースプランは

シニアのレースで、自分が引っ張る展開はないのでなるべく前の方でいい位置取りでついていくということだけを意識しました。

――実際のレース展開を振り返っていかがですか

序盤は良かったのですが、一番問題だったのは中盤です。ラップライムを見ても3分近くかかっていて、そこで先頭集団から離れてしまいました。もう少し我慢して後半につなげていければタイムも良かったと思うので、中だるみしてしまったというところが今回の一番の反省点かなと思います。

――中盤が課題だったということですが、体の動きなどはいかがでしたか

今回は上半身、特に腕が固まったと感じていて。筋力的なところなのかは、もう少しこれまでの過程などを分析して見直さないと分からないところではありますが、それがあって最後は力みが出てしまったので、今回の課題として出てきたのかなと思います。

――後半に関してはいかがですか

中盤の悪い流れのままずるずる行ってしまったと思っています。六大(東京六大学対校大会)ではラストがかなりかかったので、その時よりは少し改善されているのかなと思ったのですが、シニアで戦うというところではタイム的に見てもまだまだ自分の力がないなと感じました。

――中盤から後半にかけてはいくつかの大きな集団に分かれていましたが、どんなことを意識していましたか

離れてしまってからはあまり先頭集団を見すぎるとじりじり離されてしまうので、まず目の前の選手を見ながらなるべくペースを落とさないように、ということは意識していました。でもやっぱりそうなっている時点であまり良くないので、そこは自分の実力不足というか調整不足かなと思います。

――中盤は前の集団のペースが落ちたのでしょうか

ペースは上がっていないので、僕が落ちた感じだと思います。

――タイムについてはどう捉えていますか

自己ベストですが全然納得はできていないです。ここから日本選手権に向けても関カレが残っているので、コンディション的にもまだ狙えるかどうか分からないんですが、少なくとも8分40秒は見据えながら、改善すべきところは改善したいと思います。今シーズンに入って体の調子自体は悪くはなくて、8分40秒を狙っていける状態だと思うので、あとはどういう準備をして体を整えられるかが課題だと思います。意識を高く持っていてやっていきたいです。

――次のレースとそこでの目標をお聞かせください

次は関カレです。学生個人(日本学生個人選手権)はまだ出場するか分からないですが、出られれば日本選手権という流れになるので。まずは関カレに向けて体を整えるというところと、短い時間の中でいかに効率よく改善していけるかを意識してやっていきたいなと思います。

――関東学生対校選手権での順位の目標はありますか

もともと関カレは順位にこだわっていて、三浦(龍司、順大)がいるので、3位以内を目標にしていました。でも今回これだけタイムを出せなかったので、予選ないしは決勝ではタイムを意識した、チャレンジするレースをしたいなと思っています。