ラスト1周で井川の爆発力が光る チーム内3人目の27分台ランナーに

陸上競技

 早大が戦力の高さを見せつけた。日体大で行われた日本学連1万メートル記録会に、太田直希(スポ4=静岡・浜松日体)、中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)、井川龍人(スポ3=熊本・九州学院)の3人が出場。「27分台を出すことだけを意識していた」という井川が、自己ベストを10秒以上更新する27分59秒74をマークした。昨冬の中谷、太田に続いてチーム3人目となる、1万メートル27分台に突入する快挙を成し遂げた。

 

 本来ワールドユニバーシティゲームズの選考会として設定されていた今試合。しかしレース5日前に本戦の延期が決まり、通常の記録会として開催された。序盤は大きな集団のまま1000メートル2分48秒のペースで進む。集団内で中谷は先頭付近、太田は中央、井川は後方につけた。変化があったのは6000メートル付近。先頭のペースがわずかに上がると、太田は「そこで対応できなくなってしまった」と第2集団に下がってしまった。一方の井川は徐々に前の選手を捉えていく。虎視眈々(たんたん)と力をためていた井川は、ラスト1周でその強さを遺憾なく発揮した。「ラスト400メートルで(電光)掲示板を見たら27分00秒だったので、60秒以内で回ってこられれば(28分を)切れるんだと思って、そこはもう元気を出して頑張った」とギアを上げ、27分59秒74でゴール。着順も学生トップとなり、「勝ちにこだわったレースができた」と振り返った。最後まで先頭集団でレースを進めた中谷は28分06秒33のセカンドべスト、終盤は単独走となった太田も28分台でまとめた。

3月末の早大競技会3000メートルでも最後に追い上げ組トップに輝いた井川

 

 好タイムをマークした井川の結果は「僕ら最上級生にもかなり刺激になった」と太田が話すように、チーム内に一層競争の激化をもたらすはずだ。トップランナーの証である1万メートル27分台を3人そろえ、戦力を充実させた早大。きたる対校戦ではタイム以上に勝負強さが試される。エンジが躍動する姿が見られるのは、もうすぐだ。

(記事 朝岡里奈、写真 横澤輝)

 

結果

 

▽男子1万メートル

井川龍人  27分59秒74(2着)

中谷雄飛  28分06秒33(7着)

太田直希  28分53秒07(13着)

コメント

太田直希(スポ4=静岡・浜松日体)

――このレースまでの調子はいかがでしたか

ケガもなく練習はわりとできていたので、そんなに調子は悪くなかったと思います。早大競技会の時は立川(日本学生ハーフマラソン選手権)の疲労が結構あったのですが、そこから徐々に疲労も抜けた感じでした。

――数日前にワールドユニバーシティゲームズの延期が決まりましたが、それはどのように感じていましたか

仕方ないことで、レースに出ることには変わりがないので、そこはそんなに気にせず、勝負もそうですが記録も狙いにいこうという気持ちでした。

――以前は今試合で3番以内が目標とおっしゃっていましたが、その目標は変わっていましたか

そんなに変わっていなくて、とにかくいけるところまでいくというか、3番というところをずっと見据えてレースを走っていました。タイムもペースメーカーが27分55秒でいくと聞いていたので、そこについていってあわよくば自己ベストというふうに狙っていました。でも始めの方から体の状態が良くないことに気づいてしまって、メンタル的にも体的にもどんどんきつくなってしまいましたね。

――走り始めてからは体の状態が良くなかったのですね

そうですね、昨日の刺激とかもそんなに悪くなかったのですが、体感のスピードと走っているタイムがあまりかみ合っていなくて。あまり速いペースじゃないのにきつくなってしまって、体が動かないという状態でした。

――体の状態が良くないことはどのあたりで感じ始めたのですか

最初の1000メートルくらいですね。体が動かないのは最初から感じていて、今どうしてその状態になってしまったのか原因が分かっていないので、それは後日でも考えないといけないなと思います。

――集団内の位置は想定通りでしたか

そうですね、5、6番手くらいでついていたので、結構イメージ通りの位置でした。

――6000メートルあたりで第2集団にいるのがうかがえましたが、どのように展開していったのですか

6000メートルまでは先頭集団にいたのですが、そこでちょっとペースが上がって対応できなくなってしまって、ずるずるいってしまった感じですね。ペースはちょっとしか上がってないと思うのですが、そこでも結構いっぱいいっぱいだったので、全然耐えられなかったです。

――そこからは第2集団で走っていましたか

そうですね、4人くらいの集団で走っていました。

――そのペースはいかがでしたか

結構落ちていて、3分くらいまで落ちていました。それくらいまで落ちても感覚は良くなかったです。

――だんだん単独走に近いかたちになっていったようですが、それはどのあたりからでしたか

8000メートルくらいですね。あまり何も考えられなくて、でも自分は体も動かないし、何で体動かないんだろうと思いながら走っていました。最後も上げられなくて、完全に不完全燃焼という感じですね。

――タイムや着順になどについてはどのように感じていますか

全然狙っていたところには程遠いし、本来なら合わせるべき大会だったのですが自分の状態も合わせられなかったというのは、自分の弱さが出た試合だったかなと思います。

――ご自身で一番課題だった点を挙げるとすればどんな点でしょうか

きつくなってからもう一回粘れたら良かったなと思っていて。単独走になる前に集団で走っていたところからもう一回粘れていたらもう少しまとめられたかなと思います。

――井川選手の27分台についてはどのように感じていますか

井川は、けがはありましたけど立川には出ずにトラックに絞っていた感じだったので、そこで結果を出したのは僕ら最上級生にもかなり刺激になりました。もう一回頑張らないといけないなと思います。

――今日の結果をどのように次につなげていきたいですか

今回こういう不完全燃焼な試合だったので、やっぱり直さなければいけないところとか弱さとかは絶対にあると思います。そこはしっかり反省して、勝負のところでしっかり結果が出せるような、強い選手になれるよう、今後につなげていきたいです。

中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)

――日本学生ハーフマラソンが終わってからはどのような練習をしてきましたか

ハーフマラソン前から量を多めにしてきましたがそれを継続しつつ、スピード練習も本格的に取り入れてここまでやってきました。

―― 2週間前、調子が上がり切ってないとうかがっていたのですが、今回はどうでしたか

動き自体はだいぶいいものになってきたかなという感覚はあったので、できる限りいい状態に仕上げることはできたかなと思います。

――ワールドユニバーシティゲームズの選考会ではなくなりましたが、どんな目的で出場されましたか

勝負するレースということで準備をしてきたので、記録会になったことはとても残念でした。ですが、そうした中でもとにかくトップを獲るつもりで頑張りました。

――レースプランについては

ペースメーカーの選手がいるということで、いかにしてその選手の力を借りて走るかということを考えていたので、その選手のすぐ近くを走るつもりでした。

――勝負に徹していたということですか

そうですね、先頭の選手についていって、レースが動いた時にすぐに反応できるように意識して位置どりました。

――現地のコンディションは

風はなかったのですが、少し気温が低いかなと感じました。

――2分48秒に対してどこまで余裕はありましたか

7000メートルぐらいまでは余裕をもって走れましたが、前半小刻みにペースの反動があったので、ところどころ足が詰まることがあって、そこで足を使ってしまった感じがありました。

――ラスト3周あたりからポジションを下げていましたがそれも疲労からですか

そうですね、レースが動いた時に反応することができませんでした。脚が残っておらず、体もいっぱいいっぱいでした。

――ラストの展開についてはいかがですか

ラスト1周に入った時に、前との差が結構あったので、それを詰めるつもりで頑張りましたが、なかなか詰まらなかった印象です。

――タイムに関しては

コンディショニングの観点などからベストを出すのは難しいという話を相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)としていたので、27分台を出すのは厳しい感じはしていましたが、実際は28分一桁で収まったので、想定よりは走れた感じはあります。ですが、周りと比較したときにまだまだというか、中途半端な結果に終わったなと思います。

――着順については

そこに関しても中途半端だったかなと。もう少し勝ち切る強さを身につけたいです。

――ここからは何を目標に仕上げていきますか

出るかはまだわからないですが、日本選手権にエントリーするので、しっかり準備していきたいと思っています。

井川龍人(スポ3=熊本・九州学院)

――今大会の位置づけは

27分台で走るというのと、あとは久々に中谷さんと(太田)直希さんと同じレースを走るので、今年の目標というか、勝ちにこだわる試合として臨みました。

――順位とタイムの具体的な目標はありましたか

1番を取りたいというのと、27分55秒くらいが設定ペースだったのでそのあたりを狙っていこうかなと思っていました。

――今大会は元々ワールドユニバーシティゲームズ1万メートルの代表選考会でした。本戦の延期によるモチベーションへの影響はありましたか

27分台を出すことだけを意識していたので、モチベーションの変化はそこまでなかったです。

――3月28日時点では本調子ではなかったということでしたが、今日に至るまでの調子は

ここ1週間くらい体が重くて、3月に結構練習を積んだのでその疲労がきたのかなと思いながら、練習量を減らして、結構試行錯誤しながら練習してきました。減らした結果、いい走りができたので今回の調整は成功したのかなと思います。

――レース中の体の動きはいかがでしたか

最近の中で一番調子が良くて、思い通りの走りができました。

――レースプランは

きつくても離れないようにして、ラストどこまで上げられるかというのを考えていました。

――序盤は集団後方でレースを進めていましたが、その位置どりについてはどう捉えながら走っていましたか

前の方が走りやすかったといえば走りやすかったと思いますが、人数が多くて結構ごちゃごちゃしていたレースだったので、最初に位置が決まってしまいました。なのであまり力を使わないように、そこで動かないようにしておこうと思いました。

――後半に向けて、あえて力をためていたということでしょうか

そんな感じです。

――レースは1キロ2分48〜49秒で進みましたが、このペースについてはどう感じていましたか

5000メートルの通過がたしかに14分04秒くらいだったと思いますが、その辺は結構楽にいけていたので、27分台を狙うならもう少し速くてもいいんじゃないかなと思いながら走っていました。

――3月末の早大競技会のときに、「最後まで先頭付近につければ勝つレースをできるかもしれない」とおっしゃっていましたが、今回のように後方から進める展開も、勝つ上では想定内でしたか

途中で何人かは絶対落ちてくると思っていて、いずれ(自分が)先頭の方に立つんじゃないかと思っていたので、別にそこは焦らずに、少しずつ前を目指していました。

――最後は先頭集団の7番手につけていましたが、そこからラストで先頭に立つイメージはできていましたか

正直ラスト800メートルでもう体が動かなくて、結構離されてしまっていました。でもラスト400メートルで(電光)掲示板を見たら27分00秒だったので、60秒以内で回ってこられれば(28分を)切れるんだと思って、そこはもう元気を出して頑張りました。

――掲示板の27分00秒の表示が、ラスト1周でペースを上げるモチベーションになったと

はい。

――ラスト1周の展開を詳しく振り返っていただけますか

前に学生が2人いたのはたしかで、抜いたのはラスト200メートル手前くらいに1人、ラストの100メートル過ぎのごちゃごちゃしていたところでも抜いたと思います。ただ、きつくてあまり正確な記憶ではないかもしれないです。

――ラストの400メートルはどれくらいまで上げられましたか

微かな記憶だと27分00秒で通過したので、たぶん59秒か58秒くらいで回りました。

――ラスト1周でそこまで上げられたのは、27分台を出したいという気持ちですか

27分台を出したいというのと、何日か前にラスト1本が400メートルという練習があって、それを55秒くらいで結構楽に走ったので、そのくらい走れるなら60秒を切るのは余裕だなと自分に言い聞かせて最後は走りました。

――レース結果について率直な気持ちは

ギリギリではありましたが、27分台に入れたので良かったなと思います。

――点数をつけるとしたら

90…92点。100点にはまだ全然及ばないですが、90点と言おうと思ったけど学生ではしっかり1番を取れたので、2点プラスということで(笑)。

――27分台という記録と、学生内でトップを取ったというのは、どちらを達成できたことが自分としては大きいですか

27分台の方がうれしかったかなと思います。

――今日のレースで27分台を出せる感覚はありましたか

正直走る前までは本当に分からなくて。調子もずっとそこまで上がっていなかったので不安なところはありました。ただ、調子が良すぎると逆にプレッシャーになってしまって、緊張して空回りしそうな感じがあるのですが、それがなかったから今回の結果が出たのかなと思います。

――緊張やプレッシャーは普段から感じますか

たぶん他の人に比べるとそこまで感じない方だとは思いますが、駅伝シーズンは結構感じますね。

――今日この結果を出せた要因はどんなところが大きいと思いますか

やっぱり3月に学内でも1番走り込んでいたのでそれが一番大きいかなと思います。たぶんそこまで多くはないのですが、700キロ走っていました。夏合宿以外では初めてだと思います。みんなは2月とかその時期にきているのですが、僕はケガでずっと走れていなかったので、3月にたくさん走るようにしました。

――今回の良かった点と反省点は

良かったところは、しっかり勝負に徹して勝ちにこだわったレースができたところです。反省点は、今回はほとんどなかったかなと思いますが、これから先もっと高いレベルで勝負するときに、1周1周がもっと速くなると思うので、それに対応できるようにもっと練習が必要だと思うので、頑張りたいと思います。

――日本選手権1万メートルの参加標準記録(27分55秒00。※申込資格記録は28分16秒00)にも近づきました

今のところ分かりませんが、出られるならたぶん日本選手権の方に出ると思います。