今年で95回を数える早慶対抗競技会が、慶大のホームグラウンドである日吉陸上競技場で開催された。各種目上位3人に得点が与えられ、その合計を競う形式で行われた一戦。早大はアウェー戦となったが、トラック種目の全競技で優勝を飾るなど慶大を圧倒。さらに4×200メートルリレー(8継)では日本新記録をマークする活躍もあり、総合で36点を獲得して2年連続の優勝を果たした。これにより通算成績を1勝伸ばし、74勝19敗2ノーゲームとした。
早大は出足から順調に得点を重ねていく。大会最初のトラック種目となった400メートルで、伊東利来也(スポ3=千葉・成田)と小久保友裕(スポ3=愛知・桜丘)の日本学生対校選手権(全カレ)表彰台コンビがワン・ツーフィニッシュを飾ると、100メートルは南山義輝(スポ3=福岡・小倉東)、三浦励央奈(スポ1=神奈川・法政二)、佐野陽(スポ2=埼玉・立教新座)の3人が上位を独占。さらに、110メートル障害と1500メートルでも1位、2位を占めた。
フィールド陣も健闘。走幅跳では中村健士(スポ4=東京・調布北)の優勝を始め、短距離の髙内真壮(スポ4=栃木・作新学院)も自己ベストで続いた。棒高跳は平川巧(スポ1=静岡・磐田南)がルーキーながら1位を占め、雨宮巧(社4=山梨・巨摩)はサブ種目の円盤投で2位を確保。また、走高跳では八木颯太(スポ1=福岡)が3位決定戦のジャンプオフを制し、貴重な1点をチームにもたらした。得点を勝ち取ろうとする選手の姿が随所で見られた。
トップ3を独占した対抗100メートル。左から南山、三浦、佐野
大会のハイライトは最終種目の8継にあった。目指したのは、早稲田記録であり日本記録である1分22秒12の更新。南山、三浦、伊東、小久保という「記録を塗り替えられるメンバー」(伊東)で臨んだ。レースは100メートル、200メートル専門の南山と三浦を1、2走に置いた早大が慶大に大差をつける展開で進む。その後も差は縮まるところを知らずリードを広げていく。結局慶大に2秒以上先行して、アンカーの小久保がフィニッシュラインを駆け抜けた。記録は1分21秒91と、狙い通りに日本記録となる早稲田記録を5年ぶりに更新。この結果に選手たちは笑顔を見せ、早大の優勝に華を添えた。
8継では慶大にぶっちぎりの差をつけアンカー小久保がフィニッシュした
対抗得点の総合優勝について、西久保達也主将(スポ4=埼玉・聖望学園)は「一人一人が最大限力を発揮できた結果だと思う」とまとめた。今年の関東学生対校選手権(関カレ)、全カレではあと一歩個々の成績が及ばず、得点面で満足いく結果を得られなかった。それだけに今回、全カレでトップ8に進出できなかった100メートルの南山や走幅跳の中村が勝ち切ったことは大きい。
今大会で西久保が主将として臨む対抗戦は幕を閉じた。8継など3年生以下がタイトルを取った種目は5を数え、「今後のチームにとって追い風になったと思う」と、西久保は下級生の活躍に期待を寄せる。4年生の思いを受け継いだ後輩たちが来シーズン以降、さらにエンジのユニホームを輝かせていきたい。
(記事、写真 岡部稜)
結果
▼対抗の部
▽100メートル(+0.5)
南山義輝(スポ3=福岡・小倉東)10秒38(1位)
三浦励央奈(スポ1=神奈川・法政二)10秒49(2位)
佐野陽(スポ2=埼玉・立教新座)10秒72(3位)
▽400メートル
伊東利来也(スポ3=千葉・成田)46秒51(1位)
小久保友裕(スポ3=愛知・桜丘)46秒78(2位)
小竹理恩(スポ2=栃木・佐野)48秒23(6位)
▽1500メートル
齋藤雅英(スポ4=東京・早実)3分55秒33(1位)
西久保達也(スポ4=埼玉・聖望学園)3分57秒02(2位)
徳永翼(人4=岡山操山)3分57秒62(4位)自己新記録
▽110メートル障害(-0.3)
森戸信陽(スポ2=千葉・市船橋)13秒84(1位)
勝田築(スポ2=島根・開星)14秒63(2位)
後藤颯汰(スポ1=長崎・五島)15秒09(5位)
▽4×200メートルリレー
早大(南山-三浦-伊東-小久保)1分21秒91(1位)
日本新記録 早稲田新記録 大会新記録
▽走高跳
八木颯太(スポ1=福岡)1メートル96(3位)
▽棒高跳
平川巧(スポ1=静岡・磐田南)4メートル80(1位)
小野想太(スポ2=香川・観音寺一)4メートル40(3位)
▽走幅跳
中村健士(スポ4=東京・調布北)7メートル48(+0.6)(1位)
髙内真壮(スポ4=栃木・作新学院)7メートル31(-3.0)(2位)自己新記録
林裕之(法2=早稲田佐賀)6メートル80(+1.9)(5位)
▽円盤投
雨宮巧(社4=山梨・巨摩)37メートル08(2位)
森戸 26メートル82(5位)自己新記録
▽やり投
南山 43メートル36(4位)自己新記録
●対校得点
早大 36点
慶大 21点
(通算成績74勝19敗2ノーゲーム)
▼オープンの部(出場選手のみ掲載)
▽男子100メートル
山下和也(スポ3=東京・八王子)10秒83(+0.9)(1組1着)自己新記録
野口友希(スポ1=神奈川・横須賀)10秒89(+1.1)(2組1着)
▽男子400メートル
折田歩夢(スポ3=鹿児島・甲南)48秒31(1組1着)
村木渉真(スポ3=愛知・千種)48秒87(1組2着)
山内大夢(スポ2=福島・会津)48秒40(2組1着)
コメント
西久保達也主将(スポ4=埼玉・聖望学園)、齋藤雅英(スポ4=東京・早実)
――まず1500メートルの結果を振り返っていただけますか
西久保 最初は慶應に前を行かせてレースができればと考えていました。プラン通りに走れたなと思います。
齋藤 2人(西久保と徳永翼、人4=岡山操山)はプラン通りに走ってくれたんですけど、僕は本当は900メートルくらいで余裕があれば(前に)行きたかったんですけど、思ったより余裕がなくてプラン通りのレースができなくて2人に負担をかけてしまったのかなと思います。
最後は思ったより後ろを引き離せたかなと思います。(ゴールのポーズは)自然に出ちゃいましたね(笑)。
――個人として着る最後のエンジのユニホームだったと思います
西久保 最後が1500メートルだったので……(笑)、最後は800メートルが良かったというのが正直なところなんですけど、ただエンジを着る機会が最後だったので、得点できてチームに貢献できたのは良かったと思っています。エンジの試合になるとすごく気持ちが高ぶったり、白エンジよりも重みを感じて4年間走ってきて、それが最後になるのは少し寂しい感じがします。
齋藤 僕も同じで寂しいなというのが一番ですね。正直最後とかを意識する心の余裕はなかったんですけど、走り終わってほっと一息ついたときに、「これが最後なんだ」と思うと、4年間のいろいろな思いが浮かんできて寂しいなと思うところと、安堵のようなところもありました。
――今シーズンを振り返るといかがでしたか
西久保 4年生として、そして主将としての責任があって、勝負で勝たなきゃいけないというのを否が応でも感じながらレースをして、その中で結果を残せた部分とうまくいかなかった部分とで。特に対校戦に関しては思ったような結果を残せなかったのが結構悔いがあります。
また今年は自己ベストもまだ更新できていません。毎年更新できていたんですけど、まだできていないので最後更新して終わりたいなと。できればエンジで更新できたらとよかったんですけど、最後にそこ(自己ベスト)と早稲田記録(1分47秒92)を出せればと思います。
齋藤 僕は苦しくて悔しかったシーズンだと思っています。4年間の集大成であるのと同時に競技人生として最後の年だったんですけど、記録の面でも結果の面でも全く思うようにいかなかったので、悔しいという気持ちとチームに申し訳ないところが大きいです。
――きょう早慶戦で3点取れたのはいかがですか
齋藤 この試合では最低限のことはできたかなと思います。
――西久保主将に伺います。きょうは慶大に大差をつけて優勝でした。チームの結果を振り返るといかがですか
西久保 きょうの試合では一人一人が最大限力を発揮できた結果かなと思っています。他の対校戦ももっと力を出せたらさらに良いところに行けたのかなと。もともとの予想としても、本当はもっとできたんじゃないかというのがあった中で、今回の早慶戦は期待をむしろ上回ってくれるような結果を出してくれたのはすごく今後のチームにとって追い風になったと思います。また4×200メートルリレーでも日本記録が出て、それも後輩たちの力で出せた結果でした。4年生がそこに入れなかったのは悔しい部分ではありますが、今後のチームにとっては良い収穫になったと思いますし、残りのシーズンだったり来年のシーズンにつながるような結果になったと思うので、それに向けて頑張っていってほしいです
中村健士(スポ4=東京・調布北)、髙内真壮(スポ4=栃木・作新学院)
――まず走幅跳の結果を振り返っていただけますか
中村 100パーセントの跳躍はできなかったと思うんですけど、先週の全カレ(日本学生対校選手権)のときに、自分の中で悪い内容で終わってしまったので、その面では、記録をまず残して、そして記録を伸ばすという最低限のことはできたと思います。
日本選手権の時の感覚がすごく良かったのですが全部忘れてしまって。自分の中で初めて悪い感覚でした。今まで跳んでて感覚が悪かったことはなかったんですけど、それが初めてここ何試合かで出て。だから日本選手権のときに何を意識していたのかを思い出して、全カレとの違いとを足して、そこを変えて臨みました。
髙内 走幅跳は2年ぶりでした。自己ベストが出たのはうれしかったですね。練習していたら思っていたよりも悪くなくて。7メートルは跳べるだろうという自信はあったんですけど、自己ベストまで行くとは思っていなかったですね。
――中村選手から見て、髙内選手の跳躍はいかがでしたか
中村 足速いなって思いました(笑)。後ろから見ていた感じ、跳躍が低いから「7メートル!?そんなに跳んでるの」とびっくりしましたね。
――髙内選手は跳び終わった後に祝福を受けていましたね
髙内 皆に喜んでもらったのはすごくうれしかったです。自分らしい終わり方をしたなと思います。
――自分らしい、というのは
髙内 とりあえずチームを盛り上げようという思いがあって、それは競技の結果以外でも裏とかで。急きょ走幅跳に出て自己ベストを跳んだということで、皆なんだこれ!?となったと思うので、そういった意味で沸いたのはすごくうれしかったです。
――個人で着るエンジのユニホームは最後だと思います。何か思うことはありますか
髙内 僕は4年間、健士は入ってから2年間だから思いはそれぞれだと思います。僕は個人で着るエンジというのは重みというのは感じましたが、それ以上に、走幅跳に出るということを考えたときに自分が競技を始めたのが走幅跳だったので、個人の種目を走幅跳で、しかもエンジを背負って締めくくれたのはすごく感慨深いものがあります。最後自己ベストを跳んで得点も取れたのは、4年間を振り返って良い終わり方ができたのかなと思います。エンジを4年生で着れたのはすごく良い思い出です。
中村 真壮からあったように2年の終わりから競走部に入らせてもらって。それまではユニホームに重みを感じることはないし、そんな試合にも大して出たことないし。けど、初めて緊張感のある試合で代表しか着れない服をもらって出るのは正直自分にとっては難しいものでした。プレッシャーのある中でやるのもこのユニホームがあってこそだと思いました。
――中村選手は競走部の2年間をどう締めくくりますか
中村 自分にとって一番長い2年間だったと思います。陸上は小学生の頃からやってたのですけど、今まではコーチも指導者もいない中でやってて気楽に楽しくやってて、(競走部に入って)初めて自分の中でちゃんとやったかな。すごいメンバーに囲まれて、やっと自分の限界を知れたかなと。記録だけ見たら後悔はあるかもしれないけど、陸上人生の最後で真壮と一緒に跳べたし、自分の中では楽しくできたかな。競走部に入ったときは自分がうまくやれるか、と思っていたんですけど良い環境で、仲間にも恵まれて。そんな中で最後まで応援してくれる仲間もいて、最高の思い出です。
――髙内選手は日本選手権リレーが今後控えています
髙内 全カレでは決勝には残れましたが、6位でタイムも予選より落としてしまって悔しい結果でした。日本選手権リレーでは最後の大会であるので、表彰台に全員で上がろうと。あと、早慶戦が終わって新しい世代になるので、自分たちの下のメンバーがどういうチームをつくっていくのかをサポートしながら、しっかり自分の力もチームの一つとして活躍できるようにしていきたいと思います。
伊東利来也(スポ3=千葉・成田)
――日本新記録を樹立した4×200メートルリレー(8継)ですが、チームとしての目標はありましたか
監督やコーチと話して、今回は皆で日本記録を塗り替えられるメンバーだということで、記録に対して目標を持っていました。
具体的な数字を、というのはないのですが、どちらかというと早稲田記録を更新しようという意識でやろうと意気込みでした。
――自身や他のメンバーの走りはいかがでしたか
今回は1走、2走の100メートルや200メートルが専門の南山と三浦がレースをメークしてくれたのが、記録の面でも勝利の面でも大きくチームに貢献したのかなと思いました。
――掲示板に記録が出たときは日本記録だとわかってましたか
表示板が『21』で止まったのを見て、「もしかしたら出たかな」というのはありました。皆で(1分)22秒0を切るのが目標としてあったので、見たときに「早稲田記録更新だ」となりましたね。
――日本記録保持者になって感想などはありますか
8継はマイナー種目で、メジャーな大会ではほとんどやらない種目ではあると思うんですけど、あまり日本記録保持者という意識はないです(笑)。どちらかと言うと、早慶戦をやっていく中での大会記録だったり、早稲田の先輩たちが築き上げてきた記録を破ったということで、早稲田記録という意味で捉えています。
――個人の400メートルのレースは振り返るといかがですか
全カレ(日本学生対校選手権)は前半100メートルがうまくいかなくて、そこを監督と話していました。今回は前半100メートルでうまくスピードを乗せた上で、全カレでうまくいった100〜300メートルのスピードの持続をできればいいねということを話していました。そういった意味で全カレと変えたところは、前半の100メートルでいつもより積極的にスピードを出してみるということでした。
――それはうまくいきましたか
うまくいったかどうかはわかりません。ラスト100メートルで力尽きてしまった感覚はあります。ただ、入りの200メートルが21秒5で、今までで一番速かったんです。そういった意味で、今回の挑戦はうまくいかなかったものですが、自分の中で新しいレースプランに挑戦できたのはプラスに捉えています。
――今後世界選手権控えていますが
世界となると前半のスピードが大事ということで、日本チームとしてもそこがレースをつくる上での最低条件として挙がっています。やはり前半にスピードを乗せることに重きを置いてレースをしたいと思います。